株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版の「株式需給の達人(おもしろ相場格言編)」を出版しました。
既刊の「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」「チャートの達人」「個人投資家の最強運用」「株式需給の達人(基礎編)」「株式需給の達人(投資家編)」とともに一読をおすすめします。

実戦的バリュエーションの話

PERは本当に割安?(2)シラーPER

NASDAQの予想PER
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前回は日経平均のPERについて考えてみた。
日経平均は単純平均株価なのだが、そのEPSは加重平均に近い考え方で計測されている。
キオクシアのように予想EPS8000円と他の銘柄とかけ離れた高水準のある銘柄は、EPSの算出上、非常に高いウェートで計算され、影響がムチャクチャ大きくなってしまう。
そのために日経平均の予想PERが過小評価され、実態以上に割安になってしまう。

米国株にも同じようなPERの過小評価がある。

上のチャートは米国NASDAQのPERだが、半導体中心の株価上昇でNASDAQは過去最高値に達した。
それでもPERは26倍、過去のピーク30倍超に比べ上値余地がまだありそうな気がする。
でも、ここもとのインフレで企業業績とEPSが過大評価されているかもしれない。

そこで、今回はノーベル賞のシラー教授の考案した「シラーPER」で米国株のバリュエーションの実態を考えてみたい。

シラー教授は、過去10年間のインフレ調整後のEPSを計算して株価の判断に使うことを提唱した。
単年のEPSは変動が激しく、時には実態以上にブレる指標だったが、これを10年間の平均値、さらにインフレ調整することでより実態に近い業績とバリュエーションの評価を行った。

以下のチャートが「シラーPER」の1800年代からの長期推移だ。
通常は10〜25倍で動いてきたが、1999年のドットコムバブルで40倍まで上昇し、歴史的な割高状態に達した。
そして26年の時を経て、再びシラーPERが40倍に乗せてきた。

シラーPER
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長期的な安定した株価形成、そのような視点からシラーPERは作られている。
つまり、現在の米国株価は長期安定的な視点からは、1999年と同程度の割高圏に入っている。
しかしAI時代を予見している株価形成では、この「長期的安定的」の水準もAI時代で変わっているかもしれない。
その意味では、限界突破してしまう可能性も否定できない。
それでも「長期的安定的」なシラーPERからは、これ以上の株高は割高感を強めると言えるだろう。




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PER、本当に割安?(1)指数ベースPER

日経平均の予想PER
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4−6月期の業績予想が半導体のおかげで急速に向上した。
この半導体のEPS急増によって日経平均の予想EPSも急拡大、多くの評論家はこの業績拡大で株高は正当化され「日経平均PERは株高なのに割安」と主張する。
確かに上のグラフからも読めるように、株高なのにPERは低下し、現在18倍台と低下した。


でも評論家の言うことを信じていいのだろうか?
「日経平均EPSのカラクリ」というブログを書いたが、日経平均は225銘柄の単純平均株価だが、日経平均EPSは単純平均ではなく、どちらかと言えば加重平均に近い計算式になっている。
PER=株価➗EPSだが、株価が単純平均なのにEPSが加重平均というズレが問題だ。

キオクシアは、EPSがアナリスト予想で8000円にもなり、株価も10万円を超える超値嵩株だ。
他の225採用銘柄と比べで突出した水準で、これを加重平均したらキオクシアのEPSだけで日経平均のEPSを300円近く持ち上げてしまう。
おそらく、キオクシアのEPS水準は日経にとっても想定外の出来事だった。
普通ならば、指数ベースにしてもそれほどの違いが生じないはずだが、この異例のEPS水準の採用銘柄が4月から登場し、事情が大きく変わってしまったわけだ。


日経平均のEPSにはもう一つ「指数ベース」も公表されている。
指数ベースは日経平均の株価と同じように単純平均で計算した予想EPSなので、株価も単純平均、EPSも単純平均という相性が良い。
単純平均ならEPS合計を銘柄数で割るので、キオクシアの8000円も225で割った35円程度だけの影響しかない。

下のグラフは指数ベースの日経平均のPERだ。

日経平均の指数ベース予想PER
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昨年末と6月現在で、日経平均のPERと指数ベースのPERを比べてみよう。
            昨年末    6月26日  
日経平均  株価    50339円   69360円 +37.7%
      PER    18.99倍  18.06倍 ー 4.9%
      PBR     1.69倍   1.92倍 +13.6%
      配当利回り  1.86%   1.49% 
指数ベース PER    23.53倍  25.00倍 + 6.2%
      PBR       2.35倍   2.95倍 +25.5% 
      配当利回り  1.60%   1.30%

昨年末から6月まで日経平均株価は1万9000円の上げ幅、+37%上昇したが、PERは18.99倍から18.06倍に低下した。
これを持って評論家は「株高は業績で裏付けられいる」と評価する。
しかし、指数ベースのPERは23.55倍から25倍に上昇している。
というわけで指数ベースでは、EPSが+30%増加しPERが+6%上昇したというわけだ。

グラフの通り、指数ベースではPER25倍は25年10月以降の高値圏にあり割安とはいえない。
キオクシアの特殊性を考えると、現在は指数ベースで考えた方がいいかもしれない。



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永久キッズサイクル(3)IP価値を超過PBRで測る

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前回まで話を要約すると、①永久キッズサイクルが生きていて子や孫の時代で復活する、②利益だけで考えるのは後手を踏む、③無形固定資産であるIPの価値を考える、この3点だ。
そして、今回はPBRを使ってどう割安を測るかを考えてみたい。

任天堂とサンリオを事例として取り上げてみた。

任天堂とサンリオのPBR長期推移を考えてみよう。
      任天堂  サンリオ  東証PBR 任天堂超過PBR
2011年 2.48倍 7.53倍 1.2倍 1.28倍
2012年 1.48  7.76  1.1  0.38
2013年 1.17  7.67  1.2  −0.03
2014年 1.30  4.98  1.2  0.10
2015年 1.79  4.24  1.2  0.59
2016年 1.66  3.44  1.4  0.26
2017年 2.48  3.27  1.1  1.48
2018年 4.27  3.13  1.3  2.97
2019年 2.67  4.30  1.1  1.57
2020年 3.22  2.62  1.2  2.02
2021年 3.93  3.80  1.2  2.73
2022年 3.50  4.62  1.1  2.40
2023年 4.32  8.53  1.2  3.12
2024年 2.64 11.15  1.3  1.35
2025年 3.66 15.23  1.4  2.26
2026年 2.92  8.01  1.5  1.42
任天堂とサンリオのPBRは各年末値、東証は改革により東証一部からプライムの変更しているため、連続性はない。

筆者の使ったのは「超過PBR=任天堂PBRープライム市場PBR」でバリュエーションを測ったこと。
任天堂のPBRと市場PBRの差は「のれん代」に近いもので、バランスシートで計算できない無形資産=IP価値が反映されていると考えてもおかしくはない。
任天堂株をバリューファンドで組み入れしたのが2012〜2013年だったが、この頃の任天堂のPBRが1.2〜1.5倍、東証PBRが1.2倍と、任天堂の超過PBRがほぼゼロだった。
これは任天堂の持つ「マリオ」「ポケモン」などのIP価値がほぼゼロで評価されていると考え、とても割安だと思った。

サンリオでは2016〜18年のPBRが3倍台、東証PBRが1.1〜1.4倍で、サンリオの「キティちゃん」などのキャラクターのIP価値は2倍程度だったといえる。
2020年は新型コロナ禍でもあり、非常な割安状態に置かれていたようだ。
その後、この割安の大規模修正が起こり、サンリオのPBRは10倍以上に達している。
この所の株価下落で超過PBRは下がってきているが、それでも6倍以上で任天堂よりは割安感が少ない。

今年はどうだろうか?

