株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

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株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版の「株式需給の達人(おもしろ相場格言編)」を出版しました。
既刊の「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」「チャートの達人」「個人投資家の最強運用」「株式需給の達人(基礎編)」「株式需給の達人(投資家編)」とともに一読をおすすめします。

「板」の読み方

東証、「午後のべた凪」

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毎日、毎日、午後になると株価が動かなくなる。
「べた凪」とは株価が動かないし、出来高も増えない・・・ひたすら横ばいが続く相場だ。
もちろん売買代金も減少するが、気になるのは「べた凪」が毎日の午後に起こっていることだ。

一日の取引時間は「ザラ場」と呼ばれ、売りと買いの「板」に新規の売り買いが入って成立する。
なので、新規の売買注文が入らない限り約定が成立しないので、値段が動かない「べた凪」が生じる。
問題は、なぜ? 毎日毎日、午後の市場が「べた凪」になるのかだろうか?

一日の売買プレーヤーのリズムは大体決まっている。
午前の寄り付き時は様々なプレーヤーの売買が発注される。
前日のNY市場の動きを受けて、東京市場の朝は先物売買でNY引け値にサヤ寄せする所から始まる。
これは証券自己やCTAやヘッジファンドなどのプレーヤーが前日のポジションを調整することから生じる。
年金運用者も朝のバスケット取引で、多くの銘柄の売買の決め商いをする。
もちろん、個人投資家もその日のトレンドを想定してポジションを取る。

その後10時半ごろまでその日のトレンドを見極めたり、新たに仕掛ける売り買いが発注される。
そして、午前の売買が11時半に終了する。

昼休みに国内年金などの投資家からバスケット売買が発注される。
このところでは、あまり大きな売買が発注されていないようだが、個別銘柄で発注する場合もある。

そして、2時以降は引け値を巡って投信の売買が発注され、思惑的なCTAやヘッジファンドの売買が出てくる。
3時の引け値に向って売買するのは、引け値を有利にしたいと思っているCTA・ヘッジファンドか、新規買いや解約売りが出てきた場合の投資信託が中心だろう。

従来なら引け値に向けて日銀のETFやREIT買いが入ったりしていたが、現在ではほとんど売買がない。
また、国内年金も基本的にV-WAP(加重平均価格)で売買するので引け値に偏った売買はしない。

・・・と考えると、だんだん分かってくる。
「午後のべた凪」は日銀、さらに国内投資家、年金や投信など国内プレーヤーが動いていないという証拠になる。
実需の売買が減少しているため、ヘッジファンドやCTAも動きにくくなっているのではないだろう。
積極的にショートで仕掛けたり、ロングでじっくり仕込む投資家がいなくなっているのかもしれない。

日銀や国内年金に100兆円を越える流通株式を吸い上げられ、市場の流通性が減少し、売りも/買いも出しにくい市場になっていると書いた。
まさに市場の流通株式が吸い上げられたことで、ボラティリティが他国に比べて低下し、底堅い反面、動きが鈍い市場になっていると考えられる。
今後、GPIFが一段と国内株式ウェートを上げるとは考えにくく、日銀がさらにETF買いを追加してくるとも考えにくい。
投信では日本株よりも米国株に資金が向かっているので、投信資金は増えているにもかかわらず国内株ファンドは低調だ。

どうにも八方ふさがりな日本市場で、これが「午後のべた凪」の不都合な事実かもしれない。
でも、逆に考えれば、誰か巨大な投資家が日本株に参入したら、売り物が少なく、株価がぶっ飛ぶ可能性もあることにも注意が必要だ。



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「板」の読み方~アルゴ取引の影響(6)

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現代の株式市場では「板」はさらに読みにくくなっているだろう。
今まで話してきた、機関投資家の売買と「板」、国内投信の売買と「板」は、基本的な市場内の需給関係を示している。
それは今でも変わらない。

もっとも変わったのは海外投資家、しかも、ヘッジファンドやCTA、さらにアルゴリズム(以下アルゴと省略)トレーダーだろう。
特に、アルゴトレーダーは行動経済学と結びつき、指値を入れると市場内の需給=「板」がどう変化するのか、投資家の短期売買にどう影響するのかを統計的に計算して売買発注をする。

