株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版の「株式需給の達人(おもしろ相場格言編)」を出版しました。
既刊の「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」「チャートの達人」「個人投資家の最強運用」「株式需給の達人(基礎編)」「株式需給の達人(投資家編)」とともに一読をおすすめします。

統計数字から考える

消費税1%でも物価は下がらない!!!

税金














どうやら消費税の2年間の引き下げが決まりそうな雰囲気だ。
過去数年間にも及ぶ食品価格の上昇が3〜4割にもなる、その分、消費税は自動的に増税されていることになる。
だから、物価上昇に関わる消費税の増税は消費者に還付するべきと思う。

でも高市さんは選挙時の公約通り、食品の消費税ゼロ(1%+還付金も含む)に動いている。
2年後に想定している「給付付き税額控除」も具体的に決まらないまま時間だけが経っていく。
これでいいのだろうか?


6月の東京都区部消費者物価が発表された。
総合指数で前年比+3.1%、除く生鮮食料品で+3.1%、除くエネルギーでも+3.1%だった。
品目別では、食料+6.4%、通信+5.8%、家具+3.5%・・・光熱費−0.7%
簡単に言えば、食品の値上げが続く一方でエネルギー価格は補助金で値下がりしている、なので総合で3%の物価上昇で済んでいる。

恐ろしいのは、高市さんが補助金でガソリン価格も電気ガス料金も抑え込もうとしているにもかかわらず、総合物価が大きく上昇していることだ。
数ヶ月後、いずれ補助金は予算の限界にくる。
その時、エネルギー価格が上昇したら物価前半は一段と上昇し、庶民の生活は厳しくなるかもしれない。

イラン戦争の停戦と共に原油価格が下がってきていることが一縷の望みだが、トランプがいる限りまた何か起こすかもしれない。
原油先物の下落ーナフサや石油製品の下落ーガソリン価格の下落ー輸送費の低下・・・と好循環に入るとは断定できずにいる。


それでは消費税1%が食品価格を引き下げるのだろうか?
6月の東京都区部CPI、その食品は前年比+6.4%だった。
円安が続く限り輸入物価の上昇は止まらないし、それが国内物価を徐々に着実に引き上げる。
たとえ来年、食品消費税を8%から1%へと引き下げても、この物価上昇+6.3%が続くと考えればチャラで横ばいになるだけで食品価格は下がらない。

とにかく、物価高の元凶である円安を止めないことには何をやっても物価高が続く。
電気ガスやガソリンの補助金も年後半には予算の限界が来るし、来年の食品消費税の引き下げも輸入インフレも食い潰される。
高市さんもよく考えたほうがいいと思う。
まずは「円安を止める」、その後に「厳しい生活者の所得を補填する」、そして「インフレを潤った大企業や経営者への増税をする」、この順番が違うといくら税金を使っても物価を止められない。

下の表は我が家の電気ガス料金だが、電気にしてもガスにしても、ここ3ヶ月で単価が少しづつ上昇しているのが気になる。
光熱費の補助金は7−9月に増やす、でもあまり効いていないのかもしれない。
そして10月以降は補助金が減っていく・・・どうなるのかな?

ç
ガス料金
電力料金
使用量料金単価前年比使用量料金単価前年比

2026/05305391179.7 10.1%2861177341.2 -29.7%
2026/04487723160.9 1.8%3131206538.5 -22.3%
2026/03719229130.0 -0.9%3251139235.1 -21.4%
2026/0212513542108.3 -9.3%4401453533.0 -18.4%
2026/0114515306105.6 -11.0%4271608737.7 -7.6%
2025/1217320673119.5 -4.8%3211269639.6 -17.9%




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FRBの新議長、ホントにタカ派?

FOMCの金利見通し
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一般的には新議長がウォーシュ氏に代わり、FRBは一気に「タカ派」に変貌したと言われる。
でもこのトランプに指名された、ウォーシュ氏がホントにタカ派なのだろうか?
まだまだよくわからないが信じられない。

なので、普通にFOMCの金利と経済見通しで数字を確認すると・・・

①金利見通しの下限値が上方修正。
26年末のFF金利(下限値)が2.62%から3.37%に、27年末も2.37%から2.87%のそれぞれ上方修正され、ここからの利下げ余地が小さくなったのは事実だろう。
中央値では3.37%→3.75%と現状の誘導目標とそう変わらない。
なので、これを持って「タカ派」と言えるのかはわからない。

②インフレ率の上方修正(PCEで2.7%から3.6%)によって金利見通し全体が上方修正。
このインフレ見通しはトランプのイラン戦争の影響などの一時的な要因も含まれている。
戦争の終結の仕方次第で、このインフレ加速化がどこまで現実化するかは不透明感で今後の問題だろう。

確かに利上げは、トランプにゴチャゴチャ文句をつけられるので、FRBも慎重になるかもしれない。
反面、利下げの可能性は遠のいたとはいえるだろう。

というわけでしばらく様子見になるのではないかと思う。
イラン戦争による原油価格や素材価格の上昇、企業取引の価格上昇が明確になったが、戦争終結後、原油価格が下落し物価上昇がどこまで続くかは別問題だ。
という意味では、しばらく時間をかけてインフレ情勢を確認したいはずだ。

金融市場は新議長のタカ派発言で米長期金利が上昇したが、ちょっと短絡的な感じがする。
下の表は経済見通しだが、26年のPCEは上方修正されたが、来年は2.2%から2.3%へと若干の上方修正に留まった。
つまり、インフレは今年後半だけの問題で、来年は落ち着くというFRBは見ているという事だ。
年後半はインフレ情勢を慎重に見極める時間なのだろう。

えも、もし9月FOMCで利上げを決めるようならば、長期債市場を中心に別の要因で金利が上がるかもしれない。
その場合は債券市場の需給要因を見ていく必要がある。


FOMCの経済見通し
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訪日海外客、「非常に堅調」と言える理由

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ヘッドラインでは「訪日外国人が減少、日中関係の悪化が響く」と報じられている。
中国人訪日客が大きく減っているのは事実だが、よく数字を見ると違った姿が見えてくる。

ます5月の訪日客数だが、355万人で前年比3.6%の減少だが、1〜5月の合計では1793万人で前年比−1.1%に過ぎない。
中国人が56%減少したにもかかわらず、全体ではほぼ横ばいにとどまっている。
これが最大のポイントだろう。

詳細を見ていくと・・・

①アジアからの訪日客の増加。
伸び率の高い国から、マレーシア+39.6%で5.68万人、インド+31.3%で5.65万人、シンガポール+21.1%で7.66万人、韓国+15.2%で95.1万人、台湾+14.6%で61.6万人・・。
アジアから客は二桁の伸び率、しかも2〜3割も伸びている。
短距離のフライトでサーチャージの影響も限定的だったのも原因の一つだろう。

②欧州からの訪日客の増加。
ロシア+28.4%で2.46万人、ドイツ+18.8%で5.02万人、イタリア+12.6%で2.81万人、北欧+11.9%で1.74万人、イギリス+6%で5.52万人、フランス+5.3%で4.8万人・・・
航空機がロシア上空は通過できないので、中東経由での訪日客が増えているはずだ。
イラン戦争の終結期待がプラスに働いているだろう。

③その他の地域。
中東+67.8%で3.9万人、メキシコ+30.6%で2万人、米国+7%で33.3万人、カナダ+4.6%で6.94万人・・・
中東からの訪日客の急増が目につく。
イラン戦争で3〜4月は空港が制限されていたので、その分が5月の急増となって現れたのだろう。

訪日客の増加トレンドは、広範囲で力強いものだった。
中国人が71万人から31万人も大幅に減少した分を十分に補ってしまった。
しかも、特定の国に依存するわけでもなく、幅広く世界からの客を受け入れている。
ここに日本の強さがあるのだろう。

さらに中国人でも習近平に従わない自分の意志を持っている人たちが31万人もいることにも注目。
根強い日本ファンがいるといえる。
この状況をマスコミは「中国人の減少で訪日客数が減った」と伝えているが、かなりミスリーディングな記事だろう。

マスコミに騙されるな!



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ワールドカップとデータセンターで景気回復

米雇用統計
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5月の雇用統計で非農業雇用者数が17.2万人と予想を上回った。
これで金融市場はFRBの利上げが遠のいたと判断、債券市場と株式市場が共に下落した。

上のグラフの青い棒グラフに見られるように、雇用統計は3月分から3ヶ月連続で10〜20万人増と、増えてきている。
しかし、平均賃金の前年比上昇率は+3.4〜3.5%で、消費者物価の上昇率+3.5〜3.8%を若干ながら下回っている。
これは、新規の雇用者が増えているが、賃金が若干低めの職種が多いからと考えられる。

5月の雇用統計を業種別に見てみよう。

多い業種から・・・娯楽と宿泊業+7.0万人、政府職員+5.5万人、ヘルスケア+3.5万人、建設業+1.7万人・・・

この時期の特殊要因としては、大規模なデータセンター建設によって建設労働者の雇用が増えていること、今月はじまるワールドカップの開催を控えてホテルや接客業で人員の採用が増えたといえる。
これに沿うように娯楽やホテル、建設などの業種で雇用が拡大している。

米国全体の景気回復によって雇用が増えたというものあるが、それ以上に二つの特殊要因が働いている気がする。
なお、賃金の高い情報通信業は減少傾向で、ビッグテック各社がAI導入によって雇用を削減したことが影響している様子だ。
賃金の伸びが消費者物価を下回っているのは、賃金の高い業種から労働集約的な業種へ雇用が移ったことが影響している。

6月〜7月の雇用数字でも、巨額の設備投資で経済が刺激されている地域、ワールドカップの試合会場の地域、これらは堅調な雇用を示すだろう。
しかしながら米国全体の景気が拡大に向かっているとは一概に言い切れない。

IT設備投資で良い景気と、物価の上昇と景気伸び鈍化、両方が混在している。
これは企業業績にも表れている。
下の一覧表は各株価指数の1年先EPSとその3ヶ月変化だが、中小企業の多いラッセル2000の予想EPSがここ数ヶ月悪化しているのがわかる。
これはワールドカップやデータセンターに関係ない中小企業は苦戦している遠いうことなのだろう。
一方、NYダウに採用されている伝統的企業も、S&P500に採用されている大手企業も、NASDAQに採用されているハイテク企業も3ヶ月で3〜6%の増益を記録している。
まだまだ、好調だと言える。