任天堂のPBRは2.9倍、東証プライムPBRが1.5倍なので、任天堂のIP価値は差し引きした超過PBRは1.4倍程度となる。
歴史的には超過PBRが3〜4倍の時が多く、任天堂の超過PBR1.4倍は過去平均の半分程度、かなり割安な時期だといえる。
表面上のPERでも20倍台、PBRも2倍台だが、IP価値を考えると相当な割安水準になると言える。
2012〜13年ほどでないにしても、割安感が強まっている。



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永久キッズサイクル(2)PERでななくPBRで見る

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最近、任天堂株、サンリオ株、ソニーG株などは急落している。
背後にはイラン戦争がある可能性が考えられる。

サウジのムハンマド皇太子(MBS)はPI F(パブリック・インベストメント)を作り、IP(知的資産)への投資を活発化させてきた。
PIFは高額賞金のLIVゴルフのスポンサーから撤退したが、おそらく、任天堂などのIP株、ソニーなどのゲーム株に投じてきた莫大な資金も一部回収に入っているのかもしれない。
イラン戦争下の中東情勢が影響している気がする。

あの巨大な産油国サウジアラビアでさえペルシャ湾岸からの原油出荷が完全に止まり、パイプラインで紅海経由の出荷に頼っているが、これだけだと従来の1〜2割しか売り上げが立たないらしい。
となればいくら富裕国サウジであっても財政が厳しくなる。
こうした財政事情の中で株式を売却した可能性がありそうな気がする。
こうした売りが、日本のIP株・ゲーム株を想定外の下落に見舞われている理由だろう。


どこまで株価が下落するかは「神のみぞ知る」だが、永久キッズサイクルのバリュエーションの特徴が考えておく方がいい。

まず第一にPERは役に立たないこと。

映画やゲームなどの会社は「水もの人気」から逃れられない。
東宝株も映画の大ヒットで株価が大きく上昇しPERが上昇するが、のちに発表される決算で大幅増益になりPERが下がる、なのでPERが低下する時には株価が大きく上昇したあと・・・ということになる。
決算が出て好業績でPERが下がる時、株価はほぼピーク水準まで上昇しているはずだ。

逆にヒット映画やゲームがなく、業績がイマイチの時はEPSの低下でPERが急上昇し、一見割高に見えてしまう。
でもこのPERが高い時期こそ割安な「買い場」なのかもしれない。
高PER時期に買い、低PER時期に売る、としたら、これはバリュエーションとしてのPERが役に立っているとは言い難い。


では、純資産、PBRでバリュエーションと見るべきなのだろうか?

表面上のPBRは現金や有価証券などの金融資産と、土地や建物などの有形資産・無形資産から、借入金などの負債を引いて計算される。
が、IP資産などを正確に計上できず、通常その分、任天堂やサンリオは非常に高いPBR銘柄となる。
5倍や10倍は当たり前の株価評価、これでは「常に割高」と判定されるだけだ。

その一つの理由が、通常の会計基準で「ポケモンの価値」や「キティちゃんの価値」を正しく無形固定資産として評価できないからだ。
例外的に企業買収された時に「のれん代」としてバランスシートに記入される。
その「のれん代」とは、買収金額から買収先の純資産を差し引いたものだ。
買収は高価格になるのが普通で、買収した先の純資産をそのまま計上し、純資産を越えた金額を「のれん代」として資産計上する。
結果としてこの「のれん代」が企業の持つ歴史的な評価(ブランド力や老舗)だったりIP知的資産などの無形資産に当たる。

買収でなくても、こうした「のれん代」を応用することで無形資産の価値を類推することができる。
次回、筆者が行ってきた簡単なバリュエーションのやり方を紹介したい。




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永久キッズサイクル(1)キッズは永遠

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永久キッズサイクルを強く意識したのは、2010年代の前半だった。
その頃はスマホが急速に進化し、その普及もものすごく急速だった。
その普及が進むにつれスマホ・ゲームが大流行し、通勤電車の中では多くの乗客、高校生や学生だけでなく、いい年した大人もスマホをカチャカチャいじっていた。

こうしたスマホの急成長期で、従来型のゲームコンソールはどちらかというと脇に置かれていた。
そんな雰囲気の株式市場では、スマホに押されるかのように任天堂株が大きく売られていた。
任天堂といえば高バリュエーションで有名で、当時運用していたバリューファンドでは長らく投資対象外だった。
ところが、その時、バリューファンドで買える株価にまで下げ割安になっていた。
確か、当時の株価(その後10分割している)で8000円ぐらいで大量に買った記憶がある。

過去の株価を見ると、2012年の安値が807円、2013年の安値が833円となっているので、10分割を考えると、2012〜2013年は8000円台で推移していたと確認できる。
PBRも2013年末には1.3倍まで低下し、バリューファンドの買い対象になったというわけだ。
しかし、そこはバリューファンドの限界、その後、PBRが2倍と越え、株価も2万円以上に上昇すると売却候補になってしまう。


その時、強く感じたのが「永久キッズサイクル」だ。
親の時代でポケモンが登場し、子供と一緒になってゲームをした。
そして子の時代、その子供が大きくなって、やっぱりポケモンを孫と遊ぶ。
さらに孫が大きくなっても任天堂のゲームをひ孫と遊んでいるのだろうと思う。
親の時代か子の時代、さらに孫からひ孫の時代へとポケモンは進化していく。

生まれてきた子供は、昭和であろうが平成であろうが令和であろうが、全く変わらない。
子供の成長とともに「ポケモン」があり、「キティちゃん」があり、「ミッキーマウス」がそばにいる。
これが企業の「永久キッズサイクル」を作っていく。

ゲームや映画などは一時的な流行が大きく「水モノ」と言われる。
おそらく、任天堂にしてもサンリオにしても、この「水モノ=一時的な流行」からは逃れられrない。
良い時もあるが悪い時もあり、株価も上がったり下がったりする。

しかし、重要なことは「永久キッズサイクル」を持つ会社は、その流行の波を越えて復活することだ。
それは子供は永遠の存在だからだ。
大人にならないピーターパンは永遠に子供に愛されるのかもしれない。

この永久キッズサイクルについて、第二回「利益でなくPBRで見る」第三回「IP価値をPBRで測る」とシリーズで書いてみたい。




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GAFAMは割安?(3)成長性・人気から見る

FANG+指数と200日移動平均
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FANGはフェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグルの頭文字だが、加えてアップルやテスラ、アリババなど合計10社の株価指数がFUNG+指数だ。
NASDAQよりも集中度が高く、より成長株イメージが強い指数。

この指数では株価のピークは11/3の16978ポイントで、かなり早く天井を打っている。
それから3月末のボトム13235ポイントまで22%の大幅調整となった。
グラフの通り、200日移動平均を大きく下回り調整局面入りしたが、逆に底入れ感も出てくる水準のようにも見える。

PERの第二の考え方=成長性、さらに第三の考え方=人気という点から考えてみよう。

まずは成長性だが、これはアナリストが評価するもので、個人投資家からは見えづらい。
そこで入手可能なデータということで、この2か月間のNASDAQの実績EPSと1年先予想EPSを比べてみたい。
     実績EPS   予想EPS    変化率
2月6日 796.56 1015.62 +27.5%
4月2日 819.55 1059.74 +29.3%

NASDAQの予想EPS➗実績EPSは現在の市場が期待するEPSの変化率で、概ね将来の期待成長と言える。
もちろんアナリストは3年後のEPSを予想しているが、アナリストによってバラつきが大きく、素人投資家には入手ができない。
でも、3年先予想が突然大きく増加したり減少したりするわけではない。
基本的に1年先予想が増えれば3年先予想も増加する、という比例的な関係にある。
なので、1年先の変化率が成長性を示していると考えても当たらずとも遠からずだ。

この数字を見る限り、イラン戦争が起こった3月、この変化率が低下したという事実はない。
NASDAQの成長性に大きな翳りが出て株価が大きく下落したというわけではなさそう。

次に人気だが、これはPER=EPS✖️人気なので、PERの低下は人気が低下していることを示す。
なぜ人気が低下しているのだろう?
AI関連の過剰投資でリターンが低下するかもしれない、AI関連の循環取引でどこかがコケたらそれが全体に波及する、AIが引き起こす労働人口移動が景気に影響する、などの懸念が引き起こしている。
これらの懸念が解消すれば人気が復活し、株価も反発場面に入るだろう。


結論として言えるのは、現在のGAFAMの株価下落は、成長性の鈍化や人気の翳りがあるにしてもこれらの要素は不確かな「懸念」の段階でしかない。
株価下落に明確な証拠があるわけではない。
となれば、イラン戦争が引き起こしたインフレ加速予想と長期金利上昇に対応するPERの低下が主要因だと言える。
イラン戦争が終結しホルムズ海峡が再開されれば、GAFAM株は意外と大きく反発するのかもしれない。



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GAFAMは割安?(2)PERと金利

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イラン戦争の開始後、米国金利を中心に長期金利が上昇してきている。
原油価格が上昇する中でインフレ懸念が高まるのは当然の事だが、長期金利が4.4%まで上がってくると、株式のバリュエーションに影響してしまう。

上のチャートはNASDAQの益回り(一株利益➗株価)と10年債利回りを比べたものだ。
投資家目線では株式の投資する場合のリターンである益回りは、よりリスクの低い債券投資の利回りよりも高くなるのが通常の状態だ。
NASDAQはGAFAMなど大型成長株の利益成長が高く、現在の株価が数年後の利益を織り込む。
そのためにPERは高くなり、益回りが低くなる。
それでも長期金利の上昇は、投資家により高い株式益回りを期待させる。
そのために金利上昇と益回りの上昇(=PERの低下)が連動して起こる。

こうしたイラン戦争から起こった、原油上昇ーインフレ懸念ー長期金利の上昇という流れがGAFAMのPERを低下させた原因の一つだったと思う。

現在はNASDAQ益回り4.35%、10年債利回り4.3%とほぼ同水準になっている。
1月末の益回りは3.86%、10年債利回りは4.24%だったので、金利が0.2%上昇し益回りが0.5%上昇した。
金利の上昇(0・2%)よりも益回りの上昇(0・5%)の方が大きく、NASDAQ市場は金利の上昇にやや過剰に反応したと言える。
今後は、金利が4.3%以上の水準では、金利上昇する分と同じだけ益回りも上昇する、PERが低下していくという関係になるだろう。

イラン戦争による長期金利の上昇をNASDAQ市場も織り込んだという理解でいい。
という意味では金利がPERを決めている、これを持ってNASDAQは割高とも割安とも言いにくい。

次回は成長性や人気の点からPERを考えてみたい。



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GAFAMは割安?(1)成長株のPER

NASDAQの予想PER
スクリーンショット 2026-03-28 11.36.45













上のチャートはNASDAQの予想PERのチャートだが、GAFAMの成長力をベースに30倍台という高い水準を続けてきたNASDAQのPERが切り下がっている。
NASDAQの予想PERは現在22.9倍と、昨年8月には30倍を超えていたのでこの半年で大きく低下してしまった。
これは何を意味しているのだろう?