以前真剣にザラ場の行動変化を検討したことがある。

たとえば、大口の買い指値を「板」に入れる・・・すると、大口買い指値を上の値段を買おうとする小口投資家が現れる。
下に大口買い指値があると、安心して上を買えるということなのだろう。

たとえば、上値の大口の売り指値を「板」に持ち、一気に買い上がり自分で売り買いだけで、大口の売りを大口の買いが入って上抜けたように見える(先物市場では認められている)。
多くの市場参加者には大口の買い手が現れたように錯覚する。

たとえば、買い指値と売り指値を煩雑に取り消したりすると、バタバタと売り買いが煩雑に入っているように見える。
投資家がこの銘柄に興味を持ち、積極的に売買しているように錯覚する。

これは証券取引法でご法度になっている、自己の同値売買だったり、見せ玉だったり、偽装売買だったたりと、多くは違法な売買だ。
自己と自己の同値売買は出来高を増やす目的の偽装売買だし、注文を小口に分けて煩雑に約定しているようにみせかけるのも偽装売買に当たる。
見せ玉とは大口の指値を持って、いかにも大口の機関投資家が動いているかのように見せかけることで、これも違法売買だ。
これらの売買は証券取引法の違反行為だ。

しかし、百分の一秒単位で売買できるアルゴ取引の場合は、約定する直前に取り消して約定しているかのように見せることもできるし、上値と下値の大口指値も見せ玉でなく約定するつもりだったとできる・・・コンピュータの判断だから、人間には見えない。
特に煩雑に売買が生じているように見せかけるのは、アルゴ取引では簡単だ・・・自動的に小口に分けて細かく発注すればいいだけだからだ。

アルゴトレーダーには「見せ玉」も「偽装売買」も関係ない・・・取引所も取り締まるのは難しい。
アルゴ取引が影響している前提で、投資家は「板」を見ていかなくてはならない。
「板」はこうした意味で「騙し合い」だ・・・騙されないように「裏をかく」ことも大切になる。
たとえば、通常とは逆に、分厚い売り「板」は「買い」で、分厚い買い「板」は売りとなるかもしれない。
と同時に、国内機関投資家や国内投信のような投資家の動きは分かりやすく、「板」を読むことで十分に利用できる。


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「板」の読み方~投信の事情(5)

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国内投信の売買フローは他の機関投資家の売買フローとは大きく異なる。
それは、顧客が投信を売買する時、その価格は常に基準価額で行われるということだ。

投信ビジネスには、投信を販売する販売会社、投信を運用する運用会社、投信の管理を行う管理会社の、大きく分けて三つの役割がある。
そのうち、顧客が投信を売買するためには、販売会社に申し込まなければならない・・・直接、運用会社に申し込むことはできない。

顧客が投信を売買したい場合、午後3時までに販売会社に申し込めばいい。
午後その日の状況が分かり次第、販売会社が顧客の売り買い状況をまとめて運用会社に知らせる。
運用会社はその申し込み状況を勘案して、解約のために現金が必要ならば株式の売り注文を出す・・・また、新規購入が多ければ株式の買い注文を出す。

ここからが重要なのだが、投信の売買価格は基準価額なので、基本的に午後3時の引け値から計算される。
そして、顧客は翌日に前日の基準価額で実際の投信売買を行うことになる。
したがって、投信の運用者は当日の投信売買の申し込み状況に応じて、基準価額=「引け値」で売買しなくてはならない。
他の機関投資家はVWAPで売買したり、直接注文を出したり、「売り決め」や「買い決め」で売買したり、様々な売買手法を使ってより有利な価格で売買するように努力している。
しかし、投信の運用者は、顧客の申し込みに対して基準価額=「引け値」で約定しなければならない。

