株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版の「株式需給の達人(おもしろ相場格言編)」を出版しました。
既刊の「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」「チャートの達人」「個人投資家の最強運用」「株式需給の達人(基礎編)」「株式需給の達人(投資家編)」とともに一読をおすすめします。

ソフトバンクの話

日本電産、構造改革費用って何?

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日本電産は3Q決算で従来予想利益を1000億円下方修正した。
その永守氏は会見で「前社長の負の遺産を今期処理し、構造改革費を計上した」と語った。
構造改革費用って何?

日産がルノー傘下に入り、カルロスゴーン氏が日産社長になった時、「構造改革費」を2000億円程度計上し大赤字の決算を出した。
この構造改革費とは翌期の費用(工場閉鎖や人員削減)を前倒しで計上するもので、費用が大きく減少した翌期に日産はV字回復を果たした。
翌期のV字回復は会計上の費用操作によるもので、ある意味、当然の結果だ。

日本電産も構造改革費で翌期の費用を前倒しで計上したとしたら、来期のV字回復は約束されている。
だったら、株は「買い」だ。
でも、ちょっと疑わしいところもある。

永守さんの発言を吟味しよう。
構造改革費用はおよそ500億円。製品の世代交代による収益構造の改善や、固定費の大幅低減だ
創業から50年を迎え、垢がたまってきた。外部から招いた前の経営陣(関 潤氏)が残していった負の遺産という大きな垢もある。このごみを2022年度中に全てきれいにしたい

1000億円の利益下方修正のうち、構造改革費は半分の500億円で、これが来期の利益のプラスされるのかもしれない。
でも、ゴミ呼ばわりし、前社長関氏のせいにするのはどうだろう?
指名したのは永守氏自身で、自分の責任だと言わないところに不信感が残る。

第1世代品は「無理な価格」(永守氏)での受注があり値上げできないのであれば取引をやめる
第2世代品は既に「コスト競争力が高く評価されている」(日本電産 常務執行役員で車載事業本部副本部長の早舩一弥氏)。第2世代品の生産は2023年2月からスタートする

試作品のような位置づけの車載EVモーターは前社長の失敗だったと言わんばかりだ。
第二世代品をなぜ最初に出さなかったのだろうか?

2023年度も納入先の自動車メーカーの計画引き下げで当初の予想よりもeAxleの販売台数は減少する。その一方で、モーター単体やインバーターの受注を増やしていく。」

第二世代の車載モーターの見込みも慎重で、売上げの増加は限定的と見た方がいいようだ。
コスト低減で500億円ぐらいの増益は考えられるが、V字回復は難しいのかもしれない。

eAxle市場の成長期は、自動車メーカーによるeAxleの内製化や他のサプライヤーとのコスト競争なども見込まれる。これに対しては、大型設備投資による量的拡大、中国自動車メーカーの取引先5社への拡販、欧米自動車メーカーからの新規受注などによって手を打つ

EVの主要な市場は中国で競争が激しい、国内市場の出遅れで国内メーカーには厳しいと分かる。
これだけ読んでいると、EV市場は海外企業との競争が厳しい、その中で経営者の交代がある。
永守氏が三顧の礼を持って迎い入れた日産の関さんも「負の遺産」と呼ばれた。
次の社長になる人もイチャモンを付けられて「クビ」となるかもしれない。

日電産のリスクは二つだろう。
一つは永守氏の後継者選びの迷走、これが経営全般に悪影響をもたらしている。
二つは日本のEVのテイクオフの遅れ。
この二つの先行きが見えてきた時、日電産は大化け候補株になるだろう。



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ソフトバンクの「資本の枯渇リスク」

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ソフトバンクGの22年4-6月期決算が発表された。
4-6月期は投資先の株価下落、IPO市場の停滞、成長株投資への警戒感などがあり、かなり厳しい決算が事前に予想されていた。
英国の報道でもアリババ株をフォワードで大量売却したとか、多くの噂が市場には出回っていた。

結果は3兆円を越える純赤字だった。
でも、投資家の一部では「ソフトバンクのPLを見てもしょうがない。株価に一喜一憂してもしょうがないから」という意見も多い。
株価が上がればすべては解決するという考え方だ。
でも、ソフトバンクGの問題は、資本の減少と反対に有利子負債が急増していることだ。

ソフトバンクGの最大の問題はPLではなく、BS(貸借対照表)の方だ。
特にBSの資本項目・・・利益準備金、自社株買いなどを注視することが重要だ。

実際、4-6月期の資本項目を見てみよう。
            2022/3      2022/6
資本金          2387億円    2387億円
資本剰余金      2兆6345億円  2兆6448億円   
利益剰余金      4兆5157億円  1兆3182億円
自己株式        ―4064億円   -6986億円
その他包括利益累計額 2兆4961億円  4兆5622億円
資本合計      11兆7077億円 10兆1745億円

第一に利益剰余金が2021年に8兆円あったのが、前期末4.5兆円、その3か月後1.3兆円と急減していることだ。
過去の利益を貯めこんできた利益準備金が急減、枯渇するリスクに直面している。

第二にこうした資本の枯渇リスクがありながら、自社株買いを続け今期も7000億円近い資本を減らしている。
さらに今期も4000億円の自社株買いを行うとしている。

第三に海外投資の為替差益を包括利益として資本計上している。
SBGの海外投資は当然ながら円安によるプラスを受けるが、株価よりもボラティリティが高く、長期的な安定した資本ではない。

一方、有利子負債は、流動負債が7兆3288億円から6兆5878億円へと7410億円減少したが、非流動負債が12兆1285億円から14兆3862億円へと2兆2576億円も急増している。

この資本と有利子負債のバランスが良くない。
資本合計が10兆円、それに対して有利子負債合計が20兆円と2倍だ。

さらに・・・
ドル建ての負債が多いと思われドル金利の上昇も影響する。
早期に株式市場が復調し、IPOなどでのエグジットができる回復を期待できるのだろうか。
多くの主要な人材が抜けているので、孫さんの個人的な投資判断に頼るところも増えているだろう。

孫さんはこの厳しい状況を跳ね返すことができるのだろうか?





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ソフトバンクGは「沈みゆく船」なのか?

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ソフトバンクGは悲惨な状況に陥り、1兆7080億円の赤字を計上した。
当然ながら、高値10695円から現在5000円前後と半値以下に激落した。
巨額の自社株買いを実施しても支えきれず、株価の下落で株主は大損害を被った。

でも、その巨額赤字にもかかわらず、役員たちは巨額の報酬を受け取っている。
そもそも社員の給料ボーナスは営業費用として利益から差し引くことができるが、役員報酬は違う。
経営責任を負う役員や株主は、税金を払った後の最終利益から、株主は利益配当として、役員は役員報酬として配分される。
役員報酬は赤字だからといってゼロにはできないが、赤字の会社では役員賞与は出ないのが普通だ。

ニュース報道から・・・
SBGが同日公表した2022年3月期の有価証券報告書で、クラウレ氏の退任関連費用として約45億円の支払いが確定していることが明らかになった。さらに、中南米地域に投資するファンドの業績に連動する同氏に対する長期報酬の見積額として約80億円を計上した。

ソフトバンクGの基本報酬が1200万円、賞与が5000万円、通信子会社ソフトバンクの株式報酬が3800万円
その他の役員報酬は以下の通り
ソフトバンクGのCFOなどを務める後藤芳光氏が2億9300万円
ソフトバンク会長の宮内謙氏が5億3900万円
Zホールディングスの社長Co-CEOの川邊健太郎氏が3億4400万円
ロナルド・フィッシャー氏が1億2600万円、アームのサイモン・シガース氏が11億5100万円
フィッシャー氏とシガース氏は2021年6月23日の定時株主総会後にソフトバンクGの取締役を退任

このクラウレ氏は会社に高額報酬を要求してモメ、45億円と80億円をもらって辞めた。
その他日本人役員も3億円~5億円の高額報酬をもらっている。
外人役員となると10億以上とさらに高額にもかかわらず、クラウレ氏だけでなく、シガース氏もソフトバンクを去っていく。
特に外人役員は会社への貢献よりも、自分の報酬が目的なので、船が沈みそうになればあっという間に逃げていく。
彼らから見れば、ソフトバンクGは「沈みゆく船」なのだろう。

どうも理解できない。

ソフトバンクの問題点は4つある。
①ファンドの外部投資家、海外投資家がどんどん抜けていること。
②有利子負債が急増し、1年で18兆円から21兆円に増えたこと。
③借入金の多くがドル建てで、最近のドル高、ドル金利の上昇がネガティブになること。
④自社株買いの結果、自己資本は11兆円に減少し、しかも利益余剰金が8.8兆円から4.5兆円に大きく減少したこと。

とても余裕のある状況ではない。
それにもかかわらず、巨額の報酬を役員に払い続ける。
これって株価下落で大損を被っている株主への裏切りじゃないかと思う。



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ソフトバンク決算の危険度

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ソフトバンクの決算が発表された。
多くのマスコミは、純利益が赤字の1兆7080億円だったと書いている。
でも、ソフトバンクの危険性は他にある。

投資をメイン業務としている会社だなので、現在の小型成長株の暴落相場では当然ながら、赤字は不思議でもなんでもない。
この孫さんビジネスモデルはもっと大きな危険性を持っている。

第一に、巨大SWFは孫さんに共感してビジョンファンド1号に投資したが、すでに離反した。
外部投資家として計上されているが、中東の巨大ソブリンファンド(国家ファンド)が数兆円の規模で1号ファンドに投資した。
しかし、毎年兆円単位で資金を引き上げ、昨年度決算でも1.2兆円の引き上げが出ている。
2号ファンドには全く投資を実行していないので、ソフトバンクの自己資金が頼りだ。
誰も孫さんに期待していない。