割高だったNASDAQ株に徐々に割安感が増している?
それとも、GAFAMの成長力に疑問が生じ、将来利益の期待が下がっているから?

GAFAM株の予想PERが大きく低下してきている。
40〜50倍だったGAFAMが、アップル31倍、メタ22倍、アマゾン27倍、マイクロソフト22倍など、大型成長株という感覚が失われてきている。
40倍、50倍が当たり前だったGAFAM株が普通の大型株に変わった瞬間なのかもしれない。


PERが下がったからといって「割安」になったのかは簡単に言えない。
PERの基本は主に3つある。

①PERの逆数である益回りは時価総額に対する収益であり、長期金利(元本に対する収益)に連動する
 投資家にとっては時価総額で会社を買い会社活動の結果である利益を手にする、また、その会社の債券を買い金利を得る、両者は株と債券の違いがあれ同じ会社への投資であり、そのリターンはその信用力に連動する。
益回りと金利の両者は同じ方向に動く、なので、逆数であるPERは金利が下がると上昇し、金利が上がると低下することになる。

②会社の成長性とPERは連動する。
 成長性の高い会社は来期だけでなく長期にわたって成長できるので、数年後の利益を反映して株価が決まる。
数年後の高い利益を株価が織り込めば、今の利益を元に計算されたPERは当然高くなってしまう。
PERの低下は将来の利益期待が下方修正されたために起こり、成長性の低下を意味する。

③株価=利益(EPS)✖️人気(PER)で決まり、PERは究極的に投資家の人気を示している。
 したがって、PERの低下は投資家の間で人気が失われてきたことを意味する。
投資家の人気が低下し、株に魅力がなくなればPERも低下する。
これが一時的な人気離散なのか、中期的なのかがポイントだろう。


GAFAMなどの成長株を割安で買えると考えるのか、GAFAMの成長性が落ちたからPERが低下したと考えるのか、単に投資家の人気を落ちたからPERが低下したと考えるのか?
じっくり考えてみる局面だろう。




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AIディスラプションはホント?(4)日本の労働生産性

スクリーンショット 2026-02-13 8.20.17






















賃金を上げようと官民一体になって大騒ぎだが、賃金水準は基本的に労働生産性に連動する。
日本の労働者は生産性を向上させているのだろうか?
生産性が上がっていない「賃上げ」は、政治判断で一時的に可能かもしれないが、それは長期的・継続的ではない。
こんなのは誰でも分かっている、今更言うな!と言われそう。

でも改めて、「君は自分の生産性を引き上げているか?」と問いたい。
スクリーンショット 2026-03-12 12.51.15














上のグラフは主要国の労働生産性の比較だが、日本はOECD平均を下回る低生産性だ・

日本の労働市場には昔から大きな問題があった。
80〜90年代、パソコン・コピー機・ファックスなどオフィス機器が一般化し、オフィスの生産性が向上したはずだったが、日本の生産性は上がらなかった。
現代、誰もが「DX!DX!」と叫び、システム化されたオフィスがオフィスの効率を大きく引き上げたはずなのに日本の労働生産性は上がらなかった。

それはなぜ?

OA(オフィスオートメーション)やシステム化で効率化された一方、従業員を解雇できなかったので、オフィス全体の生産性は大して上がらない。
欧米企業はOAやシステム化で作業が効率化された分雇用を削減し、その結果として、生産性を大きく伸ばしてきた。
日本では雇用調整、生産性の低い従業員の解雇ができなかった、これが欧米企業と大きな生産性格差を生じさせたと考えている。
簡単に言えば、OAやシステム投資と昔からの人材コストの「二重投資」の中で生産性を引き上げられなかったというわけだ。

では、AIがオフィスに普通に実装される時代、どうなる?

アメリカではこのAI時代でプログラマーが不要になり、ソフトウェア会社の収益基盤が失われると懸念が生じ、システム開発企業の株価が売られている。
こうしたソフトウェア株価の下落は、AIの普及に応じて雇用を削減すると言う米国市場の柔軟性を示しているだろう。
柔軟な労働市場が、米国企業の高い収益性の源泉であり、米国企業社会の強みだ。

逆に日本、AIの実装される社会になっても古い人材コストを抱えたまま、AIへの巨額投資を実行していくことになり、過大なコストで生産性を引き上げられない状況に陥るのかもしれない。
AI時代、このままでは日本企業は二重コストの大きな壁にぶつかる。



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NASDAQ、バリュエーション限界突破(2)

NASDAQ100の益回りと10債利回り
NASDAQ益回りと長期金利202405
















前回はS&P500益回りと10年債利回りが急接近し、バリュエーションの天井感がでてきていることを検証してみた。
その後、S&P500は5月末現在で4.68%で、10年債金利は現在4.4%とかろうじて益回りが高い状態を維持している。
これがS&P500のPERの上限を決めているのではないかと考えている。
長期金利4.4%が益回りの下限とすると、PERは23倍がS&P500の天井圏になる。
現在のPERは21.3倍で上限値の近い、微妙な展開だろう。
いずれにしてもFRBの金融緩和(長期金利の低下)がないとバリュエーションの天井が近いといえる。

でも、NASDAQは代表的大型株指数のS&P500と違い、成長力の高い市場で益回りと10年債利回りの関係も異なる(上のグラフ参照)。

NSADAQはGAFAMなど大型成長株が多く上場しているので、指数全体の成長性もS&P500よりも高い、その分、通常PERなどのバリュエーションも高い。
長期金利が上昇し始めた23年に長期金利が益回りを上回り「逆転状態」になった。
この状態だけを見れば「NASDAQは割高」と言えたが、成長力の高いNASDAQは何年か先の予想EPSを織り込んでいるともいえる。

NASDAQの1年後予想EPSは、22年末498ドル、23年末581ドル、24年現在678ドルと増加してきた。
22年末時点で益回り4.55%だったが、その1年先・23年末の予想EPSを織り込んでいたとしたら益回りは5.3%となり長期金利を上回っていたともいえる。
さらに23年末時点で益回りは3.46%と年末時点での長期金利3.88%を下回ったが、その1年後EPSを織り込んだ益回りは4.03%になり長期金利を上回っていた。

つまり、NASDAQはその成長性によって、その時点の1年先EPSではなく、2年先EPSを織り込んでいたわけだ。
成長株のPERは、より将来のEPSを織り込むんで形成される。
NASDAQの場合は2年先のEPS成長を織り込んでいるためにその時点の益回りは低くなってしまう、という事を頭に入れておくべきなのだろう。

だとしたら、現在のNASDAQのPER28倍も許容範囲といえるかもしれない。
2年先の予想EPSはNVDA中心にAIや半導体中心に伸びていくと期待を織り込んでいるのだろう。


それでは歴史のある優良株主体のNYダウではどうなのだろう?

NYダウ益回りと10年債利回り
NYダウと益回りと長期金利202405
















NASDAQと比べたら全く違う状況になっている。
NYダウの益回りは低下傾向にはあるものの、現在5.2%程度と高い。
10年債利回りは4.4%で、0.8%も上回っている。
という意味ではバリュエーションの天井までにはかなりの余裕がある状態だ。

でもだからといってNYダウ採用銘柄が上昇するというわけではない。
確かに割安状態にはあるが、成長性の低さが織り込まれているだけかもしれないからだ。



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S&P500、バリュエーションの天井感(1)

SP500益回りと10年債利回り202405
















上のチャートはS&P500の益回り(EPS/株価)と10年債利回りだが、株式益回りは通常、長期債利回りを越えることはない。

S&P500益回りはS&P500の純利益÷時価総額、株主の投資総額に対する純利益、株主の投資採算を示している。
この益回りに配当性向(純利益の中に配当の割合)をかけたものが配当利回りになる。

昔は配当利回りと長期債利回りが比較されてきた。
リスクの高い株式には長期金利以上の配当があってあたりまえと思われてきたためだ。
しかし、株式リターンは配当(インカム)+値上がり益(キャピタルゲイン)であり、値上がり益まで含めれば配当利回りは長期金利以下でもいい。

でも、純利益はキャピタルゲインの基礎であり、益回り(純利益÷時価総額)が株主のトータル・リターンを決める。
投資採算から見れば、リスクの高い株式益回りは長期金利より高くなるのは自然だ。
そうでなければ、投資家は資金は株式から債券へ移してしまう。

22年以降のFRBの引き締め政策で長期金利が2%から4%台(直近4..4%)へと上昇した。
一方のS&P500益回りは5%前後で推移してきたが、最近のPERの上昇によって低下傾向になり、現在4.7%だ。
その結果、益回りと長期金利の急接近が現れた。

長期金利とS&P500益回りの長期的な関係を考えた場合、益回りが長期金利の水準以下に低下(株価の上昇)するとは考えにくい。
そんな逆転が起こったら、おそらく長期投資家は資金を株式から債券にシフトさせる、その結果、株式が下落し自動調整される。
これが「S&P500のバリュエーションの天井」となる。

これが何を意味しているのだろうか?

