株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版の「株式需給の達人(おもしろ相場格言編)」を出版しました。
既刊の「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」「チャートの達人」「個人投資家の最強運用」「株式需給の達人(基礎編)」「株式需給の達人(投資家編)」とともに一読をおすすめします。

株式投資の基礎

利益の爆発期、日経EPSのカラクリ

日経平均のEPSが急増
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評論家が口を揃えて言うのが、「日経平均が6万5000円になってもEPSの増加に支えられているので過熱感はない」
確かに上のグラフのように、日経平均E EPSは3月末の2697円から5月直近で3653円と956円一気に増加した。

5月7日GW後に「ハイテク株、利益の爆発期入り?」と言うブログを書いたが、ビッグテックの強烈なデータセンター投資、これが半導体や電子部品、通信機器、電力設備などの莫大な投資に繋がり、各品目で品不足・価格の上昇になって現れ、関連企業の利益を爆発的に伸ばすというストーリーだ。

市場全体の利益増加で日経平均の急騰を説明できるか、となるとよく考えた方がいい。


キオクシアの決算、その過激な増益でキオクシア1社で日経平均EPSを大きく持ち上げているのではないかと考え、キオクシアのEPSが日経平均に与えている影響を試算してみた。

まず日経平均自体は株価の単純平均だが、そのEPSは225銘柄のEPSの合計を除数で割り算したものでどちらかというと加重平均に近い。
なので225銘柄の平均EPSではなく、EPSの大きい会社の増減益が全体のEPSを大きく動かしてしまう構造になっている。

コンセンサス予想でさえキオクシアの今年の純利益は3兆5000億円、前年の5000億円から3兆円も増加し、アナリスト予想ではEPSは8000円程度に急拡大する。

EPS8000円、株価換算係数0.7、除数29.83で割り算すると・・・
日経EPS=キオクシアEPS約8000円✖️株価換算係数0.7➗除数29.8=およそ200円

キオクシア1社で日経平均のEPSを200円も押し上げたことになる。


これは日経の計算方法に問題があると思う。

225銘柄のEPSを合計して除数で割ると言う方法だが・・・
採用している値嵩株、東京エレクトロン1630円、ファーストリテイリング1600円、アドバンテスト640円に比べて、キオクシア8000円だけが圧倒的にEPS水準が高い。
EPSの合計を元に日経平均EPSを計算する方法なら、キオクシアの影響が異常なぐらい圧倒的に高くなるのは自明の理だろう。

ということは、半導体の市況は常に大きく変動するので、キオクシアEPSも変動が大きくなり、連れて日経平均EPSも大きく変動してしまうリスクもある。
日経平均EPSが市場全体を表しているのか?
日経平均EPSの増加で市場全体の株価が上がるとは・・・ちょっと言いにくいと思う。



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キッズマネースクールの違和感(2)投資は会社を応援するため

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すごく違和感を感じるのが、「投資って、会社を応援するため」という奴。
そういえば、NISAのテレビCMでも「投資やってんだ?」「この会社を応援してるんだ」というのがあったが、これも違和感がある。

株主とは何か?

株主とは、会社を応援する人ではなく、会社の一部分を所有する人、だから、会社が経営不振になれば当然責任がある。
株価が下落したり、場合によては倒産し出資金がゼロになることもある。

株主責任の対価として、配当や株主優待を受ける権利、残余財産請求権、総会での議決権を株主は持つ。
さらに発行株数の3%を保有すれば、その会社の帳簿閲覧権を持つ。
発行株数の5%を保有すると、大量保有報告の義務を負い、総会で重要提案権を持つ。
発行株数の20%以上保有すると、持分法会社として持分に応じた利益を連結決算に乗せる。
発行株数の33%以上保有すると、株主総会で特別決議(3分の2の賛成で成立)の拒否権が生じる。
発行株数の50%以上保有すると、連結子会社として決算をフル連結できる。
発行株数の67%以上保有すると、事業譲渡や定款変更などの特別決議を成立させることができる。

「応援する」とは何なのだろうか?

株式投資は「推し活」ではない。
「推し活」ならば、継続的に応援グッズを買ったり、コンサートチケットを毎回買ったり、継続的な支出を伴う。
しかし、株式投資は一回単位株を買えば、その後は毎年優待券をもらい配当をもらい議決権をもらえる。
継続的に買い続ける必要がない。
一方、会社にとっては「株主コスト」であり、平均して利益の30%を配当に支出し、印刷代を払って議決権行使の手紙を送り、会場費を払って株主総会を開催する。

もちろん、株主数を増やすことは上場基準をクリアする上で重要だし、会社はより多くの人に株主になって欲しいと思っている。
消費関連の会社だけでなく、製品の内部で使う部品の会社など、消費者からは目に見えない物を供給している会社もテレビCMをするようになった。
しかしいつでも株を売却できる個人投資家は不安定な存在で、安定株主に対して個人の投資分は浮動株に分類される。
浮動株主=フワフワした不安定な株主でしかない。

投資家にとって株式投資は投資リスクを取ってリターンを得るためのもので、リターンが見込めないならば株式を売却するのが合理的だ。
つまり、業績を悪い時は「売却対象」、調子が良い時のみ「応援対象」になる。
「推し活」は対象が苦境の時こそ応援しがいがあるわけで、会社にとって苦境の時に株式を売却する株主は応援されているとは思わないだろう。

「株式投資は会社を応援するため」という奴はどうも信用できない。



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トップダウンか、ボトムアップか(6)為替レート

ドル円相場と10年金利差の「ワニの口」
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トップダウンの運用では金利と並んで為替も大きな要因になる。
新NISAでもオルカンやSP500のETFへの投資が増え、ドル円レートが運用成果に大きく影響するようになってきた。
為替の見方がどんどん重要になってきている。

為替自体が直接パフォーマンスに影響することもあるが、為替を通じて企業決算に影響したり、為替が市場の需給に影響したりもする。
まずは海外投資家や日本個人投資家の動きの為替への影響を簡単に見てみたい。

①海外投資家による円建て資産の買い
日本株は海外投資家が買うと株価が上がり、売ると下がる。
それだけ影響力が大きい海外投資家だが、為替から見ると違う。

日本株や円債券など円資産全般はグローバル指数に組み入れられていて、グローバル指数と連動して資金が流入したり流出したり、株価もそれにつれて動いている。
しかし、為替について海外投資家は様々な円ヘッジを実行している、例えば、日本株買いが盛んになる一方で円売り/ドル買いを先物で行う場合も多い。
この場合、日本株が買われるほど円先物は売られることになる。

②個人投資家のドル資産の買い
海外投資家の円資産買いとは異なり、個人投資家のドル資産買いは基本的にヘッジしていない。
一部投信やETFで円ヘッジ型もあるが、大半は為替リスクを取るものだ。
したがって、新NISAが人気になりドル建て商品の買いがどんどん出てくる状況では、断続的にドル買いが入ることになる。
ドル建て資産買いが為替の円安とともにパフォーマンスをダブルで盛り上げる
逆にドル建て商品を売る時は為替も円高になり、ドル建て商品もマイナスと為替のマイナスがダブルで効いてくる。

結論としてトップダウンの判断では
①米株高=円安につながりやすく、米株安=円高につながりやすいことになる、
②日本株は海外投資家が買うと上がるが、先物の円売りポジションを通じて円安への圧力を強める。

なので、海外市場高の中で海外投資家が日本株を買うと円安圧力になる。
逆に海外投資家の日本株売り+米国株安という状況になると為替はダブル円高圧力となる。
NISAで海外投資している投資家は、米国株高はダブルでプラス、海外株安はダブルでマイナスになる。



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キッズマネースクールの違和感(1)おカネの大切さを学ぶ

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テレビでは「キッズマネスクール」の人が登場して、子供に金融教育の大切さを学ぶとこの重要性を訴えている。
4歳の子供が1回1000円を払ってこのスクールに出て金融を学ぶという。
「子供が一生困らないお金のルールを学ぶ」
「お金の大切さ、働く楽しさ、親への感謝の気持ちを育む」
「投資は会社を応援するため」
などなどのキャッチフレーズが並んでいる。

お金の話は難しい。
それを子供に話すだけでもさらに難しい。
それを親に代わって子供に教えてくれるのならいいかもしれない。
でも4歳児に1回1000円のセミナーって? 高すぎるだろ!!!
という事だが、全国でスクールを開催しているらしい。

①お金の大切さってなんだろう?

この問いにわかりやすく答えるのは大人だって難しい。
お金の三つの役割は①モノの価値を表示する、②モノと交換できる、③余ったお金を貯蓄できることだが・・・ではお金を大切にするって何だろう???
例えば、いろんなモノの価値を比べることで自分の満足が最大になるように使う、欲しいモノがない時は無理に使わず貯金する、ということなのだろうか?

子供がお小遣いをもらった時、どうすればお金を大切に使えるのだろうか?
たくさんある欲しいものをどういう順番で買えば一番満足できるのか、欲しいものを我慢して貯金して後で使う方がいいのか、大人が考えても難問だ。

②投資となると、さらに大人でも難易度が上がる。

証券会社に入り企業調査と投資分析、海外投資家営業、自己勘定の運用、年金や投信の運用と経験してきたが、それでもやはり投資は難しいと思う。
なぜ、投資や金融は難しいのか?