第二に、有利子負債をムチャクチャ増やし、自転車操業に陥っている。
こうして資金繰りが厳しくなり、有利子負債が急増している。
有利子負債の合計では18兆円から21兆円に激増した。
そのうち、社債での資金調達で4.7兆円から6.5兆円に増えたし、借入金も4.7兆円から5.5兆円に増加した。
ソフトバンクGの自己資本は11兆円しかないので、21兆円の有利子負債は自己資本の2倍になる。
これはヤバい。

第三に、借入金の多くがドル建て債務で、金利上昇とドル高がマジにマイナスになる。
自己資本に比べて有利子負債が大きいことが大きな問題となるが、それだけではない。
社債のうち多くはドル建て債、さらに劣後債も発行している。
現在のFRBの引き締めによるドル金利の上昇、さらにドル高/円安で円ベースでのドル建て債務が膨張する。
極めて厳しい財務政策を取ってしまった。
財務の悪化は、孫さんの大きなミスかもしれない。

第四に、自社株買いだけが頼りだが、自己資本は枯渇し始めている。
巨額の自社株買いを続けているが、これも先細りは間違いない。
自己資本のうち、過去のネット利益を積み上げた利益準備金を見ると、前年度8.8兆円あったものが、今年3月末では4.5兆円と一気に半減近い減少だ。
今後の自社株買いは自己資本の制限を強く受けることになるはずだ。

というわけで、ソフトバンクの経営は大きな岐路に立っている。
早めに新興成長株が底入れ、大反発してこないと苦しい。



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ソフトバンク、大事なのはNAVやLTVじゃない

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ソフトバンクが1兆円の自社株買いを発表し株価急騰!!
孫さんのプレゼンを見たが、強調したのは「NAVに対して時価総額は52%ディスカウントされている」「LTVは19%で負債は問題ない水準だ」・・・などだ。
少し考えてみる必要がありそうだ。

まず、NAV(ネット・アセット・バリュー)だが・・・
株式評価ではあまりNAVは使わないが、不動産ではよく使われる。
株式は値動きが大きくボラが高いため、「時価」で評価するよりも「時価×70%」程度で評価する場合が多い。
一方、不動産価格は株式に比べボラが低いので、時価で評価するのが一般的だ。

ソフトバンクの保有株式(ビジョンファンド経由も含む)を時価で評価すべきかは微妙だ。
保有株式の多くが未上場だったり、ベンチャーや小型株だから相当にボラが高いはずだ。
保有株式のボラの高さを考慮したら「時価×70%」程度が妥当ではないかと思う。
そうなると、孫さんが強調するほどの大幅な割安(ディスカウント)とはいえないかもしれない。

次にLTVだが・・・
これはローン・トウ・バリュー、簡単にいえば借入金/株式時価だ。
不動産業界などはよく使われ、リートの財務資料でも借入金/保有不動産の比率で登場する。
しかし、株式ではあまり使われない。
鑑定士が鑑定する不動産価格と、毎日の需給で変化する株式価格では大きく異なるからだ。
同様に分母である保有株式の時価評価額が大きく変動してしまい、LTVはあまり意味をなさないからだ。

孫さんの強調した点を普通の言葉に言い換えたら・・・
SBGの「株式保有の7割評価に対して2割ほど割安だ」という言い方になるかもしれない。
それでも割安は割安だ。

またLTVについては、普通の企業会計用語では財務レバレッジだ。
LTVより「総資産÷自己資本」で計算される財務レバレッジで見た方が良いだろう。
ソフトバンクGの総資産は46.2兆円、自己資本は12.3兆円で、財務レバレッジは46.2÷12.3で3.75倍となる。
日本企業の平均的財務レバレッジは2.4倍程度なので、ソフトバンクGのレバレッジは極めて高い。
中国企業には3倍を超える場合が多いが、中国企業に匹敵するレバレッジの高さだ。
NAVやLTVで見て「ソフトバンクGは割安でリスクが低い」と言うのには少し抵抗感がある。

さらに負債の内容を確認してみたい。
流動負債の中の有利子負債は7.1兆円、非流動資産の中の有利子負債は13.0兆円、さらに外部投資家の持ち分5.8兆円となっている。
有利子負債には銀行借り入れと社債発行残、外部投資家持ち分はビジョンファンドの外部投資家から調達した分が含まれる。
その合計は25.9兆円にのぼる。
これらはいずれ返さなければならないが、ソフトバンクの公正価値は20兆円しかないので、保有株式をすべて売却しても全部は返せない計算になる。
財務状況は孫さんが言うほど安定してはいないかもしれない。

さらに1兆円の自己株式買いを宣言した。
バランスシートでは前回の自己株式買いが-2.26兆円として自己資本に計上されたが、今回、利益準備金を2.16兆円減額し、自己株消却を行った。
それでも利益準備金は6.6兆円あり1兆円の自己株買いは可能だ。
しかし、これによりさらに自己資本が減り、財務レバレッジが高まるだろう。


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ソフトバンクの「エコシステム」とは?

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ソフトバンク(以下SB)の孫さんは、「エコシステムができつつある」と発言をした。
エコシステムは「生態系」であり、「SBの投資が生態系を形成し始めている」という意味なのだろう。

では、「投資の生態系」とは一体何なのだろうか?

(1)SB資金の循環が生まれてきたことを意味するかも?
以前のボーダフォンやスプリントの買収、アリババ投資・・・本体SBによるリアルビジネス投資をしてきたので、SB資金は長期にわたって固定化されてきた。
しかし、ビジョンファンド1号以降はファンド投資が大きくなり資金の回転が速まると同時に、資金が固定化された本体投資は徐々に現金化されてきた。
昨年でもスプリントの売却、アームの売却と本体投資の売却が相次いだ。
これによって4兆円を売却し現金を得たと同時に、自社株買いに2兆円弱を使い、ファンド投資に2兆円を使った。
つまり、長期に固定してきたSB本体投資を現金化し、その分ファンド投資と自社株投資に移した。
この資金循環を孫さんは「エコシステム」と呼んでいるのかもしれない。

(2)ファンド投資によるレバレッジ拡大を意味しているかも?
生物の食物連鎖のように、SB本体の資金(現金化した資金)と、外部投資家の資金(主にビジョンファンド1号)、孫さんの個人資産(主にSB株式)が複雑に絡み合って、大きなレバレッジをかけ投資リターンを極大化しようとする戦略を称して、孫さんは「投資のエコシステム」と呼んでいるのかもしれない。

ブルームバーグより・・・

「ソフトバンクGはこの日、孫社長が2号ファンドに対し最大26億ドル(約2870億円)出資すると発表した。決算短信によると、2号ファンドにはソフトバンクGと孫社長個人の会社が共同出資し、孫社長は最大で17.25%を保有することになる。孫社長が保有するソフトバンクGが2号ファンドに預託されることも明らかになった。」

SBが1.66兆円を出資し、さらに孫さんが2800億円を共同出資した2号ファンドは孫さんが17.25%保有するという。
しかし、孫さんの個人会社の株式を担保に入れたり、2号ファンドの未払い債務を2号ファンドの株式の預け入れるなど、株式担保の錬金術を駆使するが、その資金繰りは「自転車操業」のように見える。

さらに、孫さんは「SBの投資は分散化されてきている」と主張した。
投資純資産26兆円の内訳は・・・上場株87%、非上場株13%・・・地域別では、米国34%、中国23%、中国以外のアジア25%、欧州13%
やっぱり、中国のウェートの高さが気になる。
今回の決算では6月末までの数字で、中国リスクが表面化したのは7月以降だからだ。

こうした点を考えると、孫さんの「エコシステム」には外部投資家やSB株の投資家は含まれていないと思う。
彼のSB帝国には外部資金はいらない、リスクを取れる体制を作る(外部資金はリスクにうるさい)。
個人資産とSBの保有資産ですべての「エコシステム」を動かしていく覚悟ができている・・・のかもしれない。
ここ1~2年でビジョンファンド1の外部投資家にどんどん資金を返済し、SB株の投資家には自社株買いで資金を返してきた。
そして最後には・・・SB帝国は孫さんの100%所有物にしてしまうつもり・・・のかもしれない。

最大限のリスクを取る孫さん、投資に成功したらMBOすることを考えているかもしれないが、その前にいくつもかのハードルがありそうだ。



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ソフトバンク、バランスシートから考察する

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ソフトバンクの決算発表は物凄かった・・・税前利益で3兆3000億円って???
一時はオフィスシェアのWeWorkがつまづいたり、ウーバーの経営が不安定化したり、新型コロナ騒動でAirB&Bの上場が危ぶまれたりとソフトバンクの投資先の不調が伝えられたが、結局、米国株高がすべてを好転させてしまった。
資産売却もほぼ順調に進み、スプリント株を売却し、通信子会社を上場させ、あれだけ賞賛していたアームも売却してしまった。
4.5兆円のプログラム(自社株買いと借金返済)もほぼ予定通りの進捗となった。

ソフトバンクのフロー決算については絶好調としか言えないほど素晴らしい。
もう一つの要点、ソフトバンクのストック、バランスシートを考察してみたい。

まずは自社株買いと資本について・・・

自社株買いについては、5月決議の5000億円、6月決議の5000億円は買入れ完了し、7月決議の1兆円も3000億円以上を買入れし進んできている。
実はその前に3月決議で5000億円の自社株買いを実施しているので、合計1兆8000億円の自社株買いを行った計算になる・・・なんと発行株式総数の15%になる。
発行株式の15%をガンガン買えば、当然株価は大きく上昇する。
さらに米国株価との連動性が高いビジネスモデルなので、米国株高もソフトバンク株高を支援してきた。

