株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版の「株式需給の達人(おもしろ相場格言編)」を出版しました。
既刊の「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」「チャートの達人」「個人投資家の最強運用」「株式需給の達人(基礎編)」「株式需給の達人(投資家編)」とともに一読をおすすめします。

やさしい投信運用

国内株投信、衰退の謎(3)

ETF








仮説(2)はNISAやiDeCoへの資金流入が国内株アクティブ投信の衰退を招き、その結果が東証の投資家別売買で投信の継続的売り越しに現れているという仮説だ。
これは一見現在の資金運用のトレンドを表しているといえるが、ちょっと疑問もある。

まずは、数字を確認してみたい。
投信協会の数字を見ると、NISAの残高は21.3兆円、そのうち積立てNISAは6878億円しかない。
さらに確定拠出年金だが、企業型の加入者は751万人、個人型(iDeCo)の加入者が185万人だ。
確定拠出年金の残高は13.5兆円となっている。
NISAもiDeCoも着実の伸びているが、残高規模合計で35兆円程度だ。
既存投信を売却し資金が人気のNISAやiDeCoにシフトしているという理由で、2兆円を超える投信の売り越しが起きているとは説明できない・・・規模が違いすぎる。

仮説(3)は国内投信からグローバル投信に資金が流れ、国内株には投信の売り越しが続いたという仮説だ。
詳細な数字は見つけられていないが、モーニングスターによると、今年の1月と2月で国際株式が人気になり、1月に6862億円、2月に7908億円の資金流入があったという。
東証での投信売り越し額は今年1月に3798億円、2月に3800億円だったので、今年の1~2月という短期では国内株投信から国際株式に資金移動が行われた可能性は非常に高い。

投信を通貨別で見ると、2020年1月から2021年2月まででドル建て投信に6.7兆円に資金流入があったので、その間の投信の売り越し額2.5兆円は国内株式から国際株式に資金移動した分と考えてもおかしくはない。
長期的にも説明可能な仮説だといえる。

この3つの仮説検討から、いくつか結論的に言えることがある。
国内株投信の衰退は・・・
(1)インデックス投信の興隆、その反対にアクティブ投信の衰退という流れが明確になり、米国以上のスピードでインデックス化が起こったこと。
(2)アクティブ投信では国内株が人気低迷し、国際株式型に急速に資金シフトが起きたこと。

投信全体は純資産が増加しているが、国内株アクティブ投信は減少、その分が、インデックス投信や国際株式型に資金シフトしたといのが結論になる。
この傾向は続きそう・・・国内株のファンドマネージャーには試練の道が待っている。


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国内株投信、衰退の謎(2)

ETF








投信協会が発表しているデータを確認しておこう。
公募投信全体 145.9兆円 昨年の資金流入 +9.8兆円
株式投信   131.0兆円         +8.9兆円
公社債投信   14.8兆円         +0.9兆円

株式投信には国内株と外国株などの純粋な株式だけでなく、バランス型などかなり広範囲に含まれ「株式」とはいえ「株式以外」も多く入っているので扱いには注意が必要。
この純資産総額を見る限り、公募投信全体としては資金流入が続いている。
これだけでは東証の投資家別売買で投信の売り越しが続いている理由は分からない。
   
前回示した仮説(1)パッシブ投信の増加により、アクティブ投信から資金が大規模に流出したという仮説・・・を検討してみよう。
株式投信131兆円のうち、インデックス投信は71.5兆円で54.6%を占める。
さらに外貨建て投信の割合は27.3%と開示されている。
インデックス以外の投信は59兆円で、そのうち外賀建投信は35兆円・・・つまり、円建てのアクティブ投信は24兆円ということになる。

外貨建てのインデックス投信もあるかもしれないが、ここでは考えていない。
何故なら、インデックス投信71兆円のうち、ETFが57兆円と大半を占め、そのETFの最大の保有者は日銀で、日経平均やTOPIX型のETFだからだ。
これで数字の整合性は取れる・・・グローバルのインデックス投信にはそんなに資金が集まっていないと推測できる。