一番の理由は勉強すべきことが多すぎるからだ。
中銀や銀行など金融制度と仕組み、マクロ経済全般と企業活動、財務の仕組みと企業業績、これら全部が複雑に絡まり、金融資本市場で株価や金利の変化として表現される。
これらの複雑な仕組みが絡まっているところが一番難しいところだ。


というわけで、筆者は小学生以下の頃から金融教育することが必ずしも良い事とは思っていない。
それ以上に基本的な科目、算数や理科・社会、国語や英語をちゃんと勉強することの方が大切だと思う。
中学生や高校生になってから社会や経済の仕組みと機能、金融制度の仕組みを基本から勉強すれば十分で、金融投資教育はその先にある応用科目になる。
自分の持つ経験や知識を総合して考えるべき応用科目、自分で勉強していくしかない。

金融界はNISAが導入されてから、「投資は儲かる」「投資をしないと老後が不安」「1億円稼ぐ投資」などなど投資を煽り、個人の資金を投信や株式に誘導しようとしている。
ギャンブルは結局胴元が大儲けするのだけど、投資も結局胴元である金融・証券が大儲けする。
だから、個人投資家は銀行や証券に騙されないこと、これが一番大切だ。

金融理論は大儲けするためにあるのではなく、理論的に最適な投資を行うことで大きな損失=リスクを避けるためにある。

お金の大切さって何なのだろう?



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トップダウンか?ボトムアップか?(5)金利と株価

日本の政策金利と景気後退期
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昔ロンドンで「トップダウンに強い」とされている運用会社とミーティングしたことがある。
この会社はグローバル債券の運用に長けていると評判だった。
世界各地域の金利と為替の方向性を決めて資産配分を決めるのだが、印象的だったのは「為替と金利は逆方向」「為替と金利は常にリターンを相殺する」という原則で運用していたことだ。

「金利が上昇していく地域は為替が安くなる」、「金利が低下していく地域は為替が高くなる」という原則なのだが、これが常に当てはまっているわけではない。
それでもグローバル債券の運用者から見れば、その地域の債券に投資する場合は金利が低下し債券利回りが低下するが為替も強くなる、債券利回りが低下する一方為替益が上がるというわけだ。

金利が上昇すると金利差が広がり為替が強くなると思いがちだが、日本でも超低金利の時代、為替は超円高になった。
こうしてそれぞれの地域で金利の方向と為替の方向を比較することで、各地域の債券ウェートを上げるか下げるかを決めていく。


トップダウンの投資判断は個人投資家では難易度が高い。
でも複雑な資金配分モデルを使わずともトップダウンの判断を利用することはできる。
個人投資家の運用では、ごくごく大雑把に! 景気・物価・金利・為替などの主要項目を考えて株のトレンドを判断するぐらいで十分だ。

あまり複雑なモデルを使っても意味がないかもしれない。
景気を予想し、物価を予想し、金利を想定しても、そうキッチリと結論が出るわけではない。
上の金利と景気のグラフを見ても、景気が良くて金利を上げー景気が悪くなれば金利を下げているのがわかるが、結果から見ればわかるが、進行している経済で個人の景気判断も簡単ではない。


まずは「金利」を考えてみよう。
金利の見方は二つある。
一つは収益率として金利を見て、株式の収益率と債券の収益率を比較して投資判断する方法だ。
もう一つは金利を需給の要として見て、金融資本市場の需給を考える方法だ。

①の株と債券の収益率を比較する方法は筆者もよく使う。
筆者は、株式益回り(利益➗時価総額)と長期債利回りを比較して判断している。
リスクの高い株式は債券よりも高い収益率が要求される、そのため、株式益回り>債券利回りとなる。
これが接近すると徐々に割高感が出て、逆転すると株式が割高感が強く出る。

②の市場の需給で、中央銀行の金融緩和で株式市場の需給が良くなる。
金利を引き上げれば、資金の借り手が減る、そして市場の流動性が減少する、というのが基本。
市場のカネ余りと金利は密接な関係があり、これが株価にも大きく影響している。

ファンダメンタルの影響は、不動産などの借金の多い企業は金利が上がると利払いを増えるのでマイナスになるが、現代の日本では借入金金利が業績が大きく変化する会社は中小企業を除いて多くない。
金利はファンダメンタルよりも、バリュエーションや市場の需給に影響する要因として見ておくべきだろう。






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トップダウンか? ボトムアップか?(4)個人投資家のボトムアップ

新NISA











数十名のアナリストを揃えて、年間1000社とのミーティングをする機関投資家とは違い、個人投資家の調査は限られてしまう。
保有銘柄が100銘柄以上という猛者もいるだろうが、普通の個人はせいぜい数十銘柄程度、それでも1銘柄につき4回の四半期決算があるので、100回は決算短信を読み説明会のビデオを見たりする必要がある。
こうした物理的な負担も考えた上で保有銘柄数を決める必要があるだろう。

保有銘柄数とインデックスのリターンの関係については前回簡単に紹介した。
機関投資家でもインデックスとの連動性、個別要因の大きさを考えた場合、集中投資でも30銘柄程度は保有する。
しかも、その30銘柄は大型株、インデックスの採用銘柄が中心だ。

個人投資家が好む小型株や品薄株を組み入れたら30銘柄でもインデックスとの連動性は低くなる。
企業調査の観点から10銘柄、しかもインデックスとの連動性を考えたらとても運用なんてできなくなる。


では、個人投資家がアクティブ運用するにはどうしたらいいのだろうか?

筆者が考える運用方法は、ETFと現物株を組み合わせること。
通常ポートフォリオは「ベータ✖️インデックスリターン+アルファ+誤差項」で表せる。
ちょっと難しくなるのでベータと誤差項を無視して簡単に示すと・・・ポートフォリオのリターンは「インデックスリターン+アルファ」となる。

インデックスリターンは基本的にはTOPIXのリターン、アルファは現物株の個別リターンだ。
簡単に言えば、100銘柄のポートフォリオもインデックスリターンと個別株リターンで表せる。

個人投資家がこのアイデアを使うには、まず日経平均やTOPIXのETFを買う。
そして、自分が良いと思う現物株をいくつか買う。
これだけでOKだ。

資金の60%程度でETFを買い、残りの40%で自分の好きな現物株を買えば、インデックスの動きに連動してリターンが得られ、自分が選んだ現物株が上がれば、追加的なリターンが得られる。
機関投資家のアクティブ運用と同じ効果が得られる。

これが、簡単にできる、個人投資家に勧められる「効率的なポートフォリオ運用」だ。
次回から個人投資家がトップダウンの運用をどう使うかを考えてみたい。




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トップダウンか? ボトムアップか?(3)集中投資

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昔、年金基金のお客さんからクレームが付いたことがたまにあった。
それは「トラッキングエラーが低すぎる」というものだった。

「トラッキングエラー」は耳慣れない言葉かもしれないが、簡単に言えば、ポートフォリオのリターンがインデックス(ベンチマーク=運用目標)リターンからの乖離する度合いを図る指標だ。
ポートフォリオリターンがインデックスリターンに完全に一致すると、トラッキングエラーがゼロになる、これは一般に「インデックス・ポートフォリオ」と呼ばれるものとなる。

このトラッキングエラーが大きくなり、3%や5%のレベルになってくると、リターンがインデックスから離れてくる「アクティブ・ポートフォリオ」と呼ばれるものになる。
アクティブ運用は、目標インデックスよりも高いリターン(超過リターン)が求められるのだが、この超過リターンの大きさを決定するのが「トラッキングエラー」だ。

機関投資家向けのアクティブ運用は3%程度の超過リターンを目標にして運用している。
なので、トラッキングエラーも3%以上が求められるのだが、ファンドマネージャーによっては1%程度のトラッキングエラーしか取らない保守的な人も多い。
ファンドマネージャーの気持ちになってみればわかるが、「大負けをしたくない」「大負けすればクビになる」という心理が常に働く。
大勝ちするより、大負けしないことが重要と考え、運用はどんどん保守的になり、トラッキングエラーが小さくなってしまう・・・というわけだ。


年金基金の顧客が問題にしたのが、このファンドマネージャーの保守的な運用だった。
こうした顧客の意向を受けて、保有銘柄数とトラッキングエラーの関係を調べたことがある。
保有銘柄数が増え、大型株の割合が増えるほど、インデックスとの連動性が高くなりトラッキングエラーが低下する。
通常のアクティブ運用は50〜60銘柄でTOPIX(銘柄数2000弱)に勝つことを目標にする。
でも、この50〜60銘柄で大型株中心となると、トラッキングエラーが1%台となることもあった。

そこで保有銘柄数を抑えた集中投資が必要になる。
保有銘柄数が少なすぎると(下方修正などの)個別要因でリターンの振れ幅が大きすぎ、インデックスの動から完全に離れてしまう。
検討の結果、大体、20〜30銘柄の保有銘柄数が最も効率が高いとわかった。
この保有銘柄数のポートフォリオなら、ある程度インデックスとの連動性を確保でき、なおかつ、アクティブリターン=超過収益も十分に狙える。

機関投資家向けの厳選投資として商品化したが、これは個人投資家にとっても重要だろう。
銘柄数が少なすぎると1銘柄の業績修正などの影響が強く出過ぎてしまうが、20〜30銘柄を保有すれば1銘柄の変動をある程度吸収でき、しかもインデックスよりも高いリターンが狙える。

次回、個人投資家向けの集中投資を考えてみたい。



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トップダウンか? ボトムアップか?(2)テーマは陳腐化する

投信グローバル・プロスペクティブ・ファンドの基準価額と運用資産額
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テーマは個人投資家には分かりやすい。
今なら人工知能、それが新しい世界を作るという壮大なテーマがある。
テーマに沿って半導体株、半導体製造装置株、データセンターに関連する株などを買う。
株価が上昇している会社の共通点を探し出し、その銘柄を買うだけだから簡単。
会社のファンダメンタルを調べ、有価証券報告書や決算短信を読みこなす必要もない。
テーマ投資はボトムアップの簡単な方法だ。