これだけの自社株買いをすると、資本勘定がその分減少し、負債/自己資本比率が大きく悪化すると当初は想定した。
確かにバランスシートの資本項目を見ると、自社株買い1兆6800億円がマイナス項目として計上されている。
と同時に利益剰余金が2兆9500億円増加しているので、自社株買いでの資本のマイナスを利益剰余金で補い、資本全体では7兆3000億円から8兆6000億円に増加した。
結局、資産売却のよる利益が自社株買いによる資本減少をカバーしたことになる。

一方、負債項目について・・・

有利子負債が3兆8000億円から5兆3000億円に増加し、負債の返済は進んでいない。
さらに売却目的の負債を除き、通常の負債全体は7兆7000億円から9兆7000億円へと2兆円増加している。
「自社株買いして負債を減らす」という目的は達成されていない。
これは孫さんがアグレッシブに新しい資産に投資していることを反映していると思われる。

というわけで、当初考えられた資本と負債の減少=総資産の減少という縮小経営はしていなかった。
むしろ新規の投資を行うという、孫さんのアグレッシブ性が維持されている。

今後のソフトバンクをどう見ていくか?
このペースで自社株買いを続けると4.5兆円プログラムは近いうちに完了する。
その後も自社株買いを続けるとしたら、一時話題になったMBO説が再び出てくるだろう。
ファンダメンタルから見ると、ソフトバンクの収益は全くの予測困難だ。
ほとんどの投資収益が米国株市場に依存している、さらに、デリバティブ資産と負債が非常に大きくなっているからだ。
特にデリバティブ・ポジションの収益は全く想像もできない。
米国株が下落してもデリバティブで利益を上げるかもしれないし、逆にデリバティブで大きな損失を出すかもしれない。

今までは強烈な自社株買いがあったので「株価は上昇する」と判断した投資家は多かっただろう。
しかし、自社株買いが一巡するソフトバンクは予想不可能な会社になってしまう。
投資に成功しデリバティブ・ポジションが収益化できれば、一段と株価は上昇するだろうし、逆に投資に失敗すれば下落する。
その分の収益ボラティリティの高さを織り込んだ株価バリュエーションに戻る可能性もある。


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ジョージソロスと孫正義

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ソフトバンクGのMBO(マネージメント・バイアウト)説が出てきた。
今年に入ってからソフトバンクGは大規模な自社株買いを続け、現在までで発行株式の12%弱を買った。
しかも次々に高値で自社株買いをしているため、株価インパクトは非常に大きい。
このまま自社株買いを続けると、確かにMBOの噂のように発行株式の6割以上を買い、孫さんの保有株2割を加えると、実に8割以上の株式が市場から消えてなくなることになる。
その段階でMBOをすれば、孫さんは資金的には比較的少額で買い取り、株式を非公開にすることをできる。

この話を聞いていてフッと思い出したのが、ジョージソロス氏が自らのヘッジファンドのソロスマネージメントを「ファミリーオフィス」に転換した時のことだ。
ジョージソロス氏は1992年にイングランド銀行に対してポンド売りを大規模に仕掛け、ERMという管理通貨制度を打ち破った事件があまりにも有名だ。
でもそれだけではない・・・ソロス氏はマクロの矛盾点を突き、多くの通貨や金利・株式をトレードして巨額の利益を上げた。
ソロスファンドでは市場を動かすほどの巨額売買を行ったドラッケンミラー氏は東京でも有名だったし、キャリートレードで大儲けしたロディティ氏にもロンドンの高級街ハムステッドで会ったことがある。

しかし、ソロス氏はソロスマネージメントを閉鎖し、預かった資金を顧客に返した・・・そして、自分の資金だけを運用する「ファミリーオフィス」に転換した。
ある意味、孫さんもソロス氏と同様に、株主に資金を返し、自分の資金を自ら運用する「ファミリーオフィス」を目指しているのかもしれない。
孫さんは買収した通信会社を売却し、ビジョンファンドの保有株式を売却し、その資金で大規模な自社株買いを実施している最中だが、これが続いていけば、残った資本や資産は孫さんの自己勘定=ファミリーオフィスに近い性格になる。

ソロス氏の場合は年齢も年齢だし、投資家にゴチャゴチャ言われるのは嫌だ・・・だから、自分だけの「ファミリーオフィス」にする・・・そうすれば誰も何も言えない。
でも、孫さんの場合は最後の大勝負をしたいのかもしれない。
そのためにはゴチャゴチャ言う株主もいらないし、直接関係ない証券会社のアナリストにゴチャゴチャ言われる上場を続ける気がしないというところかもしれない。
いずれにしても、孫さんは残り少ない人生を賭けた驚きの行動を取るかもしれない。

その場合MBO価格がどうなるか・・・孫さんにとってはMBO価格が高すぎないことが望ましい。
資産売却と自社株買いによってソフトバンクのバランスシートが大きく変わる・・・資産売却後の純資産は意外と小さいかもしれない。


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ソフトバンクの「ニュース」を読む


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ソフトバンク(SBG)のニュースが数多く出ているが、どれもこれも消化が難しいニュースだ。

(1)「米国ITハイテク企業の40億ドルを投資、さらに40億ドルのコールオプションを購入した」というニュース。
このソフトバンクの強烈な買いが8月のITハイテク株高を演出したという市場関係者の話もある・・・が、よく分からない。
オプションの条件が不明で分からない事が多いが、ただ、言える事は40億ドルのコールオプションの購入はどこかの証券会社を相対で行われている可能性が高い。
つまり、40億ドルのコールをショートした証券会社がある・・・その証券会社はその分をカバーするため米ハイテク企業の現物株が買うことになる。
SBGの40億ドルの現物買い+相対取引した証券会社のヘッジ買い(金額は不明)が米ハイテク株の株価を持ち上げたということにはなる。
相当な株価インパクトがあった。

現物株(GAFA株)を買って、行使価格の低いコールを買い、髙いコールを売る「コール・スプレッド」だったらしい。
現物株を買い上昇させ、価格が行使価格にに近づけば・・・現物株の利益+コールスプレッドの利益が出る・・・ソフトバンクはこれを超大規模で行ったらしい。

(2)SBGが「MBO(マネージメントバイアウト)で非公開化する」というニュースも出てきた。
孫さんは常々株価が安すぎると言っているので、さぞ高い価格でMBOをするのではないかという期待が生じる・・・これが株高のストーリーだ。

今年の資産売却額は、Tモバイルの3.8兆円、アームの4.2兆円、通信のソフトバンクの売却1兆円超、5月の決算発表で明らかにした9.2兆円の資産売却を上回るペースで行われている。
半分は借金返済に回るとしても5兆円ぐらいの資金余裕が生じたと思われる。
しかし、この5兆円だけではMBOは難しい・・・時価総額が12兆円、孫さんの保有株を引いても10兆円近いMBO資金が必要になるからだ。
どう資金調達するのか分からないが、かなりハードルが高いMBOになるだろう。

(3)「2016年に鳴り物入りで買収した英アームのエヌビディアへの売却で合意した」というニュース。
300億ドルで買収した会社を400億ドルで売却するので、100億ドルの利益にはなるが・・・クロージング時にSBGに現金で100億ドル、エヌビディア株で215億ドルが支払われるという・・・ちょっと計算が合わないが・・・
エヌビディア株がすでに大暴騰した後なので、この高い価格で買うのかという疑問も残る。

ニュースを見るたびに孫さんがSBGをどういう会社にしたいのかがよく分からなくなった。
・資産売却し借入金を減らし財務を改善する・・・これは理解する。
・自社株買いで割安だと思ったSBG株価を引き上げる・・・これも理解できる。

しかし・・・
・流動性の高いGAFAのオプションを使って仕掛ける・・・この高いリスクをSBGの投資家は許容できないだろう・・・SBG株を手放す機関投資家も出てくるだろう。
・あれだけ次世代のハイテク競争の核心企業だと説明していた英アームを売却する・・・アームの半導体設計技術が世界を変えると期待していた投資家にはガッカリだ・・・これも理解困難だ。

・MBOでSBGの非公開化をする・・・これも理解できない。
単体の有利子負債で8兆円という巨額の負債を持つ企業が非公開化にしたら、格付けや銀行のクレジットラインなどに問題が生じないのだろうか?
巨額のMBO資金をどうやって調達するつもりなのだろうか?
・・・多くの疑問が出てくる。

SBGの経営の方向がよく理解できない・・・孫さんは一体、SBGをどんな会社にするつもりだろうか?