バリュエーションの天井が株価の天井となるわけではない。
バリュエーションがピークでも、EPSが増えればその分株価は上がっていく。

長期金利が4.4%を想定すれば、S&P500のPERは23倍程度(現在21倍)が上限になる。
それ以上のPERの上昇は長期金利>益回りとなってしまい、株から債券への資金シフトの原因になるだろう。

という意味では今後のポイントは「長期金利が下がるかどうか」であり、「インフレの収束とFRBの緩和転換」がS&P500のPERを決める。
これがなければ米国株が現状から大きく上昇するのは困難だと思っている。

さらに言えば、インフレが収束しても景気悪化が起こらないことだ。
FRBが緩和に転換し利下げをするにしても、その際景気後退しEPSが低下しては元も子もない。
つまり、景気後退なしにインフレが収束するのか? これが最大のポイントということになる。



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米国株EPS、二極化が進む

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四半期決算の途中、月初の米主要指数EPSをチェックしていたが、なんとなく重要な違和感を感じる。
7ー9月期は実質GDPは4.9%も伸びた米経済を受けての企業業績だという点が大きなポイントだ。
インフレが3%程度はあるとすると、米国名目経済は7~8%の高スピードで成長した四半期であって、米国主要株価指数のEPSも大きく伸びていておかしくなかった。
でも、なんか変な感じを受ける。

米景気が良ければ小型株から大型株、成長株まですべてEPSが増加するのが通常だが・・・
1年先予想EPSの前年比を見ると、GAFAMを中心とするNASDAQ100のEPSが12%と二けた増加なの対して、NYダウは+0.8%、S&P500は+1.4%、小型株ラッセル2000は-2%と低空飛行を続けている。

以下の月次EPSの一覧表を見てみよう。

NYダウ 前年比 S&P500 前年比 NASDAQ 前年比 R2000 前年比
11月3日 1824.39 0.89% 226.17 1.49% 586.39 12.72% 78.71 -1.98%
10月6日 1854.95 0.74% 224.75 0.65% 573.25 8.16% 75.54 -6.72%
9月1日 1838.41 -1.79% 223.89 0.27% 566.39 4.44% 77.61 -6.30%
8月4日 1809.34 -3.97% 215.81 -5.14% 524.01 -8.51% 77.99 -8.16%
7月7日 1851.53 -3.96% 218.85 -4.52% 519.95 -5.93% 79.62 -8.98%
6月2日 1932.61 1.98% 226.34 -0.56% 526.1 -4.62% 81.48 -12.94%
5月5日 1899.29 0.39% 223.82 -0.94% 514.92 -7.27% 80.14 -9.08%
4月6日 1880.14 -1.94% 221.41 -2.05% 507.88 -10.84% 80.93 -7.23%
3月3日 1927.89 1.11% 224.63 -0.11% 512.97 -10.47% 91.17 2.20%
2月3日 1893.19 0.78% 223.35 -0.50% 504.55 -14.54% 84.6 -7.14%
1月6日 1854.97 -4.21% 230.21 4.59% 519.55 -6.77% 84.01 6.49%
各月初の様相EPSとその前年比変化率%

このEPSの二極化は何を意味しているのだろうか?

①一般的な景況感は悪化している可能性。
高金利経済では低利益率の会社や借金依存の高い会社などは経営が悪化する。
高金利が長期化するに従い、業績は悪化してくる可能性がある。

②サブスク型のビジネスモデルは堅調な拡大をしている可能性。
高金利の影響を受けにくい、サブスクリプション型のビジネスがGAFAMの収益をけん引している。
アマゾン、グーグル、アップルなどの決算でもクラウドビジネス、サブスクビジネスが堅調を保っている。

こうした傾向が顕著に出始めたのがこの7-9月期決算だったのかもしれない。
当面、業績面からいえば、GAFAMを中心としたNASDAQがリードする展開が想定される。
ただ、GDP成長率から言えば、この7-9月期の4.9%成長はピークだったともいえる。
これ以上の成長率はなかなか期待しにくい。
そうなると、高金利の長期化とともに米国の景気全般は鈍化傾向になる可能性もある。

あまり念仏のように「米国株の業績は強い」と言い続けない方がいいかも?と思う。
固定観念は時として投資の邪魔になる。



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FOMC、時間軸効果の問題だろ!

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9月のFOMCが終了し、大方の予想通りに金利は据え置きと発表された。
でも翌朝の東京市場では波乱に見舞われ日経平均は452円の下落を記録した。
大方の予想通りなのに評論家は株価が下がったのを見て「FRBのタカ派」で「あと1回の利上げ」が株安の原因とした。
不思議だ・・・FOMCの結果は多くの想定の範囲内だったはずだ。

では、何故、株価は神経質になっているのだろうか?

筆者が一番に気になったのは「時間軸効果」だ。
今回のドットチャートを見てみよう。

     23年末  24年末   25年末
上限   5.625%   6.125%   5.625%
中央値  5.625%   5.125%   3.875%
下限   5.375%   4.375%   2.375%

中央値は24年末まで5%以上の高金利を示唆している。
6月末のドットチャートでは、23年末5.625%は同じだが、24年末は4.625%と5%以下に利下げされることを見ていた。
この意味はFRBは「来年中の景気後退はない」という前提を持っていることだ。

25年末では今回の予想が3.875%だったのに対し、6月ドットチャートでは3.375%だった。
つまり、あと1回の利上げで終了というのは6月ドットチャートでも9月ドットチャートでも同じだが、24年~25年にかけて高金利が継続する予想に変更された。

これは「時間軸効果」を考える必要があるということを意味する。

①FRBの利下げ期待が「あとズレ」したこと。
これによって先の予想で低下していた長期金利が高止まりする、場合によっては一段と上昇する。

②高金利が継続することで市場の期待が変わり、ある意味利上げと同じ効果を生むこと。
「景気後退が来るぞ」という「オオカミ少年」効果は消えた。
「近い将来、利下げがある」という期待が長期金利をあるべき水準よりも低くしてしまう。
この期待が薄くなることで、長期金利は本来あるべき水準に上がる。

つまり、短期金利はもうすでに天井圏にあるにしても、長期金利は「時間軸効果」によって一段と上昇する可能性がある。
だとしたら、このFOMC結果は長期金利に影響し、株式のバリュエーションに影響する・・・ということになる。

重要なのは2点。

①株式益回りと長期債利回りの関係。
株式益回りは株主に属する最終利益率で、この利益率から配当利回りや株主還元率が決まるものだ。
現在S&P500の益回りは4.93%、10年国債利回りは約4.5%でまだ若干余裕があるが、もしこれが逆転したら・・・
米投資家は10年国債を買えば、今後10年間株式よりも高いリターンが得られることになり、資金は株式から国債に移動する。

②インフレ率と長期債利回りの関係。
長期債利回りがインフレ率よりも高くなると、投資家は国債を買うだけで「インフレヘッジ」ができる。
現在米コアインフレは4%水準にあり、4.5%の10年債利回りはインフレ率を若干上回る。
この関係も米国債へのシフトを助長する。

というわけで、FRBの時間軸効果が長期債利回りを引き上げ、株式需給にはマイナスになる。



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米国イールドスプレッド、"zero"に接近

イールドスプレッド2301














「FRBの引き締めは最終局面だし、米国景気はソコソコ強い」となれば株価は上がるしかない。
おそらくこれが現在の市場のコンセンサスだろう。
背景には、①これだけの高金利でも腰折れしない米国経済は強い、②FRBの引き締めが終了すれば、一段と強くなる、③数年後の米国企業利益は伸びているに違いない・・・ということだろう。

でもこのロジックに問題はないだろうか?