こうしたテーマを使った運用に「テーマ型投信」がある。
昔の話だが、2000年のスタートした野村の「日本戦略ファンド」は凄かった。
設定当初に1兆円の資金を集め大きな話題となったアクティブ・ファンドだが、その後20年以上経過し、野村はついに諦めてこの投信は償還された。
設定当時は日本最大のアクティブ投信として人気化したが、運用資産は設定当初がピークでそこから減り続けた。

ちょっと前に大きな話題になったテーマ型投信が、当時の日興アセットがARKインベストメントと設定した「グローバル・プロスペクティブ・ファンド」も投資家の人気を集め大きく上昇した。
上のチャートがその「グローバルプロスペクティブ」の基準価格と純資産の推移だ。

2019年8月の設定から2021年6月までに純資産が1兆円に達し、基準価額も当初に1万円から2万7000円まで上昇した。
でも、そこで天井を打ち、流れが反転。
2022年末には純資産2377億円と4分の1に減少、基準価額も7785円と70%の転落だった。
その後は米国ハイテク株の上昇とともに基準価額が上昇したが、投資家は資金を再び入れることはなく、運用資産は低迷したままだった。

テーマ型投信は過去数多く発売されたが、なかなか長期で生き残るのが難しい。
市場のテーマはどんどん新しいテーマを生み出され、古いテーマはどんどん陳腐化していく。
株主還元、企業改革、イノベーション、人工知能、様々なテーマが登場していきたが、これらの賞味期間はそれほど長くはないのかもしれない。
今をトキめくAIブームも巨額なデータセンター投資もほとんどが来年の稼働を実現すれば、半導体や部品、光部品、電力投資などの需要も一巡するかもしれない。

株式市場はどんな材料でも先に先に将来を織り込んでしまうからだ。
テーマで買い上げられた株式は、テーマが陳腐化するとダラダラと人気の圏外に置かれてしまう。
ボトムアップの運用を目指すのなら、きちんとファンダメンタルを分析して、自分が想定した会社価値で株式を買うことだと思う。
結局、株式投資では簡単な近道はない。



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トップダウンか? ボトムアップか?(1)テーマ投資

新NISA











一般的にはボトムアップは帰納法的なアプローチ、トップダウンは逆に演繹的なアプローチ。
株式用語ではボトムアップは個別銘柄の分析を基に全体を判断する、トップダウンで経済マクロからセクターを判断していくものだ。

むかし、英国の運用会社を回り多くのファンドマネージャーと話をしたが、この両方をプライドを持って語る人たちが多かった。
ある運用会社は「我々はトップダウンアプローチで分析し、国際分散比率を決め、各国のセクター配分を決め、その後個別銘柄の企業分析をする」と自信ありげに答えた。
また、別の運用会社は「我々は企業の分析に自信を持っている。市場がどう動くかは見ていない。個別銘柄の価格が我々の想定する価値を下回れば買うし、上回れば利益を確保する。」と言った。

彼らプロ投資家はグローバル景気を分析するエコノミスト、セクター分析をするストラテジスト、個別銘柄の分析をするアナリストがそろっている。
そして自分の得意なアプローチ、ボトムアップか、トップダウンかを徹底的に追求し、パフォーマンスを上げていく。
どちらのアプローチも良いとか悪いとかではない、株式市場にどう対峙していくかの話だ。


個人投資家は自分で分析をして自分で投資判断しなくてはならない。
まずはボトムアップの判断、個人投資家にとってどう判断すべきなのだろう。

株式テレビを見ていると、多くの評論家が登場して「投資テーマ」がどうのこうのと解説している。
でも、彼らの言うテーマは、株価が急騰した銘柄の共通点を探って「テーマ」という括りでまとめたもので、そのテーマで投資すれば儲かるという。
ボトムアップの一つだろうし、「テーマ」は個人投資家にはわかりやすい投資法だ。

株価が上昇した銘柄から共通する「テーマ」を見つけてその「テーマ」に沿った銘柄を買うだけ。
これなら一見すると素人でもできる良い投資法のように思える。
でも問題もある。
それは株価が先に上昇してから「テーマ」を探し銘柄を探して投資する、すると、株価が高い時に買うことになってしまう。
これが最大の弱点だ。

評論家の場合はその投資法で儲かるかどうかは関係ない。
「テーマ」を探り、素人投資家にウケる話ができればそれでいいからだ。
しかし、自分の大切なおカネを投資するとなると、儲かるかどうかが一番重要。

数ある投資テーマの中で、長期にわたって世の中を変えていくなテーマならば数ヶ月〜1年程度のトレンドを作る、長期のテーマを見つけることが何より重要だ。
現在、AI向けの半導体や部品・素材、防衛関連、宇宙関連、などいろいろなテーマがあるが、その関連というだけで買うよりも、一歩踏み込んで業績を見てファンダメンタルの成長に自信を持てる銘柄に投資すべきだろう。
投資テーマで株価が上がるかどうかよりも、どう業績が良くなるのかを考える方が良いと思う。

実際に投資する場合には「安く買って、高く売る」ことでしかリターンは出せない。
高く買う投資法には落とし穴もある。




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急落相場の読み方(1)ボラティリティのピーク?

トランプ










トランプのイラン攻撃、何が変わるのだろう?

イランの政治体制はハメネイ師が死んでも大きく変わらない。
だとしたら米国は軍事圧力をかけ続けて核開発を阻止するしかない、イランのタマ切れで戦闘状態は一巡するが、米国寄りのイランを達成するまでは時間がかかる。

その分、原油市場には不透明感が続き、世界の株式市場にも暗雲が消えない。
一部の投資家がリスクを一気に落としたために世界の株式市場が下落したが、これをどう見る?


筆者はキーは「原油価格の動向」だと考えている。
ホルムズ海峡の封鎖で一番の被害者が日本という説もあるが、イラン原油の9割を安値で買い取っている中国も厳しい。


下のグラフは、原油価格(WTI先物)と原油ボラティリティ・インデックス(OVX)
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原油価格はそれまでの60ドル前後から70ドル台に上昇し、投資家の不安を煽っている。
しかし今回は青いラインの原油価格自体よりも、赤いラインのOVXの急上昇に注目すべきだと思う。
原油市場の心理的な不安が、恐怖指数である原油VIX(OVX)が急上昇させた。
これは投資家の心理的現象で、原油が90ドル台ぐらいに上昇すると経済を悪化させる懸念があるにしても、現在の原油価格は70ドル台に過ぎない。

70ドル台の原油ならば世界経済を大きく悪化させるレベルではない一方、OVXが急騰し投資家の不安心理がMAXまで拡大した。
現実以上に、投資家心理の変化が混乱を引き起こしていると考えるべきだ。


同じく、日経平均と日経ボラティリティインデックス(日経VI)
スクリーンショット 2026-03-05 8.09.05












3月4日、日経平均が2000円以上の急落して日経VIが60%まで急騰した。
日経VIの60%ラインは、昨年のトランプ関税時の急落のピーク52%を超えている。
心理的な恐怖感はトランプ関税時を越え、投資家の不安感はMAXに達している。

おそらく、SQ前週でオプションのポジションを膨らませた海外投機筋が、イラン攻撃でヤバいと感じ一気にポジションを手仕舞ったためだろう。
これによりNISA投資家をはじめ、多くの個人投資家は不安な思いを抱えたはずだ。
慌てた投資家の心理が日経VIに現れている。


原油VXと日経VIともに、もう少し上昇があるかもしれないけど、相当な高水準にきたのは確かだ。
原油市場も株式市場も第一段階の調整、投資家心理の悪化を相当織り込んできたといえる。
もちろん、これで底入れと言えるわけではないが、一番の急落場面は終わったように思う。
というわけで、昨日、筆者も今年の新NISA枠の半分ほどを使って打診買いを入れてみた。

でも、この株価下落はイラン戦争だけでなく、プライベート・クレジットや過剰投機といった複合要因なので単純にはいかない。
下落相場の第一段階、心理的な価格下落を経験したに過ぎない、そして、第二段階はファンダメンタルの変化を織り込む局面が今後訪れるだろう。
現段階ではファンダメンタルがどう変化するのかはまだまだ分からない。
少し時間をかけて日本株にどのような影響を与えるのかを考えるべきだ。

混乱市場を自分の頭で考えること、これが株式投資の醍醐味だといえる。
その意味でイラン攻撃は考える機会を投資家に提供している。




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NYダウの急上昇の意味

S&P500 グロース/バリュー相対株価
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NYダウが5万ドルを越えた。
年初来の上昇率では、NYダウ+4.2%に対してS&P500+1.2%、NASDAQ−0.9%と明暗がくっきりしている。
日本でも同様でTOPIX+8.5%、日経平均+7.7%とTOPIXの上昇率が大きい。

この現象は二つの意味で重要だと考えている。

一つは、以前から注目してきた「グロース/バリュー相対株価(GV相対株価)の反転」

昨年11月のブログでNASDAQを中心としたA I関連株やGAFAMへの集中物色が行き過ぎたのではないかと書いた。
当時は、米国ではAIやIT関連の大型株が集中的に買われ、GV相対株価が大きくグロースに傾いた。
日本でも同様の現象が起こり、半導体株が大きく影響する日経平均が急上昇し、NT倍率(日経平均➗TOPIX)が10月末に15.7倍まで急上昇した。

このAI関連集中物色がピークに達したのが昨年10〜11月で、その後、出遅れた景気敏感セクターなどが相対的に買われる動きになった。
この「集中物色の反動」がNYダウのような伝統的優良株、さらには日本でも景気敏感株の上昇につながったと言える。

