株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
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運用会社の合併

運用会社、統合・合併の意味(1)

メガ銀行中心に運用会社の再編の動きが続いている。
2015年に三菱UFJ投信と国際投信という三菱系投信会社が合併し、また2016年にはDIAM、みずほ信託の運用部門、みずほ投信、新光投信のみずほ系運用会社が統合された。
そして、今回の発表では2018年SMBC系の2社、大和住銀と三井住友アセット(SMAM)が合併するという。
もともと金融界のトップたちには、100兆円を超える運用資産規模を持つ世界の運用会社に対して、日本の運用会社の規模が小さすぎるという懸念を持っていた。
世界で生き残るためには運用資産規模が40兆円以上必要だとかいう議論がまかり通っていた。
運用資産規模40兆円を基準とすると、日本では野村アセット、アセマネONE(みずほ系の統合会社)ぐらいしかが世界レベルの運用会社といえない。
まあ、こんなのはワシに言わせれば全く意味のないものじゃがのう。

問題なのは、第一に再編の中心にいるメガ銀行の総合企画部だが、彼らは全く現場を理解していないことだ。
アクティブ運用には長期のGOODなトラックレコード(運用成績の記録)が何より大切で、これが顧客の信頼を得るための必要条件だ。
このトラックレコードは、明確な運用哲学、それを実現する適切な運用プロセス、それを支える安定した人材(運用チーム)によって作られる。
決して規模が大きいからGOODなトラックレコードを作れるわけではない。
なにより大切なのはトラックレコードだという基本をメガの企画部連中は理解していない。
むやみな人の異動はトラックレコードのマイナスでしかない。

第二に、アクティブ運用会社の合併はシナジー効果がないことだ。
昔、アライアンスというグロース運用の名門会社がバリュー運用のサンフォード・バーンスタインを吸収合併した。
これでグロースからバリューまでのオールマイティな運用会社が誕生すると皆思った。
しかし、結果はグロースチームとバリューチームがバラバラで新しい運用コンセプトは作られなかった。
ただ単に一つの会社に二つの会社がぶら下がっただけにすぎなかった。
同じことがJPモルガンでも起こった。
グロース運用で定評のあったロバートフレミングを買収したのが、バリュー運用のJPモルガンだ。
でも、チームの統合は困難でグロースチームとバリューチームが並列する組織のままで、シナジー効果があったとは言えない。
バリュー運用の大和住銀と保険運用育ちのSMAMが合併したところで何も新しく生まれない。

第三に、再編により投信ビジネスの系列化を一段と進めてしまうことが最大のマイナスだ。
「投信ガラパゴス日本」のコーナーで日本の投信も問題点として挙げたのは系列の問題だ。
詳しくは「投信ガラパゴス日本」を見てほしいが、日本の銀行・証券を頂点とする系列金融グループ内で投信ビジネスが展開されているのでどうしても販売会社(銀行・証券)の利益追求が全面的にでてきていしまうことだ。
傘下の運用会社を統合することで、投信関連収益をすべてグループ内に留めることができるということだが・・・
でも、そういうグループ優先の論理が一般投資家の不信感をあおり、投信の発展を台無しにしているのに気がつかない。
全く困ったものだ。

しかし、世界は広い。
海外にはこの運用会社の合併・統合をうまく企業戦略として使い、成功している運用会社もある。
次回はこうした運用会社を取りあげてみたい。

運用会社、統合・合併の意味(2)

前回「運用会社、統合・合併の意味(1)」で指摘したが、メガ銀行により系列再編されてきている投信運用会社が合併により発展し、日本の投信が投資家の信頼を得て拡大していくかというとそうでもない。
アクティブ運用会社は統合巨大化しても規模のプラスは出にくいし、メガ銀行の系列による投信ビジネスには販売サイド中心の発想という問題があるからだ。
しかし、運用会社が統合により大きく発展した例は海外には多くある。