株式投信のうち、アクティブ投信はわずか24兆円しかない・・・しかも、ETFを含めインデックス投信が大きく伸び、71兆円を3倍近い残高になっているというのが実態だ。
国内株投信ではアメリカ以上に速いペースでインデックス化が進んでしまったといえるだろう。
アクティブ投信からの資金流出が、東証投資家別売買状況での投信の売り越し継続を招いているという仮説は成り立つだろう。

次の仮説(2)は積立てNISAやiDeCoが人気になり、資金集中した結果、通常の公募投信が売られていることにより、東証での投信の売り越しが長期間継続したという仮説だが・・・次回考えてみたい。


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国内株投信、衰退の謎(1)

ETF








まずは「論より証拠」というわけで、東証の2月投資家別売買動向を見てみよう。
最大の買い越しは証券自己で1兆3000億円・・・これは先物やオプション等でヘッジされているので完全な買い越しではない。
次の買い越しは海外投資家で3340億円・・・この両者だけだ。

一方、売り越しは信託銀行(-6229億円)、投信(-3800億円)、事業法人(-833億円)と続く。
国内の機関投資家はすべて売り越しだった。
信託銀行は年金の受託機関で年金基金の動きが反映されているだろうし、事業法人は持ち合い株の売却が早くも始まっているのかもしれない。
でも、一番注意を要するのが、投資信託(以下投信)だ。

2月は3800億円の売り越しだったが、1月も3798億円の売り越し、12月はボーナス月で入金が増える月だが、わずか857億円の買い越しにとどまっている。
その前、11月4273億円の売り越し、10月1307億円の売り越し・・・昨年1月以降、毎月2000億円~3000億円の売り越しが続いている。
結局、昨年1年間で2兆3546億円の売り越しになった。

問題はこれだけ長期間にわたって毎月毎月売り越しを続けていることだ。
「株価が上昇したから利食う」という相場観による売りといえるレベルではない。
何か大きな地殻変動が起こっている可能性があるだろう。

投信業界の最近のトレンドは、
(1)アクティブ投信からパッシブ投信への資金の流れ、
(2)積立てNISAやiDeCoなどの積立型商品への資金の流れ、
(3)国内投信からグローバル投信への資金の流れ、
・・・と三つの流れがある。
これが原因なのか?
次回、さらに考えてみたい。



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2019年、低位株のアノマリー投資

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文化的にも伝統的にも世界の他の地域と違うガラパゴスの日本にはたくさんの特殊なものがあり、グローバル市場にリンクしている日本株市場にも特殊なアノマリーが残っている。
その代表的なアノマリーが低位株効果と呼ばれるものだ。

低位株という言葉自体が特殊日本的な言葉で、グローバルには全く通用しない言葉だ。
株式分割や併合が簡単に頻繁に行われる海外株式には低位株や値嵩株という概念自体がなく、割安株とか割高株、バリュー株かグロース株という分け方がより一般的だ。
日本も今は株式分割を簡単に行うことができるが、今でも10万円や20万円という少ない投資金額で買える低位株、最低でも百万円以上の投資金額が必要な値嵩株といった分け方がいまだに生きている。

この低位株は個人投資家には少額で買えるため人気になっているケースも多い。
しかも、会社の悪い部分を織り込んで低位株になっているわけで、悪材料を織り込んだ水準にあるということも個人投資家には買い安心感があるのだろう。
こんな個人投資家の心理が低位株効果を形作っているのかもしれない。

日興アセットが低位株オープンという投信を出している。
設定は1993年でかなり古い投信で、運用にも安定感がある。
運用プロセスはシンプルで、株式を低位・中位・値がさの3分類し、信用リスクを考慮し、業績とバリュエーションで選別し投資するというものだ。
過去5年の5月決算期でパフォーマンスを開示されている。