もう一つは、このNYダウ上昇の「ファンダメンタルの裏付け」

下の一覧表は、各株式指標の12ヶ月先予想EPSを比べたものだ。
Q/Qで3ヶ月前との伸び率を計算している。

特に12月期の決算発表が続く中、NYダウのEPS伸び率が突出して高くなっている。
NYダウは3ヶ月で12.7%の増加とEPSの伸びが一番高い。
PERはNYダウ21.6倍、S&P50021.75倍、NASDAQ23.25倍と、ほぼ同水準でNYダウのPERが特に割安というわけではないが、短期に伸び率が一番高いところが評価されている。

NYダウQ/QS&P500Q/QNASDAQQ/QR2000Q/Q
2026年2月2370.612.7%318.73.8%1015.66.2114.84.6%
2026年1月2110.90.8310.62.5986.17.2111.210.9
2025年12月2108.81.6309.315.3978.721.4111.339.5
2025年11月2103.21.8306.917.2956.125.8109.837.7
2025年10月2094.91.5302.915.0919.619.3100.324.3
2025年9月2075.9-1.4268.30.8805.83.979.7-2.7
2025年8月2065.8-2.4261.8-2.8760.0-4.179.7-4.6
2025年7月2064.41.7263.43.7770.83.780.7-2.6
2025年6月2104.4-3.5266.3-2.4775.8-3.381.9-8.3


というわけで、AI関連IT関連への集中物色の反動局面で、EPSの伸び率が高まっているNYダウが選ばれている。
目先はこの傾向が続きそうだ。



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トランプの国家主義(5)共産党100年計画をつぶす?

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トランプは予想不能と表現する人たちも多い。
確かにその言動は不安定で、欧州に追加関税をかけると言ったりやめたり、カナダを米国に51番目の州にすると言ったりする点を懸念する人は多い。

でもホントにトランプがトップダウンで一人で全てを決めて、バンス、ルビオ、ベッセント、へグセス、ラトニックなどの重要閣僚が盲目的に従っているのだろうか?
トランプはブラフや脅しを連発するのでホントの狙いがどこにあるのかわかりにくい。
でも重要閣僚の人たちの発言を聞いていると、米国の20年30年単位の戦略があってそれに基づいて動いているのではないかと感じることも多い。


長期的な中国の「覇権」を阻止する。

2000年頃まではトリクルダウンと言われ、中国でも先進的な人たちが資本主義的に動いて大きく発展させる、その後、一般社会に資本主義や民主主義が浸透していくと期待されていた。
欧米的な資本主義が進み、民衆には民主的な価値観が広がり、結果として、中国は欧米民主主義社会に近づいて行くと見られていた。

ところが現実は違った、と認識されたのは2010年頃、江沢民、鄧小平、胡錦濤の時代から習近平の時代に変わった頃だ。
欧米知識層を中心に、中国共産党は政権獲得から100年目の2049年までに世界制覇を狙う、中国が世界の覇権国家になるという戦略目標が明確に意識されるようになった。

こうなると、欧米企業は中国企業を支援し技術指導し、資本も中国に投下してきたことが間違いだったと気づくようになる。
異質な敵に塩を送って強大化させたに過ぎないことに気がついた。
2010年以降、欧米指導者層は対中国戦略を360度転換し、長期的に中国を封じ込める戦略を進めるようになった。

この欧米指導者層が実のところ誰だかよくわからない、でも、トランプの背後にもこうした長期的な戦略を担う人たちがいるような気がする。


こうした空想をもとに、地球儀をグルっと見回してみる。

①トランプ・モンロー主義を展開する。
米国は地球の西半分を勢力圏にする、ということは、中国を東半分に抑え込むことでもある。
一帯一路を南米に広げている中国を南米大陸から徹底的に排除する、それがベネズエラへの軍事介入だし、パナマ運河の米国領有、さらにはグリーンランドの領有意図(あるいは米勢力圏に組み入れ)という行動に繋がっている。

②中国を東半球の東西南北の領域内に抑え込む。

まずは中国の東出口(太平洋)だが、ここには日本列島、南西諸島、台湾、フィリピン諸島がある。
これらの島々を中国領にしないと、中国海軍が自由に太平洋を侵略することはできない。
中国にとっては第一列島線、第二列島線になるわけだが、米国にとってはここをモンロー主義の境界線として防衛する必要がある。
日本に対して軍事力強化の要求は格段に強まるはずで、NATOと同等のGDP5%の軍事予算を要求してくるかもしれない。

次に西出口(地中海、大西洋)は、中東地域にイスラエルがあり、ヨーロッパにNATOがある。
この同盟国の軍事力を徹底的に強化することで、中国・ロシアの侵略を阻止でしようとしている。
そのためにNATOにはGDP5%の軍事予算を要求するなど厳しく対応しているが、NATOの軍事力を格段い引き上げることが中国・ロシアの欧州侵略を防衛することだと意図しているのかもしれない。

次に南出口(インド洋)だが、ここは中国の一帯一路の最重要地点が並んでいる。
一帯一路は東南アジア、インド、イランなどの国を影響下に入れる軍事外交戦略だが、これを止める必要をみているのかもしれない。
この地域の中国をどう止めるか具体的に見えていないが、インドがキーを握るのかもしれない。

北出口(北極海)は中国とロシアの出方次第ではあるが、地球温暖化とともに北極海の重要性は増しているし、すでに中国・ロシアで開発が進んでいる。
という意味で、グリーンランドは米国の軍事戦略には欠かせない存在となる。
だから、トランプが異常な執着心でグリーンランドに要求しているのはこうした背景だろうと思う。

トランプを警戒する日本のある評論家(東大教授)は「トランプは沖縄を習近平に差し出す」懸念があると指摘しているが、それはあり得ないと思う。
トランプがモンロー主義を貫徹するには、東と西半球の「4つの境界」を防衛することが最大の課題になるからだ。
西半球の「4つの境界」の防衛強化が米国の長期戦略に合致する。


中国の世界覇権の目標2049年まであと23年しかない。
日本列島は中国の東出口として米国の対中国政策の要であり、高市政権の役割は大きい。
トランプ、米国の長期戦略、習近平、中国100年計画、台湾やフィリピンとともに「大国の思惑の中軸」に位置することになる。
という意味では、今回の選挙結果は大きな影響を持つと思う。



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トランプの国家主義(4)世界的な軍拡の影響

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トラップがNATOへの関与を減らすとともに、軍事支出を対GDPで5%にするように指示した。
欧州諸国はGDPの5%、日本はGDPの2%・・・などなど。
世界全体で軍事支出がどうなっていのだろう?

G20国の合計GDPは86.9兆ドルだが、2024年で軍事費の合計は2兆7180億ドルと言われ、GDPの3%程度が軍事費で使われている。
2024年の軍事費トップは米国9160億ドル、中国2960億ドル、ロシア1090億ドル、インド836億ドル、サウジアラビア758億ドル、英国748億ドル・・・と続く。
トランプは今年2026年の軍事予算を1.5兆ドルにすると言っているが、今後、この世界の軍事費が5%まで上昇していくと、4兆ドルを軽く超えていくことになる。


通常の平和な世界では、軍事費を使い生産した軍備は常に在庫でしかない。
戦争がない限り使われることがない在庫、しかもその在庫は毎年お金をかけてメンテナンスされ時間が経てば更新されていく。
古くなった軍備は武器商人によって国際市場で売却され、新しい性能の高い軍備に更新される。
古くなったマシンガンやミサイルなどは市場を通じて途上国に買われていく。
これらの武器がアフリカ等の地域紛争で使われるという構図だ。
先進国の軍拡が途上国の紛争を増やすというのは悲しい因果関係だろう。

在庫としての軍備は維持メンテナンスにもコストがかかり、さらに軍備を増えればそれを扱う人員も増えていき一段とコストが増え、多くの国で軍事費の増大は経済を圧迫していく要因になるだろう。


ベルリンの壁が崩壊し、世界で軍事費を削減する「平和の配当」が世界の株価が上昇したたことがあったが、現在はその反対「逆・平和の配当」という状態になっている。
このまま、主要国で軍事費が増え続けると、あくまで長期的にだが、世界経済の圧迫要因になっていく可能性もありそうだ。

軍事費であれ、何であれ、政府がお金を使っている間は経済にプラスになるのだが、それがGDPの5%などの限界点に達すると維持費と買い替え費用で経済を引っ張る要因になる。
これは数年後には顕著になるのではないかと危惧している。



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トランプの国家主義(3)トランプ流地球の分け方

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トランプは自らのモンロー主義を「ドンロー・ドクトリン」と呼んだ。
上の地図は地球を北極星の方向からみたものだが、この地図を見るとトランプの意図がよくわかる。

北極点を中心にして右半分が「東半球」、左半分が「西半球」。
トランプの「ドンロー・ドクトリン」では米国はこの「西半球」を自分の領域だとした。
右半分の「東半球」には欧州、アジア、中東が含まれ、中国とロシアとEUで領域を分けろということなのだろう。

グリーンランドは普通の世界地図では分かりにくいが、この北極点中心の地図では「東半球」と「西半球」の中継地点にある。
今後の温暖化で北極圏の氷が融け船舶の通行が自由になってくるとしたら、ロシアの存在が非常に大きくなる、そして、中国もロシアと組んで北極圏の資源開発に乗り出してくる。
彼らをくい止めるためには「グリーンランドがデンマークでは力不足」なのだろう。

当事者であるデンマークとの議論がどう進むかは分からないが、最終的にグリーンランドを「米国海軍の重要地点とする」ところまでは合意するだろう。
そこが抜けると、トランプ流地政学は成り立たないからだ。