アクティブ運用には規模の経済が働きにくいが、パッシブ運用には規模の経済が大きく働く。
パッシブ運用会社はインデックスファンドやETFを企画・運用する会社で、基本的にコンピュータで株価指数との連動性を確保して株価指数のリターンと同じリターンを投資家に提供する。
ワシも裁定取引をやった経験があるが、このインデックス連動性の確保はけっこうたいへんなのじゃ。
株価指数に連動させるためには発行済み株式数と時価ウェートを毎日調整していかないと連動性を保てない。
発行済み株式数は自社株買いがあれば少なくなり、転換社債(オプション含む)の行使があれば増える。
また、増資や売り出しなどのイベントがあれば大きく増える。
こうして日々変化している発行株式数をきちんと管理し、個々銘柄の時価ウェートに反映させる必要がある。
こうした調整作業を、パッシブ運用会社は自動化し専門担当が行っている。
基本これらのコストは規模に関係なく、ファンドサイズが大きくなればなるほど単位あたりのコストが下がる。

もう一つはETF、エクスチェンジ・トレーデッド・ファンド、市場で取引できる上場ファンドだ。
運用会社が連動させる株式指数とそのための組入れ銘柄とウェートを公表しているので、市場で同じポートフォリオを買い運用会社に持っていけばETFに交換してくれるし、逆にETFをバラして個別銘柄のポートフォリオに戻してもらえる。
これにより裁定業者が個別銘柄とETFの裁定取引をするのでミスプライスが修正される。
だから、投資家は安心してETFを市場価格で売買できる仕組みになっている。
最近特に、様々な種類の株価指数が開発され、多様な株価指数に連動するいろんなタイプのETFが上場されてきたことで、ETFの人気に拍車がかかり運用の世界で大きな存在感を示すようになった。

合併・統合により規模の経済性を追求し、多様なETFを開発して急成長し、超巨大な運用会社に成長した会社の代表例がブラックロックだ。
ブラックロックは2006年にメリルリンチの運用部門を買収、2009年バークレーズの運用部門を買収し特にこの買収でⅰシェアーズというETFのトップブランドを獲得したことが大きな成長力となった。
その間、多くのアクティブファンドマネージャーが解雇され、よりコンピュータ・ドリブンの業務改革が行われインデックス装置会社に変貌し、世界最大のバンガード・グループに並ぶ巨大パッシブ運用会社に成長した。

また、アクティブ運用の世界でも合併により成長した会社もある。
PGI、プリンシパル・グローバル・インベスターズという会社で、ブティック型運用会社(小さいが専門性の高い運用会社)を次々と買収し傘下に収め急成長した。
ファンドマネージャーが嫌がる管理・コンプライアンス業務を親会社のPGIで一括して行い、ファンドマネージャーには運用に集中できる環境を提供することで、ブティック運用会社の良さを引き出した。
優先証券の専門運用会社であるスペクトラム、その他特徴のあるブティック運用会社の集合で、マルチブティック・マネージャーと彼らは呼んでいる。
こうした合併・統合のやり方もある。
アクティブ運用会社の規模追求という訳のわからないことをする必要はないと思うんじゃな。



運用会社の合併の無意味

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メガ銀行中心に運用会社の再編の動きが続いている・・・2015年に三菱UFJ投信と国際投信という三菱系投信会社が合併し、また2016年にはDIAM、みずほ信託の運用部門、みずほ投信、新光投信のみずほ系運用会社が統合された。
そして、今年4月、SMBC系の2社、大和住銀と三井住友アセット(SMAM)が合併する。
もともと金融界のトップたちには、100兆円を超える運用資産規模を持つ世界の運用会社に対して、日本の運用会社の規模が小さすぎるという懸念を持っていたので、各金融グループは傘下の運用会社の規模を高めるための合併を急いできた。

でも、残念ながら、日本のアクティブ運用会社どうしの合併は
何の意味も持たない。
アクティブ運用会社はそれぞれのやり方があり、投資哲学も異なる。
その運用会社が合併したところで、1+1=2以下になるだけで、2以上になるようなシナジー効果が見込めない。

SMBC系の運用会社2社の合併で、部長クラスの人事異動が発表されている。
特にびっくりするのは、部長が存在せず、共同部長が2名いる部署が多いことだ。
人事部、機関投資家営業1部、オルタナティブ運用部、グローバル戦略1部並びに2部、株式運用1部並びに2部の7つの部署にそれぞれ共同部長が2名づついる。
さらに運用管理1部並びに2部、トレーディング1部並びに2部、投信営業1部、2部、3部と同じ機能を複数の部署に分けているところもある。
要するに、旧SMAMの各部署と旧大和住銀の各部署は並列的に足し算された組織ということだろう。
組織を融合させて何か新しい付加価値を追求するよりも、今ままでのやり方を踏襲するための組織なのだろう。