  2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
基準価額 12396 13292 17050 14768 18706 21718
期間分配金合計   100 100 100 100 400
分配金再投資騰落率   8.0% 29.0% -12.8% 27.3% 18.2%
東証株価指数騰落率   3.6% 39.0% -18.7% 16.3% 12.8%
純資産総額 6823 6072 5787 4428 5463 5152
基準価額・分配金は円、純資産総額は百万円。

2015年(2014/6から2015/5)を除き、毎年、東証指数TOPIXよりも高いリターンを確保しているのが分かる。
この2013年から2018年までの5年間を取ると、TOPIXのトータルリターンが+53%だったのに対し、低位株オープンは+81%とTOPIXを大きく勝ち越している。
これが低位株アノマリーと呼ばれるものなのだ。
ただし、必ずしも投信を買う必要もない・・・購入時の手数料が2.16%かかるし、運用手数料も毎年1%かかるので、自分で選別して低位株を買う方が圧倒的に運用コストが安いからだ。
基本的にシンプルな銘柄選択法なので、低位株+高配当、低位株+低ボラティリティ、低位株+低PER、などと銘柄選択の幅が広がる。
自分の好みに合わせて銘柄選択できるのが、この低位株投資法の強みといえる。
悪材料を織り込んだ低位にある高配当株や低バリュエーション株は波乱相場に強みがあり、2019年はこの低位株のアノマリー投資が注目される年となるかもしれない。




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やさしい投信運用(7バランス型運用続き)

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iDeCoの運用は、まず長期的に運用成果を出す、次にベンチマーク対比ではなく絶対値でリターンを上げる、そしてリスクを管理し大負けを避ける、という三つが必要だ。
でも、これらは市場リターンに大きく左右されることを覚悟しなければならない。
株式市場は長期的にリターンをもたらす市場だが、そうでない場合もある。
アメリカ株でもNYダウ1000ドルの壁を呼ばれ、1970年から10年間1000ドルを抜けなかったこともあるし、日本株では1990年の高値は39000円水準で28年経っても抜けていない。
つまり、いくら長期投資といってもリターンが上がらない局面もありえるのだ。
今は長期の株式上昇期にあるので、誰でも簡単にリターンが上げることができるが、これが10年続く保証は何もない。

前回話したのは失敗例でもあるが、iDeCoの投資は長期投資なのでできるだけ、ダウンサイドのリスクを減らすように4資産のウェートを変えていくことは重要だ。
もちろん、前回の失敗例のようにドルの下落予想(円高)で外国株と外国債券を減らしたのはいいが、逆に株価の反発と金利低下局面で乗り遅れるということも十分にある。
しかし、これはある意味、必要経費を考えておいた方がいいだろう。
保守的に動くことで少なくとも円高で外国資産が目減りすることを避けられたからだ。

iDeCoの運用では特に重要な事は損失を回避することだ。
損失回避が十分にできれば長期のリターンは必ず上がる。
逆に上昇相場で大きくリターンを上げても、その後の下落相場で大きな損失を出したのではなにもならないし、大負けすると取り返そうとして、さらにリスクを取った(株式のウェートを上げるなど)ポジションにしてしまう傾向もあるので、長期投資では大負けを避けすることが重要だ。
少しづつ少しづつリターンが出ればいいぐらいに思っていた方がいいと思う。



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やさしい投信運用(6バランス型の運用)

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ワシの実体験からiDeCoの運用を取り上げてみたい。
ワシの運用実例(2007年4月から2018年1月まで)から、バランス運用の基本的なやり方とリバランスについて考えてみよう。
業界用語で言えば、絶対値追求型の4資産バランス運用ということだが、日本株、日本債券、外国株、外国債券の4つのインデックス投信に分散投資するバランス運用を行った。
基本的な配分はそれぞれ25%づつという簡単なもので、この比率はあまり考えすぎない方がいいと思う。
たとえば、世界最大の年金GPIFの基本配分を見ると、日本株と外国株がそれぞれ25%と株式で半分、日本債券35%と外国債券15%と債券全体で半分と、日本債券を多めにしてリスクを抑えているという特徴はあるが、ワシの基本配分と大して違わない。

