株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版の「株式需給の達人(おもしろ相場格言編)」を出版しました。
既刊の「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」「チャートの達人」「個人投資家の最強運用」「株式需給の達人(基礎編)」「株式需給の達人(投資家編)」とともに一読をおすすめします。

ビットコインの話

クレジットイベントを考える(4 ビットコインETF)

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10/25に「クレジットイベントを考える(三つのETF)」を書いた。
その後、NYダウは上昇しているのにもかかわらず、この三つのETF、ビットコインETF、アークインベストメントETF、クレーンシェアーズチャイナETFの価格低迷が続いている。
前回使った一覧表を11/14現在でアップデートした。

ティッカー ピーク       直近値        下落率    資産総額
BITO   41.12ドル(21/11/12)    9.81ドル(22/11/14)-76.1%  600百万ドル
ARKK   156.58  (21/2/12)   38.91  (22/11/14)-75.5  6911
KWEB  102.20  (21/2/12) 24.47  (22/11/14)-76.1  4658

クレーンシェアーズチャイナETFは中国のゼロコロナ政策の転換期待で、アークイノベーションETFは長期金利ピークの期待で一旦反発したが、まだまだ不安定な感じだ。

ビットコインETFは暗号通貨取引所FTX社の経営不安もあり直近安値を割り込み、ピークからの下落率は76%に達した。
ETFを購入した投資家全員が損失を出している状態と思われる。
ただし、資産規模は700~800億円程度と小さく、致命的な損失規模ではない。に

しかし暗号通貨全体となると、クレジットイベントが起こりえる規模だ。

FTX社の経営破たんでは損失が数兆円レベルに達し、投資家の資産は保護されないという。
経営者は100億ドルの顧客資産を自分の投資会社口座に移管した、顧客資産が守られていない状況がヤバい。
顧客の資産を預かる金融機関や金融会社にとって顧客資産の分別管理は基本中の基本であり、会社が破たんしたとしても顧客資産は保護されるのは基本的な社会的約束だ。
FTX社ではこの基本ができていないとしたら、社会的に存在すべきでない会社ですぐに清算して顧客資産を守るべきだ。
これがFTX社だけでないとしたら、暗号資産トレーディング会社の信用問題は根深い。
こんな状況では暗号資産業界全体に厳しい目が向けられるのは当然のこと。

暗号通貨で最大のビットコインの時価総額は現在4000億ドル程度。
ピーク時には1.3兆ドルあったので、ピークからはおよそ三分の一に減価している。
それでも円ベースでは50兆円以上と、価格が大きく下落したとはいえまだまだ時価総額は大きい。
このビットコインの価格下落は世界の投資家の損益に大きな影響力を持つ。
仮に50%の損失が表面化すれば投資家の合計損失は20兆円レベルの巨額損失になっているはずだ。

この巨大な損失が業界や顧客口座に隠されている。
それが表面化した時にはけっこうヤバいインパクトがあるだろう。
それが一般の金融機関にどれだけ影響するかどうかは分からないが、暗号資産関連の金融会社、暗号資産に強気だったテスラなどの事業会社などには気を付けた方がいいと思う。
市場全体への影響は隠れた損失がどのぐらい表面化するかによる。
今のところ、損失を隠す余裕がある金融機関が多いと思われるので一気に暴落はないだろう。

このクレジットイベントが株式市場に影響するとしたら、「実態のない仮想資産」から「実態の明らかな実物資産」への資金移動が起こるだろうということだ。
投資家はより確かな実態のある資産を指向する。
実物資産としては金ダイヤモンドなどの希少資産、土地やマンションなどの不動産、中古品の価値やリセールバリューを重視した投資などだろう。

ビットコイン問題はどこまで広がるかに注意が必要。
クレジット問題は「あとからリボ」で効いてくるので継続的に注意して見ていきたい。



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ビットコインETFの功罪

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鳴り物入りで昨年10月に上場したビットコインETF(ティッカーBITO、プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF)は暗号通貨の新しい時代を作り出すはずだった。
当時、盛んに宣伝されていたのは、暗号通貨の胡散臭さを嫌がる一般投資家でも証券口座で買えるETFの上場で、投資家のすそ野が急速に広がることだった。
これが暗号通貨の未来を変え、法定通貨に変わる新しい通貨になるはずだった。