この面ではFRBはインフレ率を見て利下げは断念するかもしれないが、利上げに踏み切るまでにはもう少し時間がかかると考えている。

米株価指数と1年先予想EPS、その3ヶ月変化
NYダウQ/QS&P500Q/QNASDAQQ/QR2000Q/Q
2026/06/2421.073.0%332.756.9%1061.885.1%96.64-6.7%
2026/05/2418.142.0%332.574.3%1117.7410.1%102.85-10.4%
2026/04/2384.2712.9%324.114.3%1059.747.5%104.76-5.9%
2026/03/2350.411.5%311.320.6%1010.793.3%103.62-6.9%
2026/02/2370.6612.7%318.723.8%1015.626.2%114.854.6%
2026/01/2110.920.8%310.622.5%986.167.2%111.2810.9%
2025/12/2108.841.6%309.3415.3%978.7421.4%111.3239.5%
2025/11/2103.271.8%306.9717.2%956.1225.8%109.8337.7%
2025/10/2094.911.5%302.9215.0%919.6919.3%100.3324.3%
2025/09/2075.94-1.4%268.390.8%805.883.9%79.78-2.7%
2025/08/2065.81-2.4%261.88-2.8%760.04-4.1%79.75-4.6%
2025/07/2064.451.7%263.423.7%770.833.7%80.72-2.6%
Q/Qは3ヶ月前との比較



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ドル円相場を再考する(6)為替介入の効果

IMM先物、円ショートポジション
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日米2年金利差とドル円相場
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財務省は4月30日にドル売り/円買い介入に踏み切った。
多くの評論家は「円安は変わらない、ドル買いの絶好のチャンス」と言う。
でも天邪鬼の投資家はちょっと考え込むだろう。

上のチャートはシカゴのIMM先物ショートポジションだが、円の売り残が4/28現在で20.85万枚と過去のピーク水準20万枚超にまで増加している。
前回のブログ「ドル円相場を再考する(5)」では介入の効果は、日銀の利上げ、財務省の財政スタンス、介入規模で決まると書いた。
単にドル売りしただけでは、市場センチメントを変えることはできない。
センチメントを変えるには、介入に加えて政策的なバックアップが必要だろう。


過去の円買い介入規模、ドル円相場、IMMショートポジションの動きを再確認してみたい。

2024年7月に日銀が5.9兆円の円買い介入した時・・・
7月9日に161.31円/ドルで介入を開始、9月24日に143.21円/ドルまで、11%の円高となった。
この期間、IMM先物の円ショートは22.35万枚から3.86万枚まで減少した、ショートの買い戻しは18.49万枚に達した。

2022年10月に日銀が9.1兆円の円買い介入を実施した時・・・
10月18日に149.26円/ドルから23年2月7日の131.05円/ドルまで、12%の円高になった。
この期間、IMM先物の円ショートは12.40万枚から4.56万枚まで減少、ショート買い戻しは7.84万枚だった。

この2回のケースでは財務省の円買い介入から、2〜3ヶ月後までに11〜12%の円高が生じ、その原動力は円ショートの買い戻し8〜18万枚だった。
市場センチメントを一変させ、円ショートの買い戻しを誘えるか、これが勝負だ。

一方、2024年4月の日銀介入9.7兆円は、あまり効果がなかった。
4月30日に154.69円/ドルから6月11日157.07円/ドルとむしろ円安になった。
それでもIMM先物ショートは20.88万枚から16.93万枚まで、3.95枚の買い戻しだった。
22年10月と24年7月の介入は11〜12%の円高を生じたのに、24年5月の介入は一時的な効果でしかなかった。

これをどう考えたらいいのだろうか?

日銀は24年3月にゼロ金利を解除、その後、24年7月、25年1月、25年12月に0.25%利上げを3回実施した。
24年7月の円買い介入は日銀の利上げと政策変更を伴い12%の円高を実現した。
24年4月のケースは円買い介入はしたものの金利変更はなし、7月の利上げの前哨戦のような円買い介入だったと言える。

日銀の利上げを伴った24年7月と25年1月の介入は大きめな円安修正が起こった。
今回はどうなのだろうか?
日銀の金利変更は6月の決定会合になるが、そこまでの期間で植田さんがどうトークアップ(円高誘導)するのか? 植田氏に代わって財務省が財政に関して何を言うのか? 
このあたりがポイントになるだろう。
介入金額も5兆円では少なく9兆円レベルの規模でないと効かないかもしれない。
効果的な円買い介入にはこの三条件が必要な気がする。




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ドル円相場を再考する(5)市場センチメントが決める?

日米金利差とドル円相場
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為替市場では円安が進み、1ドル=160円台に入ってきた。
財務省が介入に出たみたいだけど、効果がないという見方が大勢だ。
でも、それはやり方次第なのかもしれない。
結局、為替市場は明確なバリューがあるわけではなく、市場センチメント(雰囲気)で動くからだ。


センチメントを動かそうとして、為替市場ではいろんなストーリーが語られる。
2023年から2024年はキャリトレードの最盛期で、多くの評論家がヘッジファンドが円で資金調達しドルで運用することで日米金利差を収益化する「キャリートレード円安」説を論じていた。
しかし、トランプ関税と米国への投資拡大で金利差と為替の動きが連動しなくなり、「デジタル赤字」説「ドル離れ」説がどんどん有力視されるようになった。

為替市場を100%説明できるストーリーはない。
その時々で都合の良いストーリーが語られ、なんとなく市場のセンチメントが作られ、そのセンチメントが為替のトレンドを決めているように見える。


現在、円安が加速するケースとして考えられるのは・・・

①中東情勢の泥沼化。
トランプが停戦交渉をギブアップして、地上戦を含む大規模攻撃を開始する、原油価格は再度急伸し120ドル/バレルに、となるとグローバルのインフレ加速化が懸念される。
原油に弱い円が売られ、ドルが買われる。

②米金利の再上昇。
米インフレの加速で、FRBの利下げ期待が利上げ期待へと変化する、日米金利差の拡大で再びキャリートレードが活発化する。
円キャリー取引がドル円を押し上げる。

逆に円高へと反転するケースは・・・

①中東戦争が早期に収束。
原油価格が落ち着き、米FRBが再び利下げモードに入る、日本は円安修正政策を取る。
円安修正政策は、日銀の利上げ政策、財務省の財政規律の重視、為替の円買い介入、この三つの組み合わせが中心だろう。
問題はこの3点セットが相乗効果であるのか、単に介入しただけなのか、で為替への効果が変わる。

②レパトリ減税、資本の国内回帰
最も円高への効果が大きいのが、日本企業が海外純資産を日本国内に戻す(レパトリエーション)を促すレパトリ政策を取ることだろう。
国内投資を増やすことが高市政権の大きな課題なので、政権が踏み込めばレパトリ政策を実行できる。
莫大な海外純資産を国内に戻し設備投資を促す、そのためにインパクトのある投資減税をすればいいだけだ。
レパトリ減税を行えば、国内投資を刺激すると同時に円安からの反転を期待できる。


為替を反転させるのは、市場のセンチメントを変える必要がある。
そのために重要なのは政府・日銀の政策だと思う。
よくよく見ていくことだろう。




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ドル円相場を再考する(4)ドル離れはホント?

米国債保有額の推移
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最近「ドル離れが進んでいる」という評論家が増えている感じがする。
その根拠の一つは、上のグラフ、主要国の米国債保有額だ。
赤いラインの中国の米国債保有額はピークの1.3兆ドルから大きく減少し、直近では7000億ドルと半減近い状態だ。
その一方、中国は外貨準備の中での金保有を継続して増やしてきた。
こうした世界第2位の経済大国が自らの地政学リスクを考慮して、外貨準備の中で米国債から金に大きくウェート変更した。
多くの国にとってはドルが基軸通貨で、産油国はドルで石油を売ってその儲けをドル準備に当てる、欧州もアジアの国も外貨準備はドルが中心なので、中国の動きだけで「ドル離れ」とはいえない。

もう一つは、下のグラフ、ドル実効為替レートと金価格のチャートだ。
赤いラインがドル実効為替レート、青いラインが金価格だが、昨年1月の実効為替レートのピークからドルの下落トレンドが始まり、逆に金価格の上昇に拍車がかかっている。
これを見て、国際資金がドル離れして、金保有に向かっているという人もいる。

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でも、元々、ドルと金は逆相関になる。
それは金価格はドル表示であり、ドルの価値が減価すれば相対的に金の価値が上がる。
最近の金価格の上昇加速が「ドル離れ」という見方を助長している。

ドルが基軸通貨であることは、原油も金も銀もプラチナもドル表示であることを意味している。
昔、米国とサウジアラビアは原油の取引をドルに一本化する代わりに、中東地域の安全保障を米国が担うという関係を決めた。

1970年代、セブンシスターズと呼ばれた大手国際石油資本が独占してきた中東の原油ビジネスに資源ナショナリズムが起こった時、米国とサウジアラビアが密約を結んだと言われる。
サウジが原油ビジネスを国有化し莫大な利権を受け取る、その代わりに、原油取引をドル一本化することで原油代金のドルが自然に米国に還流する仕組みだ。
原油ビジネスの生む莫大な利益が米国に還流する、これが基軸通貨の強みだ。

この仕組みに挑戦しているのが中国だろう。
イランやロシアなどの非民主主義国をまとめて人民元で原油や資源の取引を拡大する、資源が生む利益が中国に還流していく。
この一帯一路だが、その目的に一つが人民元経済圏を作り、すべての取引から生じる利益を中国に還流させることだ。
これは人民元を基軸通貨にすることと同義語だ。

そう考えれると、人民元の基軸通貨化に怒ったとトランプが、イランを爆撃して、イランと中国の間の関係をブチ壊そうとしたのがイラン戦争の目的に一つともいえるのかもしれない。

いずれにしてもドルの基軸通貨は揺らいでいないし、現在のところ、中国中心のドル離れも限定的じゃないかと思う。



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ドル円相場を再考する(3)新NISAブームで円安?

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新NISAがスタートしてからオルカンやS&P500などのインデックス投信への資金流入が大きく増えた。
NISAといえば「オルカン、一択」とする投資家も多く、ETFなどインデックス投資が中心的な役割を果たしている。
オルカンはMSCIオールカントリーワールド(ACWI)というインデックスが元になっているが、実は海外で受け取る配当は課税されているので、NISAで投資するオルカン投信は厳密に言えば非課税ではない。
その分、ベンチマークとしてのACWIよりもパフォーマンスが劣る。

それでも簡単に全世界株式の投資できる簡便さが人気の元なのだろう。
2025年の新NISA資金流入額は14兆円程度を言われているが、そのうち半分強、7〜9兆円は海外投資に流れているとされている。
もちろんこれらの海外投信はドル買いに直結するので、円安要因であることは間違いない。


国際収支統計では証券投資が15.8兆円の赤字(流出)と公表されている。
内訳は、株式・投資ファンド持分が8.1兆円の流出、中長期債が7.6兆円の流出となっている。
非居住者の資金動向や、日本企業の海外法人の資金動向なども絡んでくるために単純な話はできないが、国内投信などの対外株式の買い越し(財務省コメント)が一つの理由にはなっているようだ。

その一方、国際的な金融取引では海外投資家の動きが大きく為替に影響する。
日米金利差を利用して円で資金調達しドルで運用するキャリートレードが人気になったり、日本株や日本債券への海外の資金動向もよく話題になる。
それでも個人投資家のNISA投資が結構な金額に達し、無視できない存在になりつつある。


昨年から「ドルの信認低下」「ドルからの資金流出」により金や暗号通貨に資金が移動し、猛烈な金高・ビットコイン高になったとする評論家もいる。
でも、ドルの信認が本当に低下したのだろうか?
世界の通貨の中でも円が独歩安を記録しているが、ドルの信認低下と関係があるのだろうか?