このことが「板」にどのような影響があるのだろうか?
国内投信の売買が大きく「板」に影響するのは、午後2時過ぎから3時の引け値にかけての時間帯に限定される。
投信の売り申し込みが多い時には、2時過ぎから断続的な売り注文が特定の銘柄に出てくる。
その売りが続き、さらに引け値で大きな売りが出て引け値が急落する。
特に証券会社と「決め商い」をした時には、証券会社は「引け値」を売り叩くことで「トレード益」を上げるので、「引け値は」は悲惨なほど下落する場合もある。

「板」をよく見ていれば、下値の指値(または上値の指値)が次々と約定し始めるので、「投信の解約売り(または新規購入の買い)」だとすぐに分かる。
この場合、途中で反転することを期待するのではなく、「引け値」まで一方方向に売り(または買い)が続くと考えた方がいい。
こうした事情を考えて自分のトレードに利用し、「より安く買い、より高く売る」ことが大切だ。


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「板」の読み方~「売り決め」「買い決め」(4)

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前回は、国内機関投資家のバスケット取引が、市場価格や「板」にどう影響しているかを考えてみた。
VWAP(加重平均約定価格)を中心にトレードしていくので、寄付きや引けの注文が多くなり寄付き値や引け値への影響が大きくなる・・・さらに突然の株価変動に備えて、上値での売り指値や下値での買い指値が増えてくる傾向が考えられる。

さて、今回は機関投資家の「売り決め」「買い決め」について検討してみたい。
「売り決め」は、国内機関投資家が大口の売りを出す時に使われるトレーディング手法だ。

たとえば、買い指値が各価格に1万株程度ある「板」で、「30万株を売りたい」という機関投資家がいたとする。
この機関投資家は市場に成行売りを出せば、その瞬間に株価は30円下落してしまう。
これを「10円下の売り決め」として証券会社の自己ディーラーと取引契約をする。
機関投資家は10円下で30万株を売却できる・・・一方、自己ディーラーは10円下までの10万株を約定し、残りの20万株を10円下で自己ポジションに入れる。
市場にはリターンリバーサル効果があるので、瞬間的に下落した株価は反作用で戻ろうとする。
その戻りを利用して残りの20万株を売り上がれば自己ディーラーの「トレード益」になる・・・というわけだ。

「買い決め」はこの反対に上値の指値売りを買い上がり、一定の値段で自己ディーラーがポジション化する。
どちらにしても「売り決め」「買い決め」が入ると、株価が一瞬で大きく動く。
そして「板」にある「買い指値」「売り指値」が一瞬にして消える。
株価が一瞬にして動き、指値が一瞬にして消えるようなことがあれば、「売り決め」「買い決め」が入っている可能性を考えた方がいい。
でも、「売り決め」「買い決め」が入ったかどうかは公表されない。
証券会社の自己ポジションになっている可能性があり、ポジション運営上不利になることを証券会社は公表しないからだ。

でも、株価の動きと「板」の変化からある程度推測はできる。
その場合、証券会社の自己ポジションにあるという事を意識する必要がある。
上がれば売ってくるだろうし、下がれば買ってくる自己ディーラーがいるかもしれない。
その分、「板」の状態が不安定化する・・・値動きが激しくなることを考慮すべきだろう。


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「板」の読み方~国内機関投資家の事情(3)

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国内機関投資家の発注方法から検討してみよう。
まずは、毎朝8時ごろに出すバスケット取引だ・・・これには二種類がある。
一つはエージェンシー取引で、複数銘柄のバスケットを普通に委託注文として発注する取引だ。
もう一つはプリンシパル取引で、複数銘柄のバスケットを決められた価格で証券会社と直接取引をするものだ。

エージェンシーのバスケットは複数銘柄をまとめて出すだけで、受け手の証券会社はその注文をバラバラと市場に発注し、手数料を受け取る・・・通常の取引となんら変わらない。
一方、プリンシパルのバスケットは、一定の価格(手数料と含むネット価格)で証券会社の自己部門と直接取引する。
受け手の証券会社の自己ディーラーは、一日かけてこのバスケットを市場で約定し、決められた価格で機関投資家に直接受け渡しすることになる。