でも、上場から8か月、まだわずか8か月しか経っていないのに価格は大暴落、昨年10月22日の初値39.51ドルから先週末(6/22)12.47ドルに落ち込んだ。
下落率では-68.4%とほぼ全ETFの中で最悪の部類に入る数字をたたき出した。

一方、ビットコイン現物価格は昨年10月22日で62210ドル、6月11日の価格は20384ドルで、下落率はー67.2%だった。
その後、この週末にビットコイン現物はついに2万ドルの大台を割り込み悲惨な状況にあるが、ビットコインETFは、わずか半年強で現物を1.2%アンダーパフォームする一段と悲惨な状況に陥っている。

初値でのAUM(アセット・アンダー・マネージメント=運用資産残高)は1250億ドルだったが、現在639億ドルで-48.8%だった。
ETF価格が-68.4%でAUMが―48.8%・・・ということは、200億ドル程度の押し目買いが入ったと思われるが、押し目買いの効果もなく暴落してしまった。
ビットコインETFの投資家は全く良いところもなく、買い下がりをして大きな損失が抱えた。

現物BTCよりもETFの下落が大きくなる、悲惨な理由は二つある。
一つは、日本のレバETFとも共通する要因だが、先物の期近物の買い建てを続けていくと、ロールオーバー費用がかかり、現物価格を徐々に確実に下回っていく。
もう一つは、ETFは米短期証券とビットコイン先物を組入れている商品なので、金利上昇がマイナスになることだ。
この間、FRBの急激なFFレートの引き上げは短期証券のリターンを悪化させてきた。
長期保有であればあるほどここが詐欺的な部分だろう。

逆に日本人投資家にとってETFが有利なのは税制だ。
日本ではビットコインの収益は雑所得で課税されるが、ETFならば他の証券投資と同じように損益通算もできるし、20%の分離課税を選択できる。
こうした税制面でもの優遇から購入した投資家もいるだろう。
これだけの暴落となると、損益通算ができるETFは有利な商品だ。

ビットコインETFは先物ファンドの欠点があるが、税制上では分離課税と損益通算ができることで有利性を持っている。
税制では有利だが、長期で持てば持つほどパフォーマンスが不利になる。
ビットコイン自体がファンダメンタルな価値がない商品で投資家の期待だけに支えられてる。
それだけに価値が見えにくい。
ビットコインの現物か、ビットコインのETFか?



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ビットコイン暴落と信用不安

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最近とても気になっているのは、「株価下落によるファンドの破たん」と「クレジット問題の表面化、信用不安」の二点だ。
これが起こると、ジェレミーダイモン氏のいう「経済ハリケーン」が到来してしまう。

信用不安の面では暗号通貨、ビットコインが気になる。
単にビットコイン価格が暴落して大きな損失を被っているというだけではない。
日本でも暗号通貨のマイニング事業を行う業者もいるし、暗号通貨の取引に参入した証券業者もいる。
ファンドや業者の破たんから信用不安が生じる可能性もある。

まずは基礎データを確認しておこう。

        直近値     ピーク     変動率   時価総額
ビットコイン 19018ドル 66971ドル -71.6% 3643億ドル
イーサリアム   993ドル  4812ドル -79.3% 1200億ドル
直近値は6/18現在、ピークは昨年11月高値。

ビットコインは昨年11月から71%下落し、時価総額は1400億ドル以上が減少した。
イーサリアムは79%も下落し、時価総額は300億ドル以上の減少だった。
この二つの暗号通貨だけで、時価総額が1700億ドル以上が消えてしまったことになる。
ちなみに1700億ドルは23兆円と巨額の損失だ。