株式市場では期待が期待と呼び、EPSが増えていないのに株価だけ上昇する、結果としてPERが急上昇、株式益回りが急低下している。
一方債券市場では米国リセッションを見て長短金利が逆転してきたが、さすがに腰の強い米景気が続き長期債が売られ始め10年債利回りは4%を越え現在4.17%まで上昇した。

この株式益回りの急低下、債券利回りの上昇と言う局面は「イールドスプレッド=ゼロ」という転換点に接近していることを示す。
益回りは配当利回りの原資で、益回りに配当性向(純利益から配当に回す割合)を掛けたものが配当得利回りだ。
当然のことだが、益回りの低下は配当利回りの低下に直結する。

益回り 債券金利
SP500 Y/S NASD Y/S NYダウY/S 10年
Jul-23 4.77 0.81 3.43 -0.53 5.1 1.14 3.96
Jun-23 5.05 1.21 3.49 -0.35 5.5 1.66 3.84
Mar-23 5.51 1.96 3.94 0.39 5.76 2.21 3.55
Dec-22 5.71 1.84 4.55 0.68 5.47 1.6 3.87
Sep-22 6.12 2.29 4.8 0.97 6.4 2.57 3.83
Jun-22 5.9 2.89 4.71 1.7 6.09 3.08 3.01
Mar-22 5.04 2.7 3.88 1.54 5.51 3.17 2.34
益回りはEPS/株価、Y/Sはイールドスプレッド、 単位%

上の一覧表は、SP500、NASDAQ、NYダウの益回りの変化、益回りから10年債利回りを差し引いたイールドスプレッド(Y/S)を比較したものだ。
代表的なSP500で見ると昨年9月には6.1%と高かった益回りが4.7%に急低下の一方、8月3日では10年債4.17%に上昇したためイールドスプレッドは0.5%台に縮小している。
債券が一段と売れられば「イールドスプレッド=ゼロ」という極端な状態も視野に入ってくる。

優良株のNYダウのイールドスプレッドは1%程度を維持しているが、成長株のNASDAQはすでに「イールドスプレッド・マイナス圏=株式が割高」の状態に入っている。

これが何を意味するのか?

ここ数か月FRBの利上げで短期債中心に金利上昇してきたが、株価は意外なほど影響しなかった。
でもこの10年債4%を越えて上昇すると、株価はマイナス影響を受ける。
イールドスプレッドが極端な縮小、あるいは「ゼロ」状態に入る懸念が出てくるからだ。

「イールドスプレッド=ゼロ」状態では、株式配当取りは意味をなさない。
米国の配当性向は3~4割程度だが、そうなると債券の方が3倍利回りが高い状態になり、インカムゲインとしての株式は価値がない。
あいまいなキャピタルゲインのみで株を買うことになると、採算を重視する長期投資家は株から債券に資金シフトしてくるかもしれない。

今まで債券利回りの上昇は「景気の強さ」を示すものとして「株買い」要因になってきた。
でも4%以上の10年債利回りは株式益回りに接近し、株式から債券への資金シフトの原因になる。
これ以上の長期金利の上昇は株式にネガティブになるかもしれない。



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NASDAQ、新高値の条件(3 EPS)

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NASDAQ100は、22年初の高値16513ポイントから10月10440ポイントまで-36%下落した後大幅な反騰相場に入り、現在15826(7/19)と下げ幅の88%を戻してしまった。
この戻り相場のモメンタム(勢い)はどこで生じているのだろうか?
このまま22年初の高値を抜き、次の上昇トレンドに入っていくのだろうか?

前回書いた通り、NASDAQ100のPERはピークの30倍に接近している。
PERの面では限界があるだろう。
となれば、今後の展開は需給とEPSによって決まってくると思われる。

主要指数の予想EPS瞬間風速(3か月前比変化率)
NYDOW   S&P500   NASDAQ   R2000  
7月7日 1851.53 -1.52% 218.85 -1.16% 519.95 2.38% 79.62 -1.62%
6月2日 1932.61 0.24% 226.34 0.76% 526.1 2.56% 81.48 -10.63%
5月5日 1899.29 0.32% 223.82 0.21% 514.92 2.06% 80.14 -5.27%
4月6日 1880.14 1.36% 221.41 -3.82% 507.88 -2.25% 80.93 -3.67%
3月3日 1927.89 5.44% 224.63 1.29% 512.97 -0.99% 91.17 14.35%
2月3日 1893.19 4.70% 223.35 0.22% 504.55 -3.01% 84.6 5.35%
1月6日 1854.97 0.74% 230.21 3.10% 519.55 -1.97% 84.01 3.74%
12月2日 1828.46 -2.33% 221.77 -0.68% 518.11 -4.46% 79.73 -3.74%

EPSの瞬間風速を見ると、NASDAQのEPS伸び率が直近3か月2%と小幅ながら増加傾向になるが、その他、NYダウ、S&P500、ラッセル2000のEPSはほぼほぼ横ばい状態にある。
EPSが力強く伸び、業績回復相場に入るかどうかはまだ判断できないし予断は許されない。

それでもNASDAQ100を中心に上昇してきた背景には、「米国を代表する大型成長企業はどんな環境でも業績を伸ばせるだろう」という期待感がベースにある。
その意味では実際のEPS増加というよりも「その期待」が株式需給を動かしている。

ポイントは二つあるだろう。

①景気全般はリセッションに陥らず、なんとなく堅調に推移するケース。
それでも5%台の政策金利、7%台のローン金利が成長の足かせとなる中小型企業に逆風になる。
特に小型株、財務内容に不安のある企業はEPSが低下してしまう。
株高局面で小型株のラッセル2000が停滞したのは、年初84だったEPSも徐々に地盤沈下するように79まで低下した。
この局面ではEPS増加にはバラツキが生じてくるかもしれない。
悪化する企業と何とか横ばいで耐える企業の「二極化相場」がキーワードになるのかもしれない。

②高金利が需要を抑え景気鈍化が明確になるケースではEPSの伸び率は低下傾向になる。
インフレがさらに低下傾向を見せる反面、景気は鈍化し、雇用も減少、失業率が上昇するだろう。
相場はこの業績悪化を一端は織り込まなければならない。
市場は景気鈍化で一時的な調整を経てFRBの利下げ期待が生じる。
これが起点となって「金融相場」が始まる。

この二つのケースを想定してポジションを運営する方針だ。



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NASDAQ、新高値の条件(2 PER)

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アップルなどの主力NASDAQ銘柄、Nvidiaを中心したAI・半導体関連銘柄には21年の大天井を上抜ける銘柄も出てきている。
NASDAQ100の平均PERも29倍に達し、21年大天井時のPER30倍に接近している。
このNASDAQ指数が新高値を超えて上昇相場に入るのか、それとも二番天井を付けるのか?

米国株価指数には、ハイテクNASDAQ以外、優良株中心のNYダウ、米国全体で上位500銘柄を網羅したS&P500など世界の投資家が一般的に使っている指数がある。
NASDAQのバリュエーションと、これらの指数のバリュエーションを比べてみたい。

NYダウ NASDAQ SP500 R2000
2021年12月 株価天井 18.76 30.25 22.82 31.44
2022年9月 ボトム 15.62 20.82 16.35 21.37
2023年7月 直近値 18.88 29.84 20.59 24.71
PER単位は倍

PERで見ると、2021年末、まだFRBの強烈な引き締めが始まる前、小型株のラッセル2000のPERが31倍と最も高く、次にNASDAQ30倍、SP50022倍、NYダウ18倍と言う順番になっていた。
今年7月現在ではNASDAQは29倍とピーク30倍に近づいている一方、21年にはNASDAQ並みに高いPERだったラッセル2000のPERは24倍に過ぎない。

「株価=EPS×PER」であり、利益(EPS)に人気(PER)を掛けたものが株価だとすると、NASDAQの人気が圧倒的に高く、小型株のラッセル2000の人気が低迷しているといえる。

政策金利が5%台まで上昇し、住宅ローン金利が7%、低格付け企業の社債8.5%という高金利の米国経済は、信用力で劣る中小型企業にとっては厳しい金融環境だ。
一方、NYダウに採用されているような優良企業、S&P500に採用されている上位500の大企業などはその財務の安定性が高く信用問題はない。
こうした高金利ー財務安定性が人気(PER)の格差を生んでいるとしたら、むしろ高金利が大型ハイテク株を支えているといえる。
FRBの政策金利が5~6%で高止まり、長期金利も3.3%~4%のレンジでしばらく推移するとしたら、「大型ハイテクの二極化」が続いていくのかもしれない。

ただし、「大型ハイテクの二極化」には二つの関門がある。
一つはNASDAQ100のPERが30倍に接近しているバリュエーションの限界。
そこは「高金利下の業績回復」という投資家の期待を大型ハイテク企業が実現していけるのかが問われている。

もう一つの限界は「大型ハイテクの二極化」そのものの需給の限界だ。
「二極化の行き過ぎ」は永遠に続くわけではない、自ずから需給の限界がある。
このままインフレ高止まり―高金利の継続ー信用リスクの高まりという現状が続くとしても、いくら財務の安心できる大型ハイテク株といっても投資家が腹いっぱい買ってしまえば終わり。

次にEPSの推移を確認しながら、ポイントとなる業績を見てみよう。


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NASDAQ、新高値の条件(1)

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米NASDAQ市場は5%を越える高金利の下にもかかわらず、かつてないような活況を見せている。
金利上昇でPERが低下し株価が低迷した昨年とまさに様変わりだ。
すでに半導体のNvidiaは21年高値を突破し新高値圏に躍り出ているし、GAFAMの中のトップ、アップルも21年高値を突破している。

このままNASDAQ指数も21年高値と突破していくのだろうか?