次回、考えてみたい。




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ドル円相場を再考する(2)ドル不足で円安?

日米10年金利差
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ある評論家はしきりと「ドル不足」「ドル需要が強い」から円安はどんどん進むという。
日本企業がドルを買いたいという動機はそれほど強いわけではないと思う。

多くの日本企業はバブル期に海外進出を果たし、その後海外でのビジネスを着実に増やしてきてた。
国内の消費市場が高齢化し縮小してきているため、海外市場の開拓が企業の生命線を握ってきたからだ。
その結果、海外に多額の資産を保有し、そこから上がった収益もそのまま海外口座に積み上げられる。
この膨大な海外資産が日本企業にはあり、そのためドルが余っている企業も多いはずだ。

こうした日本企業の海外投資残高の累積、そこから上げた収益が日本の膨大な海外純資産になっている。
すでに2024年末で533兆円という規模に達している。
これらの資産を運用して得られる利子・配当も莫大で、これが国際収支統計で一次所得収支に現れる。
2025年の国際収支統計では一次所得収支の黒字が41兆円に達し、経常収支の黒字31兆円の大半を占める。

日本企業にとっては成熟した国内での投資機会よりも海外での投資機会が多い、しかも金利も高いので余剰金の運用利回りが高い、日本の余剰資金を還流させるよりも海外子会社の口座にそのまま置いておくほうがいいということになる。
なので、経常黒字があるからといって円買いは生じるわけではない。
ここが一つのポイントで、経常黒字が円高に直結するわけではない。


こんな状況で日本の「ドル買い需要が強い」といえるのだろうか?
それでも「ドル需要が強い」という場合は、何か大きなプロジェクトが計画されている場合なのかもしれない。

例えば、トランプに約束した80兆円の米国投資。
これを円で借りてドルで投資するならば、膨大なドル需要になる。
実際はドルで資金調達してドルで投資する割合が相当あるはずなので、80兆円のドル買いが出るわけではない。
それでも国内の銀行・政策投資銀などが円融資する場合なら円安要因にはなるかもしれない。

例えば、オープンAIに巨額の投資をしているソフトバンク。
ドル債を発行する場合もあるし、円債を発行してドル転して投資する場合もある。
円債を発行して米国オープンAIやデータセンターに投資すれば円安要因になる。
ソフトバンクの巨額AI投資のうち、一部はドル需要となっているかもしれない。

しかし、一般的に「ドル買い需要が強い」「市場はドル不足」とはなかなかいえない。



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ドル円相場を再考する(1)デジタル赤字で円安?

デジタル赤字が急増している
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イラン戦争が始まってから、ドル円相場は原油に弱い円としてWTI先物価格に反比例して動いている。
原油価格が上がると円が売られ160円/ドルに接近する、停戦が報じられると円が対ドルで戻す、という動きが続く。

原油価格が上昇し日本は高い原油を買うことになれば、輸入金額が増えて貿易赤字の要因になる。
しかし、原油高によって国内で使われるべきおカネが海外に流れてしまうため国内需要が減少する、景気が悪くなり輸入の余力が減る、この結果輸入が減少しする。
短期的には円安要因となるが、長期的には中立といえるかもしれない。


短期的な原油とドル円という話以上に中長期的な話が重要だ。
構造的な話を小さい方から順に、デジタル赤字、貿易収支、金融収支、一次所得収支、経常収支を考えていきたい。

円安が好きな評論家がよく使うのが「デジタル赤字」という最近の話題だ。
個人がスマホで使うOSやアプリの使用料、クラウドなどのサービス料、著作権料など、GAFAMを中心とするデジタルサービス料がどんどん増えているというわけだ。
よく考えれば、日本はデジタルに弱いわけではない。
米国はデジタルサービスが進歩している一方、日本はAI・コンピューティングに使うデジタル部品素材に強い、これは日米の構造的な問題ともいえる。
デジタル部品が財の輸出=貿易収支に分類され、米国に払うサービス料はサービス収支に分類される。
サービス収支だけ見て、デジタル赤字が円安の原因というのは単純化のやりすぎだろう。


新型コロナ禍の数年間、貿易収支が赤字化し円安を招いていると指摘されたが、それから国内景気も復活し現在では貿易収支はほぼチャラだ。
長期で見ても2010年代以降は年によって多少赤字になったり黒字になったりしている。

トランプ関税が導入されて大きな変化が起こると身構えたが、トランプのTACOで大きな変化にはつながらなかった。
中国の景気で日本製自動車が売上げが減り、一般消費財、化粧品、衣料品なども売れなくなったりしているが、貿易収支全体としては大きな変化にはならなかった。

というわけで、財やサービスの動きからはこれだけの大きな円安の証拠は見られない。
となると、証券投資や直接投資などの金融収支、海外投資の利子配当などの一時所得、などが大きく影響しているのかもしれない。

次回、チェックしてみたい。




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原油とガソリンの限界点

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イラン戦争がエスカレートし、イランはホルムズ海峡を封鎖するだけではなく、湾岸諸国の石油施設を爆撃している。
また、イスラエルがイランの石油積出港を爆撃したり、ガス田にミサイル攻撃した。
戦争のエスカレートとともに、原油の輸送量だけではなく、将来の原油・ガス生産の減少も心配になる。

現代社会では油種間の裁定取引も行われ、ガソリン価格もガス料金も原油・LMG先物に連動する。
なので先進国のガソリン価格が中東情勢に非常に敏感に反応している。
これはホルムズ海峡に依存しない米国でも同じで、原油が自給自足できるからと言って価格が安定しているわけではない。

原油価格の上昇は世界中に大きな損失を与え、原油量の不足は日本・欧州・アジアの非産油国に大きな損失となる。
イラン戦争で得したのはイスラエルだけだ。


でも長期化すると日本はたいへんだ。

まずはガソリン価格だけど、暫定税率の廃止で25円、一時的な激変緩和で20円、政府は前年に比べて45円も小売価格の引き下げ要因がある。
それでもリッター170円に抑えている限りは国民生活に大きな影響は出ない(石油製品の値上がりは大きな影響だが・・・)。

上に表は原油価格ードル円ーガソリン小売価格の関係を示している。
現在は黄色のゾーンで、原油100ドル、ドル円157円でガソリン価格は194円となる。
この194円から政府補助金で170円台に抑えているという状況だ。

国民目線ではリッター200円を越え、それが続くと生活が相当に厳しくなる。
山梨で生活していた頃、ガソリン価格が180〜190円の上昇は時折起こっていた。
東京でのガソリン価格よりも10円以上は高い、国民全体としては180〜190円は経験済みの価格でびっくりはしない。

レギュラー200円以上となると未経験ゾーンであり、国民生活に大きなインパクトが出る。
この価格は現在のドル円では原油110ドルを越える場合、または、ドル円が170円以上に円安が進む場合に起こる。
おそらく、原油100ドルを越えて上昇し始めたら、あるいは、ドル円が160円を越えて円安が進み始めたら、危険な状態だと言える。

補助金を加味して200円を超えるのは、原油120ドル、ドル円170円でここが危険ラインだろう。
国民生活が厳しく、景気が相当悪化しそうなポイントだ。
その前になんとかしてほしい、トランプさん!



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次の一手、金利の引き上げ? それとも引き下げ?

FRBの金利見通し
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スタグフレーションと言う言葉自体、1970年代の亡霊のように思える。
イラン戦争からの原油価格急上昇、それが石油危機の70年代の記憶を思い出させ、金融市場には警戒感が増している。
この悩みが見られたのが、3月のFOMCだった。


下の表はFRBメンバーによる経済見通しだが、実質GDPが2.3%から2.4%(26年)、2.0%から2.3%(27年)に上方修正された。
その反面、インフレ指標のPCEが2.4%から2.7%(26年)、2.1%から2.2%に上方修正された。
景気が12月に見ていたよりも好調、その反面、インフレが見ていたよりも高まっているという予想だ。

この予想はインフレと景気後退が同時進行するスタグフレーションではないが・・・
今のところ、米国景気は一定の底堅さを持っているが、原油高や物価の上昇からくる消費減退、原材料の供給不安から生産調整、景気に不安感が出てくる。

その時、FRBや日銀は物価と景気をどう判断して金利を変更するのだろう?
物価を見て利上げするのか、景気を見て利下げするのか悩ましい局面を迎えている。
パウエルFRBだけでなく、植田日銀も判断ができない状態が続く。

FRBの経済見通し
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すでに2月のPPIコアが予想を上振れし、前年比+3.9%となった。
23年3月以来の高水準、加えてこれはまだイラン戦争前で原油高を織り込んでいない。
この原油高が数ヶ月後のインフレに影響してくる、米国のPPI、日本の企業物価を持ち上げる。

70年代の石油危機では原油価格が一気に4倍に引き上げられ、狂乱物価と呼ぶインフレを生み出した。
この物価高で消費者の購買力を大きく削られ、実質消費が落ち込み、日本は不況に陥った。
まさにスタグフレーションの状態、原油高によるインフレは金利を上げても効果がない、また、景気を重視して金利を下げるとインフレが一段と加速する、という困難な状況に追い込まれた。


今はまだスタグフレーションが起こっているわけではない。
しかし、時限爆弾がセットされたような状態で「時間」が大きな問題だ。
日本は原油や天然ガスの備蓄量にも原材料サプライチェーンの限界もあり、生産現場が混乱する。
トランプも戦争をいつまでも続けると11月の中間選挙で負ける可能性が高くなる。
イランもミサイルやドローンなどの武器量に限界がある。
これらがデッドラインを決め、それを超えると大きな混乱につながる。

時限爆弾のセットは4月〜5月あたりか?
株式市場はどうなるのだろう?



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米国経済は予想より好調なのに利下げ期待?

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FOMCが25bpの3回連続利下げを決定した。
メンバー内の不協和音が強く、今回の利下げでも三人のメンバーが反対したという。
来年の利下げ期待も1回だけってどうなの?