そして、重要なのはiDeCoの運用は絶対値運用、つまり、ベンチマーク対比で運用するのではなくリターンの絶対値を上げることを目標にしていることだ。
絶対値運用はいろいろなやり方があるが、ワシはダウンサイド(資産価格が下落し損する)のリスクを管理することで絶対値のプラスを上げることを目指した。
簡単に言えば、下がると思った時にウェートを下げキャッシュポジションを増やし、通常の状態では各資産の配分25%を維持するということだ。

運用をスタートしたのが2007年でちょうど8月にパリバショックが起こった時期だった。
スタート時点では各資産25%づつ組み入れ、そのままパリバ・ショックを迎えたが、配分は変更しなかった。
フランス銀行のBNPパリバがミューチャルファンド(投信の一種)の解約を制限したことで、投資家が混乱し株価が大きく下落したものだが、ワシは市場の一時的な混乱だと判断したからだ。
しかし、結局これがアメリカでサブプライム関連の証券化商品の暴落につながり、その証券化商品を組み入れたデリバティブが大混乱し、その証券化ビジネスを中心としたリーマンブラザーズの経営問題に発展・・・という連鎖反応が2008年の株価大暴落につながった。

2008年にまだドル/円が100円を越えていた時、思いきってウェートの大幅変更をした。
絶対値運用ではウェートを小幅に変えても効果は少ないので、変更は思い切ってやらなけれはならない。
外株と外債インデックスファンドをそれぞれ20%づつ売却し、円債25%、円株25%、外債5%、外株5%、キャッシュ40%の組入れにした。
その後、80円割れまでドル安/円高に推移したので一見うまくやったように見えるが、実はこれが失敗の元だった。

外国債券・外国株式は利回りや価格変動とともに為替が重要だが、ワシは2008年に外国株式というよりも為替の円高を考えて、それでそれぞれのウェートを20%づつ減らした。
実際、リーマンショック後のリスク回避で円高が急速に進んだので、2010年ぐらいまでは円高の損失回避ができたのでiDeCoの平均より高いパフォーマンスになった。

しかし、その後特に2012年以降はグローバルな金融緩和で世界中で長期債が買われ長期金利が低下し、外債は高いパフォーマンスになり外株も大幅な反発場面になった・・・この大きな流れに乗り遅れてしまったのだ。
為替を中心に見ていたので、NY市場の株価の上昇や金融緩和でのグローバル債券価格の上昇についていけなかった。
変動率では為替より資産価格(株や債券)の方が大きいので、円高よりも外国資産価格の上昇の方が重要だったわけだ。
結局、ぐずぐずしているうちにウェート引上げが遅れ、実行できたのは2014年の日銀の異次元緩和後で致命的な遅さだ。
異次緩和によるドル高/円安局面になって背に腹は代えられず、外国資産を増やした。
これは大失敗で、これによりiDeCo参加者の平均リターンより劣ってしまった。

・・・続く。



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やさしい投信運用(5 iDeCo経験談)

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iDeCoの実際の運用例としてワシの確定拠出年金の経験を話そうと思っておる。
前回話した通り、ワシは2007年から個人型=現在のiDeCoに加入し、10年強毎月2万3000円を拠出(年金の用語で入金すること)し、それ以前の会社型で拠出した分を含め合計550万円を積み立てた。

このiDeCoは非常に良い年金制度だ。
まず、iDeCoの専用のサイトがあり、その時点での拠出金合計、組み入れ投信ごとの運用残高、合計の運用残高、年率パフォーマンスなど必要な数字が毎月、手に入ることだ。
お任せ運用にはない臨場感があり、実際、ファンドマネージャーが見ている画面に近い状態で運用できる。
さらにこのサイトでは、投信の内容(対象有価証券、フィー、過去のパフォーマンスなど)を比較できるし、投信の入れ替えもサイトで簡単にできる。