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強烈な株価インパクトだった、SBの自社株買い

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5/18の決算発表でソフトバンクが4兆5000億円の資産売却と2兆5000億円の自社株買いを正式にアナウンスした。
その後、猛烈な勢いで自社株を買い戻している・・・しかも2019年まで信託方式(信託銀行の口座で買い付ける)ではなく、ソフトバンク自身が市場で買い付けし、株価を上昇させている。
普通の自社株買いでは株価インパクトを避けるために信託方式を使い、立会外取引を使って安く買おうとする。
しかし、ソフトバンクは全く逆で株価インパクトを最大にするような買い方だ・・すごいとしか言えない。

6/15に公表した自社株買いでは・・・6/1から6/15に3614万株の買い付けを行い、3/13に決議された5000億円の自社株買いを完了したとアナウンスされた。
わずか営業日で11日間で3614万株・・・つまり、平均328万株/日の市場買い付けが行われたことになる。
この間、市場出来高は2000~3500万株/日で、ソフトバンクは市場出来高の10%を連日買い付けたということになる。

さらに8/3に公表した自社株買いでは・・・5/18に決議された5000億円の自社株買いのうち、7/1~8/3(約定ベース)で6322万株の買い付けが開示された。
この間営業日は21日で、ソフトバンクは平均301万株/日の市場買い付けを行ったわけだ。
市場出来高は2000~3600万株だったので、やはり、毎日毎日市場の10%の買い付けをソフトバンク自身が行っていたことになる。
こりゃ、株価に強烈なインパクトになるわけだ。

毎日毎日、市場出来高の10%の自社株買いをする・・・しかも立会外市場を使うわけでもなく、株価インパクトを最大にして買う。
この意味は孫さんが株価を上げたがったということだ。
でも、オーナー系企業の社長が自社株買いで株価を持ち上げていく=自分の資産を膨張させる・・・これはちょっと株価操作のような臭いがする。
3月安値から株価は2倍以上に上昇した・・・孫さんの個人資産も2倍以上になっているだろう。
孫さんはこの莫大な評価益をどうするつもりなのだろう?
なにもしなければ、自社株買いの終了とともに消える運命かもしれないからだ。


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ソフトバンクの「重箱の隅」

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「重箱の隅をつつく」という慣用句がある・・・これは相場格言ではないが・・・
本来は「どうでもいい枝葉末節をうるさく言う」というネガティブな意味だが、株式投資を考える上では「ディテールにこだわる=重箱の隅をつつく」事も大切だ。

さて、ソフトバンクの決算だが、主要項目は事前に出ていた通りだし、孫社長の説明会も特に興味を引いたものはなかった。
ただ、一か所気になった「重箱の隅」があった。
それはバランスシートの中の資産項目にある「売却目的保有に分類された資産」で、前期の2242億円から一気に増えて9兆2360億円になっていた。
これは孫社長が以前にアナウンスしていた「資産売却4兆5000億円、自社株買い2兆円、2.5兆円の借金返済」を実現するための措置だろう。
決算短信で「Tモバイル株(スプリントと合併)を売却予定に加えた」という記述があった。

でも、保有しているTモバイル株は3046万株、さらに一定条件で取得できる487万株と合わせて3533万株になり、時価101.89ドルで保有株の時価は約360億ドルになる・・・円ベースでは3兆8517億円。
売却目的資産を9兆円増やしたが、そのうちTモバイル株は3.8兆円にすぎない。

(1)まず疑問になるのは、4.5兆円の資産売却を含めて9.2兆円が売却予定に入っていること。
孫さんはこの4.5兆円資産売却を4四半期で行うとしているが、その後、さらに4.5兆円の売却を予定しているのかもしれない。
気を付けたいのは、外貨建て資産を売却して円建ての自社株を買うと為替市場では円高要因になることだ。

(2)売却資産のTモバイル株3.8兆円だが、すでにドイツテレコムと交渉に入っている。
これは実現可能性が高いが、他の資産はどうなのだろうか・・・ジャック・マーが役員退任したのが関係しているかは分からないが、本気でアリババ株を売却するつもりなのかもしれない。
ビジョンファンドは現金化が難しい資産が多いかもしれない。

(3)バランスシートには売却予定9.2兆円とその資産に対応する負債6.4兆円が記載されている。
ということは、この9.2兆円を売却したら、6.4兆円は債務返済に回さなければならない・・・となると、自社株買いに使えるのは2.8兆円ということになる。
もし、この1年で2兆円の自社株買いをしたら、2回目の資産売却では8000億円しか自社株買いに回せないことになる。

自社株買いで株価は上昇するだろうが、ソフトバンクは追い詰められているように見える。
この9.2兆円の売却を実施後、バランスシートは資産28兆円、負債23.4兆円、自己資本4.5兆円・・・自己資本比率が16%と極めて低く、とても経営が安定するとは思えない・・・資本不足状態といえる。

バランスシート上で単純計算すると・・・
資産合計37.2兆円・・・9.2兆円の売却後・・・28兆円
負債合計29.8兆円・・・6.4兆円の返済後・・・23.4兆円
資本合計 7.3兆円・・・2.8兆円の自社株買いと消却後・・・4.5兆円・・・となる。


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ソフトバンクを買わない理由

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ムーディーズがソフトバンクをBa1からBa3への2ノッチの格下げをした・・・理由は「市況の低迷の中、資産売却は容易ではない」
不思議な格下げで、会社の発表どおり「4.5兆円の資産売却して2兆円の自社株買い+2.5兆円の返済」なら17兆円の借入金が減少するので、格付けに大きなマイナスになるとは思えない。
しかも、自社株買いで米エリオットが期待するような株高になるかもしれない。

ソフトバンクの孫さんは日本では稀有の経営者で、非常に敏感に株価を見ている。
考え方がグローバル基準であるだけでなく、その行動力も高く、極めて迅速な意思決定ができる。
素晴らしい経営者だが、実は、我々投資家サイドから見ると大きな欠点を持っている・・・おそらく、それはムーディーズのベースにある考え方に通じているのではないかと思う。

それは「孫さん自身が価値を作り出していない」というシンプルな理由だ。
90年代にYahoo!に投資し、2000年代にボーダフォンを買収し、さらにアリババに投資した。
これらの投資実績を通じて世界の企業トップと友好関係を築き、孫さんはシードラウンドの投資案件が紹介される立場にのし上がった。
これを最大限利用したのが、アームの買収、ビジョンファンドのウーバー・ウィーワーク・ワンウェブなどへの出資だったのだろう。
しかし、自ら新事業を起こし、企業価値を創造することはなかった。

財務ではバランスシート左側の総資産36兆円・・・投資先の保有株式(20兆円)が最大項目で、右側では総負債28兆円、自己資本7兆円(うち留保利益5.5兆円)となっている。
つまり、28兆円の借金して20兆円の株式を買ったというだけの話だ。
自己資本比率が40%の日本企業がゴロゴロしているが、ソフトバンクの自己資本比率は20%もない・・・内部留保の蓄積=自己資本が少ない。

こうした企業が保有株式の売却に入ったら、バランスシートの左側の資産が急減すると同時に、右側の負債も減少し、もし自社株の消却をすれば自己資本も減少する・・・つまり、バランスシート全体が急速に縮む。
そうなると、自ら価値を創造できない企業だけに何の企業だか分からない状態になってしまう。
せめて、通信のソフトバンクを買い戻して通信企業として残ることもできたが・・・スプリントを売却し、アリババを売却し、アームを売却し、クローズしたビジョンファンド1号を投資家に償還したら、何も残らない。

資産売却したら何もなくなる・・・これがソフトバンクを買わない理由だ。


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資産価値割れの株価が変える経営

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日経平均はPBRが0.8倍近くに落ち込み、東証のリート市場でも全上場銘柄がNAV(ネットアセットバリュー)を下回る異常事態をなっている。
株式やリートの時価が純資産を割れた水準に落ち込んだことで、会社経営者やリート運営者は株主から大きなプレッシャーを受ける・・・大きな行動変化が出てくるはずだ。

ソフトバンクの孫さんが「4.5兆円の資産売却、2兆円の自社株買いと借入金の返済」を発表した。
資産価値を下回る株価が頭にきた孫さん、おそらく、米エリオットのプレッシャーも強烈だったのだろう。
2/14「米ファンドにロックオンされたSBG」では、最大9兆円のエグジットをすると予想した・・・今回の発表は4.5兆円であり想定の半分だった。
それでも、強烈なインパクトがあるだろう・・・資産価値を下回った株価は企業経営を変える典型的な例だ。

でも、これはソフトバンクだけではない。
資産価値を大きく下回った企業の経営者は大幅な自社株買いをせざるをえない立場に追い込まれる。
東証全体でPBRが0.8倍・・・余剰キャッシュを持つ企業が1000億円の自社株買いをして自社株を消却すれば、200億円の差益が発生する・・・これは利益ではないが、帳簿価額で調整される。
余剰キャッシュを何にも使わず、そのまま保有する経営者は「無能」の烙印を押される可能性もある。
過去の自社株買いでは「やるやる詐欺」が多く、自社株買い枠の3割程度しか実施しない会社もあった。・・・しかし、この状況では余剰キャッシュを抱えて「経営悪化しても大丈夫」という緩い経営は許されないだろう。
東証上場企業の財務優良企業の自社株買いブームが始まるだろう。

先日、森ヒルズの決算説明会があったが、そこで社長は「NAV1倍割れでは、エクイティファイナンス(公募増資)は厳しい。デットでの物件買収になる。LTVはまだ余裕がある」と語った。
今まで多くのリートが公募増資を実施し物件を取得し分配金を引き上げてきたが、この行動パターンが大きく変わる。
一つはデット(借金)を利用したレバレッジ経営だ・・・重要な事は「格付け」とLTV(借金/資産)。
財務は良くシングルA以上の高い格付けと借金を増やす余地であるLTVの水準を持つリートは、さらに外部成長する余地が多く買われるだろう。

もう一つはソフトバンクと同じ発想で、リートの保有物件の一部を売却し、その代金で自社株買いをすること。
NAV倍率が大きく1倍を割り込んでいるリートであれば、物件売却ー自社株買いの効果は非常に大きい・・・理屈はソフトバンクと同じで、これをやればリート価格が大きくNAV水準まで一気に回復するかもしれない。

新年度は新型コロナ騒動でスタートするが、リート市場ではエクイティファイナンスの減少で、株式市場では自社株買いの急増で、市場の需給関係はずっと良くなるだろう。
ファンダメンタル要因だけでなく、株式需給に注目が怠れない相場になりそうだ。


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米ファンドにロックオンされたソフトバンク

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米投資会社のエリオットがソフトバンクに投資し、1~2兆円の自社株買いを提案しているというニュースでソフトバンク株が急伸した。
また、ウォールストリートジャーナルがソフトバンクのビジョンファンド2号は投資家が集まらず、規模を想定の半分に減額しソフトバンク自社の資金のみでスタートすると報じた。
さらに米国の訴訟でT-モバイルとスプリントの合併が認められる方向となった。
そして、決算説明会の席上で、孫さんが「潮目が変わった」と高らかに宣言した。