しかし、同時に公表された経済見通しが予想以上に強い。
特に2026年は実質GDPが+1.8%から+2.3%に上方修正されている。
しかも物価はPCEで+2.6%から+2.4%に下方修正された。
「成長率が上方修正、物価見通しが下方修正=インフレなき成長」のような良い形だ。

これだけ見ると、米国は良い状態にある。
でもFOMC後の公表されたドットチャートでは・・・

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これはドットチャートの予想を上限・中央値・下限でまとめたものだが、来年末までに1回の利下げを見ている。
でも、こんな「インフレなき成長」のシナリオで、なぜ利下げなのかは理解できない。


おそらく、現状のパウエル氏のリーダーシップが相当低下してしまっているのだろう。
FRB議長の改選が行われると、さらにトランプ寄りの議長が選ばれ、強引な利下げが行われる。
これがけっこうヤバいのじゃないかと思う。

考え方としては、米金融業界がすでに何かしらの危険を察知している可能性だ。
AIが席巻する社会で構造的に雇用が停滞する、巨額のAI投資に耐えられない財務の弱い企業中心に借金が膨張する、あるいは、トランプ関税がフルに転嫁され予想外のインフレが起こる、などなど。

株式市場はこの「インフレ低下の経済成長シナリオ下での金融緩和」をすでに織り込んでいる。
ここで強引な利下げを行い中立金利3%を下回るようならば、過剰な期待で株式市場はその後の混乱を読む可能性もある。
現状維持が最も良いと思うのだが、トランプが中韓選挙前に何を言い出すかは分からない。

下のEPS予想の一覧表のように企業業績の伸びが株価を支える最大の要素になる。
ここが最大の拠り所なのは変わらない。

NYダウQ/QS&P500Q/QNASDAQQ/QR2000Q/Q
2025年12月2108.841.6%309.3415.3%978.7421.4%111.3239.5%
2025年11月2103.271.8%306.9717.2%956.1225.8%109.8337.7%
2025年10月2094.911.5%302.9215.0%919.6919.3%100.3324.3%
2025年9月2075.94-1.4%268.390.8%805.883.9%79.78-2.7%
2025年8月2065.81-2.4%261.88-2.8%760.04-4.1%79.75-4.6%
2025年7月2064.451.7%263.423.7%770.833.7%80.72-2.6%
2025年6月2104.47-3.5%266.36-2.4%775.82-3.3%81.98-8.3%
2025年5月2116.67-1.9%269.510.3%792.381.7%83.63-9.2%
2025年4月2029.393.4%253.96-8.5%743.17-8.1%82.85-4.3%
2025年3月2181.5412.0%272.821.0%802.64.9%89.3813.7%
2025年2月2156.939.3%268.6611.4%778.9515.2%92.1135.2%
2025年1月1961.99-2.8%277.4313.5%808.7320.3%86.5523.1%




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トランプ関税、米国物価、企業収益の関係(4)中国の迂回輸出?

トランプ










政府閉鎖の影響で経済データの発表が遅れてはいるが、徐々にトランプ「解放の日」以降の影響が見えてきている。
CNBCのニュースでは、米国を中心としたサプライチェーンの動きを解説していた。

中国から米国への輸出は今年26%と大きく減った、もちろん、米中貿易摩擦、対中関税の大幅な引き上げが影響しているが間違いない。
しかし、中国は東南アジアへの輸出ドライブをかけた、その結果、インドネシア向け輸出が29%伸ばし、ベトナム向けは23%増加、インド向け19%増加、タイ向け4%増加と軒並み急増した。

でも、米国の輸入統計では、中国からの輸入が26%減少した反面、ベトナムからの輸入は23%増え、タイからの輸入も9.4%増加、インドネシアからの輸入も5.4%増えた。
これを見るとトランプ関税で中国からの輸入は確かに大きく減少したが、その中国が東南アジアへの輸出を増やし、東南アジア各国が対米輸出を増やしたといえる。

なんか、迂回輸出のようにも見えてしまう。
トランプ関税がどこまで効いたのか、ちゃんと考えなければならないだろう。


トランプ関税の米国経済への影響は「見えそうで見えない」状態が続いている。
下の表は関税収入と米コアCPI、米小売売上げの関係を見たもの。

    米純関税収入 コアCPI  小売売上高
4月  163億ドル +2.8%  +5.1%
5月  228億ドル +2.8%  +3.2%
6月  272億ドル +2.9%  +3.9%
7月  280億ドル +3.1%  +3.9%
8月  295億ドル +3.1%  +5.0%
9月  297億ドル +3.0%  +4.2%
10月 314億ドル 未発表 

米関税収入は10月には300億ドル(円ではおよそ約4兆8000億円)を越えた。
この巨額の関税を誰がどのぐらい負担しているのかは、必ずしも明らかではないが、徐々に米国内物価に転嫁され始めているのだろう。
コアCPIは7月以降、前年比3%台の水準で推移している。
とても全面的な転嫁ではないと思うが、一部分は国内物価を持ち上げているだろう。

しかし、ウオルマートの決算をみても輸入物価の上昇がコストアップになり利益率を下げている兆候は見えない。
これは東南アジア経由で安い中国製品が米国市場に入ってきているのも一因かもしれない。

では、誰がトランプ関税を負担し、毎月4兆円もの関税を支払っているのだろうか?
世界はより複雑になっているのかもしれない。



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トランプ関税、米国物価、企業収益の関係(3)

S&P500益回りと米10年金利
スクリーンショット 2025-11-09 9.41.26












トランプ関税が完全実施され、米国の関税収入が急増している。
月次の収入額を見ると、4月に相互関税が導入され、一時棚上げになったりトランプの交渉カードで使われてきたが、各国との交渉後に8月ほぼ実施された。
関税額を見ると、4月163億ドルから徐々に増え、9月には297億ドルと300億ドル(4兆円以上の規模)に膨れ上がった。

この関税は米国の通関時に課税される。
基本、米輸入業者が支払うのだが、その分の価格を下げて輸出したり、米子会社が輸入していたりと輸出業者が関税分を被っているケースも多い。
もし、関税分を全て米国内価格に反映させたら、米国物価は大きく上がってくるはずだ。

下の表は関税収入と米コアCPI、米小売売上げの関係を見たもの。
    米純関税収入 コアCPI  小売売上高
4月  163億ドル +2.8%  +5.1%
5月  228億ドル +2.8%  +3.2%
6月  272億ドル +2.9%  +3.9%
7月  280億ドル +3.1%  +3.9%
8月  295億ドル +3.1%  +5.0%
9月  297億ドル +3.0%  未発表

米CPI前年比は4月の+2.8%から8月の+3.0%まで若干に上昇。
これは関税の影響が一部時入っているが、フルには転嫁されていないということだと思う。
小売売上高は前年比プラスで推移し、関税の影響が小売りには出ていない、それどころか、米株高の資産効果で個人消費が堅調だったといえる。

では、企業業績はどうだろう?
下の表は1年先EPS予想だが、4月と比べるとNYダウで+3.6%、S&P500で+20.9%と堅調に伸びている。
米企業にとってトランプ関税がマイナスにはなっていない。
トランプ関税が価格転嫁されれば、米企業の輸入コストが上がり利益率を圧迫するはずだが、サービス産業のウェートが高い米国では大きな影響がなかったのかもしれない。

一番上のチャートはS &P500の益回り(EPS/株価)と10年債利回りの比較したものだが、株価が大きく上昇したが、S&P500益回りも上昇し「株式益回り>債券利回り」の状態を続けている。
現在のところソコソコの割高状態で「極まった」割高ではなさそう。
10−12月期の業績がどうなるかが注目だ。

NYダウQ/QS&P500Q/QNASDAQQ/QR2000Q/Q
2025年11月2103.271.8%306.9717.2%956.1225.8%109.8337.7%
2025年10月2094.911.5%302.9215.0%919.6919.3%100.3324.3%
2025年9月2075.94-1.4%268.390.8%805.883.9%79.78-2.7%
2025年8月2065.81-2.4%261.88-2.8%760.04-4.1%79.75-4.6%
2025年7月2064.451.7%263.423.7%770.833.7%80.72-2.6%
2025年6月2104.47-3.5%266.36-2.4%775.82-3.3%81.98-8.3%
2025年5月2116.67-1.9%269.510.3%792.381.7%83.63-9.2%
2025年4月2029.393.4%253.96-8.5%743.17-8.1%82.85-4.3%



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米国の景気循環は死んだ??

ISM製造業指数の長期トレンド
スクリーンショット 2025-11-04 8.15.36












米国景気が上を向いているのか、下向きなのか、いろんな人がいろんな事を言う。
発表されていないが雇用統計も弱く、FRBが利下げを連続して行なっている反面、強烈な株高で膨大な資産効果が出ている。

一体、アメリカはどっち向きなの?
こんな時は、余計な事を考えずに「景気指標を素直に見る」ことだと思う。

まず、「ISM製造業指数」を素直に見てみよう。
ISM製造業指数は、景気循環を反映して上がったり下がったりするのが常だが、この長期循環はなんか途切れて、中立水準である50ポイントを割り込んみ横ばいで推移している。

ISM指数が50ポイントを割り込んだのは2022年10月、それから4年間も中立水準である50ポイント前後で推移するのは異例な動きだ。
製造業は非製造業に比べて浮き沈みが激しく、リーマン危機後の景気悪化、新型コロナ禍の景気急変など、急激に低下して底入れとなる傾向があり、景気循環の指標でもあった。
それが異例とも言える4年間の横ばい。
米国から景気循環が失われたのではないか、と思えるような状況だ。

次は「労働市場統計」で確認してみよう。

ADP雇用統計と雇用統計
スクリーンショット 2025-11-04 8.27.07












雇用統計が政府閉鎖の影響で公表されていないので、民間のデータ、ADP統計を見てみよう。
雇用は徐々に悪化し、新規雇用者数はほぼ「ゼロ水準」まで下がってきている。
新型コロナ禍以降の人手不足で雇用がタイトだったが、新規雇用に関しては明らかに一巡感ができきた。

しかし、新規雇用が減っても失業率には影響していない。

米国失業率
スクリーンショット 2025-11-04 8.38.56












米失業率は2021年10月に5%水準を下回り、その後5年間に渡って5%以下の良い状態を続けている。
ADPや雇用統計で新規雇用が表面化した2025年に入っても、失業率がガンとして動かず、ほぼ完全雇用状態といえる4%前後で推移してきた。


なぜ、新規雇用が減っても失業率が上がらない「景気は良い状態」が続いているのだろう?
筆者の想像でしかないが、「米国では景気循環が失われている」という現実だ。

仮説の一つは、GAFAMを中心としたITサービス業の巨大化。
一般に景気循環の中にいる製造業を上回る経済を作り出し、景気循環をよく見えなくしている。
サービス業は元々景気循環が小さく、そのITサービスが巨大化した結果、米国経済の中で製造業のウェートが極小化したことが大きな要因だった。

もう一つは、企業規模が空前の水準に達していることかもしれない。
NVDAの時価総額が5兆ドルに達したと話題になったが、2023年の数字ではあるが、日本の名目GDPが4兆ドル、ドイツのGDP4.6兆ドルだった。
NVDA一社で日本やドイツのGDPを越えてしまった、一国の経済規模を越える企業が続出するアメリカは「カネの経済が急膨張」しているのは間違いない。
これが「モノの経済」にも影響し、景気循環を越えた影響をしているのかもしれない。

景気循環が永遠になくなったのかは分からない。
株価が天井を打ち、巨大企業の時価総額が減少に転じる時、景気循環が甦るのかもしれない。
その時は巨大IT企業の株価下落と景気悪化の両方が同時に来るかもしれない。



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オルカンと日経平均、どっちがいい?