ここ10年ぐらい、中国が一帯一路を拡大解釈してアフリカと中南米に巨額資金を投じて港湾などのインフラを作り影響力を拡大している。
中南米における中国の影響力を徹底的に排除する、そのためには反米の過激な国をひっくり返す、太平洋と大西洋をつなぐパナマ運河を米国が支配する・・・同じ一本の線上にある。
これを「逆アヘン戦争」の名の下に行動する、これが現在の米軍だ。

おそらく問題は過度にリベラルなカナダなのだろう。
カナダもこの地図では重要なポジションを占める。
カナダがリベラルな欧州と米国の間に挟まってくるが、カナダの政治体制が選挙によって変わるまで待つか、あるいは、突き放すだけではなく欧州とカナダに対して何らかの戦略的方向を出してくるのか、よく分からない。

いずれにしても「北極から見た地図」がトランプの本音を示しているような気がする。




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トランプの国家主義(2)逆・アヘン戦争

USA














トランプがベネズエラを軍事攻撃し、マデュロ大統領と夫人を拉致し米国内で裁判にかけるという。
かつて1840年代、英国がインドで栽培したアヘン(ケシ)を中国に持ち込み大量に販売した。
当時の清朝廷は国内の蔓延を防ぐため禁輸にしたが、これを問題として英国は中国に軍事侵攻、香港を99年間奪い取った。
今回のトランプの行動は、1840年代の英国とは全く反対の、逆・アヘン戦争ではないかと思う。


トランプは度々麻薬について過激な行動を取ってきた。
特に問題としたのが合成麻薬のフェンタニルで、原料の生産地中国を非難し、中国の原料からフェンタニルを精製するメキシコを高関税をかけた。
しかし、ベネズエラはフェンタニルには関与していない。
にもかかわらず、ベネズエラ船を爆撃し100人以上の死者を出し、麻薬を理由に首都を攻撃し80人の命を奪った。

この逆・アヘン戦争は拡大する可能性がある。
麻薬の密輸を問題にするならば、中南米諸国(コロンビアなど)も攻撃対象だし、メキシコに対しても中国に対してもフェンタニルを口実に軍事行動が取れることになる。
だとしたら、今後数年間にわたって国際社会は不安定になる。


おそらくトランプの米国はもう国際法を全く気にしていないし米国議会も無視する。
彼の頭の中では、国家資本主義的な中国やロシアに対抗する唯一の方法だった、民主的なアプローチは効果がないと考えているのだろう。
アメリカ自身が国家主義を指向し、軍事力で他国を圧倒する。
カリブ海の米国は、まるで南シナ海の中国みたいだ。

国際法は明文化されていない、その持つイメージも西欧のような民主的国家とロシアや中国の権威主義国家では大きく違う気がする。
中国は台湾に攻撃しても国際法に準拠していると主張するだろうが、アメリカがベネズエラを攻撃すると国際法違反と主張し、色々な意味で使い分けている。

トランプが米国を民主主義から国家主義に変えてきたが、それは現代のグローバル社会では国家主義でないと中国やロシアに勝てないとトランプが考えたということだろう。
世界は軍事力によるパワーポリティクスの時代に入ったのかもしれない。




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トランプの国家主義(1)軍事力パワーポリティクス

スクリーンショット 2025-12-30 14.11.54












トランプが米大統領に就任して合計5年が経つ。
その間、トランプのやった事は、①リベラル派の徹底的な排除、②国家資本主義への転換、③米国第一の安全保障に集約されるのではないかと思う。

気候変動をウソと言いCO2削減を無視、国連や国際機関を軽視し拠出金も滞納、不法移民の国外追放を強行、ある意味、人権も無視した。
国家資本主義アプローチは米製造業を復活させるために同盟国に巨額投資を求め関税で貿易赤字を管理する。
米国第一の安全保障では、モンロー主義的なアプローチでNATOへの関与を削減し、国家中心主義の中国やロシアとの関係を一定維持する。


評論家は「新自由主義から国家資本主義へ」と転換したと言う。
新自由主義的グローバリズムを否定し、米国が中心とする外交関係を作り直し、相互関税を武器にしてサプライチェーンを再構成、多くの分野でトランプ政権が全面に出る。

だけど、このトランプの中心には安全保障=軍事力があるような気がする。
ミサイル、戦闘機・爆撃機・軍艦・空母・潜水艦を作る製造能力の増強、鉄鋼や基礎素材・半導体や情報機器のサプライチェーンの国内への回帰、軍事力と軍備の再生産システムを自国を中心に作り上げようをしているように見える。


米国製造業は、1980年代に日本の製造業に負け、中国が国際舞台に戻った2000年代以降中国の圧倒的な製造業に負けた。
それに輪をかけたのが、グローバル化、世界規模の最適な生産システムだったといえる。
その結果、米国製造業は弱体化、かつて世界を牛耳ってきた鉄鋼や化学などの基礎素材、自動車や家電などの製造業も小さくなった。

一方、グローバル化によって米国はITサービスをはじめ強い分野に特化し大成功を収めている。
しかしこと軍事力と軍備の再生産体制は素材や部品を海外企業を頼らざるを得なくなり、安全保障上のリスクが高まってしまった。
これを根本からひっくり返そうとしたのがトランプ政権だと思う。

米軍がベネズエラの軍事侵攻した。
ここにトランプの考え方が集約しているような気がする。
ソフトパワーから、軍事力を中心とするハードパワー・ポリティックスへと変わる。



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米国株の「バリュエーションの壁」(3)NYダウは突破できる?

NYダウ益回りと米10年金利
スクリーンショット 2025-09-20 15.07.03

















NASDAQ100は「バリュエーションの壁」をすでに突破している。
主要大型株500銘柄で構成されるS&P500は「バリュエーションの壁」を突破してはいないが、EPSを伸ばし、9月FOMC前で長期金利が低下したので上値余地が広がっている。
しかし、伝統的優良企業中心のNYダウは、AI関連株や巨大ITサービス株のような長期成長力に欠けているので「バリュエーションの壁」を抜けていない。

上のグラフは、NYダウの益回りと米10年債利回りを比較したものだ。
新型コロナ禍から経済が正常化する中で、FRBが急激に金利を引き上げ、しかも株式が上昇(=益回りは低下)したので、益回りと利回りが急接近してきた。
NYダウは伝統的な米国を代表する優良株が中心なので、成長性が高いNASDAQのように「バリュエーションの壁」を突破するのは簡単なではない。


9月FOMCの25bp利下げはNYダウのバリュエーションにもポジティブだ。
しかし、1年先EPSの伸び率を見ていると、9月中旬にジャンプアップしたNASDAQとS&P500に比べて伸びていない(下のグラフ参照)。

NYダウと予想EPS
スクリーンショット 2025-09-21 7.00.27

















9月19日の1年先予想EPSは2092ドルで、4月に相互関税が実施された時の予想EPS2116ドルから若干ながら減少している。
9月のEPSが大きく上方修正されたNASDAQやS&P500に比べて大きく見劣りする。
成長性の高いGAFAMなどに比べて相互関税によるコスト高が効いているのかもしれない。
利下げはポジティブなもののEPSの伸びが弱い、これをNYダウがどう織り込むかだろう。


NYダウの益回りは4.62%とが米10年債利回り4.13%ともう少し余裕がある。
益回り4.62%はPERで22.1倍で割高圏にあるが、現在PER24倍程度が「バリュエーションの天井」と見ている。
NYダウがPER24倍以上に上昇するには、「一段の長期金利の低下が必要条件」だろう。



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為替と金利差の「ワニの口」が閉じられるか?

日米2年金利差長期202509
















金利差は、物語ではなく、リアルが投資採算だ。
為替をトレードする人には金利差は常に大きなリターンを生む重要な要素となる。
日米2年金利差はピークの2023年には5%あったので、2年米債を買い円債を売ると年5%というリターンが得られた。
しかし、現在の2年金利差は2.6%、米債買い/円債売りのリターンは半減してしまった。
それでも、米債買い/円債売りが2.6%とわずかにしてもリターンを上げるポジションであることは変わらない。

為替の変動が1年間全くないとしたら、投機筋は米債買い/円債売りを選ぶはずだ。
しかし、為替は常に大きく変動する可能性を秘めている。
金利差が縮小してきている現在、相場の変動性をどう見るかが為替の決定要因になる。


過去の金利差と為替レートの動きを見ると、金利差が縮小している局面、2008〜09年は120円/ドルから80円/ドルへと大きく円高に、2019〜20年は115円/ドルから10円程度の小幅な円高になった。
いずれにしても、金利差が縮小する時、変動期待が生じると大きく円高に振れ、そうでないと小幅ながらも円高になる。

今回、9月のFOMCで利下げが確実視され、10月の決定会合で日銀の利上げも視野に入っている。
そうなると、金利差が縮小する、問題は為替の変動期待がどの程度生じるか?