この投資家の損失(23兆円)だけでなく、マイニング業者、暗号通貨取引所、暗号通貨取引業者などの財務状態も問題になってくるだろう。

日本ではGMOインターネットが暗号通貨のマイニング事業を行っている。
2021年12月期ではこのマイニング事業が黒字転換し、60億円の売り上げと9.5億円の営業利益を計上した。
しかし、1-3月期を見ると、営業利益は前年比96%の減少、たったの1億円の黒字だった。
この4-6月期は一段と厳しくなってきている。
4-6月期の決算が出る7月後半に注目したい。

マイニング業者は中国勢が高いシェアを持っていたが、昨年5月に禁止された。
それでも中国業者はマイニングに戻ってきているという話もあり、アメリカと中国がシェアを握っているようだ。
しかし、マイニングの利益=ハッシュプライスは大幅に下落、マイニングに必要とされる電力の価格高騰ーコスト高に加え、暗号通貨の暴落が売上げを直撃している。

暗号通貨の暴落は、暗号通貨に投資した投資家の損失だけでなく、マイニング業者、取引業者の収益を大幅に悪化させるだろう。
今後、詳細が出てくると見られるが、彼らの財務状態の悪化が金融システミックリスクにつながるか注視している。


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ビットコインとテスラ株、「W天井」か「W天井返し」か?

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ビットコイン価格が急上昇し、13億ドルのビットコインを保有するテスラ株も上昇してきた。
440倍を超えるPERのテスラ株、投資尺度がないビットコイン、ともにファンダメンタル要因が効きにくく価格は需給で決まる。

チャートで見ると、非常に興味深いパターンを描いている。
一番天井後に大きく下落し、短期間で二番天井に向かうW天井のパターン・・・深い谷を持つW天井型だ。

テスラ株の動きは・・・
一番天井が2021年1月880ドル、その後の深い谷が5月で536ドル・・・その間40%の大きな調整となった。
その後上昇に転じビットコインの上昇に合わせてテスラ株も上昇し、840ドル台と再び一番天井に近づいてきた。

一方、ビットコイン価格の動きは・・・
一番天井が2021年4月63500ドル、その後の深い谷が月で29807ドル・・・その間53%の大幅な下落を記録した。
その後上昇に転じ6万ドル台に戻り、一番天井を抜くような勢いになっている。

一番天井から40~50%の大幅な下落をし、深い谷を形成後、二番天井に向かうパターンは「深い谷を持つW天井型」を分類している。
このパターンでは間の谷が深いので、二番天井に向けての再上昇に大きなエネルギーを使う。
そのためにビットコインでは64000~70000ドルぐらいの範囲、テスラ株では880~950ドル程度に大きな抵抗帯ができる可能性がある。

逆にこの抵抗帯を越えていくと、「W天井返し」で深い谷の倍返しが起こるかもしれない。
倍返しでは、ビットコインでは9万ドル台、テスラ株では1200ドル台という値段が計算される。
「W天井」か「W天井返し」か、大きな分岐点になりそうだ。
どっちにしても理屈じゃなく、需給だけの問題なので予想は難しいが・・・。


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ビットコイン、ボラティリティはリスク(2)

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ビットコインETFはSECに5件申請されているようだが、まだ認可されていない。
しかし、会社型投信はすでに存在していて、暗号通貨資産をポートフォリオに組み入れたい機関投資家には便利な商品だ。
グレイスケール・インベストメントが運用しているグレイスケール・ビットコイン・トラスト・・・最古のビットコイン投信で米国の個人や機関投資家に人気の投信だ。

ブルームバーグのデータで確認してみよう。
資産総額は239億ドル、日本円で2兆6000億円規模の大型投信だ。
パフォーマンスは1年リターン+177%と絶好調だが、3か月リターンはー30.5%とマイナスに転じた。

この投信は会社型なのでOTC(店頭市場)で取引できる。
5/29の現在価格は30.22ドルだ。
しかし、この投信のNAV(ネットアセットバリュー)は34.64ドルであり、時価がNAVを4.42ドル下回るディスカウント状態にある。