日経平均とオルカン
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新NISAで人気なのがオルカン、ベンチマークはMSCI ACWI(アクウィ)だ。
このインデックスは世界景気に連動する安定した株価指数だが、一方、パフォーマンスは先進国株価指数に劣後している。
上のチャートは2004年からのACWIと日経平均を比べたものだが、新型コロナ禍の2020年以降、二つのチャートの格差が大きくなっている。

特に2024年から直近までの期間に大きな格差が生じている。
この24〜25年はAI関連に技術が急速に進展し関連投資が急拡大した時期だが、これらの投資は米国をはじめとして欧州や中国などを中心として急増しているため、新興国が出遅れている。


これを示しているのが、下のチャート。
MSCI新興国指数と日経平均を比べたもので、新興国株式指数は長期的なレンジ範囲で動いている。
リーマン危機の前につけた1400ポイント近い高値が長期レンジの上限になってしまっている。
2015年ぐらいまでは新興国のパフォーマンスが良かったが、その後新興国のパフォーマンスが横ばいで冴えない。
日経平均のチャートが新興国を大きく上回った。
これが日経平均がオルカンを上回った原因だろうと思う。
オルカンのパフォーマンスが良くなるには新興国株の上昇が必要だろう。

日経平均と新興国株
スクリーンショット 2025-09-29 10.08.03














世界全体の名目成長率は以下の通りだが、およそ5%前後で長期的に推移している。
これは実質成長率3%に加えて、インフレ率2%で合計5%の名目成長というところだろう。
もちろん、オルカンへ投資することで長期的5%程度の成長は期待できる。

今後のオルカン投資は、先進国よりも新興国がパフォーマンスを決めるだろう。
日経平均は値嵩株、ハイテク株、半導体株の動きに大きく影響され、米NASDAQ指数と連動する。
米国が強く為替がドル高・金利が上昇となると、新興国から米国への資金が流出し、新興国株は相対的に劣後してしまう。
米国の金利が低下し、為替市場でドル安が進むのなら、新興国株は回復する。

ここがポイントだろうと思う。
そろそろ新興国やオルカンを投資対象としてもいいかもしれない。
来年の新NISA枠では考えるべきなのかもしれない。

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トランプ関税、米国物価、企業収益の関係(2)

スクリーンショット 2025-09-27 7.40.07










トランプ関税が大きく増加してきている。
下の表は米財務省の公表している純関税収入(月次)だが、トランプ関税が始まった4月以降、着実に増加してきている。
4月163億ドルから8月295億ドル(約4兆3000億円)まで増加、5ヶ月間で1238億ドル(約18兆3000億円)と巨額になっている。

    米純関税収入 コアCPI  小売売上高
4月  163億ドル +2.8%  +5.1%
5月  228億ドル +2.8%  +3.2%
6月  272億ドル +2.9%  +3.9%
7月  280億ドル +3.1%  +3.9%
8月  295億ドル +3.1%  +5.0%

合計 1238億ドル
(消費者物価、小売り売上高は前月同月比%)

米関税収入は生産者・輸入業者・消費者の誰かが負担しているわけで、この分、海外の生産者の利益が減り、輸入業者が一部を小売価格に転嫁し、消費者が高い小売価格で商品を買うことになる。
関税自体は通関時に輸入業者が支払うが、実際の負担は三者で分担している。
それにしても毎月4兆円以上の負担になり、欧州、日本を含むアジア企業(生産者、サプライヤー)の大きな負担になっていると思われる。

現在のところ、輸出業者=生産者が輸出価格を引き下げて負担していると推測される。
米国内の小売価格がそれほど上昇していないからだ。
自動車大手などの大企業は米国内に自社の販売ネットワークを持っているので、生産者であると同時に輸入業者でもある。
誰が負担するかの問題ではなく、連結決算では関税分がそのまま負担増につながる。


今後のポイントは生産者や輸入業者が負担を耐えきれず、いつ、どの程度小売価格に転嫁するのかということだろう。

米国の消費環境は、このところの株高の資産効果が大きく個人消費が拡大している。
8月の小売売上高でも前年比5%の増加と順調だった。
コアCPIはトランプ関税が始まった4月+2.8%から8月+3.1%まで若干の上昇にとどまっている。
小売価格への転嫁が一段と進むと、コアCPIが一段と上昇してくるだろう。

小売売上高は名目なので、コアCPIが上昇してくれば小売売上高も高くなる。
関税の小売価格への転嫁が進んだ時コアCPIが上昇するが、それ以上に小売売上高が増えるかどうかを見ている。
コアCPI以上に売上が増えれば景気は順調といえるし、売上の伸びがコアCPIを下回れば景気の悪化を気にするべきだろう。
なので、この関税、物価、企業収益の関係に筆者は注目している。
小売価格の上昇と売上げ高の増加が同時進行すれば、日本企業にとってはプラス要因。
利益率の向上とともに売上の増加も期待できるからだ。




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トランプ関税の影響、ジワリ!?

米コアCPIとPPI202508
















PCEコア価格指数が前年比+2.9%と発表され、やや高めでトランプ関税に影響が出始めたのではないかとするコメントも見られた。
しかし、トランプ関税は通関時に輸入業者が支払うもので、輸出業者と輸入業者という企業間取引が基本になる。

という意味でB to Bの企業間価格であるPPIが一番敏感に表示するはずだ。
一定のタイムラグを置いて、B to Cの小売り価格=CPIに反映される。

上のグラフは、食品とエネルギーという変動の激しい分野を除いた物価指数であるコアPPI(生産者物価)とコアCPI(消費者物価)を比較したものだ。
この二つを比べると、トランプ政策の効果が見えてくる。


トランプ関税が難しいところは、トランプが関税は「輸出国に負担させる」と圧力を掛け、本来は輸入する米企業が通関時に支払うべき関税を輸出国に払わせようとしたことだ。
このトランプの恫喝にビビった欧州・日本の輸出企業は輸出価格を引き下げて関税分を負担した。
これをやっている限り、米国の輸入業者のコストが増えず、米国内の小売り価格にも影響しない。
でも、このままで済むとはいえない。


上のグラフで、黄色ラインがコアPPIで企業間の物価、徐々に伸び率を高め、7月現在で+3.7%だった。
もう一つの青色ラインはコアCPIで消費者が買う価格だが、伸び率は3%前後で横ばいだ。
コアCPIに比べてコアPPIが高くなり始めている。

簡単にいえば・・・
企業間物価はトランプ関税の影響が出始め、徐々に引き上がってきているが、消費者物価にはまだ転嫁されていない。

8月以降、トランプ相互関税が適用され、15%以上の関税の支払いが生じてくる。
その時には、企業物価(コアPPI)が一段と上がり、消費者物価(コアCPI)も上昇し始めてくると考えられる。


物価の現状をどう見るのだろう?

トランプが掘って掘って掘りまくれを言った原油価格は低水準が続き、前年比では二けたマイナスが続いている。
原油・エネルギーの面からは物価を押し下げる力が続いている。
それでも物価は比較的高く、FRBの目標2%を上回って推移している。

今後、企業間取引から徐々に物価が上がり、小売り価格、消費者物価にジワリと影響してくる。
こうした現状とFRBへのトランプの恫喝、板挟みのパウエル氏、1回限りの利下げで対処?

消費者物価指数 小売り高 平均時給 原油価格
CPI コアCPI 前年比 前年比 前年比 月平均
2025年7月 2.7 3.1 3.92 3.9 -16.3 67.39
2025年6月 2.7 2.9 3.92 3.7 -14.5 67.49
2025年5月 2.4 2.8 3.29 3.9 -22.6 61.03
2025年4月 2.3 2.8 5.16 3.8 -25.4 63.08
2025年3月 2.4 2.8 4.60 3.8 -15.7 67.82
2025年2月 2.8 3.1 3.10 4.0 -7.0 71.33
2025年1月 3.0 3.3 4.20 4.1 1.9 75.14
2024年12月 2.9 3.2 3.92 3.9 -9.0 69.79
2024年11月 2.7 3.3 4.12 4.0 -10.0 69.69
2024年10月 2.6 3.3 2.85 4.0 -16.3 71.6




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米国債保有、世界の潮流変化が見える(3)日本の米国債保有

米国債国別保有202508
















米国とのデカップリングを前提に米国債の保有量を大きく減らしてきた中国、逆に、外貨準備の増加以上に米国債の保有を増やしてきた英国、それぞれの国が米国との関係を戦略的に捉えて動いてきている。
米国にとっても財政赤字を支えてくれる重要なパートナー国であり、トランプ政権にとっても無視できない事実だ。


でも、我が国、日本はどうなのだろう?

米国債の保有額では、2011年~15年は中国の続き第二位だったが、中国の米国債の売却トレンドによって第一位を続けている。
しかし、米トランプ政権との関税交渉では「米国債の売却」を武器として使うこともなかった。
80兆円もの投資を約束して、やっとのことで15%の相互関税で合意した。
この80兆円の投資がどれだけの負担になるのかはまだ分からないが、国家予算に半分以上という巨額な投資であり簡単なことではないはずだ。


関税交渉で米国債を武器にするのは、トランプの神経を逆なでると警戒したのかもしれない。
でもトランプはディールメーカーを自称している政治家だ。
条件による交渉では基本的に何を使っても問題はないはずだ。
条件を考慮して取引してくる政治家だと思う。

石破政権は考え過ぎているような気がする。
赤沢さんは「ラトちゃん」とくだけた呼び方で親近感を演出したけど、もっとストレートに交渉しても問題なかったのだろうと思う。

「日本は、長年にわたって米国の財政赤字を支え、長期金利の安定に寄与してきた」と主張すべきだったと思う。

英国があからさまに米国にスリ寄り、大量の米国債購入を盾にして米英同盟を強化し、10%の相互関税で合意した。
一方、日本は米国債を取引材料に使わずに、相互関税15%、プラス80兆円の投資・・・しかもトランプは自分の判断で使えるサイフみたいなものだと言い放った。

うまく交渉したのはどっちの国だろうか?



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米国債保有、世界の潮流変化が見える(2) 米英同盟で株高?