確かにソフトバンクは次のステージに入りつつあるという感じがする。
次のステージとは「エグジット(EXIT 出口)」だ。

まず第一のエグジットはT-モバイルとの合併が承認されそうなスプリント。
ソフトバンクが2018年4月にHPで乗せているが、合併比率がスプリント1株に対してT-モバイル0.10256株とすると、合併後の新会社をソフトバンクが27%を保有すると時価で単純に計算すると320億ドルとなる。
しかし、2年も前の話なので条件が変わってくるかもしれない・・・T-モバイルの株主ドイツテレコムは条件交渉を要求しているらしい。
合併後、ソフトバンクにとってはスプリントが持ち分対象から外れるので、バランスシートから切り離せる・・・あとは、いつ売却するかということになる。

第二のエグジットがビジョンファンドだ。
ビジョンファンド1号は昨年9月に投資期間を終了し、存続期間2029年までに償還する。
「88銘柄保有し、半分は利益、半分は損失」と孫さんは言っているが、2/3を保有する外部投資家からすればサッサと現金化してくれ!!ということだろう。
現金化を進めれば若干のプラスで逃げられるからだ・・・逆に長期に引っ張ったからと言ってリターンが増えるとは限らない・・・ファンドの外部投資家から見れば「たまらん」という感じだ。

第三のエグジットが通信のソフトバンクだ。
親子上場の強い批判を受けても行った子会社上場だったが・・・孫さん自身が「ソフトバンクは投資会社」と宣言している通りで、通信には興味がない、本体から切り離すという意味だ。
スプリントやソフトバンクなどの通信会社を保有するメリットを孫さんは感じていない・・・両方とも上場しているし、いつでも市場で売却できる・・・エグジットするだろう。

エグジット金額は合計で・・・ザっと・・・スプリントおよそ3兆円、ビジョンファンド3兆円弱(未実現損失7273億円+実現益146億円+投資額およそ3兆円強)、通信ソフトバンクの持ち分4兆円で・・・およそ9兆円程度の現金化が可能だ。

これを米ファンドが狙っている。
エリオットがソフトバンク株を3%保有していると報道されているが、3%程度の保有ではなんの権利もない・・・帳簿閲覧権がある程度で、株主総会も通せないし、普通決議の拒否権もない。
でも、エリオットだけじゃないかもしれない・・・米ファンド連中はこのエグジットの現金を狙うだろう。
すでに2兆円規模の自社株買いを要求しているが、数%づつ株を保有する米ファンドが徒党を組んで圧力を掛けてくるとワシは想像している。
この9兆円レベルのエグジット現金をぶん取ろうとするのは、十分に合理的な投資理由だ・・・株主の正当な要求だ。
しかし、米ファンドの要求にそって数兆円規模の自社株買いを実施すれば株価は上昇するかもしれないが、その後には膨大な有利子負債が残る。
現在、流動負債の中の有利子負債が3.5兆円、非流動負債の中の有利子負債が13.7兆円、合計17兆円・・・一部はスプリントの負債で、合併後なくなるかもしれないが・・・
米ファンドにとっては巨額の自社株買いに自分の保有株をぶつければいいだけなので、簡単に大きな収益を実現できる。

米ファンドはソフトバンクにロックオンしたと見る。



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意外だったアリババの急騰

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アリババが香港市場に上場し、大人気で急騰劇を演じている。
でも、これは新しい企業の上場=IPOではなく、NY市場に上場していた銘柄の重複上場=POなので、アリババ株を買いたい投資家はいつでもNY市場で買える状況での香港市場への上場だった。
なので、グローバル投資家にとっては強いて香港市場で買う必要がない・・・つまり、グローバル投資家が大挙して香港でアリババ株を買い漁るということは考えにくく、ワシはそんなに注目をしていなかった。
しかし、結果はPO(公募)での応札倍率が7倍となり、上場日にいきなり7.7%の上昇し、NY市場の換算価格を大きく上回った・・・しかも翌日のNY市場でアリババ株がさらに上昇し、次の日の香港市場でもアリババ株が一段と上昇した・・・正直、こんなに人気化するとはまるで読めでいなかった。
これはどういうことなのだろうか?

仮説としてはいくつか考えられる・・・
第一に、POの段階では香港での価格が176香港ドルでNY価格を2.9%下回る価格だったこと・・・これで割安な香港価格で買おうとする投資家が多く、公募の応札倍率の高さにつながり、上場後も人気化した。
第二に、将来の香港ー上海コネクトを通じて中国本土投資家が買ってくることを見越して香港や他の地域の投資家の買いが入った可能性だ・・・中国本土でもオフショア口座を香港に持っている富裕層は買いに入っているかもしれない。
第三に、アリババが調達した1.2兆円の公募資金が中国本土で投資されることで、北京政府がアリババ株を後押ししたかもしれにない。
第四に、アリババなどの海外上場の中国企業を中国市場へ戻す動きを加速化させるために北京政府が強いメッセージとしてアリババ株の急騰を意図した。

どれも推測にすぎない・・・でも、言えることは、投資理論や投資価値をあまり考える必要がない投資家が買ったということだ。
アリババ株は今回の急騰でPERが57.4倍にまで上昇した・・・同じ中国市場の巨大IT企業であるテンセント株はほとんど上昇していないのでPERは35.2倍にとどまっている・・・同じ業態のジャイアント企業なのにPERに大きな格差ができている。
また、世界のIT巨大企業であるグーグルのPERは28.1倍、アップルのPERは22.5倍とさらに低い。
アリババはNY上場だったのでGAFA企業のバリュエーションと比較されてきた・・・しかし、この香港上場によってGAFAとの比較感から自由になった・・・そして、ライバル企業と想定されたテンセントのPERを大きく上回ってしまった。
この大幅な割高感がありながら、ガンガン買われ急騰を続けるアリババ・・・投資価値をあまり考えない投資家が買っているのは間違いない・・・その背後に誰がいるのか?

アリババの収益構成を見ると・・・
中核リテール(Eコーマス、小売りや卸売りプラットフォームなど)は四半期の利益320億元と黒字だが、デジタル・メディア・エンターテイメント32億元の赤字、イノベーション事業30億元の赤字、クラウド事業19億元の赤字・・・中核リテールの利益が他の将来事業の赤字を支えている構図だ。
アマゾン(AWS)とマイクロソフトが牛耳っているクラウドベースのソフトウェア事業に照準を合わせ中国市場で事業を推進するとアリババは表明した・・・これはおそらく北京政府と一体的に推進されていく国家事業なっていくのではないだろうか・・・これを感じた中国の投資家が上場とともにアリババ株が買ったということも考えられる。
いずれにしてもアリババは北京政府と一体化していく・・・これを反映したのが今回の株高だったのではないだろうか?

アリババ株の議決権で30%保有するソフトバンクだが、孫さんの頭の中は複雑なのでフォワード契約などでヘッジしている可能性もある。


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サウジアラムコの国内上場とグローバル投資家

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サウジの皇太子、ムハンマド・ビン・サルマン(以下MBS)氏が方向転換し、世界最大の石油会社サウジアラムコのグローバルIPO予定を変更し、サウジ国内市場に上場する。
サウジアラムコの時価総額は当初2兆ドルと想定されていたが、より現実的に1..6~1.7兆ドルをややバリュエーションを引き下げた。
しかも、サウジ国内IPOで上場される株式数は、全株式のわずか1.5%にとどまると言う・・・当初のグローバルIPOでは5%程度の1000億ドル以上を想定していたので、250億ドルのIPO規模は当初グローバルIPOの四分の一以下の規模でしかない。
12月5日に最終条件が明らかになる・・・その後すぐに、おそらく12月上旬には上場するだろう。

この大型上場に対してグローバル投資家がどう反応するかは、12月の市場需給に大きく影響する。
なにせ、世界最大のオイル企業であり、想定より低いとはいえ時価総額はアップルを大幅に抜く・・・しかも、IPO規模としても250億ドルとアリババ並みの大型上場だ。
インデックス投資が主流のグローバル投資家にとっては、無視できない存在となるのは間違いない。
しかし、サウジ国内上場で通貨はリアル、しかも取引の難易度が高い・・・となると、MSCIに組み入れられるには時間がかかるかもしれない・・・組入れのタイミングを見て、サウジアラムコ買い/エクソンなど石油大手売りを仕掛けてくる。
そのインデックス組入れのタイミングが問題だが、サウジ市場のローカル上場でありしかも市場での流通株式が発行株数の1.5%しかないのでしばらく時間がかかると想定できる。
大きな需給イベントにはなりにくいかもしれない。

また、MBSは、何故、このタイミングでサウジの「虎の子」であるアラムコの国内上場に踏み切ったのだろうか・・・しかも当初よりも低い価格で流動性の低いサウジ国内上場を選んだのだろうか?
まず、考えられるのはサウジ財政が悪化している可能性だ。
原油価格はなんとか50~60ドル/バレルを維持し、サウジにとっては採算に見合うレベルだ。
しかし、ここ数年、ずっと減産してきているため石油収入が伸び悩んでいるかもしれない。
第二に、特にイランを中心に不安定化する中東アラビア半島で、軍備増強が財政を圧迫していることだ・・・2か月前にもドローン爆撃でサウジアラムコの施設が攻撃され炎上したが、この地域は極めて不安定で、サウジ政府も軍事的プレゼンスの確保が最重要課題になっているはずだ。