次に税金関係だが、これもiDeCoはとても有利だ。
毎年拠出した掛け金が所得控除になる・・・具体的には年末が近づくと「小規模企業共済掛金控除」が送られて来るので、確定申告すれば23000×12か月=27万6000円を所得から差し引くことができ、年末調整をするサラリーマンなら払った税金が還付される。
さらに退職時は、一時金として受け取る場合は退職控除が使えるし、年金で受け取る場合は公的年金控除が使える。

しかし、ワシは一時金で全額受け取ったが、実は税金面ではいまだに納得がいっていない。
普通、税金は運用収益に対してかかるが、iDeCoの場合、積み立てた金額も含めて課税されたことじゃ。
ワシの例でいえば、550万円は自分で払った拠出金で、リターンは330万円で普通ならこれに対して課税されるはずだ・・・キャピタルゲイン課税なら約20%で66万円の税金となる。
ところが退職金課税では他の退職金もあったため、このiDeCo分については80万円程度課税された。
確かに全額の880万円からすれば10%弱の課税だが、キャピタルゲイン20%課税より多く税金を払ったことになる・・・ん????となんか騙された気分になった。
普通に880万円の退職金(10年)とすると、退職金控除は年40万円、さらに二分の一課税になるので、(880-40×10)×1/2×20%(税率)=48万円となる。
キャピタルゲイン課税(66万円)より低くなるが、他の退職金がある人は意外と不利になるので要注意だ。

ついでにもう一つ文句を言いたい。
それは投信のスイッチングに時間がかかることだ。
特に外国株投信や外債投信を入れ替える時は、まず、売却に時差を含めて6-7日からかり、現金での入金を確認してから別の投信を買うのでさらに4-5日かかる。
一回のスイッチングで合計2週間近くもかかるので、売りたい投信は売りたい価格よりかなり下値で売却し、買いたい投資は買いたい価格よりかなり上値で買わされることになったことも多くあった。
今時、投信のスイッチングで2週間もかかるなんて・・・ありえないだろ!!!・・・と言いたい。



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やさしい投信運用(4 iDeCo運用例)

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iDeCoの優れた特徴は前回説明した通りだが、今回はワシの投資経験から、実際の確定拠出年金の運用例を検討してみたい。

振り返ってみれば、ワシは2007年に運用会社に移った時、それまでの確定拠出年金の企業型から個人型に移行したんじゃ。
それまでは会社と従業員が半々づつ拠出する企業型だったが、個人型に移行したため会社の拠出はなく個人で月23000円を拠出することになった。
企業型からの移行時に約250万円程度でスタートし、定年退職月まで10年と10か月の間毎月2万3000円の拠出を続けたので、合計拠出金は約250万円+約300万円の約550万円となった。
それに対して、退職月末の残高は880万円だったので、330万円の儲けとなった。
年率リターンの計算は難しいが、確定拠出年金のサイトでは年率5%程度のリターンと表示されていたと思う。

iDeCoの運用はいろいろなやり方があると思う。
当時流行っていた新興国投信に大半をつぎ込んで一時は大儲けをしていた同僚もいるし、定期預金にずっと入れて安全確実に運用していた同僚もいた。
でも、ワシは最も基本的な4資産のバランス運用、つまり、日本株、日本債券、外株、外債という4つの資産クラスによる運用を行った。
これは日本の年金基金が普通にやっている基本的な分散投資で、ほとんどの運用会社でバランス運用の商品を扱っている。
当然のことだが、GPIFなどの大手年金はそれぞれの資産でベンチマークを持っている。
たとえば、日株ならばTOPIXが基本ベンチマークだし、外株ならばMSCI-KOKUSAI(日本投資家向けにMSCIが開発したもので、日本株を除いたグローバル株式を組み入れたベンチマーク)だし、債券はボンドインデックス(ノムラBPIやシティボンドインデックスなど)をベンチマークとしている。
各資産クラスでベンチマークを上回る運用ができれば、ポートフォリオ全体でも超過収益が稼げることができるというわけだ。