下の表は、新型コロナ禍で沈んだ2020年6月、そこから超金融緩和+量的緩和で株価上昇しピークを打った2022年12月、EPSがピークを打った2022年1月、金利上昇によるPERの低下が進みPERがボトムに達したのが2022年10月、そこからの反騰相場・・・・このサイクル全体をもう一度確認してみたものだ。

  NASDAQ EPS PER  
2020年6月 EPSボトム 9849 325.6 29.21
2021年12月 株価ピーク 16567 68.2% 539.51 65.7% 30.25 3.6%
2022年1月 EPSピーク 14438 -12.9% 630.32 16.8% 22.91 -24.3%
2022年10月 PERボトム 10692 -25.9% 525.67 -16.6% 20.37 -11.1%
2023年7月 現在 15713 47.0% 530.89 1.0% 29.6 45.3%
NASDAQは数字の取得できる100銘柄(NASDAQ100)、変化率%、EPSはドル、PERは倍。

1)新型コロナ禍2020年6月~株価ピーク2021年
この間、EPSは65%伸び、PERは4%の上昇、そして、株価は68%と大幅な上昇を記録した。
もちろん、コロナ禍のロックダウンで株価暴落した後の反騰なので、EPSの伸び率も株価上昇率も非常に高く際立って出たともいえる。

2)株価ピーク2021年12月~EPSピーク2022年1月
この間わずか1か月だが、EPSが16%伸びている反面、株価が13%の下落。
FRBの引き締め入りを予想してPERが低下し株価は下落となった。
わずか1か月で市場期待が金融緩和から金融引き締めへと大きく変化、逆金融相場の始まりとなった。

3)EPSピーク2022年1月~PERボトム2022年10月
FRBの金融引き締めが効いてEPSとPERの両方が低下し、株価も下落した。
EPSが16%の低下、PERも11%の低下、そしてその掛け算である株価が26%下落した。
弱気相場の典型的なパターンだ。

4)PERボトム2022年10月~直近2023年7月
期待先行のPERによるリバウンドだ。
ファンダメンタルには大きな変化がなく、金融引き締めの継続+EPSの軟調に対して、PERが45%上昇して株価の47%上昇を支えた。

今後を考える上では・・・

①現在のPER29.6倍は、20~22年上昇相場でのPERピーク30倍に接近。
30倍というPERは歴史的にも高い。
米国のインフレがピークに達し、徐々に長期金利が低下局面に入るとの期待を織り込んでいる。
インフレー長期金利ーNASDAQの関係を考えて直してみるべきだろう。

②NASDAQの上昇はアップルや半導体など一部の銘柄の上昇寄与が大きい。
この需給の一極集中がNASDAQ市場のPERを押し上げているのかもしれない。
この点も検討すべきだろう。

③最大のポイントは、EPS伸び率が高まっていくかどうかだ。
これだけの高金利で米企業は業績を伸ばしていけるのか、その条件はなんなのだろう?
高金利は低収益企業を排除していく、その結果、高金利でも成長できる企業に注目が当たる。
では実際に高金利下で業績、EPSを伸ばしていけるのか?

この三点を中心にしてNASDAQが新高値を取っていけるのか、次回から検討してみたい。



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ソシオネクスト株で外人の半導体評価を探る

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ショッキングな大株主の売り出し規模で、株価が急落するのは当然といえる。
ソシオネクストの大株主3社、日本政策投資銀行15%、富士通15%、パナソニック7.5%が3社談合したかのように海外での売り出しを決めた。
発行株の37%の大規模売り出しであり、大きな下落要因だ。

海外投資家は株の空売りを含めてショートポジションを作り、売り出しで取得した株でショートカバーすると自動的に大儲けできる。
ある意味、海外投資家が価格の決定権を持っていると言っていい。

それだけに値決め日が注目される。
海外投資家が日本の半導体会社をどう評価しているのかが明確になるからだ。

まずはソシオネクストの今期予想EPS519円をベースに考えてみよう。

銘柄      2023年EPS    株価        PER水準  
エヌビディア  6.75ドル   425.03ドル  62.9倍
アドバンテスト 610円     19970円    32.7倍    
ASML    23.76ユーロ 649.4ユーロ  26.9倍
東京エレク   781円     20205円    25.8倍
TSMC    39.37ドル  565.0ドル   14.3倍
予想EPSは各機関によって予想の幅があり、一応の目安としての数字。

高成長が期待されているエヌビディア株のPERは60倍台で当然ながら一番高い。
来期の急成長を織り込んでいる株価といえる。
アドバンテストは30倍台でエヌビディアと同様にAI市場向けの急増を織り込んでいる。
その他の半導体株は20倍前後で、このPER水準が世界の半導体株の標準的な水準なのだろう。

さて本題のソシオネクストだが、大株主の売り出しを意識して急落し、現在株価17480円、今期予想PERは33.6倍に低下してきた。
半導体株としては高評価を受けているが、人気化しストレッチしたバリュエーションともいえる。

この株を海外投資家はどう評価するのだろうか?
発行株の3割以上という規模であり、一気に買えば経営に影響できるわけでこれを魅力的に感じる大手投資家もいるだろう。
ちなみに37%全株を買えば、株主総会で特別決議を否決できる大きな影響力を手にする。
しかも空売り自由で自分の買いたい水準に売り出し価格を押し下げることもできる。

まさに海外投資家の日本半導体株の評価を探る絶好の機会になるだろう。
順当に行けば、半導体株の標準バリュエーション20~30倍程度で決まるだろう。
30倍かそれ以上で値決めされれば、海外投資家は日本の半導体に高い評価を付けているともいえる。
もし、今回の売り出しで有力な大手投資家が大口で購入すれば、ソシオネクストの今後の成長への大きな支援者となる可能性もある。
その場合、中長期の成長を加速させるかもしれない。



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イールドスプレッドがピークを打つ時

イールドスプレッド2301














イールドスプレッド(SP500÷米10年債利回り)は10年利回り3.51%-SP500益回り5.41%で、-1.9%と2%以下に縮まった。
以下の表はSP500、NYダウ、NASDAQの益回りと10年国債利回りを比べたものだ。

      益回り             10年債利回り
      SP500  NYダウ   NASDAQ  
5月現在 5.41% 5.64% 3.88% 3.51%
2月末  5.58  5.68  4.16  3.94
12月末 5.71  5.52  4.55  3.87
10月末 5.87  5.72  4.73  4.01
5月8日現在

現在のイールドスプレッドの動きにはいくつかの特徴がある。

①長期金利はここ数か月少しづつ低下しているが、株式益回りがかなり急速に低下している。
昨年10月以降の中間反騰で株式の益回りは急速に低下=株式の魅力の低下を示している。
一方、10年債価格も反発し長期金利もわずかに低下したが、FRBの利上げが継続しているので大きく低下するわけでない。
イールドスプレッドの収縮は主として株価上昇によって起こっている。

②NASDAQと10年債ではほぼ同水準、スプレッドはわずか-0.3%。
成長株主体のNASDAQの益回りはそもそも低めなのだが、すでに10年債利回りと同水準に近い。
イールドスプレッドからすれば、NASDAQに投資採算としての魅力がなくなっている。
これをもってすぐに下落するわけではないが、NASDAQ銘柄に投資魅力がない。

現在のところ雇用や消費景気に変調が見えるわけではなく、企業業績も大きな悪化は見られていない。
それだけに株式益回りは徐々に低下、債券は横ばいという状態が続くのかもしれない。
これは一種の「平衡状態」、微妙に安定した状態を示しているのかもしれない。
と同時に投資環境の変化を待っているともいえる。

SP500の実質的な株主リターン4.3%に過ぎない。
米企業の平均的配当性向30%∔自社株買い50%=総還元80%とすると、現在の株式益回り(5.4%)の80%、つまり4.3%程度が実質的な株主リターンになる。
すでに短期金利はこの実質株主リターンを上回り、株式よりも短期債の方が魅力的な水準にある。

短期金利が預金金利を決めるので、財務の良い銀行の預金やMMFが相対的に魅力的になる。
おそらくこの状態では株式は銀行預金やMMFに勝てない。
FRBの5月利上げでFF金利が5%前半水準に上昇し、想定されたターミナル金利に近づいた。
これ以上の利上げは、イールドスプレッドをさらに収縮させ、株式市場が不安定にする。

イールドスプレッドがピークを打つ時、株式益回りの上昇=株価の下落、あるいは長期金利の低下=景気の悪化のどちらかが想定されるわけだ。
景気が悪化すれば金利は低下するわけだが、景気が先か? 金利が先か?が大きな問題となる。
この問題はこの後のトレンドを決める。

日経CNBCの岡崎さんは、「金利が先、だから株式市場は上昇する」と見ている。
次回検討してみたい。



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イールドスプレッド、数十年ぶりに注目!!