米国債国別保有202508

















中国は「米国債を売却し、他の資産を大幅に増加させる」という外貨準備の戦略的運用を行っている。
将来に渡り続く「米中のデカップリング」に準備していると考えられる。


この米国債を売りまくる中国に対して、逆に、英国が中国に取って代わるように米国債保有を増やしている。

英国が米国債をどんどん買い増し、保有額では中国を抜き第二位に躍進した。
不思議なのは外貨準備の2010年~23年の変化を見ると、英国は980億ドルから1779億ドルへと798億ドルしか増加していない。
同期間で中国の外貨準備は5358億ドル、日本の外貨準備も1900億ドル増加した。
英国の外貨準備は中国の15%、日本の42%に過ぎないにもかかわらず、英国は米国債保有額を8581億ドルと急増させた。


この意図は何なのだろう?

外貨準備の増加以上に米国債保有を増やす英国、明らかに戦略的な意図を持った行動だと考えられる。
英国は約10年前にEUから離脱をしたが、その後の経済・貿易・国際関係を見るとEU離脱が合理的な判断だったとは必ずしもいえない。
英国はEU離脱から米国にスリ寄っている理由もここにあるのかもしれない。
英国が首相が次々と変わる中で欧州を頼れないとしたら、米国に頼るというのはありえる話。


英国のEU離脱は、トランプの国際組織からの離脱に先駆けているとも感じる。
トランプも「アメリカ・ファースト」を標榜して国際組織から次々と離脱している。
その点で英国とトランプ米国には共通項がある。
英国が米国債をガバガバと買い、世界第二位の米国債保有国になったのは、米国を中心とした国際関係を強化したい英国の思惑があったはずだし、トランプも英国向け相互関税を10%と世界最低水準に決めたのも何かしらの裏がありそうだ。

英国には大英帝国時代の遺産である英連邦というインドからオーストラリアまで広域に影響力がある。
「ウィンブルドン現象」と言われる英国の金融インフラとして重要性も影響しているのだろう。
テニスのウィンブルドンのように英国は世界中から資金や高度人材を集め、それをシティから世界中に再投資していくロンドンは金融・資本取引の中心地だ。

英国の人材集積力と金融力がトランプの米国と関わり強力な英米同盟が出来上がるのがろうか?

英・スターマー氏・・・成長の実現に向け、安定性、投資、改革の3つに基づく新たなアプローチ。厳格な財政規律の順守、国民保険料や所得税、VAT(付加価値税)の税率維持などを通じた安定性の実現、ナショナル・ウエルス・ファンド(NWF)の新設による民間投資の動員などを挙げた。
改革については、特にインフラ計画の承認に焦点を当て、住宅の建設目標の再導入やイングランドにおける陸上風力発電所の新設の実質禁止を撤廃するほか、重要なインフラ建設に対する決定の優先などを表明した。

NWFについては、翌9日に設置に関する方針を発表した。英国インフラ投資銀行(UKIB)と英国ビジネス銀行をNWFの傘下に置き、連携させるとしている。同ファンドでは5年間で73億ポンド(1兆4,162億円、1ポンド=約194円)を投じ、グリーン産業分野を支援、民間投資の動員を目指す。73億ポンドをUKIBの既存資金に追加、UKIBを通じて資金供給を行うとした。


投資を重視するという点ではトランプ政策と共通点もあるが、全体としてトランプ政策と共鳴するような気がしない。
それでも年初来のFT100は14%と好調、日本TOPIXや米国S&P500より上昇している。
米英同盟の強化で英国株は買いなのだろうか?



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米国債保有、世界の潮流変化が見える(1)中国デカップリング

主要国の米国債保有額の推移(単位:10億ドル)
米国債国別保有202508

















米国債は世界の外貨準備を反映してきたが、ここ10年ちょっと違い、経常収支や外貨準備という経済活動ではなく各国の思惑が大きく影響するようになった。

上のグラフは主要国の米国債保有額だが、2010~11年の段階では中国が第一位、第二位日本、国際舞台で圧倒的な成長力と存在感を持っていたのは中国だった。
しかし、その2010年以降、中国は米国債保有を毎年毎年減少させ、日本はほぼ同水準を維持してきた。
その一方、米国債保有額を大きく伸ばしてきたは英国だった。


これをどう考えるのだろうか?

中国に対する米国民の感情が大きく変わったのが2010年だった。
米国は、中国がずっと経済発展すれば、西側諸国と同じ「民主主義」や「自由」という価値観を分かち合う国になると考えてきた。
しかしそれが全く違ったと気が付いたのが2010年頃で、米国の対中国戦略は完全に180度変わってしまった。

中国は民主主義にはならないし、共産党独裁体制を香港や台湾という周辺国に拡張していく存在だと米国が理解したのがちょうどこの頃だった。
習近平・中国が独裁政権の長期化を明言にしたのも、西側主要国に「中国は異質な存在」という見方が一気に広がっていった。

中国当局が香港の民主派を弾圧し「雨傘運動」を徹底的につぶし、それだけではなく、香港に「国家安全維持法」を制定させ民主派を根こそぎ壊滅させた。
「一国二制度」は完全に崩壊し、香港は中国への同化を求められた。
これは習近平が新疆ウィグル地区でのイスラム教への宗教弾圧、さらにウィグル人の中国人への完全同化を進めたのと同じ意味を持っている。

この時点で次の狙いは「台湾」となり、台湾への圧力は拡大させた。
しかし一方、台湾は台湾セミコン(TSMC)を持つ世界最大の半導体生産国、さらに鴻海フォックスコンで世界有数のスマホ生産企業でもある。
欧米各国にとっても台湾を中国に同化させる選択はありえない。


これが中国が米国債を大きく減少させた背景で、中国が西側主要国とのデカップリングが決定的になった証拠だろう。

中国は巨大な経常収支の黒字・巨額の外貨準備を持つ国だ。
外貨準備は3兆4495億ドルで世界最大、その増加額は2010年から2023年までで5358億ドルに達した。

しかしその中国が1兆3000億ドルの米国債保有を、わすか7500億ドルへを半減近く減らした。
5300億ドルの外貨準備の増加に対して、米国債保有の減少額は6500億ドル・・・どうも計算が合わない。
中国は1兆2000ドル近いの巨大な外貨資金を米国債から他の資産に移動させた計算になる。


中国では外貨管理局(外菅局、通称SAFE)が外国為替取引、外貨準備高などを一元的に管理し、その運用も行っている。
でも、運用自体はオーソドックスで、グローバル債券、グローバル株式などポートフォリオ運用をしている、もちろん日本株も運用し、筆者のいた運用会社では主要顧客のうち1社だった。

中国でのもう一つ重要な運用機関CIC(チャイナ・インベストメント・コーポレーション)がある。
ここはポートフォリオ投資ではなく戦略的な投資を行う、その資金はSAFEが保有する外貨準備の一部を移管した1兆ドル程度の巨額資金だ。
米国株、ブラックストーンの大株主だったのは有名な話だが、多くの米国株も戦略的投資しているだろうと思われる。

しかしその詳細は非公開でよく分からない。

金準備の公式統計も7500万オンスの保有が確認されるけど、その実態はもっと大きいかもしれないし、ここ数年の金やビットコイン価格の上昇なども裏では中国がバカ買いしていた可能性もある。

トランプの対中関税政策は延期され、来月初旬に公表される。
中国は長期的に米国とのデカップリングを準備してきたし、米国も対中国政策が自国の将来に直結することを理解している。
どの程度歩み寄れるかはトランプと習近平の判断次第だが、基調的にはデカップリングが10年20年という期間で進んでいくと考えておいた方がいい。
このデカップリングが長期的に世界を変えていく要因になる。



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重要なのは名目GDP成長、実質GDPじゃない!

日本の実質GDPと株価
日実質GDPと日経平均202508
















4-6月期の日本GDP統計が公表された。
「実質成長が予想を上回り株価が上昇した」とのコメントもあつたがズレてる感じ。
株式相場で重要なのは実質成長よりも名目成長だからだ。


グラフを眺めていると、日本の景気と株価はパラダイム転換に直面していると感じる。
過去、バブル崩壊以降、日本人は景気に対する自信を失い続けてきた。
その日本人の自信が変わる転換期だと思えるからだ。

上のグラフは日本の実質GDPの原数値と、日経平均を比べたものだ。
実質GDPの伸び率はわずか1~3%程度しかなく、このグラフの期間(1994~2025年)を見ても非常になだらかな増加トレンド(青ライン)をたどり、日経平均(黄色ライン)を大きく下回っている。
ここ10年以上、実質GDP成長率が低く、日経平均がものすごく割高に見えてしまう。
日本人の「自信のなさを裏付け」ているような感じさえする。


しかし、名目GDPを見ると違った感じになる。
下のグラフは日本の名目GDPの成長ラインと日経平均を比べたものだ。

日本の名目GDPと株価
日名目GDP]と日経平均202508
















名目GDPは2015年のアベノミクス時代から角度を急にして増加トレンドを作っている。
日経平均の上昇トレンドはこの名目GDPトレンドよりも急なので、若干割高とはいえるが、実質GDPよりはずっとマシな関係にある。

過去1年の伸び率を比較してみよう。
      24/4-6   24/7-9   24/10-12  25/1-3   25/4-6
実質GDP +2.99 +1.15 +2.41 +0.15 +1.03% 
名目GDP +9.13 +2.63 +5.27 +3.87 +5.14%

インフレが顕在化する中、日本の名目成長率が切り上がってきている。
株式市場は「名目の世界」にいるので、名目成長が切り上がるにつれて株価も上昇する、これは投資家が理解できる動きだ。
名目GDPと日経平均のトレンド比較では、現時点での4万円以上の日経平均水準は若干の割高・・・黄色ライン(日経平均)が青ライン(名目GDP)を上回っているからだ。

しかし、年3%~5%で増加する名目GDPライン(青いライン)は、順調にいけば、来年には4万円水準に到達し、さらに再来年には4万2000円の到達するだろう。
確かに現株価水準(4万2000円)は10%弱割高といえるが、時間の経過とともに割高感は低減していくだろう。


株価が上昇すればするほど強気の話が出てくるのが証券業界の常だが、株価が下がった時に名目GDPトレンドに支えられて強さを発揮すると見られる。
こうした名目GDP成長が重要で、株価の下値を安定させる。
だから、長期投資家は安心して押し目買いをできる。



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アメリカ消費者のガマンが株高につながる?

USA













アメリカは1960年代から多くの日本人が憧れ続けた「物質的に豊かな」国だった。
多くの最新家電に囲まれ、自動車も一人1台、広い芝生の庭がある家・・・
子供の頃「ボーン・イン・ザ・USA」を聞きながら、アメリカにはベトナム戦争の負の部分もあったが、それでも憧れだった。

アメリカを特徴づけるのが圧倒的な「物質的な豊かさ」だった。
そのため、アメリカは海外のグッズをどんどん輸入し、「消費は美徳」の文化を作り上げた。
当然、貿易収支は長期に渡って「赤字」になる。
でも、全く気にしない、ちょっとドル紙幣を印刷して払えばいいだけだからだ。


そんなアメリカにトランプが登場し、関税というツールを使って貿易収支の赤字にメスを入れようとしている。
この実験がアメリカをどう変えるのか?