ただし、iDeCoの場合は年金のバランス運用とは違い、ベンチマーク運用(株価指数や債券インデックス対比でプラス・リターンを目標にする)ではなく、絶対値運用(プラスの絶対リターンを目標にする)でないと意味がない。
個人にとっては、「ベンチマーク対比ではプラスだったが、絶対リターンでは損失だった」では満足できない・・・リアルの儲けが必要だからだ。
絶対値のプラスリターンを上げるには、(1)短期変動を気にせず、長期で上がるモノに集中投資する、(2)下落する時ポジションを縮小し、上昇する時ポジションを拡大するキャッシュ比率を動かす、(3)基本キャッシュや債券ファンドで保有し、儲かると思った時だけ株式に投資し、プラスになったら売却してキャッシュに戻す、などの方法が考えられる。
その中で、ワシは(2)のキャッシュ比率を変えることで絶対値リターンを上げていこうと考えた。

実際のやり方としては、(1)iDeCo資金を4等分し、日株、日債、外株、外債の4つのインデックス投信を毎月等金額を買う、(2)NY市場の動きと為替(円/ドル)の動きを見て、外株と外債のキャッシュ比率を決める、(3)円ポジション(日株と日債)は基本的にホールドし、NY市場の動きによっては日株のキャッシュ比率を動かす・・・という、比較的簡単なやり方だろう。
外株と外債については、資産価格の値動きもあるが、それ以上に為替の動きが重要だ。
せっかく外株が上昇したのに、為替が円高になり損失が膨らんだということも考えられるからだ。
だから、外株、外債のインデックス投信の配分は、市場の動きだけでなく為替の動きにも注意が必要になる。

2007年から2017年までワシがどう考えて配分やキャッシュ比率を変えてきたかは次回話そう。



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やさしい投信運用(3iDeCo)

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iDeCoはそのルーツにアメリカの401Kを持っているので、簡単に振り返ってみよう。
アメリカの401Kはもう30年以上の歴史があり、企業の従業員の間で定着している年金だ。
DCと呼ばれる確定拠出年金は、毎月の掛け金が決まっているが、年金給付額は運用次第というタイプの年金で、運用責任は従業員側にある。
これに対して日本の基礎年金や厚生年金は、毎月の年金給付額が決まっており確定給付年金と呼ばれ、運用責任は年金側にある。
日本の基礎年金(国民年金)のような国民皆年金制度はアメリカにはないので、この401Kと同様の仕組みを個人型にしたIRA(個人退職アカウント)が年金制度に中心になる。

日本では2000年代にバブル崩壊で運用に失敗した厚生年金基金に代わって、この確定拠出年金の企業型が導入された。
これはアメリカの401Kを手本に作られた制度で、従来の企業年金を代替する制度だ。
ワシのいた証券会社でも証券業厚生年金基金が廃止され、この確定拠出年金が導入された。
当時は会社と従業員で半々の拠出だったが、ワシが運用会社の役員になった時、今でいうiDeCoと同じ個人型に移行した。
個人型とはいえ当時は一部の人に限られていたが、今は個人型から誰でも加入できるiDeCoに進化した。
今の若い人は、自営業でも国民年金+iDeCo+つみたてNISAと3種類組合せで老後資金を準備できる。
サラリーマンなら厚生年金+企業型DC(あるいはiDeCo)+つみたてNISAの組み合わせで高い運用効果が得られる。
節税にもなるし、運用次第では適切なリターンを受け取れるし、今の若い人は恵まれた環境といえるだろう。
もう定年したワシから見れたば、羨ましいかぎりじゃ。

iDeCoの特徴は大きく2つある。
一つは運用の自由度だ。
硬直的なNISAなど比べたら、組み入れた投信をいつでもいくらでも変更することができるし、定期預金などのキャッシュ運用に一時避難することもできる自由度の高い仕組みだ。
年金制度なので60才定年までは引き出しはできないのは仕方がない。
その場合、定年時に一時金として全額受け取るか、その後年金タイプで毎月受け取るかを選択することになる。