NAVはこの投信が保有する暗号通貨の時価であり、投信はNAV前後で売買されるのが普通だ。
ディスカウント状態では、この投信を30ドルで買って、暗号通貨のバスケットを34ドルで空売りすれば、4ドルの裁定収益が得られる。
しかし、問題は(1)暗号通貨のバスケットの空売りが可能か、(2)裁定取引の決済が可能か、という二点ある。
株価指数の裁定取引ならば、限月末に「SQ」があり、現物の寄り付き価格で先物SQ値が決まるので裁定収益を確実に実現化できる。
しかし、ビットコイン市場で空売りが可能としても、こうした「SQ」のような出口がない。
そのため会社型投信では、機関投資家の売りがそのままディスカウント状態となってしまう。

大口の機関投資家がボラティリティの高いビットコインのポジションを縮小しようとすれば、こうしたディスカウント状態が長引く可能性も否定できない。
理由は・・・
(1)ビットコインのボラティリティが上昇し、リスクパリティを採用している機関投資家がポジションを縮小している。
(2)将来のビットコインの下落を見込んでいる投資家はディスカウントでも売りたいと考えている。

だからといってビットコインが下落するとは必ずしも言えない。
ギャンブル投機家の動きがビットコイン相場を決めているからだ・・・ギャンブル投機家が買い続ければ、ビットコイン相場が一段と上昇する可能性はある。
機関投資家を中心に高いボラティリティを忌避する動きが本格化すれば、ビットコイン相場はより投機的な市場になっていく。



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ビットコイン、ボラティリティはリスク(1)

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昔、もしビットコインが貨幣だったら、世の中を根本的に変える可能性があると思った。
国家の制約を受ける貨幣から解放され、世界中のどこへ行っても、どんなサービスや商品でも取引できる自由な貨幣を人類は手にすると思ったからだ。

残念ながら、ビットコインは貨幣ではない。
貨幣には三つの機能がある・・・(1)価値の表示、(2)価値の交換、(3)価値の貯蓄だ。
例えば、「円」は日本国内の商品の価値を価格として提示している、「円」で様々な商品を買う=「円」と商品の交換ができる、さらに「円」を銀行に持ち込めば貯金できる。
この条件を満たさないビットコインは貨幣にはなれない。

ビットコインは価格変動が大きすぎて「価値の表示」には適していない。
この商品の値段は0.5ビットコインと言われてもピンとこないし、ビットコインの変動で価値が急激に変わってしまう。
また、ビットコインで商品を買う=ビットコインと商品の交換もできない。
イーロンマスク氏がビットコインでテスラ車を買えるとしたが・・・結局やめた。
唯一できるのが「価値の貯蓄」で、ビットコインを保有し続けた人は大きく貯蓄を伸ばした。

つまり、ビットコインは投機商品で、実際に「円」や「ドル」のように使うことはできない。
投機としての性格は競馬やカジノなどのギャンブルとほぼ同じで、「一攫千金の夢」があることから生じる。
一日で5%も10%の変動するビットコインは、「一攫千金の夢」を追うギャンブル投機家を魅了しているのだろう。
この投機商品としての人気はこの高いボラティリティが基礎にある。
逆にボラティリティが低い商品だったら、ギャンブラーは見向きもしない。

しかし、これはあくまで投機商品としてみた場合であり、投資商品としては全く違って見える。
投資の視点では「ボラティリティは魅力」ではなく、「ボラティリティはリスク」だからだ。

ごく短期のボラティリティ指数を見てみよう。
現在のビットコインの30日ボラティリティは6.1%と異常に高い。
「ドル」や「円」の30日ボラティリティは0.5%程度で1%にも満たない。
「金」の30日ボラティリティも1.2%程度にすぎない。
ビットコインのボラティリティが圧倒的に突出して高いのがわかる。