イールドスプレッド2301














古典的な分析ツールに「イールドスプレッド」がある。
大昔のインフレ時代に使われた遺物だが、再び現代のアメリカに蘇ってきている。

イールドスプレッドの原理は簡単。
10年債利回りと株式益回り(EPS/株価、PERの逆数)を比べたものだ。
長期の債券投資と株式投資のどちらが高いリターンを得られるのかを示すもので、株式益回り>10年債ならば「株の勝ち」、逆に株式益回り<10年債ならば「株の負け」。

リーマン危機以降の世界的な超低金利で、10年債利回りが非常に低かったので、株式益回りな債券よりも常に2~4%も上回った状態、株式が選好される状地合いが続いた。
なので誰も長い間注目さえしなかった投資尺度だったが、米債券の利回りがすべて4%以上になり、数十年ぶりにイールドスプレッドを意識する局面に入ってきたように見える。

米国の主要株価指数の益回りと10年債利回りを比べてみた。

       益回り             10年債利回り
      SP500  NYダウ   NASDAQ  
2月末  5.58% 5.68% 4.16% 3.94%
12月末 5.71  5.52  4.55  3.87
10月末 5.87  5.72  4.73  4.01

FRBの引き締め開始から1年、10年債利回りの上昇で「益回りー10年債=イールドスプレッド」が急速に縮まっている。
10年債利回りが10月並みに4%に乗せ、NASDAQのイールドスプレッドはほぼゼロの状況になる。
SP500でも2月末で-1.64%と2005年以降で最も接近してきた。

NYダウやSP500などの機関投資家の主要なベンチマークでイールドスプレッドの縮小が起こるとどういう影響があるのだろうか?

①イールドスプレッドがゼロに接近する状況では機関投資家は株よりも債券を選好する。
世界中の株式と債券、あるいはオルタナティブアセットに分散投資している機関投資家は、イールドスプレッドが逆転するような状況ならば、株式ウェートを減らし、債券ウェートを高めてくる、これは常道だ。

株式リスクを取って得るリターンであるEPSよりも、リスクの小さい10年債投資で得る金利の方がいいとなれば、当然、リスク対比でみれば債券が有利だ。
機関投資家はポートフォリオの配分を定期的に変更しているので、簡単に機動的にウェートは変更されてしまう。

②投資家のリターンは株式益回りよりさらに低くなるので、株式投資の魅力が低下する。
会社は純利益であるEPSから自社株買いをしたり配当を株主に分配する。
米国では総還元性向(自社株買い∔配当/利益)の比率は80%程度で、配当性向30%、自社株買い比率50%程度だ。

だから実際はSP500の益回りは5.58%だが、配当が1.7%、自社株買い2.8%の合計4.5%程度が実質的な株主リターンとなる。
もし10年債利回りが4.5%になれば、株式の高いリスクを取る必要はなくなる。
4.5%の利回りを10年債で受け取れるからだ。

というわけでイールドスプレッドは機関投資家だけでなく個人投資家にも大きく影響するだろう。
これから6月までの3回のFOMCと、それを受けた長期債の動きで決まる。
次回、もう少し掘り下げて考えてみたい。



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NYダウは「バブル的」とはいえない

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米国の金融政策の方向を変わる局面に来ても以前として米国株は新高値を付け上昇は続いている。
この上昇が過剰流動性による「バブル的」なのか、ファンダメンタルの基づいた上昇なのか、を検証してみたい。
直感的には・・・米国の過剰流動性のピークはテーパリングの終了する来年前半になると思われる。
この流動性のピークに向けて「バブル的」相場が形成されるかもしれないと思っている。
しかし、これはあくまで直感的な話で根拠はない。

そこで2021年1月から10月末までのEPS(予想)の増加とNYダウの上昇率を比較してみた。

     NYダウ月末値 3か月上昇率  NYダウEPS 3か月増加率
10月末 35819ドル ∔ 2.5%  1905ドル  ∔ 6.0%
7月末  34935   ∔ 3.1   1796    ∔ 8.2%
4月末  33874   ∔11.7   1659    ∔10.9

NYダウの上昇率を同じ期間のEPSの増加と比較した。
NYダウの上昇率がEPSの増加率を上回っていたのは今年の1月~4月の期間だけだった。
この時期はEPSの増加が10%だったのに対し、NYダウの上昇率は11%と、ファンダメンタルが好調で株価が少し行き過ぎたと言える。

しかし、その後4月~7月ではNYダウの上昇率はEPSの増加率を5%も下回ったし、7~10月でも3.5%下回った。
この6か月の期間では熱狂的な「バブル的」な株価上昇は見られていない。
それどころか、ファンダメンタルからは株価はもっと上昇してもいいぐらいだった。
冷静な相場展開だったといえる。

素材や中間財の価格上昇とインフレ懸念、中国不動産の悪化と国内景気の不透明さが、むしろ、株式市場を冷静に保つ働きをしたのではないだろうか?
米国の過剰流動性は来年前半のピークに向かうが、株式市場は冷静さを失っていない。
としたら、NYダウは途中途中の調整でガス抜きをして「バブル的」を抑えている。
基本的な上昇相場は続くのかもしれない。
問題は現実に流動性が落ち来る来年前半以降なのだろう。


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株式需給の達人(実践的バリュエーション編)

実戦的バリュエーション

















株式需給の達人(実践的バリュエーション編)を出版しました。

投資の成功を多くの人が夢見ています。
「1億円稼ぐ方法」「あなたも億り人」などなど、投資で大儲けした人の経験談が多く出版されています。

たとえば・・・IPOで当たった株が10バガー(株価10倍)になり、ホクホク!!
確かにありえる話ですが、一回IPOで儲けたからといって、何回も大儲けできるとは限りません。られるは分かりません。
人気のIPO銘柄は応募が殺到し抽選になるので、なかなか当たらないのが普通です。

また、「IPOの逆説」もあります。
つまり、「人気のあるIPO銘柄は競争が激しく、めったに当たらない、でも、IPOで簡単に当たる銘柄は人気がなく儲からない」・・・という話です。
IPOの応募し続けている投資家には、結局、人気のないIPO銘柄ばかりよく当たり、あまり儲からないという経験をしている方も多いと思います。

平均的に安定して儲けることを「投資の再現性」といいます。
運用で必要なのは1回の大儲けではなく、再現性の高い投資なのです。

大儲けはできなくても、投資採算を見て運用することで再現性の高い投資=安定的なリターンが取れる運用ができます。
では、その投資採算とは何か? その採算をどう計算するのか?
その答えが、この「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」にあります。
投資する価値は、株価の判断で決まります。
適正な株価で買うことが何より大切です。
その判断の尺度になるのが、PBRやPERなどのバリュエーションです。

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TOPIXの「EPSーPERマトリックス」

TOPIX

TOPIX日足










今まで相場の水準を測るのに日経平均の「EPSーPERのマトリックス」を使ってきた。
しかし、日経平均のバリュエーションはソフトバンクGの予想EPSに大きく影響され、しかも、前年度5兆円の純利益が凄まじい数字だったため、今期予想が大きくブレている。
なので日経平均のPERは14倍なのか、18倍なのか、不明な状態になってしまった。
相変わらず、平野憲一氏などは日経平均EPS2000円に乗せ、昨年末から2倍になった・・・それにもかかわらず、株価は上がってないので出遅れ感が強いと説明している。
そこで日経平均ではなく、TOPIXの「EPSーPERのマトリックス」を使って考えてみたい。

基本的なバリュエーションの考え方は日経平均でもTOPIXでも変わらない。
昨年の相場上昇で22/3期の大幅な業績回復(30%以上のEPSP増加)を織り込んでいる。
その上でフェアバリュー水準を考えていくのが目的だ。

TOPIXのEPSは4月末で95円程度だった・・・そして、5月中旬の決算発表を受けて、110円に上昇、増益率は16%だった。
ちなみに日経平均EPSは4月末1411円で、直近2018円なので43%増加した。
この違い(日経平均+43%:TOPIX+16%)はSBGの影響が大きな要因だ。

今期TOPIXのEPS増加は16%と、事前に期待された30%増益には届かなかったが、それなりの業績回復期待が会社側の数字でも確認できた。
前期EPSを95円として10%増益~40%増益までを縦軸にし、PERを14倍~22倍まで想定した横軸で、マトリックスを作った。

列1 列2 列3 列4 列5 列6 列7
EPS PER(倍)
成長率 14倍 16倍 18倍 20倍 22倍
0% 95.0 1330 1520 1710 1900 2090
10% 104.5 1463 1672 1881 2090 2299
20% 114.0 1596 1824 2052 2280 2508
30% 123.5 1729 1976 2223 2470 2717
40% 133.0 1862 2128 2394 2660 2926

EPS20%増益を前提にして、TOPIXのフェアバリューは、PER16倍~PER18倍の組み合わせでは1820~2050ポイントのレンジだ。
現在TOPIXは1900ポイント前後で推移しているのでレンジの真ん中にある。
今期の新型コロナ禍の元でのEPS回復をほぼ織り込み、ほぼフェアバリューといえる。