投機筋は円ロングへと賭けたが、ここ1ヶ月の140円/ドル台後半の膠着相場に耐えきれず、徐々に円ロングを修正してきた。
円ロングが半減している時であり、再び円高を仕掛ける可能性もある。
中銀ウィークとなる今週は為替から目を離せない。


日米2年金利差202509



















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米国株の「バリュエーションの壁」(2)S&P500

USA














株式益回りは会社の買収をイメージするとわかりやすい。
会社を丸ごと買収するには時価総額を全部買う、そして、1年後に税引き後の純利益を受け取ることができる、これが益回り(EPS➗株価)。
長期債利回りは投資元本に対する利息であり、安全資産である債券に投資した場合の利回り。
というわけで、リスクのある益回りは、安全資産の債券利回りよりも高いのが常識だ。

このところ、大型米国株のS&P500益回りが10年債利回りに接近し、株式の割高感が強まってきた。
成長性の高いNASDAQはすでにこの「バリュエーションの壁」を突破しているが、S&P500のような大型株500銘柄の指数でNASDAQのような成長性は難しく簡単ではない。

下のグラフはS&P500益回りと10年債利回りを比べたものだ。
2本のグラフが2024年以降接近しているのがわかる。
S&P500は「バリュエーションの壁」にあたりながら、EPSの成長を織り込み上昇してきた。

SP500益回り202509
















ここ数ヶ月の動きを見てもS&P500の益回りが長期金利に抑えられてきたのがわかる。
しかし、9月利下げの確率が上がり長期金利が4%近辺まで低下し、しかも、9月中旬にEPSが急に増加して、現在は益利回り>債券利回りの状態と安定してきた。

下のグラフがS&P500のEPS(青ライン)と株価指数(赤ライン)の動きだが、株価が先行して上昇してきたので割高感が強まっていたがEPSが突然増加し割高感を緩和させた。
このEPSの伸びの理由はよくわからない、オラクルの決算なのか、それとも半導体株の決算なのか。
それでも、益回りと債券利回りが接近した状況で、長期金利の低下とEPSの増加でS&P500の上値余地を広げた。

今後のS&P500のパフォーマンスもEPSと長期金利が決める。
もしそうでなければ「バリュエーションの壁」を抜けられない。

SP500EPS202509



















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米国株の「バリュエーションの壁」(1)NASDAQの突破

NASDAQ益回り202509
















株価指数の益回りは予想EPSを指数値で割り算したもので、株価指数が今後1年間に何%の純利益を上げるかを示す。
株式投資家が得られるのが益回り%であり、その中から配当に回される分が配当利回り%になる。

一方、10年債利回りはその債券投資家が1年間にもらう利息%だ。
高金利時は、株式に対しても高いリターンを求められ、益回りを引き上げるために株価が下落する。
逆に低金利時は、株式に対しても低い益回りで十分であり、株価が上昇する余地が生まれる。

こうして株式益回り=投資に対する利益と、債券利回り=元本に対する利息はゆるく連動する。
さらに債券投資家が決められた利息を得るのに対して株式投資家が受け取る益回りは不確かで、株式のリスクは債券よりも大きくなる。
そうなると、リスクが高い分高い益回りが要求されることになる。


この投資の常識が「バリュエーションの壁」

だが、すでにNASDAQ指数はこの「バリューションの壁」を突破している。
上のグラフにある通り、NASDAQ100の益回りは3.42%、10年債利回りは4.16%で、益回りが0.74%債券利回りを下回っている。

これは25年の利益ではNASDAQを買えないが、26年の利益が6%程度伸びれば債券利回りと並び、それ以上増益すれば益回り>利回りの状態になる。
投資家は26年の10%増益をイメージして債券より低い益回りのNASDAQを買っている。
この業績成長への確信がNASDAQの益回りを債券利回り以下へと低下させている。


でも本当にこの低い益回りで買えるほど、26年の業績成長に期待できるかは「AIの夢」しだいだ。
NASDAQの中心はAI技術の中核にいるエヌビディアやブロードコム、さらにデータセンター投資で突出するGAFAM各社で長期の成長期待は大きいのだろう。
NASDAQが2年先利益まで織り込むということは、2年先の利益変動で株価が大きく振れる。
足元の利益予想から2年後の成長が予想するので、足元のわずかな変動が2年後の利益を大きく振幅させる可能性がある。
これを映して株価の振幅も大きくなるだろう。

この成長企業のNASDAQに対してS&P500は代表的な大企業500社で構成されているので、米国景気全般、世界景気の動向に大きく影響される。
トランプ関税が実行される景気状況が大きな変動をもたらす、という意味で「バリュエーションの壁」を突破していくのは簡単ではない。

次回はS&P500を中心にして「バリュエーションの壁」を考えてみたい。



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9月FOMC、ドル円の「ワニの口」が再び閉じられるか?

日米2年金利差
日米2年金利差202508
















次の大きなポイントとなるのが、9月FOMCなのは間違いない。

2年債利回りは政策金利に大きく影響されるが、10年債となると将来の景況感が影響してくるので政策金利の変更がすべってではない。
9月初に発表される8月の雇用統計が大きなチェックポイント、その後の米消費者物価やPCE物価統計なのが次のチェックポイントだ。

米財務長官のベッセント氏が、米金利は150bpの引き下げ余地があると発言した。
トランプ政権のパウエル圧力は増すばかりだが、一方、中銀の独立も重要な課題でどうなるかは分からない。


昨年7月に「ワニの口が閉じるか?」というブログが書いた。
「ワニの口」とは、日米金利差とドル円相場がワニの口がガバーっと開くように反対方向に動いたグラフの形だった。
上のグラフでドル円のピーク160円/ドルを付けた時の形がワニの口のように見える。
それから1年経って再び、ワニの口が開いている、日米2年金利差が2.9%と3%水準を割り込む一方、ドル円相場は150円/への円安方向に動いたからだ。

この日米金利差とドル円のグラフの「ワニの口」は円高が一気に進む前のサインになる。
9月FOMC(9/17)で利下げがあるとすれば、2年債利回りは一段と低下する、その場合、日米金利差は2%台半ばまで低下するかもしれない。

現在円を買うと金利差を支払うことになるわけだが、2年金利差が2%ならば、ドル円が3円程度円高に振れれば金利差が相殺され、それ以上円高になれば円買いが収益を上げる。
投機筋が円高/ドル安を再びアタックする状況が出来上がる。
データによって振れる市場だが、より長い目で見れば、「ワニの口」が閉じる可能性、ドル円のXデーになる可能性がある。


IMM円投機ポジション
IMM円投機ポジション202508
















上のグラフはウォッチしているIMM円投機ポジションだが、円ロングが大きく解消されてきた。
一時は18万枚の円ロングが溜まりに溜まったが、その後はドル円の安定期で金利の高いドルを売り/金利の低い円を買う(金利差を支払う)のが厳しくなる。
それで徐々に解消が進んできたわけだが、円ロングが7万枚とピークの半分以下まで解消さた。
投機筋の円ロングが解消されて、ドル円の需給がかなり改善されてきたといえる。

9月のFOMCから投機筋が再び仕掛けてくる可能性も見ておきたい。



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米長期金利が決める(2) ユーロ圏の景況感

政策金利
ECBバランスシートと金利202507
















ユーロ圏では、米FRBのペース以上のスピードでECBが金利の正常化を進めてきた。
ECBの政策金利は現在2%レベルまで利下げが進み、ユーロ圏のインフレ目標を比べて整合的な水準まで引き下げられ、金利調整は一巡したかもしれない。
ECBのバランスシートも一時の8兆ユーロを越える量的緩和状態から急速に正常化が進み、現在6兆ユーロと大きく減少してきた。
ユーロ圏では米国よりスピーディに金融の正常化を進んだ結果といえる。


しかし、長期債市場を見ると、なんかちょっと違うという感じがする。
下のグラフはドイツの国債利回り、2年債と10年債利回り、その長短金利差を示している。

ドイツ国債金利
ドイツ国債利回り202507
















上の長短金利差のグラフを見ると、ECBはインフレの鎮静化を見て政策金利を引き下げ、そのトレンドにそってドイツの2年国債金利(青ライン)が低下してきている。
これは政策に整合的で理解しやすい。

しかし長期債、10年債利回り(赤ライン)はこうした利下げ政策に反して上昇している。
独10年債利回りは直近で2.8%と徐々に上昇し、2年―10年金利差(緑ライン)は徐々に広がり1%近い水準にまで拡大してきている。
基本的には長期債市場はグローバルの連動している、これが欧州では逆効果になっている。


米債券市場も長短金利差が拡大してきたが、財政悪化懸念で将来の長期債発行が増加し債券需給を悪化させることを意識している。
その状況下、今年後半の欧州経済は、トランプ関税による輸出採算の低下、中国経済の続く停滞感、防衛費の増加という財政要因による長期金利の上昇という難しい局面に入っていく。

米国の雇用状況の急変、それ以上に欧州経済は厳しい局面がありそうな気がする。



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米長期金利が決める(1)トランプの世界

米長短金利差
米長短金利差10年2年202508
















大幅に下方修正された米雇用統計、これが米景気後退につながるのか、それとも一時的はディップにすぎないのか、世界の株式市場を決めてしまうかもしれない。
景気―業績ー金利は連動しているので、今回は金利、債券市場から眺めてみたいと思う。

雇用統計が公表された8月1日、米債券市場では2年債利回りが20bp低下し3.88%になったものの、10年債利回りは13bpの低下、30年債利回りは4bpの低下に留まった。
その結果、10年‐2年の長短金利差は0.37%と、わずかに拡大した。

長期金利が景況感や債券需給に影響されるのに比べて、短期金利は中銀の政策によって決まる。
今回の雇用統計から9月のFRB利下げを織り込む形で、6カ月~2年の金利が20bp、およそ1回の利下げを織り込んだ。


長短金利差が縮小すると債券市場は一般的に景気鈍化を見ていることになるが、今回とちょっと違う感じがする。
通常の市場ならば景気鈍化で長期金利が低下し長短金利差が縮小し、場合によっては長期金利が短期金利を下回る「長短金利の逆イールド」が発生する。
短期金利が中銀会合で引き下げられるのに対し、長期金利は市場で決まるので先行きの景況感で急低下する可能性があるからだ。

今回は違うかもしれない。
というのはトランプ減税による長期的な財政懸念、トランプ関税による景況感の不透明などが市場に残っているため、投資家はノー天気に長期債をバカ買いすることに躊躇する。

そうなると、長期債利回りが相対的に高止まりしやすい。
新型コロナ禍後は長短金利が逆転し長期の事業資金が借りやすい状態が続き、米企業の業績は一気に回復してきた。
しかし、トランプ政権下で長期金利が高止まりするとしたら、FRBパウエル氏がトランプに罵倒されながら利下げをしても長期金利が思ったほど下がらないということもありえるだろう。

こうした米長期金利の高止まりは、①欧州などの長期金利を相対的に高くし、②株式のバリュエーションを割高にしてしまう。
投資家は世界の金利に目を向けるべきタイミングに来ている。



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日経平均4万円台の投資採算は?