投資としてのポートフォリオで考えてみよう。
様々な通貨と金や貴金属などでポートフォリオではボラティリティの水準で組入れ比率を決める。
この考え方でポートフォリオを作ると、ボラティリティの低い通貨は多めに保有し、中間の金や貴金属は平均に保有し、ボラティリティに異常に高いビットコインにはごくごく少額を投資するということになる。
この考え方は「リスクパリティ」と呼ばれ、ポートフォリオ全体のリスクを中立化する手法だ。
多くの機関投資家が「リスクパリティ」を基礎に運用しているし、「リスクパリティ」と公言していない場合でも、ポートフォリオの構成に使っている。
これによって大きな損失を出さないようにポジションをコントロールできるからだ。

つまり、投機家には高いボラティリティは歓迎されるが、投資家には高いボラティリティは忌避されるということだ。
現状のビットコインの高いボラティリティから、一般の投資家はポジションを大幅に縮小させる。
特に機関投資家にはこうした「リスクパリティ」を採用している会社が多く、ボラティリティが高まると、自動的にポジションを引き下げる。
個人投資家も機関投資家と同様の行動を取る人も多いかもしれない。
残るのは「ギャンブル好きな投機家」だけかもしれない。
ギャンブラーが買えば上がり、売れば下がる・・・ビットコインの相場はこんな状況にあるのではないだろうか?


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ウィークリー雑感(6/23 FBの暗号通貨、中銀の反感)

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フェイスブックが暗号通貨に乗り出す・・・その通貨はLIBRAで、なんか待ちに待ったような理想の暗号通貨だ。
まず、第一に、通貨の価値を既存のドル・ユーロ・円などに連動させていること。
ビットコインはその供給量を絞り込むことで将来の値上がり期待が生まれるように設計されていた。
でも、このLIBRAは主要通貨に連動させることで、著しく投機性を抑え、実際に使える代替通貨にしようと設計されている。

第二に、フェイスブックのアプリなどで使えるので、全世界で20億人以上が使うことになること。
暗号通貨を送金に使う場合、送金相手も同じアプリに参加していないと使えない。
しかし、フェイスブックは全世界で20億人以上が参加する巨大なアプリなので、個人間の送金などでも使い勝手が非常に良いはずだ。

第三に、どんな金融取引をしても手数料のない便利な暗号通貨になることだ。
個人間の送金も無料、海外への送金も無料、どの通貨に交換しても無料・・・などなど。
LIBERAを持っていけば、海外旅行でも一々ドルやその他の外貨に換える必要もないし、海外サイトで買い物をしてもLIBERAで払えば、なんの問題も手数料もかからない。

まさに待ちに待った仮想通貨の登場だといえる。
でも、このニュース発表後、フェイスブックの株価は上がらずに、逆に小幅に下落した。
この便利な仮想通貨は中央銀行の通貨発行権を制限してしまう可能性があり、中銀や金融当局からは逆賊のように見えるだろう。

第一に、日本では財務省の造幣局で日銀券が印刷されるが、そのコストは紙とインクであり、1万円札でも数円から十数円程度だ。
それを1万円で市中銀行に売ると、9990円ぐらいの利益が上がる・・・これがシニョリッジと呼ばれる通貨発行差益だ。
フェイスブックのLIBRAが実際に流通してしまうと、LIBRAが流通する分の通貨発行差益を通貨当局が受け取れなくなる可能性がある。

第二に、さらに通貨供給量の管理は金融政策の大きな柱の一つだが、フェイスブックがLIBRAをどんどん発行し、使われるようになると、そのLIBRAがいつ、どのぐらい円に交換されるかで、円の通貨供給量が決まる・・・つまり、通貨当局が発行量を管理することが不可能になってしまうことだ。

その他、よく言われる通り、FBの個人情報セキュリティの問題もある。
個人情報に流出リスクに加え、LIBRAの盗難リスクが上乗せされ、盗難リスクを誰が負担するのか、盗難を防ぐセキュリティのコストを誰が負担するのか、金融システム全体に影響した場合金融当局はどうするのか・・・などなど、多くの問題が浮上するだろう。
LIBRAは本格的な暗号通貨として成長し、既存の通貨が代替していく可能性があるが、その前途は必ずしも簡単ではないかもしれない。

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ビットコインの死(ICOトークン)