おそらくMBS氏は、このサウジアラムコの資金250億ドル(約3兆円)が「喉から手が出るほど」欲しかった・・・そういう意味では、MBS氏は傘下のPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)を通じて430億ドルをソフトバンクのビジョンファンドに投資しているが、この資金も早めに回収に入る可能性もある。
ここは注意を要する・・・サウジの財政状態とグローバルな資産ポジションには注意しておきたい。
MBS氏はあらゆる手段を通じて軍事増強と対イラン戦略を進めており、その過程でサウジの財政ポジションが悪化する・・・さらなる資産の現金化が必要になってくると予想される。
だとしたら、サウジの動きに注意が必要とともに、中東アラビア半島は来年もキナ臭い状態が続くのかもしれない。

原油トレーダーの一部には、今回のアラムコ上場で原油価格が上昇すると予想している筋がいる・・・アラムコ上場で資金を手にしたサウジが減産を強化するという思惑で原油先物が上昇すると見ているわけだ。
でも、やや思惑先行かもしれない。


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ウィークリー雑感(9/29 ユニコーンIPOの懸念)

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WeWorkの上場延期問題などから、ユニコーンのIPOについて問題点が浮きぼりになってきたような気がする。
一般論だが・・・スタートアップ企業は、まず、ビジネスアイデアと製品のプロトタイプを作り、出資を募り事業化する・・・この最初の資金調達がシードラウンドと呼ばれるものだ。
そして、実際に顧客が付きビジネスモデルができる段階シリーズAの資金調達、ビジネスをスケールアップさせ成長が加速化していく段階シリーズBの資金調達、経営が安定し上場を意識する段階シリーズCの資金調達と会社の成長に合わせて資金調達されていく。

問題となるのはスタートアップ企業の評価額だ・・・過去の例を見ていると、資金調達の合計額+負債による調達額=バランスシートの右側の金額に何倍かのマルティプルをかけた評価額になっている。
資本と負債によって調達した資金を事業に投じて、その数倍の企業価値を生み出しているというわけだ。
ユニコーンのIPOではいずれもこの資金調達額の何倍もの企業価値評価が行われている現状では、IPO直前の出資であっても上場時に大きな利益を上げることができた・・・しかも資金調達額が大きければ大きいほど時価総額が大きくなる。

たとえば、下の表でWeWorkの資金調達額と企業評価額を比べてみた。
2015/9の資金調達で9.69億ドルを調達して、企業評価額が50億ドルから100億円と50億ドル増加した・・・つまり、マルティプルは5倍だ。
ソフトバンクが30億ドルを出資した今年1月の資金調達では、企業評価額が200億ドルから470億ドルへと270億ドル増加し、マルティプルは9倍だ。
こんな高いマルティプルが続く限り、ベンチャー投資家は大儲けできる・・・ここに着目したのが孫正義氏であり、ソフトバンクのビジョンファンドということだろう。
でも、この資金調達額と企業評価額の関係が変わり始めているという疑問が出てきているのではないかと思う。
そうなると、ユニコーンIPOは必ず儲かる「打ち出の小槌」ではなくなってしまう。
WeWorkのゴタゴタで感じるのは、こうした強欲なベンチャー投資家が慌てふためいている構図だ。

今年1月にソフトバンクが30億ドルをWeWorkに出資し、110ドルで株式購入できるワラントを得た。
その他にソフトバンクのビジョンファンドが44億ドル出資している・・・いずれもIPOが視野に入っている時期だった。
しかし、その後、WeWorkの想定時価総額470億ドル=1株当たり株価75ドルから、現在の想定株価は50ドル台に低下しているようだ・・・フィデリティ、Tロウプライスなども想定株価を52~54ドル程度とした。
これだけの想定株価の違いがあると、安値上場よりはIPOを延期した方がいい。
しかし、ニューマンCEOが個人的なゴタゴタで退任し、シェアオフィス市場も飽和状態に近く、当初の見込みの市場規模3兆ドルは過大に見積り過ぎていたかもしれないなど問題続出で、来年に延期といってもIPOスケジュールはよく読めない。

より大きな問題は出資者には「打ち出の小槌」だったユニコーンIPOの時代が終わりそうな事だろう。
すでにビジョンファンドの出資者には第二ファンドへの出資を見直す投資家がで始めているし、ビジョンファンドから資金を引き上げる動きもある。
さらに、すでに上場したウーバーなどのユニコーン企業やGAFA系プラットフォーマーなどの高PER企業のバリュエーションを引き下げる可能性もある。
WeWorkだけでなく、他のユニコーンIPOへの波及に注目を怠れない。

WeWorkの資金調達と企業評価額(単位:億ドル)
  資金調達額   企業評価額
Sep-14 3.55   50
Sep-15 9.69   100
Mar-16 4.3   160
Mar-17 3 SBG  
Jun-17 17.6   200
Jan-19 30 SBG 470


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SBビジョンファンド、社員の出資は愚策

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ソフトバンクがビジョンファンド出資を従業員から受ける目的で、200億ドルを従業員に融資すると発表した。
孫さんの言いたいことは、「こんなに儲かるビジョンファンド投資ならば、従業員にもチャンスを与えたい」ということだろう。
ところが、従業員にとってはいたって迷惑な話で、孫さんの愚策としか思えない。

第一に、従業員が会社の一部門であるビジョンファンドに出資するという、会社全体の自社株を買う従業員持ち株会よりも高リスクな従業員投資会の一種となることだ。
これは従業員の自社株持ち株に似ているが・・・ソフトバンクGの中でも通信子会社やスプリントなどに比べビジョンファンドは突出してリスクが高いので、この部門のみに投資するというのは従業員にとってさらにリスクが高い投資となる。
従業員は「会社の存続」と「自分の雇用確保」さらに「個人資産」を単一のリスクにさらすことになる・・・もし失敗したら、勤める会社が倒産し、自分も当然失職し、さらに自分の個人資産も失うという三つの災難が同時に襲ってくる・・・つまり、通常の投資の3倍のリスクだ。
従業員にとっては高すぎるリスクなので、孫さんに騙されない限り投資する従業員がいるとは考えにくい。

第二に、従業員が融資、つまりレバレッジを賭けて、新興企業のビジョンファンドに投資することだ。
レバレッジを賭けているので、失敗したらビジョンファンドの投資が損失になるだけでなく、しかも、会社から融資を受けている従業員は、仮に会社が倒産したとしても返済しなければならない(融資は、株式とは違い、有限責任ではない)。
そうなると、従業員の投資損失だけでは済まないし、失業したうえで借金だけが残るという悲惨な結果になる可能性もゼロではない。


第三に、200億ドルの融資のうち半分を孫さんが個人で貸すというのが従業員向け投資スキームとして異常なことだ。
この場合、会社の融資と社長個人の融資では利害が衝突する可能性がある・・・孫さんに忖度し返済を優先する社員がいるかもしれないからだ。
いずれにしても利益相反の問題が生じる可能性があり、この従業員向けの融資に社長が個人的に貸し出すというのは問題がありそうだ。
また、孫さんからすればビジョンファンドが失敗し会社が傾いても、孫さん個人は自分の融資した分100億ドルは確実に回収できる・・・つまり、自分の投資のインシュアランスとなる。

ビジョンファンド2にはサウジアラビアを始めとする金持ち国が出資を拒んでいるし、思惑とは違い出資集めが順調ではないのかもしれない・・・1000億ドルを集めきれなければ、孫さんの影響力の低下と見られてしまう。
そんな事で資金集めの必死なのは理解できるが、それが融資付きの従業員出資で乗り切ろうというのは安直すぎるだろう。
孫さんの愚策として、今後の動きを関心を持って見ていきたい。


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ソフトバンク、ビジョンファンドのIPO

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WSJがソフトバンクが傘下のビジョンファンドのIPOを検討していると報じた。
ファンドの上場は日本ではあまり馴染みがないが、会社型ファンドが多い海外市場ではよくみかけるものだ。
ファンドのIPOは日本でいえば不動産投信REITの上場のようなもので、ファンドの出資者がファンドの持ち分を所有する会社型ファンドを上場し、誰でも簡単に市場で売買できるようにする。
ソフトバンクの場合、ビジョンファンドはソフトバンクの一部門だが、他人の資金が入っているので分離されて会計処理されているはずであり、ビジョンファンドをスピンオフして上場することは可能だ。

では、ソフトバンクが傘下のビジョンファンドを上場すると何が変わるのか?
(1)IPOによって新規資金を集めることができる。
上場時に新規資金を集めて上場したり(IPO、公募)、既存の出資者の持ち分(売出し)を市場で売却したりすることで、市場に流通性を供給する。
ビジョンファンドはIPOによりさらに資金を集め、投資することができる。

(2)ファンドの出資者が簡単に換金したり、全額現金化したりできること。
現在、ビジョンファンドにはソフトバンクの自己資金、サウジや中東系資金、その他巨大年金の資金が入っていると思われるが、現状では出資分を換金するとしたら、ソフトバンクに買い取ってもらうか、新たな出資者を探して売却することになる。
上場したら、出資者は自分の都合で市場で出資分を売却することが簡単にできるようになる。

(3)その他、ファンドの価格が市場で評価され、情報開示が義務付けられること。
未上場ファンドの評価はNAV(ネット・アセット・バリュー)だが、上場すると市場での時価評価になり、ファンド価格の変動が激しくなる。
また、未上場の場合はファンド出資者に運用結果が報告されるだけだが、上場すれば基準に合わせた情報(投資先、パフォーマンス、その他)が開示され、一般投資家にもよく分かるようになる。