もう一つは、節税の効果バツグンなことだ。
毎年の掛け金が所得控除の対象になるので、毎月2万円を拠出すると年24万円が所得控除され、その分税金が減額される・・・これが第一の節税効果で、60才まで毎年減税になるのは非常にありがたい制度だ。
さらに、60才で一時金として受け取る場合は退職金控除を使えるので、一般のキャピタルゲイン課税20%と比べたらずい分とお得だ・・・これが第二の節税効果だ。
定年後年金で受け取ることもできるが、その場合、公的年金控除が受けられる。

ワシは個人型確定拠出年金に加入していたので、次回はワシの経験を話してみたい。


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やさしい投信運用(2NISA)

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NISAやIDeCoなどの税制優遇の付いた制度を最大限に活用するためのコーナーだ。
前回はNISAとつみたてNISAの仕組みを簡単に見てきた。
税金優遇して個人の投資を振興することは良いことだと思うが、どうしてわざわざ使いにくくするのかは理解できない。
財務省の役人が政府方針は理解してても、税金優遇には心の奥底に不満を持っていて、どこかに使いにくい部分を密かに埋め込んだということかもしれない。

NISAは非課税を十分に利用するためには5年間塩漬けにすることになる。
途中で部分的に利食いしたり別の投信にスイッチしたりできないし、不意にお金が必要になる場合にも対応できない。
運用は一定期間で見直していくことが大切で、パフォーマンスの劣化した投信を売って別の良い投信に乗り換えたり、海外株式のウェートを変えたり・・・機関投資家でも毎年見直しを行う普通の運用プロセスだ。
それができないとなれば、欠陥があると思うんじゃ。

つみたてNISAは20年間非課税で運用できるが現金化にも20年かかるので、40才で始め79才で現金化が終わる長寿国ならではの制度だ。
40才以上の人にはフルに恩恵を受けるのが難しい設計になっており、長寿に自信のない人には使いにくい。
蓄財というより年金の補完程度の意味しなかくなる。

ジュニアNISAにも同じカラクリが内包されている気がする。
未成年の19才以下を対象に年間40万円を上限に投資成果を5年間非課税にする制度だ。
年間40万円づつ5年間入金し、5年越えるとロールオーバーできるが、売却は18才になるまでできない。

たとえば、生まれた年に学資保険とジュニアNISAに入り大学入学時(18才)まで運用とすると・・・
学資保険で18才になるまで毎月1万8500円を入金する(合計400万円)場合と、ジュニアNISAで5才になるまで毎月6万を6600円を入金する(合計400万円)場合を比較してみよう。

学資保険はいろいろなタイプがあるが、中学入学と高校入学時に祝い金を受け取り、大学入学時にまとまった資金を受け取るのが多い。
返戻率で103%から105%ぐらいで、払い込み金額の3-5%程度リターンが付く。
契約時にすべて確定しているので安心感が大きい。

一方のジュニアNISAは最初の5年間に400万円を準備しなければならないし、18才になるまでロールオーバーするので投信や商品の乗り換えもできない。
だから最初から18年間の運用プランを考えて組み入れる投信や商品を選択し決めなければならない。
そんなの無理だし、途中でお金が必要になっても換金できない(換金すると非課税がなくなる)。
パフォーマンスは18年後に分かるが・・・・当初は誰にも分からない。

NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAは税制優遇が魅力的な制度だが、どうしても使いにくい部分が残ってしまう。
それに比べてiDeCoは、アメリカの401Kと呼ばれる確定拠出年金の元に設計され導入された企業型を個人型に応用した制度で、非常に年金運用ツールとして優れたものだ。
企業型はすでに20年近い実践経験があり、ワシも最初からこの制度を利用してきた。
iDeCoは運用の柔軟性や自由度が高く、加入者は自分の考え方や個人事情のい合わせた運用ができる。
というわけで、次回はiDeCoについて考えてみたい。



やさしい投信運用(1)

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投信で自分の資金を運用する機会が増えている。
NISAが登場し、さらにⅰDeCoが広く認識され、税制優遇が付いた投信運用が一種ブームのようになっている。
安倍政権としても若い人たちに資産運用をしてもらい、日本の資産市場を盛り上げたいところであろうが・・・これで日本の資産市場が盛り上がるとは思えないが、ワシも若い人たちが運用に興味を持ち、より実りのある人生を送ってほしいと思う。
そこで今回はNISAやⅰDeCoの仕組みと特色、さらにそれに組み入れる投信をどうやって選ぶかワシ流に基礎知識を解説してみたい。

まず、NISAの概要だ。
年間120万円を上限として5年間非課税で運用でき(5年間で合計600万円まで)、配当と値上がり益を非課税で運用できる。
ただ、いくつかの点で使い勝手が悪く注意したい。
まず一つは、5年間で利益が出れば非課税になるが、損失が出た場合は他の運用益と損益通算ができないことだ。
うまく運用益がでればいいが、そうでない場合は通常の課税口座の方が損失分を他の運用益から引けるので有利になる。
もう一つは5年間資金が固定され、途中で換金したら非課税枠を再利用できないことだ。
もちろん途中換金は可だが非課税枠を十分に使うためには、事実上、5年間の資金を固定してしまう。
5年後に非課税期間が終わると、組み入れた投信は①非課税口座に移す、②課税口座に移す、③売却現金化する、の三つを選択できるが・・・全額を非課税口座にロールオーバーできるが、換金するにはその時点で全額売却するか、課税口座に移して部分売却するかになる。
5年間で合計600万円の配当金と譲渡益が非課税になるのは魅力的だが、その間、資金が固定され必要に応じた換金がしにくい。
600万円という金額を丸々、別枠に置いておける人はそんなに多くないし、そういう経済的に余裕のある人には年間120万円は枠として少なすぎる。
必要な時に現金化できないのは、NISAの大きな問題点じゃ。

次につみたてNISAの概要だ。
年間40万円を20年間非課税で運用できる制度だ。
このつみたてNISAは年間40万円(これも半端、12で割り切れないから毎月つみたてにならない)を20年間積み立てる(合計800万円)ことができる長期蓄財制度だ。
使い勝手の悪いのは、20年と長い期間なのに投信間のスイッチングがしにくいことじゃ。
ある投信から別の投信に乗り換えると、その年の非課税枠を使うので新規に40万円を追加することができなくなる。
しかも各年の非課税枠で買った投信を20年間保有し、20年目から39年目まで20年かけて現金化する。
つまり、積み立て開始から現金化終了までなんと合計39年も必要な制度で、平均寿命から考えれば、30歳代で始めなければならない。
それでもつみたてNISAの現金化が終わり収益をすべて手にするのが70歳台だ。
40歳台でつみたてNISAを始めたら、最後に現金化する時は80歳台となり、平均寿命を越えてしまう。
日本の役人は、どうしてこうわざわざ使いにくい制度設計をするのだろうか?


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株式需給の達人(おもしろ相場格言)
「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
株式需給の達人(バリュエーション)
PERやPBRなどバリュエーションを理解し割安/割高の実践的判断の基に理論的な株式投資を解説します。 割安とは将来のリータンを示すのか、単に成長性がないというだけなのか、事例をもとに解説します。 株式投資の基礎として大切なもので、是非一読をおすすめします。
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