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ICOはコインを発行して投資家から資金を調達する手段だが、有価証券とは違い、明確な監督官庁もなく、個人や企業(インチキ企業も含めて)が勝手にコインを発行して投資家に販売するところにいい加減さがある。
勝手にコインを発行すれば、当時のビットコイン人気でどんどん売れてしまい、インチキでも何でもよく売れた、だから多くは詐欺の温床になってしまった。

でも、2017年7月にOMISE(おみせ)が行ったOmiseGOのICOは、ワシも買いたいと思ったぐらいの会社だった。
このOmiseGOはインターネット決済のプラットフォームを開発している会社で、日本、シンガポール、タイ、インドネシアの4か国で、銀行口座を持っていない人(アジアには銀行口座を持っていない人も多い)でも手数料なしでインターネット決済が可能になるツールを提供している。
その他にもSNS上でオンライン販売をするソーシャルコマース、アリペイやコンビニや請求書払いなど様々な決済手段を提供している。
この会社は2017年7月にICOで2500万ドル(30億円弱)を調達したのだが、発行されたトークンは65%がICOに参加した投資家に、5%がエアードロップとしてEthereum保有者に、残りはOmiseGOの社員と開発者に配分された。

このトークンはEthereum準拠の暗号通貨として取引され、現在、価格1.49ドル、時価総額150百万ドルという値段が付いている。
でも、ICOの調達額は25百万ドルで、その他配分したトークンも含めて4000万ドル程度だと思われるので、時価総額は当初まだ3倍以上の規模を維持している???
発行された2017年7月のデータを見ると、価格1.53ドル、時価総額150百万ドルと表示されていて、おそらく、追加で配分したトークンが100百万ドル=100億円程度あったのかもしれない。
会社のHPで確認しても、ICOは1回だけでその後行われていないので、この時価総額の理由は明確には分からない。
とにかく、OmiseGOのトークン価格はピークで28ドルと20倍に上昇したあと、大暴落して元の1.5ドル水準に戻ってしまったということだ。
価格水準からはICOに参加してトークンを買った投資家はまだ損はしていない。
もちろん、価格が20倍になったところで売り抜けていれば大儲けだったわけだが、それでも当初の価格を下回っていないだけで投資家としては良かったと思う。

この後、会社はトークンをどう処理していくつまりなのか、一度、聞いてみたいものだ。
一般的にはトークンは発行量の上限があるビットコインよりも発行を増やせるEthereumの仕組みを使って作られているので、トークンの問題はEthereumの価格の反映されやすい。
インチキなトークンの今後の処理も含めてその分、Ethereumnに負荷がかかっているということかもしれない。



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ビットコインの死(採掘業者の採算)

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ビットコインの暴落に伴うもう一つの問題はビットコインの採掘、マイニングで、マイニングが行われなければビットコインの取引は止まる。
マイニングは以前は中国勢が圧倒的に多く、その状況もよくつかめなかったが、最近ではSBI,GMOなどの日本企業がマイニングに参入しているので、これらの上場企業の決算資料である程度の状況はつかめるようになった。

そこで、ビットコインのマイニング事業に参入しているGMOインターネットの7-9月期の決算資料で確認してみよう。
マイニング事業ではマイニングの計算スピードであるハッシュレートとビットコインの総採掘量が指標になっている。
ハッシュレートは6月384PH/S、7月384PH/S、8月459PH/S、9月479PH/Sとなっている。
PH/Sはペタハッシュ/秒(1秒間に千兆回の計算を行う)でマイニングのスピードが向上していることを意味する。
さらにGMOは年内に800PH/Sにまで能力を引き上げていくとしている。
一方、総採掘量は6月3.76億円、7月4.89億円、8月4.00億円、9月3.82億円という状況でほぼ横ばいで伸びていない。
資料にはビットコイン価格の停滞と、総ハッシュレートの上昇(業界全体のスピードアップ)が収益性の低下を招いているとコメントされている。

