
結局、相互関税は相手国を交渉テーブルに引きずり出す手段だった。
英国との貿易交渉が決着し、NY市場の株価が一段と上昇した。
でも中身を見ると、自動車やアルミの関税は変わらないが低関税の一定枠を設定し、相互関税は一律の10%だけで上乗せは回避した。
この関税率の差がどう影響するのだろうか?
①欧米企業のROEはおよそ20%で関税分に匹敵する。
ということは、関税率が25%で値上げをしない場合、企業は米国売上げの25%を関税に取られ大雑把に米国での利益を失うことになる。
もし、10%関税に引き下げられたら値上げしなくてもROEは10%を確保できる。
企業にとっては25%と10%はそれほど違う。
相互関税の上乗せ税率がそれほど過酷な負担になるのは間違いない。
②中国の関税率145%を引き下げても50%なら同じこと。
中国企業は「薄利多売のビジネスモデル」なので、欧米企業のように20%レベルの高いROEを誇る企業は少ないだろう。
となると145%の関税が実質的に「禁輸」を意味するのと同様に、50%の関税も実質的に「禁輸」と同じ意味になる。
中国の格安ECサイトでは30%のディスカウントは普通で、場合によっては50%のディスカウントもある。
と言う意味では50%関税でディスカウント幅が完全に無効、格安サイトで買い物する意味すらない。
でも、30%関税ならば一部の格安商品は、20%程度のディスカウントが残る可能性があり、多少は競争力を維持するかもしれない。
対中国では関税を50%以下に引き下げるかどうかだと思う。
③日本企業の低いROEはトランプ関税に弱い。
日本企業の多くはROEが10%前後で、もし相互関税(10%∔上乗せ14%)を受けたら日本企業の米国ビジネスは利益が出ない。
ROEの低い企業は米国輸出が相当厳しくなるだろう。
でも英国のように交渉が成立し10%関税だけならば、ROE10%企業でもなんとかなりそうだ。
米国向け輸出では採算が取れなくても他地域でカバーするばいいからだ。
競争力が高く多少とも値上げをできる商品ならば、利益が残る可能性が高い。
世界の株式市場は「関税交渉の進展」「相互関税の引き下げ」など、すべてプラスに反応し株価が上昇している。
でも、実態が認識されるようになれば、企業の利益率ROEと関税率の関係で株価が決まるようになるだろうと思う。
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