それでは、ソフトバンクのファンドIPOの狙いはなんだろうか?
ここからは想像だが、まず考えられることはNY市場の流動性が高いうちにファンドを上場させ、新規資金を集めておきたいということだ。
おそらく、孫さんは2020年以降は量的緩和による過剰流動性が徐々に回収されていくと見ているのではないだろう・・・そのために早めにIPOを行い資金を獲得したというのが狙いかもしれない・・・この点は気を付けておきたい。
また、中東系かどうか分からんが、ファンドの出資者に利食いし換金したい出資者がいるのかもしれない・・・上場すれば、市場での売却が簡単になる。
そして、ソフトバンク自体もファンド出資の一部を売出しによって現金化したいのかもしれない・・・バランスシートにある15兆円の借入金を減らす目的も考えられる。
いずれにしても、新規資金を集める最後のチャンスかもしれないし、出資者の換金性も高められるし、ソフトバンク自体の債務リストラも可能になるし、一石三鳥のIPOになるだろう。
ただし、通信子会社のIPOと同じでソフトバンク側の有利になるようにIPOされるので、反対に投資家には不利が多いかもしれない・・・いつもの孫さんのやり方だ。



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ソフトバンクの光と影

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ソフトバンクの決算説明を読んだ・・・そこに書いてある事は長年様々な会社の決算を見てきた人からでさえ、感動的な数字も連続だった。
孫さんがもはやソフトバンクは投資ファンドだと宣言しているとおり、通信のソフトバンク(IPO済)とスプリント、ヤフー事業を完全に切り離す処理をしている・・・連結対象だが、部門として整理され、いつでも切り離せる状態になっている。

投資ファンドとしてみると、一番の問題になるのは有利子負債とキャッシュ・フローのバランスだ。
有利子負債は流動負債8兆5472億円、長期借入金5兆2272億円、社債6兆7785億円。
その他の負債にはビジョンファンドの外部投資家持ち分やデリバティブ負債があるが、リアルな負債は流動負債+長期借入金+社債の約20兆円だ。
これに対して、投資先の評価益をいろいろ計上し営業利益は膨らんでいるが、問題はこれらの評価益がキャッシュフローではないことだ。
今期4-12月の営業利益は1兆8590億円(∔7102億円)と大幅な増加だが、営業キャッシュフローが9112億円だ。
その他、投資キャッシュフローはー2兆7109億円(ファンドの投資など)、財務キャッシュフローは3兆1138億円(社債発行、外部投資家のファンドへの払い込み、通信子会社株の売却など)。
つまり、負債20兆円に対して営業キャッシュフローは1兆円弱と、キャッシュフローを丸々返済に回しても20年もかかる借金を抱えているということだ。
もし、世界景気の後退などがあれば、通信子会社やスプリント、ヤフー、アリババの資産売却に追い込まれるかもしれない。

一方、孫さんが天才的だと思うのは、株式市場の変動に対して極めて冷静で合理的な対応をしていることだ。
エヌビディア株をデリバティブでヘッジしていたことで、昨年秋からの市場下落を全く損失を出さなかったことは当ブログでも「孫さんのエヌビディア魔法」として取り上げた。
決算では株価下落による評価益の減少が2995億円に対してデリバティブ利益が2495億円と開示された。
でも、これだけではなく、アリババ株についても同様で株価が上昇していた時期に「カラー取引」で値上がり益をしっかりヘッジし固定化している。
アリババ株の持ち分投資利益の減少が621億円、デリバティブ利益が3659億円で今期についてはデリバティブ利益が大きく上回った。
「シンギュラリティに向けた長期投資」というお題目ながら、「長期投資だから市場が上がろうが下がろうが投資を続ける」というような甘い相場観による投資はしていない。
市場は上がれば下がるもので、その市場変動に合わせてデリバティブを駆使して値上がり益をしっかりと固定していくという極めて合理的な戦略を持っている。
長い間株式市場を観察しそこで活躍する人たちを見てきたが、孫さんはどこのヘッジファンドマネージャーよりも損益を厳しく管理している。
一見「シンギュラリティの夢を追いかけている人」に見えるが、実は感動的な冷徹な投資を実践している。

今後、気になる点は、ファンドで投資している未上場株はおそらく自己資本ベースでの評価なのだろうが、その評価単価が最近のFANGの下落に影響されず上昇を続けていることだ。
上場株の下落はデリバティブでヘッジできるが、未上場株はできないし、その評価もやや過大なのかもしれない。
さらに世界的な景気停滞に落ち込むと、ソフトバンクはその負債の大きさとリアルなキャッシュフローの小ささから厳しい局面も考えられることも今後の不安材料だ。
孫さんならなんとかしてしまうかもしれないと思わせるような決算だったが・・・。



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孫さんのエヌビディア魔法(後編)

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孫さんのエヌビディア魔法の後編だが、今回はこのゼロ・コスト・オプション取引がエヌビディアの株価をどう影響してきたか、さらにこの取引を解消するとどう影響するのかについて話てみたい。

この30億ドルという巨額のオプション取引は世界でもトップクラスの証券会社しか相手にできない規模だ。
残念ながら、野村でも大和でも日系証券には扱える規模ではなく、たぶん、ゴールドマンかJPモルガンあたりだろうと想像できる。
まず、ソフトバンクが30億ドルのエヌビディア株を買う・・・そして、株価が上昇してきた所で証券会社とオプション取引を行う・・・すると、何が起こるのだろうか?

ソフトバンクには30億ドルの現物株式、プットオプションの買い、コールオプションの売りというポジションができる。
このポジションの損益だが・・・株価がさらに上昇すると、現物株で利益が上がるが、プットオプションの買いがオプション料の損失になり、コールオプションの売りは損失となる・・・というわけだ。
では、この取引を受けた証券会社のポジションはどうなるか?
ソフトバンクの反対で、プットオプションの売り、コールオプションの買いとなるが、さらに、この取引のヘッジのためにエヌビディア株を空売りする必要がある。
オプションだけでは、プットオプションの売りが株価下落時に大きく損失を出してしまう・・・だから、その損失をヘッジするためにエヌビディア株を空売りしなければならない。
つまり、ソフトバンクが株価上昇時でこの取引を行うと、相手の証券会社がエヌビディア株を空売りすることになる・・・株価上昇時ではこの取引によって空売りが増加し、株価の上昇を抑えていくことになる。
ただし、ここで個人投資家は空売りが増えたからといって買ってはいけない・・・この空売りは市場で買い戻しが出てくるような話ではないからだ。
空売り残の急増にだまされてはいけない。

では、もしソフトバンクがこの取引を解消したら、何が起こるのか?
このポジションを解消していくと、逆のことが起こる。
ソフトバンクはエヌビディア株を売却し、プットオプションの買いを売り戻し、コールオプションの売りを買い戻すことになる。
また、相手の証券会社はエヌビディア株の空売りを買い戻し、プットオプションの売りを買い戻し、コールオプションの買いを売り戻すという反対の動きをする。
これが相対で行われるので、お互いのポジションを相殺するだけのことだ・・・だから、市場への影響は中立になる。
結論的にいえるのは、ソフトバンクが保有する30億ドルのエヌビディア株を売却しても、株価にはほとんど影響しないということだ。
ブルームバーグのニュースを見た人が、エヌビディア株を第4位の株主であるソフトバンクが売却すると大変な事になると考え自分の持ち株を売却する、というのは大きな間違いだということになる。



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孫さんのエヌビディア魔法(前編)

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ブルームバーグは、ソフトバンクがエヌビディア株を売却する計画だと報じている。
・・・「米中貿易摩擦のほか半導体メーカーの需要や成長見通しの悪化でエヌビディア株は10月のピークから48%下落している。株価急落でソフトバンクは持ち株を手放す方向に傾いた。」
・・・「ソフトバンクは2017年前半にエヌビディア株の保有を30億ドルに積み上げ、4位の株主となった。持ち株はビジョンファンドに移管された。」
・・・「持ち株を積み増しながら株価下落をヘッジできる「カラー取引」を行い、この取引で30億ドルの利益を上げるだろう。」

ソフトバンクがエヌビディアに投資したのは、確か株価が140ドルの頃だったはずで、その後株価2倍以上の大幅上昇し292ドルを付けた。
現在の株価は150ドル台とほぼ「往って来い」という状態で、現物株では10%程度、30億ドルの投資ならば3億ドルの利益にすぎない。
なぜ、孫さんは株価の「往って来い」にもかかわらず、大幅な利益を上げることができるのか?
これはどういうことだろうか?
これが孫さんのエヌビディア魔法で、ブルームバーグのニュースでも出てくる「カラー取引」だ。

カラー取引というのは金利の取引で、キャップ(上限金利)とフロアー(下限金利)を取引するものだ。
変動金利が上限を超えると困る人がキャップ料を支払い、相手が変動金利が上限を上回った分を払うというような取引で、株式のオプション取引に似ている。
これからは想像だが、おそらく株式オプション取引でいう「ゼロ・コスト・オプション」を使ったのではないかと思う。

簡単に言うと・・・
オプションを買うということは、オプション料を支払い(買い、または売りの)権利を買うわけだが、ゼロ・コスト・オプションはこのコストであるオプション料をゼロにする取引だ。
オプションを買うとオプション料というコストを支払い、オプションを売るとオプション料を受け取ることになるので、オプションの買いとオプションの売りを組み合わせればオプション料を払わなくて済むことになる。

現物株であるエヌビディア株を保有しているソフトバンクなので、株価下落をヘッジするオプション取引は、プットオプションの買い+コールオプションの売りという組み合わせになる。
これでオプション料の支払いはなくゼロ・コスト・オプションになるし、株価の下落をヘッジできる。
つまり、株価が下落すると現物株には損失が出るがプットオプションの買いがあるので収益が上がる、一方、株価が上昇するとプットオプションの買いが損失となるが現物株の利益がオプションの損失をカバーするという取引だ。
このゼロ・コスト・オプションをエヌビディア株の上昇に合わせて、証券会社と相対で取引していったと想像できる。
こうすれば、エヌビディア株が「往って来い」になったとしても、株価が高い時にこのオプション取引を積み上げていけば、株価が下落しても利益を上げることができる。
これが孫さんのエヌビディア魔法の正体だろう。