その際の価格はVWAP(加重平均約定価格)を使う場合が(すべてではないが)多い。
エージェンシーのバスケット取引の場合は「VWAPターゲット」と呼ばれ、VWAPを基準にするが多少違う価格でも許される。
一方、プリンシパルのバスケット取引の場合はVWAPの「決め商い」であり、証券会社の自己ディーラーがVWAPで機関投資家と受け渡しをする。
自己ディーラーが「VWAPよりも安く買い/高く売り」ができれば、その分が自己ディーラーの「トレーディング益」となる。
また、ここに価格のリスクが生じるので、証券会社はそのリスクに見合った対価を取る。

それでは本題だが・・・この毎朝のバスケット取引が「板」=市場の需給にどう影響しているのか?
VWAPを使った両取引は、市場の時間帯別の売買量が大きく影響するので、寄付きと引けの発注量が増える。
そして、VWAPターゲットでは上値の売り指値注文や下値の買い指値注文が多くなる・・・突然の市場急変に備えて時価から離れた指値注文を出しておく必要があるからだ。
なので「板」で時価から離れた注文が多い場合にはVWAP取引が入っている可能性があるだろう。
また「板」には売り注文総量と買い注文総量が記載されているが、この両者に大きな違いが出ている場合にはVWAPの指値注文が相当量入っているかもしれない。

VWAPの決め商いの場合、証券自己ディーラーの腕の見せ所で、各社様々に工夫を重ねてVWAPに近いトレーディングを行う。
トレードにアルゴリズムを使う場合もあるので、これが入ると値動きが拡大、スピードのある注文で市場は右往左往するかもしれない。
と、いろいろ事情が異なるが、基本的には時間帯を細分化してその細かい時間帯でVWAPに勝つようにトレードする。
寄付きや引けで大きな成行注文が入り、値段が動かされる場合もありえる。

次回は「売り決め」「買い決め」の「板」への影響について考えたいたい。


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「板」の読み方~時間帯による取引事情(2)

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「板」の読み方について考えるコーナーを始めた。
「板」とは売り注文と買い注文を価格別に並べた一覧表で、証券会社のオンラインで銘柄別に見ることができる。
海外投資家の売買、機関投資家のバスケット売買、投信の基準価格に向けた売買、それぞれの市場参加者は、それぞれの事情で売買注文を出している。

「板」を読むとは、各市場参加者が売買する事情を理解して初めて理解できるものだろう。
一日の市場での売買を時間別に簡単に振り返ってみよう。
国内の機関投資家、海外投資家、投信の取引事情が見えてくる。

まずは日本の夜の時間帯。
この時間帯はシカゴの日経先物や大阪市場のナイトセッションだが、海外のCTAなど先物トレーダーの動きがシカゴ日経平均先物を動かす。

東京の朝の時間帯(8時から9時)では、国内機関投資家がバスケット注文を出す。
この時間帯で日本株のVWAP(加重平均約定価格)注文やバスケット(複数銘柄を一括で行う)注文が発注され、証券会社の競争で受注証券が決まる。
受注した証券会社はそれぞれの条件によって日中に発注を行う。

そして、9時に東証がスタートする。
前日のシカゴ日経先物にサヤ寄せする価格で先物取引が始まり、先物と現物の価格差があれば、裁定取引の売買が発生し価格差を収れんさせる。

と同時に現物市場で各銘柄の寄り付きの売買量が注目される。
VWAPの注文ならば、寄付きで全体の注文量のおよそ10%程度は発注されるので、寄付きの売買量によって一日の売買量が推計できるからだ。
寄付きの売買量が多い場合は、国内の機関投資家のバスケット注文が多く出ている可能性がある。

前場は10時半にアジア市場がスタートするので、上海や香港市場の寄り付きにも影響される。
グローバルファンドでは日本株もアジア株に含めて運用している場合もあり、アジア株のウェート調整が日本株の売買に現れたり、アジア株の流動性の少なさから、アジア株の代わりに日本株を売買するケースもありえる。
前場は先物売買とそれに影響される裁定取引の動きが中心になり、10時半からのアジア市場も相互に影響し合っている。