日経平均予想PER
日経平均PER202507
















トランプ相互関税が15%と予想外の水準に決まり、日経平均が爆謄した。
それだけ8/1のトランプ相互関税デーに警戒する投資家が多かったということだろう。
いわば、需給で株価水準が大きく持ち上げられたわけだが、ここからどうなるか?

急激な上昇に驚き、思考停止に陥った投資家も多いと思う。
今までの上昇でタップリと買い持ちしている投資家は余裕でポジションをホールドするだろう。
でも、ここから新規投資を考えている投資家はどうするだろう?


新規投資家は「日経平均4万円で買ってどんな投資採算を期待するのだろうか?」

上のグラフは日経平均のPER推移だが、現在、16.47倍で、5/16の17.2倍以来の高水準だ。
グラフ上で点線水準(17倍)は17倍で、新型コロナ禍で混乱した2020年~2021年を除いて、過去のPER上限水準を示している。

というわけでポイントは二つある、①この4万円水準からPERがさらに上昇するのか?②トランプ関税を乗り越えてEPSが増加していくのか?


最初のポイントは「16倍の日経平均を買って何倍で売るのか?」という視点。

日銀がムチャクチャな金融緩和をした2015年でもPERは17倍が限界だった。
世界的に過剰流動性が発生している現在、当時並みにPERが17倍に上昇すると、EPS2517円×17倍で42800円程度が上限になる。
それ以上を望むのはバブルを期待するのを同じだろう。


次のポイントは「EPSの増加で、日経平均がどこまで上昇可能なのか?」という視点。

トランプ関税を当初25%で織り込んでいたとすると、当初の予想EPSから数%は上方修正されるかもしれない。
EPSが1%上昇修正されると、25円×PER17倍で425円日経平均が上昇する。
しかし、日経平均の予想EPSがどこまで25%関税を織り込んで作られたかは不明。

年初からの日経平均予想EPS推移で確認してみよう。
昨年末の予想EPSは2471円、現在の予想EPSは2517円、予想EPSは4%増加した。
予想EPSは会社予想がベースだが、5月決算発表時には関税の不透明感で予想を出さなかった会社も含めた数字あった。
この点では予想EPSが25%関税を織り込んだ数字とは言えない。

結論として言えるのは「日経平均4万円で新規投資するのは、EPS増加を期待できる場合」だ。
その見通しは、8月上旬までの4-6月期の決算発表で示される。
日経平均EPSが上方修正されればいいい、でもされなかったら4万円台での新規投資は難しい。
大きな分岐点が近付いている。



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参院選⇒政治カオス⇒その先にあるもの

参院選2507























選挙はミズモノと言われるが、精緻な市場調査ができる現在,多少の差があっても予想に近い結果が出てくる。
投資家としては、自公連立の衆参両院での少数政権を考えておくべきだろう。

自民党がどれだけの敗戦になるかは分からないが、選挙予想の最低線とすれば自民24議席、公明7議席合計31議席、自公過半数には19議席も足りないことになる。
予想の中間値とすると、自民33議席、公明10議席、合計43議席で過半数には7議席足りない。

過半数に19議席たりない、あるいは過半数に7議席足りない、これは大きな違いになる。
石破政権はすでに衆議院で過半数を失っているが、参議院でも若干の過半数割れなら議案ごとに部分的な連合を組んで切り抜ける、でも過半数を大きく割り込んだら部分連合も無理だ。


最大の問題は、野党の主張する政策「消費税ゼロ」「社会保険料の大幅引き下げ」「手取りの増加」などを自民党が簡単には飲めないことだ。
自民党幹事長の森山氏は「消費税を死守する」と発言し、国民生活を守ることより税金を守ることを優先させている。
これでは自民党の古参議員層と野党とは完全に「ミズとアブラ」状態だ。

日本の政治は多数を持つ連立内閣も作れず、野党との政策妥協もできす、政策が何も議会を通らない状態になる。
この「政治カオス」が、当面の間、日本株には大きなマイナスとなる。


しかし、この「政治カオス」は大きな分岐点になるかもしれない。
英米型の二大政党制を目指して「小選挙区制」を導入した日本の政治システムの終わり、そして、本格的な北欧型の「連立内閣制」へ動くキッカケになるのではないかと思っている。

日本の選挙制度は「小選挙区」と「比例代表」の組み合わせだ。
「小選挙区」が二大政党制を進め、「比例代表」が多党制=連立制を進めるが、両方の要素を持った日本の選挙制度はあいまいな制度だ。
どちらかというと英米型を指向してきたように思うが、最近の世論は多様化してきているのでとても二大政党制に集約していくようには見えない。
国民の政治参加が進むにつれ、政治意識が多様化し、それが複数政党が台頭させている。

としたら、年度内に石破さんが解散総選挙に打って出ても、基本的に少数政党が乱立する状況は変わらないだろう。
なので実行力のある内閣を作るには、各政党が政策をスリわせて連立内閣で過半数を確保できるかがカギになる。
ヨーロッパ型の連立政権だが、これが日本経済や株式市場の大きな分岐点になる可能性がある。
それで古い体質の自民党が大きく変わる契機になるとしたら、日本も日本株も変わる可能性が出てくる!!!




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トランプ相互関税、米国優良株は試練の時期

NYダウ益回りと長期金利202507
















トランプの相互関税が8月から始まる、交渉余地はあるものの、大方の予想通り導入されるだろう。
日本にとっては厳しい関税となるが、関税に対抗できる各企業の競争力が試されることになる。
同様に、NYダウに採用されている伝統的優良企業も部品などの海外輸入が多く、米国企業とはいえ採算が脅かされる。

下の一覧表にNYダウの1年先予想EPSを示した。
予想EPSのピークは3月2181ドルだが、7月初には2064ドルまで5.3%低下した。
NASDAQやS&P500のEPSの低下は3%に留まっているので、NYダウに採用される伝統的優良株の方がトランプ関税にマイナス要素が大きいと予想されているわけだ。

各株価指数の1年先予想EPSの推移と3カ月変化率
NYダウ Q/Q S&P500 Q/Q NASDAQ Q/Q R2000 Q/Q
2025年7月 2064.45 1.7% 263.42 3.7% 770.83 3.7% 80.72 -2.6%
2025年6月 2104.47 -3.5% 266.36 -2.4% 775.82 -3.3% 81.98 -8.3%
2025年5月 2116.67 -1.9% 269.51 0.3% 792.38 1.7% 83.63 -9.2%
2025年4月 2029.39 3.4% 253.96 -8.5% 743.17 -8.1% 82.85 -4.3%
2025年3月 2181.54 12.0% 272.82 1.0% 802.6 4.9% 89.38 13.7%
2025年2月 2156.93 9.3% 268.66 11.4% 778.95 15.2% 92.11 35.2%
2025年1月 1961.99 -2.8% 277.43 13.5% 808.73 20.3% 86.55 23.1%
2024年12月 1948.6 -3.9% 270.2 12.8% 764.85 19.4% 78.6 13.2%
2024年11月 1973.35 -1.9% 241.21 0.0% 676.11 2.4% 68.11 -5.9%
2024年10月 2017.76 -1.9% 244.52 -0.5% 672.4 -2.7% 70.31 -10.7%

一番上のチャートはNYダウの益回りと長期金利の動きを示したものだ。
米株の戻りが強く、NYダウのバリュエーションも切り上がり、益回りでは5月初の5.1%から低下し7月初現在4.64%と、長期金利4.49%に近づいてきた。
伝統的な優良企業のバリュエーションがここまで割高になったことはない、大型割安株を含んだ指標としては例外的な割高感になっている。

もちろん、米国株市場全体がバブル化すればNYダウ益回りが長期金利の水準を突破していく可能性もゼロではないが、バリュエーションの限界はあるだろう。


ポイントは二つある。

①トランプ相互関税が実施され実際の影響が予想EPSに織り込まれた時、EPSがどうなるか?

ITサービス系の企業はあまり関税の影響を受けないだろうが、伝統的企業は多かれ少なかれ海外依存度が高く影響を受ける。
四半期決算が本格化する7月後半からの予想EPS変化を注目したい。

②7月末のFOMC、8月のジャクソンホール会議、9月のFOMCで利下げの方向性が明確になるか?

今のところ、パウエル氏はトランプの恫喝に対して知らぬ顔をしているが、この夏に関税の影響が明確になってくれば利下げに踏み切る可能性も残っている。
NYダウの益回りが低下に対して長期金利が低下するかは重要な視点だろう。



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日経平均は赤沢さんに期待?