実際、アクティブ運用会社の統合は非常に難しい。
かつてJPモルガンがロバートフレミングを買収した時、日本でもJPモルガンの運用会社とジャーディン・フレミング(ロバートフレミング系の東京と香港の運用会社)が統合された。
しかし、JPモルガンのバリュー運用とジャーディンフレミングのグロース運用は交わることがなく、その後今日にいたるまでバラバラで、同じ社内にありながらライバル関係だった。
特にアクティブ運用で実績のあるチームは自分たちを最高だと思っているので、他者の良いところを取り入れるというような柔軟な考えを持つことはない。

今回のSMAMのケースでも、調査から運用、そして、トレーディング、運用管理までのプロセス全体は二重構造になっていると推察される。
これでは何のための合併なのか、銀行を頂点として金融グループ発想そのもので何の付加価値も生じることがないだろう。
時間をかけて社内の融合を図っていくということかもしれないし、今後、形が変わっていくかもしれない。



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CSを買ったUBS、リーマンを買った野村証券

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経営破たんに追い込まれたクレディスイス(以下CS)を買収するUBS。
債券投資家がゼロ価値になり、株式投資家が助かるというありえない決着など、問題点が指摘されながらも「too big to fail=大き過ぎてつぶせない」でグローバルな銀行システムを守るという配慮が優先された。

ブルーバーグのニュースでは・・・
クレディ・スイスの緊急買収はUBSにとって大きな利益、同時に、この評判を脅かすリスクでもある。
UBSのトップにあったアイルランド人バンカーのケレハー氏(65)、ここ10年余りで最も影響の大きい銀行統合を率いて、利益の大きい富裕層向け事業における世界の力関係を形成、スイス経済の2倍の規模を持つメガバンクを生み出す仕事に取り組む。同氏は合意に達した19日の夜遅くアナリストとの電話会議で「スイスにとって歴史的な日だ。」、「協議を開始したのはUBSではないが、この取引はUBS株主にとって金融面で利点があると考えている」と説明した。

長年のライバルであったCSを傘下に収め、CSの投資銀行部門、アセットマネージメント部門の資産を数分の一の値段で買収できた・・・というわけだが・・・
何かリーマン危機の時の野村證券に似ている。

2008年に米大手証券会社リーマンブラザーズが破たんした時、世界の市場に大きな影響があったのは周知のとおりだ。
その破綻したリーマンブラザーズの米国外の業務をたったの1ドルで買収したのが野村證券だった。

この救済買収で一番儲かったのは元リーマンの社員たちだった。
本来ならば職を失い路頭に迷ったはずなのに、野村証券で高給を複数年契約で保障されたからだ。
日本国内の野村社員の数倍の給料をもらう元リーマン社員、特別な知識やノウハウを持っていればいいが、ほとんどは単なる普通のリーマン社員だった。

有能な社員は自分で新しい(もっと条件の良い)職場に移動できるので、残ったのは特に優秀でない社員ばかりだったようだ。
そんな社員が多数だったからリーマンは破綻したわけで、その社員に頼ったのが野村の間違いだったということだろう。
結局、野村證券はこの後遺症に10年も悩まされ、業界第二位だった大和証券の後塵を拝した。
おそらくプライドの高い野村證券には痛恨にの極みだっただろうし、典型的な「安物買いの銭失い」という結果になった。
リーマンを買収してグローバル・プレーヤーとなるはずが、十数年経っても日本のローカル証券第二位のすぎない。

野村証券のように優しくないUBSはおそらく大規模なリストラを強行するだろう。
CS社員には何の期待しなし、冷酷なリストラを貫徹できる環境にあるからだ。
欲しいのは人材ではなくCSの持つ資産や富裕層の顧客ベースだ。
とすれば野村證券のようにリーマン社員を丸抱えしてコスト高に悩むこともないかもしれない。
でもその結果、世界の金融業界には余剰人員が生じることになる。

さらに米チャールズシュワッブも相当ヤバいので、今後大幅なリストラをするかもしれない。
そうなれば欧米の金融機関で余剰人員が増加する事態も考えられる。
米国全体では雇用も今のところは安定し、職はタップリ、物価が上がるが賃金も上がる状態で働き手には悪くない。
でもいつまでこの状態が続くかは時間の問題かもしれない。



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「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
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