昼時間に国内機関投資家のバスケット売買(昼バスケットと呼ばれる)が発注され、受注した証券会社がバスケットのポジションカバーを行うために、後場の寄り付きから売買を行う。
昼バスケットの発注量が多いと後場の証券会社の自己売買が活発化する。
後場の寄り付き後はアジア市場も1時過ぎに休憩に入るので、その後2時前後はまでは国内の個人投資家などが中心の売買になる傾向がある。

大きな変化が出るのは2時過ぎからだ。
2時過ぎから売買活発化するのは、国内投信だ。
投信は顧客の売り買いの要請によって基準価額を決める大きな要因になるからだ。
個人投資家は投信の売買を昼までに証券会社に要請すると、次の日の基準価額で売買することができる。
そのために顧客の売買要請を受けて証券会社は運用会社に連絡する。
そして、運用会社は2時過ぎから3時の引け値に向けて売買執行を証券会社に委託する。
そして、引け値を基に基準価額が午後5時ごろ決定し、その基準価額で投資家の売りや買い注文を受けることになる。

そして3時の引け値だが、これは投信の基準価額を決める重要な価格となるだけではなく、機関投資家のバスケット売買でも大きな要素となる。
引け値を持ち上げた方が有利な場合は引け値の成行買い注文を出すし、引け値を引き下げたい時は引け値に成行売りを出す。
引け値も相当に操作されているわけだ。
ザっと一日の値動きと投資家の売買事情を振り返ってきても、様々な事情により一日中、売買動機が生じている。

市場参加者の事情が時間帯別に市場に様々な影響を与えているといえる。
その市場参加者に事情がその日の売買に影響する・・・それが「板」に現れてくるわけだ。
次回以降、もう少し詳しく、各投資家の事情と「板」の読み方を考えてみたい。


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「板」の読み方(1)

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「板」を知らない方も多いかもしれない。
株式取引をしている人が毎日目にする、あの「売り注文と買い注文が並んだ」一覧表だ。
ちょっと前(?)まで「板情報」は証券会社のディーラーだけが見られるものだった。
一般投資家に開放され、誰でも見られるようになった。
でもこの「板」を読むのは簡単ではない・・・その読み方次第で「より安く買い、より高く売り」さらに「背後にいる大口トレーダーの動き」や「機関投資家の動き」を推測することもできる。

この「板」を基本から考えてみたいと思う。

①「板」の語源は、数十年も前に戻る。
東証に立会場があり、そこで場立ちと呼ばれるフロアトレーダーが走り回っていた頃だ。
各証券会社の場立ちが証券会社のシステムから株式注文を受け、それを各ポストにいる才取会員に伝え、その才取会員が売りと買いをマッチングさせて約定する・・・という流れで注文は執行された。

その才取会員が持っていたのが、銘柄ごとに価格別の売り注文と買い注文が書かれた大判の紙。
その紙が「板」に張り付けられていたため、この注文一覧表を「板」と呼んでいた。
場立ちになるとすぐに、この「板」の読み方を勉強する。

「バイカイ?」と電話で聞かれると、場立ちは「1カイ、2ヤリ」と答える。
これは、例えば、501円に買い物があり、502円に売り物がある・・・つまり、買いに行けば502円で約定し、売りに行けば501円で約定するという意味だ。

②約定の仕方には2通りある。
一つは「板寄せ」方式と呼ばれ、寄付きや引けで注文をすべて集めて一本値で約定させるものだ。
昔は「セリ」が実際に行われ、注文が次々と入りセリ値段が動き、すべての注文が集まり約定した。
しかし、今では「セリ」ではなくコンピュータ上で一発で約定する。

もう一つは「ザラ場」方式と呼ばれるもので、時間優先と価格優先で約定する。
簡単にいえば、「早い者勝ち」+「安く売り/高く買う者の勝ち」だ。

特に「板」と読むとは、この指し値注文の状況から推測すること、さらに、売買執行の動きから推測することの二点が重要になる。
次回はまず最も基本となる「時間帯」による「板」の読み方を考えてみよう。


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「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
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