日経平均と予想EPS
日経平均EPS202505

















5月というと企業決算が次々と公表され、予想ベースが前年度から次年度に切り替わる時期だ。
普通なら、予想が足元から1年先に変更されるため、予想EPSが増加しPERも低下する。
でも、今年はトランプ政策により次年度に切り替わっても予想EPSが下がってしまった。
にもかかわらず、市場はトランプ政策とNY市場の動かされ、日経平均は3万7000円台へ上昇した。

これをどう考えたらいいのだろうか?
トランプが軟化し、自動車関税、日本に対する相互関税などを撤廃してくれるから「買い」と期待している人もいるだろう。


こんな時は単純に「株価とEPSとPER」関係を見た方が良い。

予想EPSがピークを付けた今年2月17日から直近の5月16日までの変化を見てみよう。
       日経平均   予想EPS   予想PER
2月17日 39174円  2557円  15.32倍
5月16日 37753円  2186円  17.27倍
変化率   -3.0%  -14.5%  +12.7%

2月からトランプ政策で急落と急騰を見せたが、この間、日経平均は結果として3%しか下落していない。
しかし、その基礎となる予想EPSは14.5%も低下した、この数字も関税がどうなるか決まっていないのでまだ大きく変化する余地がある。
そして、この株価を支えたのが予想PERの上昇、この間12.7%上昇となった。
このPERの上昇が日経平均を支えたのは間違いない。


それではこのPERの上昇をどう考えればいいのだろう?

PERは投資家の期待値で、PERの上昇は将来のEPSの増加期待が反映されている。
EPSの低下は「トランプ25%関税と円高傾向」で自動車セクターの悪化懸念が最大の理由だ。
とすれば、日米関税交渉で自動車関税が引き下げられ円高進行がストップする、そうすれば予想EPSが上方修正される、という期待が投資家にある。

3回目の会談を行う赤沢氏に日本の投資家の期待が集まっている。
それにしても投資家の楽観的な期待が株価に反映されている。
期待通りにトランプの譲歩が得られるのか? 相場の分岐点だろう。



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親子上場の問題(5)NTTは成長できる?

NTT2025










NTTグループの親子上場は解消に向かっている。
NTTドコモを完全子会社化し、そして今度はNTTデータを完全子会社にしようとしている。
しかし、筆者はこのグループ再編は方向違いじゃないかと感じている。

親子上場の解消方向には二つある。

一つは今回のNTTグループのように完全子会社化、親会社の内部に取り込む。
少数株主の持ち分によってグループ価値の棄損を解決することはプラスになる。

もう一つは日立グループのように御三家と呼ばれた子会社の外部売却で「集中と選択」をする。
これは長期的な企業価値を追求するグループの企業戦略で、内部に取り込むだけが親子上場の解消方法ではない。
旧財閥系グループのように子会社によって業態変貌を促進し、子会社が親会社を越えて成長していくパターンも見られた。

鉱山経営から始まり、古河機械金属、古河電工、富士電機、富士通、ファナックと業態変貌しながら発展してきた古河グループは典型的な事例だ。
「ケイレツ」という独自の企業グループを作り上げてきた日本企業は、親子上場を発展的に解消し、戦略的な子会社が独立した経営を行うことで企業成長を継続できた。

KDDIの母体の一つは「第二電電」で、京セラの創業者稲盛和夫氏が創業した会社だ。
通信事業を独占してきた旧電電公社に対して、「第二電電」は通信民営化の中心として設立され通信自由化の流れで急速に成長してきた。
でも、稲盛氏によって作られた京セラの子会社だったが、上場後は完全に独立し、KDD(旧国際電電)と合併して現在のKDDIになった。
いつまでも京セラの子会社では発展できなかっただろうし、完全独立は稲盛氏の考えだったのだろう。


こうした歴史を振り返ると、NTTグループが子会社を吸収合併してグループの内部化したことには疑問を感じてしまう。
NTT自体が政府が33%を保有する政府系の会社で、経営の自由度が制限されている。
こんな組織では移動体通信事業のNTTドコモとシステム・データセンター事業のNTTデータを分離独立させる方が自由に成長できるのではないかと思う。

NTTドコモは通信部門を東西地域会社とともに担うのだが、吸収合併されてから移動体通信では市場シェアを落としている。
スマホのシェアも2020年の37%から徐々に低下し、現在34%になった。
有線電話・通信の東西NTTとのシナジー効果もほとんど見られていない。

NTTデータにしても、官公庁や大手金融の大規模システムは圧倒的に強いが、しかもAIシステムやデータセンター事業をグローバルに展開する時必ずしも親会社NTTとのシナジー効果は明らかではない。
海外展開するばらば企業買収やM&Aが選択肢になるのだろうが、NTTデータがNTTの内部の部門にすぎないので自由にM&Aすることは難しくなる。


親子上場の解消方法としてNTTグループのように何でもかんでもグループ内部に取り込み、少数株主持ち分を買い取る方法だけではない。
日立グループのように「選択と集中」の経営をする方がいいのかもしれない。



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親子上場の問題(4)NTTって反対に向いていないの?

NTT2025










NTTがNTTデータの完全子会社化を発表した。
20年にNTTドコモを完全子会社化して上場廃止、今回のNTTデータの上場廃止で大きな親子上場を解消できる。
でも、筆者には強い違和感が残っている。


第一に、NTTはNTT法で「がんじがらめ」にされている会社だということ。

NTT法によって33.33%の株式の保有が政府に義務付けられている。
NTTの役員人事も政府に「お伺い」を立てて決まるので、いつも東大卒の元官僚みたいな人が取締役会を牛耳っている。

また、この政府持ち分比率を維持しなければならないので「株式交換での買収」も制限されている。
株式交換で企業買収すると買収先の株式がNTT株式になるので、NTTの発行株式が増えてしまい、政府の持ち分が減少してしまうからだ。


第二に日立のような「子会社整理、経営戦略の明確化」が見えないこと。

日立は企業戦略として親子上場の解消を達成したが、それは主要三子会社の売却だった。
日立グループ内の日立電線、日立建機、日立化成の「御三家」をすべてグループ外に売却。
日立は社会インフラ事業やシステム開発事業などへ選択と集中を実行、株価も長期で上昇した。

反対に、NTTは主要子会社のNTTドコモやNTTデータを完全子会社化しグループ内に閉じ込めた。
NTTは経営の自由度が少ない会社なのに通信事業や大規模システム・データセンター事業を内部に閉じ込めてしまった。
これが問題で、子会社が自由に経営できるかが不透明なことだ。


第三にこれらの完全子会社化では「コングロマリット・ディスカウント」を解消できないこと。

株式交換ができないNTTは2兆円以上を使ってNTTデータを完全子会社化する。
これでNTTの時価総額が増えるのだろうか?

NTTドコモを完全子会社化した時、ドコモの時価総額は12.5兆円だった。
NTTデータの時価総額も5.6兆円あり、これをグループ内に吸収するNTTの時価総額は13.9兆円に過ぎない。
ドコモの12.5兆円、データの5.6兆円に対してNTTは約14兆円、これじゃ足し算が合わない。
典型的な「コングロマリット・ディスカウント」に陥る可能性を否定できない。


どう考えても「NTTは反対方向に行ってしまった」としか思えない。
本来なら、ドコモもデータもNTTから切り離し、自由に経営できる環境を与えるべきだったと思う。



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グローバル化の曲がり角(3)「頭脳」と「手足」

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ベルリンの壁が破壊された1990年代以降、一気にグローバル化が進んできた。
「レクサスとオリーブの木」で著者フリードマン氏が、「黄金の拘束服」で伝統的民族的な価値観を持つ国家を縛り付ける、これによってグローバル市場に参加して大儲けすることができると語る。
この「黄金の拘束服」がグローバルスタンダードだ。

しかし、1990年代から2020年代まで続いたグローバル化が、トランプ政策によって曲がり角を迎えているような気がする。
でもちょっと不思議な感じがする。


グローバル化で一番儲けてきたのは米企業でしょ、なんでトランプがグローバル化を否定するの?

確かにアップルやマイクロソフトなどハイテク企業はファブレスで生産を海外に委託し安い労働力をフルに使い、アマゾンなどのEコマース、ウォルマートやファストリなどの消費企業もグローバルサプライチェーンで世界最適生産ー最適販売を実現してきた。

しかし、その結果起こったのは欧米大企業の生産委託が集中した中国、この国が世界最大の生産力を持ってしまったという米国には不都合な事実だった。
委託生産することで中国への技術移転が加速し、中国は単なる機械や製造装置だけでなく半導体やコンピュータ・制御機器などのハイテク産業も急速に成長させてしまった。


トランプ関税は何を変えるのだろう?

グローバル化で一番儲かったのは米国のグローバル企業だろうが、世界最大の生産基地となった中国もグローバル化の勝ち組だった、ここが問題だったのだろう。
トランプ関税によって勝ち組の米巨大IT企業もサプライチェーンの組み換えが要請されているわけだが、彼らはいわば「頭脳」だけを持つファブレス企業(工場を持たない)で、その手足となる生産企業が中国企業群だ。

次の時代でも「頭脳」の企業は新しい価値を創造する、これは変わらない。
米巨大IT企業すべてが次の時代のリーダーとなるのかは分からないが、「頭脳」企業は「頭脳」企業であり続けると思う。

一方、生産委託を担当する「手足」企業は簡単に交替してしまう、トランプ関税はこれを目指してるのだろうと思う。
だからこそ、中国は2025年を最終年とする「製造2025」、2049年に向けた建国「100年計画」を着々と実行してきた。
一部の分野では中国企業が欧米企業並みの台頭、手足企業が「頭脳」企業に変身しようとしている。
しかし、BYDの躍進にしても中国政府の巨額補助金によるところが大きく、補助金抜きでどこまで成長できるかはこれからの問題だ。
BYDは補助金があるうちに世界シェアを高める戦略だろう。


「頭脳」となる巨大IT企業は、サプライチェーンを作り直し復活する。
また、トランプ関税が重くのしかかる生産・流通段階でも多くの革命的な変化が出てくる。
それでも、モノの流れ、資金の流れは米国中心のネットワークと中国中心のネットワークに分断され、両ネットワークはお互いに対立したままなのだろうと思う。
その構造を決めようとしているのがトランプ政権なのだろう。




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「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
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