今年の6月米貿易収支(モノの収支)は印象的だった。
ヘッドラインでは「860億ドルの赤字」で2年来の最小額になったと報じられた。
それ以上に重要なのは「モノの輸入の急減」だ。

モノ(グッズ)の輸入は4.2%減少の2642億ドルだったが、そのうち消費財が12.4%も減少している。
消費財の輸入は「アメリカ人の豊かさ」の象徴だった。
工業用資材-5.5%、自動車-2.0%、製造業や自動車は駆け込み輸入の反動が根強いのかもしれない。
スイスからロレックスなど高級時計を買い、ドイツからベンツやBMWなど高級車を買い、南アから金やダイヤモンドを買うだけではなく、一般消費財も中国や韓国・日本から買いまくってきたアメリカ人の生活パターンに変化が生じている可能性もある。

強引な関税による米国輸入急減はアメリカ人の消費行動をトランプ政策が抑え込んでいるかのようだ。
多くのアメリカ人にとってはフラストレーションになっているのではないかと思う。


アメリカは一人当たりGDPが8万ドルを越えるリッチな国、しかも3億人の人口がいる巨大な市場だ。
おカネは十分にある、だけど、思いっきり消費することができない。
アメリカ人は自分たちの選んだ大統領によって、極めて抑制的な生活を強いられている。

アメリカ人が消費をガマンしている分、余ったおカネを投資に回しているのかもしれない。
貿易収支の赤字の減少は米国内で回るおカネが増えているということだから・・・
だとしたら、世界の株高はトランプ政策の結果ともいえなくはない。
アメリカ人のカネ余りが世界の株価を押し上げて割高にしている原因かもしれない。



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米国景気は失速するのか?

米非農業雇用者数とADP雇用統計
米雇用とADP202508

















8月1日に公表された雇用統計の数字はショッキングなもので金融市場を直撃した。
7月の非農業雇用者数が7.3万人と10万人割れもショッキングだが、それ以上に過去2か月分を25.8万人も下方修正したことが市場にショックを与えた。

上のグラフで非農業雇用者とADP雇用統計を比べたものだが、両者は多少のズレがあるものの大きなトレンドは一致してきた。
ところが、今年の5月と6月の数字では10万人以上の乖離が起こっていた。
給与支払いの統計から計算されるADPと労働省の雇用統計がこれほど乖離したのは経験がない。

どちらに問題があったのだろう?
下の表は非農業雇用者数と、その3か月移動平均、さらにADP雇用統計の数字を比較したものだ。

   非農業雇用   3か月MA   ADP統計
7月 + 7.3万人 + 3.5万人 +10.4万人
6月 + 1.4万人 + 6.4万人 - 2.3万人
5月 + 1.9万人 + 9.9万人 + 2.9万人
4月 +15.8万人 +12.7万人 + 6.0万人
3月 +12.0万人 +11.1万人 +14.7万人

この表を見て分かるのは、ADP雇用統計ではトランプ相互関税が始動した4月から急速に雇用が減少を始めている。
実際、雇用調整に乗り出す米企業のニュースが増えてきたのもこの頃だった。
でも、労働省統計ではその後も10~15万人の雇用増加を示してきた、そして、「多くの評論家が雇用は堅調だ」とコメントしてきた。

この間、ADP雇用統計では3月までの10万人台から減少が明確になり、5月にはわずか2.9万人、6月は2.3万人の減少となった。
それでも労働省統計を中心にしてきた多くのメディア・評論家は雇用は底堅いを言い続けた。

なぜ、これほどの大規模な修正になり、金融市場を混乱させたのだろう?
これはきちんと説明されるべきだろう。
その理由によっては「米国景気の後退」を示唆することになるかもしれないからだ。


現在は米企業の4-6月期業績の発表が続いているが、各株価指数の1年先予想EPSは鈍化がみられる。
NYダウの直近予想EPSは2065ドルで、トランプ関税前3月の2181ドルから徐々に低下してきている。
GAFAMが好調な決算を発表しているNASDAQでも、直近予想EPSは760ポイントで、ピークの3月802ポイントから5%程度の減少している。
トランプ相互関税が導入された4月以降の変化が米景気の失速につながる可能性を示唆している気がする。

今後の決算発表と予想EPSの動きは注視していきたい。

NYダウ Q/Q S&P500 Q/Q NASDAQ Q/Q R2000 Q/Q
2025年8月 2065.81 -2.4% 261.88 -2.8% 760.04 -4.1% 79.75 -4.6%
2025年7月 2064.45 1.7% 263.42 3.7% 770.83 3.7% 80.72 -2.6%
2025年6月 2104.47 -3.5% 266.36 -2.4% 775.82 -3.3% 81.98 -8.3%
2025年5月 2116.67 -1.9% 269.51 0.3% 792.38 1.7% 83.63 -9.2%
2025年4月 2029.39 3.4% 253.96 -8.5% 743.17 -8.1% 82.85 -4.3%
2025年3月 2181.54 12.0% 272.82 1.0% 802.6 4.9% 89.38 13.7%
2025年2月 2156.93 9.3% 268.66 11.4% 778.95 15.2% 92.11 35.2%
2025年1月 1961.99 -2.8% 277.43 13.5% 808.73 20.3% 86.55 23.1%
2024年12月 1948.6 -3.9% 270.2 12.8% 764.85 19.4% 78.6 13.2%
2024年11月 1973.35 -1.9% 241.21 0.0% 676.11 2.4% 68.11 -5.9%
2024年10月 2017.76 -1.9% 244.52 -0.5% 672.4 -2.7% 70.31 -10.7%
各株価指数の1年先予想、Q/Qは3カ月前との比較。



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トランプ関税、米国物価、企業収益の関係

トランプ










関税は輸入業者が通関時に輸入国に支払う税金だ。
生産者が他国で生産し、それを米国に輸出、通関時に輸入業者が税金を納め、米国内で小売り業者が販売する。
というわけで関税は生産業者、輸入業者、販売業者に分けて負担するのだが、トレードオフの関係であり、その負担配分は平等ではない。

日本の生産者が米国内に販売拠点を持っている場合、日本の親会社で生産し米国子会社が関税を支払って米国内の流通網に乗せることになる。
このケースでは、関税分を米輸入子会社が負担するが、連結決算なので親会社の企業収益が関税分だけ減少する。
そうすれば米販売子会社が価格引き上げすることもないので、米国内での競争力は維持される。
この場合では米関税の大きな部分が親会社の企業収益のマイナスとして現れる。

生産者が輸出価格を据え置き米輸入業者が関税を払い、その分を米販売価格に上乗せするケースも考えられる。
この場合、生産者=日本企業は当初の収益を確保できる、米国輸入業者が関税を払い、小売り業者が関税分の価格転嫁で一部を負担する。
関税負担は輸入業者も小売業者も負担していることになる。
ただ米国内の販売価格が上がるので長期的に売上げ減少の要因になる。


様々なケースが想定されるが、現実問題として米国の関税収入は大きく増加している。
トランプ関税がスタートした4月の関税収入は163億ドル、5月は228億ドル、6月は272億ドルと急増した。
このトランプ関税、3か月合計で663億ドル(9兆3000億円)は米政府の収入になると同時に、生産者が競争力低下を恐れて関税を負担すれば企業収益の減少、米輸入販売業者が価格転嫁すれば米消費者物価を上昇させる、その結果小売り売上高が減少する。

つまり、トランプ関税と米消費者物価と米小売り売上高の関係を見ることで誰が関税を負担したかが見えてくるだろう。


     関税額   消費者物価  小売売上高
4月  163億ドル +0.2%  +0.1%
5月  228億ドル +0.1%  -0.9%
6月  272億ドル +0.3%  +0.6%
消費者物価、小売り売上高は前月比

この3カ月の平均関税率は12%、8月以降相互関税が適用されると一段と上がるのは間違いない。

4月~5月はトランプの言動も不安定で先行きが不透明だった事、トランプ関税に備えて駆け込みで輸入したり在庫をタップリ抱えたりという企業も多く、関税の影響は限られていたと思われる。

しかし、6月物価が前月比+0.3%上昇(年3.6%)、小売売上高が前月比+0.6%上昇、関税分の一部が消費者物価に転嫁され+0.3%、その分も含めて小売売上高が上昇したとも見られる。
関税の転嫁が物価を0.3%押し上げ売上高に多少影響したといえるが、引き続き生産者が関税分の大きな部分を負担していると思う。


日本企業の多くは米国内に自社販売ネットワークを持っている。
こうした大企業は米子会社が関税を負担し、連結決算の収益減少として現れると思われる。
単純に言えば、米国輸出の10%が日本が占めているとすると、米関税収入9兆3000億円の10%程度、1兆円弱の収益減少が4-6月期決算に現れるかもしれない。

4-6月期ではまだ平均関税率12%なのでまだまだ限定的だが、8月以降25%の関税率が適用されるともっとマイナス影響が大きくなる。
年間ではもっと大きな負担が親会社の連結決算に出てくると思われる。
さらにトランプが米国内への価格転嫁を強く非難するとしたら、米国内物価への影響が限られる反面、生産会社の連結決算にはより大きな影響になる。

関税分は誰かが負わなければならない。
明らかに「近隣窮乏策」であり、トランプは近隣国の犠牲に上に自国の税収を伸ばそうとしているということだ。



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トランプ氏 vs パウエル氏、どっちが勝つか?

米長短金利差
米長短金利差(10年ー3か月)202506
















「煮詰まる」と言う言葉がピッタリとくる現在の株式・債券市場だ。
上のグラフは米国の長短金利差とNYダウの推移だが、なんか窮屈な領域に入ってしまった気がする。
不確実性を強調しただけで何もしようとしないFRBパウエル氏、トランプが就任してからバトルが続いている。

長短金利差は景況感をは反映する、景気が良ければ長期金利が上がり長短金利差は広がる、逆に景気が悪くなれば長期金利が低下し長短金利差は縮小しマイナスになる。
現在、金利差は「ゼロ」

NYダウはトランプ関税に翻弄され上がったり下がったりだったが、結局のところ年初来のリターンは+2.35%(6/26)。
上がって下がって年初来「チャラ」。

景気の方向性、金利の方向性が見失ったかのような市場で、市場参加者の予想が収れんしてしまっている、その分、煮詰まった感が強く出ている。
どっちかに大きく動く前兆となるかもしれない。

そのカギとなりそうなのが「トランプ vs パウエル」だ。
エビデンスを重視するパウエル氏は景気実態の数字が出るまで動こうとしない。
これに対してトランプ陣営は利下げをしないパウエルを糾弾している。
金融市場の精通したトランプ陣営、特にベッセント氏から見ればパウエル氏は「無能」に見える。
市場では先を読む力が一番重要で、証拠が出てから動く、なんて全くの遅行、ビハインド・ザ・カーブに過ぎないからだ。
 
市場はトランプ陣営がパウエル氏を解任し、FRBの利下げを進めることが読み筋になったのかもしれない。
この局面で株が上がるとしたら「利下げ」しかないからだ。


米景気実態を見てみよう。
下の一覧表は物価、消費、雇用、原油価格を前年比で比較したもの。
非農業雇用者数はこの半年で着実に減少しているが、賃金は∔3%台で安定している。
CPIにしてもCPIコアにしても、ゆっくりとした物価の低下傾向を示している。
そして、小売り高も関税前の駆け込み需要で上下したものの、2~3%のレンジで収まりそうな感じになってきている。

でもそれぞれかく乱要因がある。
雇用・賃金ではトランプの不法移民対策で、人手不足感が強まり賃金に上方圧力が出てくるか?
物価では輸入業者がトランプ関税をどのぐらい吸収し、どのぐらい物価に転嫁するのか?
個人消費では関税の一部を転嫁された商品を買い続ける余力があるのか?