でも、不思議なのは孫さんは「2040年のシンギュラリティ」を目指す長期投資としてビジョンファンドを作ったはずで、なぜ、短期的な株価ヘッジをしたのかという点だ。
ビジョンファンドは単なる儲けるためのファンドに変質していくのかもしれない。
次回、30億ドルという巨額な相対取引がどのようにエヌビディア株の変動に影響したかを考えてみたい。




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ソフトバンクの親子上場はカオス(2)

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まず、ソフトバンクのファンダメンタルを今4-6月期で確認しておこう。
営業利益は7150億円のうち、通信のソフトバンク事業が2218億円、ビジョンファンドのSVF事業が2399億円、スプリント事業が981億円、ヤフー事業388億円という状況だ。
通信のソフトバンクがキャッシュフローを稼ぐキャッシュカウ(安定的なキャッシュを生み出す牛)で、ビジョンファンドのSVFはソフトバンクの将来成長のカギを握るというファンダメンタル構造を持っている。
しかし、通信のソフトバンク事業は孫さんは伸びていると主張しているが、国内のスマホ市場も成熟化し、今後、政府主導で通信料の低下が行われると減益になる可能性もあるだろう。
ヤフー事業は今回の子会社上場に紛れ込ませる形で通信ソフトバンク事業に株式を移し、事業再編を行っている。
スプリント事業は黒字化を達成しているが、売上の伸びがマイナスで今後の利益成長期待はない。
総じてこれらの通信・国内ネット事業部門はそれほどの成長は期待できないと思われる。

一方、ビジョンファンドのSVF部門は営業利益の33%の2399億円を計上し順調に伸びているが、孫さんはそのずっと先を見ている。
孫さんの考え方は、シンギュラリティ(技術的特異点)、AIによって機械が人間を越えていく時代に向けた投資を一段と積極化させるということだ。
その時代の中心に、ARMのAI化されたチップが、さらにNVIDIAのクラウドのAI化が地球のインテリジェント化、スマート化を実現するとしている。
ARMのチップ出荷量は+17%の55億個、シェアリングのWeworkやDIDI、ロボットのボストンダイナミックスなどビジョンファンドが出資している会社はたしかに伸び盛りだ。
しかし、NDIDIAの3割以上の下落に見られるように期待が先行しているだけに株価のボラは高い。

こうしてファンダメンタルを見ていると、今回の通信子会社の上場には二つの意味があると思われる。
一つは子会社上場で調達した資金を成長性の高いビジョンファンド部門へ回し、成長性の低い部門から高い部門に資金をシフトさせさらに成長を追求するという意味だ。
ビジョンファンド2号の設立も視野に入っており、ソフトバンクの群戦略(強いコミットメントで完全買収するのではなく、筆頭株主として自由な経営を支援する)を進めていくだろう。

もう一つは流動負債8兆2000億円、長期借入金5兆3000億円、社債7兆2000億円という負債を減らし、財務基盤を改善させようということだ。
ソフトバンクの借入金の大きさは金利上昇局面に入ると問題が多い。
したがって、通信子会社を上場させ、キャッシュを得ることで借入金を減らせることがグループ全体のプラスになるという判断だろう。

しかしながら、通信ソフトバンクの上場はキャッシュカウを部分的にでも手放すことで、ソフトバンクの借金だらけの経営リスクは高まる。
ビジョンファンドも投資先がかなり期待先行であり、金融情勢の悪化(長期金利の上昇=割引き率の上昇)とともに株価の現在価値も低下しやすく不安定化する。
ソフトバンクの親子上場はカオスとしかいえない。




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ソフトバンクの親子上場はカオス(1)

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ソフトバンクが通信子会社の上場計画を進めている。
親子上場は安易な資金調達方法として多くの企業グループが使ってきた「打ち出の小槌」だった。
子会社を上場させて株式の部分売却で資金を調達でき、しかも、50%以上の株式保有で連結対象となり、子会社の利益をグループ利益にフルに連結できる。
上場して資金調達ができて、しかも決算にフルに貢献できる安易な資本政策で人気だったが、コーポレート・ガバナンスの観点からは少数株主の存在が様々な論点を含んでいる。
今回は主に親子上場の問題点からソフトバンクをどう考えるかを、そして次回ソフトバンクの経営戦略の中で親子上場をどう考えるかを話してみたい。

まず、東証の上場基準や特別決議の株式保有比率のしばりがあり、品薄株となること。
東証の上場基準では、親会社や特定の大株主がその上場企業を保有する特定保有比率が85%以下と規定されている。
つまり、子会社を上場させる場合、親会社の持ち株比率を85%以下にする、要は15%以上は子会社上場時に売却しなければならない。
と同時に商法の規定で、連結子会社にするには子会社を50%以上保有する必要があり、さらに、資本政策で(会社合併や分割など)特別決議を必要とする場合66%以上の賛成が必要で、上場後の子会社を完全な支配下におくためにはおくためには、親会社はおよそ70-80%の子会社株式を保有することになる。
つまり、わずか、20-30%程度の株式を上場させるにすぎない。
そして、そのわずかな上場株式が市場で取引され株価を決定してしまうことになる。
ソフトバンクの通信子会社株は相当に品薄株となり、市場での株価変動が大きくなるだろうし、これが親会社のソフトバンク株にも影響するだろう。

もう一つは最近のコーポレート・ガバナンス・コードで少数株主の権利を尊重せざるをえないことだ。
ガバナンス・コードは「株主の権利」「株主以外の利害関係者との協働」「適切な開示」「取締役の責務」「株主との対話」など5項目を定め、上場企業の行動指針をしているものだ。
子会社の上場はこうしたガバナンスコードから大株主である親会社の勝手な振る舞いを制限する。
ソフトバンクのような戦略的な企業には少数株主の尊重は通信子会社の経営スピードに影響する問題となる。
おそらく孫さんの興味はすでに通信ビジネスにはなく、シンギュラリティ(技術的特異点)に向けたグループ戦略に神経集中しているのだろう。
そうなると、さらに子会社上場が裏目に出る可能性があろう。

業界環境は菅官房長官の「日本の通信費は高すぎる」発言以降、厳しさを増している。
確かに通信費を国際比較してみると日本の通信キャリアーの高さが明確なので、通信費引き下げの圧力は今後さらに強まることも予想される。
通信キャリアー全体の収益悪化が予想される環境の下で、通信子会社を上場させるのはいかがなものかと思う。
IPO価格は今後決定されるだろうが、今回のIPOが少数株式の売り出しであり、しかも収益環境の悪化が見込まれる中で、子会社上場に大きな期待を持つ投資家は限られるのではないだろうかという疑問を払拭できない。
やっぱり、この親子上場はカオスだと思う。
次回は、ソフトバンクのファンダメンタルを検討し、孫さんのグループ戦略の中でこの親子上場の持つ意味を考えてみたい。 




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ESG投資とソフトバンク

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サウジの体制批判記者をトルコのサウジ総領事館で殺害した事件で、トルコのエルドアン大統領が会見し計画的なものだと断定した。
先にも書いた通り国家間の問題として原油市場に大きく影響することはないだろうと思われるが、民間企業にとってはとても厄介な問題となりそうなことがある。
それは最近流行のESGだ。

ESG投資とは、欧米の年金では昔から社会的責任投資(SRI)の大きな柱となってきた考え方で、欧米の年金基金や国連などの国際機関の年金で採用されてきた実例がある。
国連では責任投資原則(PRI)を定めていて、国連の資金を運用する運用会社はこのPRIに署名し、毎年、この原則にそった情報開示が求められる。
最近は日本の年金、GPIFでも採用され、ESGの原則にそった運用を運用会社に求めるようになってきた。

そもそもESGは、E(環境)、S(社会的責任)、G(企業のガバナンス)の意味だが、東芝などの粉飾決算、自動車各社の排ガス・燃費の改ざん、スルガ銀行の不正融資・・・などなど多くの日本企業はESG原則のうちGの企業バンナンス問題でアウト!!となってきた。
でも、今回のサウジ記者殺害事件は、Sの社会的責任でアウト!!となる可能性がある。

社会的責任はかなり広範囲で捉えられる問題で、人権は特にセンシティブな問題だ。
過去には、海外の生産拠点で児童に強制労働をさせたとか、輸出した電子部品が海外企業の兵器生産に使われたとか、などなどで日本企業が引っかかる事例もあった。
そして、今回はサウジのジャーナリストという言論の自由の中心にいる人物を、法律に基づかない不法なやり方で殺害したという事件で、S(企業の社会的責任)の観点からすればサウジに関係している企業には投資が困難になる場合もありえる。
すでに欧米企業では、リチャード・ブランソンのバージングループが、同社の宇宙事業に対するサウジからの10億ドルの出資をキャンセルしたと報じられたが、シリコンバレーなどでサウジとの関係を見直す企業も今後増えてくるはずだ。
日本ではサウジのMBS(皇太子)から巨額の出資を受けているソフトバンクのビジョンファンドが大きな焦点となってこよう。
数兆円単位でサウジが出資した1号ファンドだけでなく、10兆円規模でスタートする2号ファンドもサウジの巨額出資がすでに計画されている。
こうしたファンド出資はサウジに直接の利益を与えるものとしてESG原則に抵触してくる可能性もありそうだ。
今後の成行きには注目が集まるだろう。
サウジでの国際会議での講演をキャンセルようだが・・・・孫さん、どうするの?



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株式需給の達人(おもしろ相場格言)
「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
株式需給の達人(バリュエーション)
PERやPBRなどバリュエーションを理解し割安/割高の実践的判断の基に理論的な株式投資を解説します。 割安とは将来のリータンを示すのか、単に成長性がないというだけなのか、事例をもとに解説します。 株式投資の基礎として大切なもので、是非一読をおすすめします。
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