GMOのマイニング事業は収益12億円(6か月)で営業利益は6.4億円の赤字だ。
ビットコインの価格が7-9月期よりさらに下落している現在、マイニングの収益はほとんど上がらないだろう。
さらに問題なのはマイニング事業の投資キャッシュフローが183億円の赤字となっていることだ。
つまり、183億円の先行投資を実行し、マイニングのスピードを引上げ、総採掘量を増やそうとしているが、収益がなかなか増えてこないという状況なのだ。
そんな状況下で、今回のビットコイン価格の暴落が起こっており、さらに採算を悪化させてしまう。
GMOグループ自体は収益を上げているので、マイニング事業の赤字が問題となる水準ではないが、このまま先行投資を続けても投資回収できるのか疑問にはなってくるだろう。

いずれにしても、マイニング事業の採算の低下はGMOに限った問題ではなく、業界全体でサーバー等への新規投資を手控えてくるだろう。
NVDIAの7-9月期決算でも、ビットコインのマイニング事業向けのグラフィック半導体等の供給過剰で株価が大きく下がった。
この傾向は今後も続きそうというか、ビットコイン価格の下落から見れば、もっと厳しくなると想定しておく方がいいだろう。




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ビットコインの死(バブルの話)

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ビットコインが暴落し、ついに4000ドルを割れた。
ここ数か月は6000ドル程度で横ばいでビットコインの採掘業者が利益が出る程度で価格を支えていたと噂されていたが、ついに採掘業者たちも力尽き、ビットコイン価格が下落し採算割れの危険が出てきている。
となると、採掘業者が採算割れで撤退でもするとブロックチェーンの取引記録ができない状態に、つまり、取引が限界点を迎えているということかもしれない。
簡単に言えば、ビットコインの死が近づいている。

ピーク ボトム 変化率
Bitcoin 時価総額 318630 64739 79.68%
価格 19024 3722 80.44%
XRP 時価総額 129513 13748 89.38%
価格 3.34 0.34 89.82%
Etherium 時価総額 135352 12070 91.08%
価格 1395.92 116.7 91.64%
3通貨合計 時価総額 583495 90557 84.48% 
時価総額は百万ドル、価格はドル

仮想通貨3通貨の合計では、時価総額はピークの64兆円から現在10兆円と84%も減少した。
減少した時価総額は54兆円と莫大な損失が出ていることになる。
簡単な計算ではおよそ投資家の平均買いコストは通常、ピークの6割程度であるので、ビットコイン投資家の平均買い金額は40兆円程度とみると、約30兆円の損失が出ていると想定される。
去年は大幅な上昇で大儲けした人たちも多かっただろうけど、今年は大損となるだろう。

ビットコインはオランダのチューリップ・マニア、東インド会社のサウス・シー・バブルと並ぶ歴史的バブルだったというわけだ。
ガルブレイスは「バブルの物語」の中でこう言っている。
「暴落の前には金融の天才がいる」・・・ブロックチェーン技術を発明した人は天才だが、ブロックチェーンを投機の仮想通貨に使ったことが失敗なのだろう・
「輪をかけたレバレッジの再発見」・・・ビットコインの先物などができてレバレッジをかけた取引がバブルを増長したということ。
「新奇らしく見えるもの」・・・全く新しい仮想通貨の誕生で従来の法定通貨が古くどんくさく見えたなら、これは当てはまるだろう。
「真実はほとんど無視される」・・・有識者のうち、JPモルガンのダイモン氏などが最初からインチキと真実を語っていたが、ほとんどのビットコイン投資家に無視された。

この30年も前のガルブレイスの本が、今でもあてはまるというのは、いかに人間が進歩していないかの証拠だろう。
人間は進歩しなくてもAIが進歩すれば、こうしたバブルはなくなるのだろうか?



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株式需給の達人(おもしろ相場格言)
「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
株式需給の達人(バリュエーション)
PERやPBRなどバリュエーションを理解し割安/割高の実践的判断の基に理論的な株式投資を解説します。 割安とは将来のリータンを示すのか、単に成長性がないというだけなのか、事例をもとに解説します。 株式投資の基礎として大切なもので、是非一読をおすすめします。
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