かく乱要因も含めて米景気は簡単には行かない、米企業業績も大きな増加は期待しにくい。
株価の上昇は「業績が上がる」または「金利が下がる」が必要で、現在は「金利低下」が最大のポイントになっている。
今年後半の金利動向が決め手になる。

問題はパウエルFRB議長が「不確実」というばかりで何もしないパウエル氏をどうクビにするかなのだろう。
「中銀行の独立」という大義名分があるので、簡単ではないかもしれない。

消費者物価指数 小売り高 平均時給 原油価格
CPI コアCPI 前年比 前年比 前年比 月平均
2025年5月 2.4 2.8 3.29 3.9 -22.6 61.03
2025年4月 2.3 2.8 5.16 3.8 -25.4 63.08
2025年3月 2.4 2.8 4.60 3.8 -15.7 67.82
2025年2月 2.8 3.1 3.10 4.0 -7.0 71.33
2025年1月 3.0 3.3 4.20 4.1 1.9 75.14
2024年12月 2.9 3.2 3.92 3.9 -9.0 69.79
2024年11月 2.7 3.3 4.12 4.0 -10.0 69.69
2024年10月 2.6 3.3 2.85 4.0 -16.3 71.6
2024年9月 2.4 3.3 1.74 4.0 -22.4 69.55
2024年8月 2.5 3.2 2.13 3.8 -7.2 75.55
2024年7月 2.9 3.2 2.66 3.6 5.4 80.54
2024年6月 3.0 3.3 2.28 3.9 12.3 78.89
数字はすべて前年比%



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日銀・FRB、「無風」に隠された意図

FF金利FOMC2506
















日銀決定会合では大方の想定通り、事前にアナウンスされた「量的引き締めの緩和」が決められたが基本的に「無風」、FOMCは「予想の範囲内」で「無風」とされた。
しかし、この日銀もFRBの判断もちょっとした気になる点がある。

それは両国中銀が「リスク・シナリオを意識し始めたのではないか?」という点だ。


日銀が債券テーパリングのペースを四半期毎の4000億円から2000億円に減額した。
特に長期~超長期ゾーンの債券需給を心配した結果だといえる。
そもそも長期金利は日銀の決定事項ではない、それでも日銀植田氏の頭の中には「超長期金利の急騰リスク」が残っている。
だからこそ、テーパリングを緩めた。


FRBの発表をよくよく見ると、いくつか、FRBは「ここ1~2年のリスクシナリオ」を意識し始めたといえるポイントがある。

①FF金利見通しで、26年の下限予想を2.875%から2.625%に引き下げたこと。

中央値では年内2回の利下げ+26年1回の利下げだが、下限値では年内3回+26年4回利下げの予想に変更された。
これは年内3回に加えて来年も4回、合計でナント1.75%も大幅な利下げする、つまり米国景気の大幅調整というリスクシナリオも想定しているということだ。

上のFF金利見通しだが、明らかに下限金利を引き下げ、歪なグラフになっているのだ分かる。
この下限値へのバイアスはFRBの懸念を示している。


②25年実質GDPの予想が、昨年12月+2.1%、今年3月+1.7%、直近6月+1.4%と徐々に下方修正されてきていること。

米国経済の成長ペースがトランプ政権下で下方修正され続けている、徐々に景気に厳しい見方に変わってきているといえる。
3か月毎にFRB見通しがそのたびに下方修正されていることは、FRBの長期的な見方が変化している可能性があるだろう。


失業率も物価PCEも上方修正されたこと。

失業率は今年来年ともに4.5%へ、物価PCEで昨年12月+2.5%から3月+2.7%そして直近6月+3.0%に会合毎に上方修正されている。
「トランプ関税の影響が物価を引き上げ、同時に景気を悪化させるというリスク・シナリオ」を意識し始めたのかもしれない。

日銀は長期債市場に懸念を持ち、FRBはトランプ関税政策に懸念を持っている。
これらのポイントが今回の中銀会合からは推測できる。
無風、無風と言って思考停止していると、変化に対応できないのかもしれない。



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米国景気の減速感、強まる?

米雇用統計
米雇用3か月平均202506

















5月の米雇用統計が公表され、雇用は底堅いと市場は反発している。
確かに予想とほぼ同じ13万人、失業率も4.2%で横ばい、悪化する懸念があっただけに市場は安堵したのも分かる。

しかしもうちょっと長い目で見ると景色が違う。
上のグラフの黄色ラインは非農業雇用者数の3か月移動平均だが、停滞感は否めない。
3か月平均値は、昨年12月20.9万人、1月23.2万人と20万人台だったが、その後は3月11.1万人、4月12.3万人、5月13.5万人と10万人台前半で推移している。
少しづつ雇用市場の鈍化が進んでいる。


米ISM景況感指数
ISM202506

















上のグラフはISM製造業指数(青いライン)と非製造業(紫ライン)で、製造業ではすでに50を切る状態だったが、5月はここまで堅調だった非製造業でも50を切る停滞局面に入った。

非製造業指数は2022年12月に一瞬だけ50を切り49.2を記録した。
当時はFRBの急速な金融引き締めで株価も調整局面で、コロナ禍から立ち上がったサービスセクターにも一瞬の緩みが起こった。
しかしその後、FRBの引き締めが終わり、サービス業も回復に向かった。

このISM非製造業の50割れをどう見るのか?

2022年末のように一瞬だけで、FRBが金融緩和を進めればサービス業の景況感も回復していくかもしれない。
しかし、FRBパウエル氏がトランプの利下げ要求を意固地になって拒否すると危ない。
この状態が長引くとより広範囲な景気後退に入っていく可能性があるからだ。


NYダウ Q/Q S&P500 Q/Q NASDAQ Q/Q R2000 Q/Q
2025年6月 2104.47 -3.5% 266.36 -2.4% 775.82 -3.3% 81.98 -8.3%
2025年5月 2116.67 -1.9% 269.51 0.3% 792.38 1.7% 83.63 -9.2%
2025年4月 2029.39 3.4% 253.96 -8.5% 743.17 -8.1% 82.85 -4.3%
2025年3月 2181.54 12.0% 272.82 1.0% 802.6 4.9% 89.38 13.7%
2025年2月 2156.93 9.3% 268.66 11.4% 778.95 15.2% 92.11 35.2%
2025年1月 1961.99 -2.8% 277.43 13.5% 808.73 20.3% 86.55 23.1%
2024年12月 1948.6 -3.9% 270.2 12.8% 764.85 19.4% 78.6 13.2%
2024年11月 1973.35 -1.9% 241.21 0.0% 676.11 2.4% 68.11 -5.9%
2024年10月 2017.76 -1.9% 244.52 -0.5% 672.4 -2.7% 70.31 -10.7%


上の表はいつも使っている米国株指数の1年先予想EPSの推移だ。
変化率は3カ月前との比較した増減で、すべての株価指数EPSが3カ月前比減少になった。

予想EPSは小型株のラッセル2000が今年2月をピークに10%程度低下していきているが、NYダウは3月2181に対して6月2104と若干の低下に過ぎずピークを打ったともいえない。
予想EPSが今後も減少トレンドをたどるのか、それとも、トランプ関税の影響を克服して横ばいを維持できるのか、重要な分岐点になる。



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日本の物価だけ上昇するのは、なぜ???

米国の物価統計
米国PPIとCPI202506
















日本の物価だけが高止まりしているのではないか?
それはなぜだろう?

上のグラフは米国CPIとPPI(前年比)だが、明らかに物価上昇は落ち着いてきている。
主要国のCPIを昨年4月と今年5月で比べると、米国3.3⇒2.3%、ドイツ2.2⇒2.1%、フランス2.2⇒0.8%、中国0.3⇒-0.1%、韓国2.9⇒2.1%と軒並み伸び率が鈍化している。
しかし、日本だけは逆に2.5⇒3.6%に物価上昇が高まっている

先進国では英国が2.3⇒2.6%と若干上昇しているが、主要先進国の中で明確な物価上昇を見せた日本だけで、日本は完全な例外国だ。
しかも日本の物価上昇はちょっと不穏な感じもある。

下のグラフは消費者物価CPIの伸び率と需給ギャップを比べたものだ。
需給ギャップは、下のグレー線、マクロの需要量(個人消費や投資などの需要)を供給(労働力や生産設備など)が上回ってマイナスの数字になっている。
日本は需要不足の経済に陥っているわけだが、それにもかかわらずCPIが上昇を加速化させている。

ここに大きな問題がある。

日本の物価統計
日本CPI202505
















需要不足の経済で物価が上昇する理由として、①海外からの輸入品の価格による国内物価の上昇、②為替の円安/海外通貨高が国内物価を押し上げる、などが考えられる。
しかし、ホントの理由はよく分からない。

下のグラフはNY原油価格を、ドル建てと円建てで比較したものだ。
2022年以降円建て価格(黒ライン)がドル建て価格(青ライン)を上回って推移している。
つまり、円建てのエネルギー価格が高止まりし、これが国内物価に影響している。

外貨建て原油価格の低下により主要国では、エネルギー価格の低下がCPIの伸び率鈍化を引き起こしていると言えるが、日本では円建て価格の高止まりによって物価が海外以上に上昇している。

これが日本の物価上昇の大きな理由だと思うが、国内物価の最大の要因が「食品価格の上昇」であり、エネルギー価格だけでは説明できない。
もっと考えてみる必要があるのだろう。

ドル建てと円建てNY原油
円建WTI価格202505


















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株式需給の達人(おもしろ相場格言)
「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
株式需給の達人(バリュエーション)
PERやPBRなどバリュエーションを理解し割安/割高の実践的判断の基に理論的な株式投資を解説します。 割安とは将来のリータンを示すのか、単に成長性がないというだけなのか、事例をもとに解説します。 株式投資の基礎として大切なもので、是非一読をおすすめします。
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