現在、フェアバリュー範囲の真ん中にいるTOPIXは居心地の良い水準ともいえる。
安定した相場圏にあるとみられ、ここから大きく下がれば「押し目買い」が有効になる。
仮に新型コロナ禍を日本が克服し、業績が一段と伸びる予想が出てくれば、レンジを切り上げるだろう・・・しかし、その場合、経済正常化後のPERは低下する。
業績の回復度合いとPERの低下の関係によってTOPIXのレンジが決まることになる。


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自動車のレガシーコストを考える(2)

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自動車産業は大きな転換期を迎えている。
菅さんのカーボンニュートラル宣言は世界では遅い方で、欧米先進国、中国などすべての国が2030~2040年にガソリン車の販売禁止をうたっている。
内燃機関に膨大な研究開発費を投じ、ガソリン車を生産してきた自動車会社には当然ながらレガシーコストが大きくのしかかる。
その中でマツダを取り上げて、この自動車のレガシーコストを考えてみようという話。

マツダのバランスシートには1兆円を超える有形固定資産がある。
そのうち土地が4171億円、建物が1887億円と有形固定資産の6割を占める。
土地・建物は主に生産工場と販売拠点などだろうが、これらはガソリンでもEVでも関係ない。
大きなレガシーとなるのは、ガソリンエンジンやガソリン車の組立・生産ラインに限定されるだろう。
とすると、機械設備やその他に含まれている4000億円の一部といえる。
それ以上の内訳は開示されていないが、仮に半分はエンジンの組み立て・生産ラインとすれば、およそ2000億円程度が内燃機関のレガシーコストとなるだろう。

無形固定資産の400億円の一部が内燃機関の知的資産だろすれば、有形固定資産の2000億円に加え、レガシーコスト全体では2100億円~2200億円程度と見積もればいいと思う。

マツダの株主資本は1兆円、うち利益剰余金が4621億円となっている。
というわけで、マツダの財務体力からすれば、内燃機関のレガシーコストは十分に償却できる範囲だろう。
ただし、純資産/株は1727円であり、このレガシーコストを考慮すると実質的に1400円提程度になるはずだ。
現在の時価が900円台、PBRは0.52倍・・・レガシーコストを考慮後のPBRが0.6倍台に上がるに過ぎない。
自動車のレガシーコストは意外と小さかった・・・というのが結論だ。


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自動車のレガシーコストを考える(1)

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2030年代には本当にガソリン車(ハイブリッドを含む)が販売禁止になるのだろうか?
このトレンドに遅れまいと、世界の自動車メーカーがEVの開発にしのぎを削っている。
各国の環境政策がこれだけ揃っていると、日本だけゼロエミッションを変更するというわけにはいかない。
そうなると、内燃機関=エンジンに大量の開発資金を投じ、エンジン自体の性能の向上、DHOCやターボなどによる技術力によって自動車を販売してきた日本の自動車メーカーはどうするのだろうか?
トヨタや日産は、内燃機関をベースとしながらもハイブリッドやプラグイン・ハイブリッドやEVに巨額資金を投じ研究開発を続けてきた。

ここでまず取り上げたいのが、マツダだ。
以前マツダ本社にリサーチで行ったこともあったが、広島での「マツダ」の存在感は全く半端ない。
広島全体がマツダファンであり、地域とマツダは正に一体だ。

このマツダは、以前のロータリーエンジンや最近のスカイアクティブなど、内燃機関の開発から生み出されたR&D主導の経営、さらにデミオからロードスターやマツダ3まで自動車デザインの強烈な個性によって活躍してきた個性的な日本車メーカーだ。
地域との密接な関係、R&D主導の経営、デザインの個性で他の自動車会社とは一線を画する。
ガソリンからEVへの大きな流れの中で、過去の研究開発の結果生み出された膨大な技術資産がどうなるのだろうか?

レガシーコストという言葉がある。
過去のしがらみから生じる負担という意味だが、二つの過去のガソリンエンジン車のレガシーコストが考えられる。
一つは内燃機関の膨大な研究開発コスト、もう一つはガソリンエンジンの巨額な生産ラインだ。

マツダのバランスシートには無形固定資産が423億円が計上されている。
特許や知的財産としての価値=無形固定資産となるので、実際に内燃機関の知的財産や特許としての価値は400億円以下だろう・・・それほど大きくはない。
マツダは毎年の1000億円以上(ここ2年は1300億円/年)の研究開発費を使ってきた。

マツダの内燃機関の開発費は主に資産ではなく費用だった。
ガソリンエンジンからEVへ完全に移行しても、マツダのレガシーコスト、償却すべきコストはそんなに大きくはないといえるのかもしれない。
研究開発費は毎年の営業費用の中ですでに落とされているからだ。
でも、一方、EV車へ需要が流れてしまいガソリン車が売れなくなると、研究開発費が重くのしかかり決算数字を直撃するかもしれない。

マツダの説明会資料では、内燃機関をベースとする戦略が描かれている。
100%EVにするつもりは全くない・・・ハイブリッド車までのラインアップを長期戦略の核にしている。
あくまで内燃機関の膨大な技術資産や競争優位を守ると言っているわけだ。
カーボンニュートラルという国家目標に対して、ある意味反旗を翻しているといえる。
ただし、菅内閣も表面的にはカーボンニュートラル宣言をしても、現実的な道程を示してはいない。
あやふやな国家目標であり、マツダの戦略の方が正しいのかもしれない。

次回は生産ラインのレガシーコストについて考えてみたい。


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「2021年相場のイメージ」のアップデート

日経平均202002












昨年11月25日に「2021年相場のイメージ」を書いた。
その当時の日経平均は2万6000円近辺でPER24倍だが・・・
ワクチンによるコロナ収束で経済の正常化を前提で、30~40%の増益で日経平均2万9000円が最大のイメージとした。
しかし、それからわずか3か月で「2021年のイメージ」を達成してしまった。
当時の想定を超える相場展開だったと反省を込めて・・・改めて考えてみたい。

成長率 EPS(円) PER(倍) 列1 列2
    15 18 20
20% 1464 21960 26352 29280
30% 1586 23790 28548 31720
40% 1708 25620 30744 34160

上の一覧表は現在の今期予想をアップデートして作ったものだ。
今期の予想EPSが1090円から1220円に上方修正されたため、その分を加味した。

この表から言えることは・・・
(1)21年上期の段階でワクチン接種の拡大と経済正常化への期待がすでに織り込んでいる
現在の2万9000円台に日経平均は経済正常化を織り込み、PER24倍の市場評価になっている。
このPER倍は日本の潜在成長率からすれば明らかにメチャクチャ高いが、新型コロナ騒動が正常化する一時的な現象としてはありえる。
来年のEPS成長率とともにPERは中長期的に均衡水準に低下していく。

(2)来期のEPS成長率30~40%が期待できるか
今のところ来期のEPS成長は30~40%が期待されている。
これを前提にすると、ラフな来期イメージは(EPS30%増益+PER18倍)2万8500円~(EPS40%増益+PER20倍)3万4000円というレンジだ。
来期のEPS成長が本当に30~40%増加するかを見ていきたい。

(3)22年以降の中期成長力をどう見るかでPER水準が決まってくる
2021年のグローバル経済は8%成長が期待されている中国がリードし、欧米や日本も3~4%と新型コロナ騒動の反動で高成長が期待されている。
しかし、経済の正常化は金融の正常化も招くので、金利の上昇と量的緩和のテーパーリングとPERの低下が起こる。
おそらく2021年の最も重要な瞬間は、現在の新型コロナ対応相場から経済正常化+量的緩和の縮小+金利の上昇という局面変化の時だ。
パウエル氏が後手に回ったり、日銀など金融当局の対応がズレれば、金融資本市場に大きな変動を引き起こすだろう。

運用の観点からは・・・
この日経平均の最大3万4000円水準+PER20倍以上の水準は一時的な現象と考えていた方が良いだろう。
来期以降のポストコロナ経済の進展を見て、リアルな成長率とPERから日経平均のレンジを修正していけばいい。


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実践的バリュエーションを考える(10)

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前回話の続きだが・・・任天堂は成長株イメージが強く、バリュー投資で任天堂を買うというと一般に違和感があるかもしれない。
しかし我々の眼から見れば、2-3年という短期では成長株といえるが、10年以上という期間でみると明らかにバリュー株なのだ。

2013年から2014年はそこそこのヒットゲームしかなく、WiiUなどのゲーム機器も売れず、業績の端境期で営業赤字に落ち込んだ時期だった。
株価は営業赤字を反映して下落し、ついに一株あたり純資産9400円を割り込んだ。
WiiUの販売の不振やスマホゲームの時代に入り任天堂の成長は終わったと言われた時期だった。

この時、バリュー投資のファンドマネージャーが任天堂株を買い出した・・・理由は二つ。
一つは資産価値の安定度。
バランスシート(貸借対照表)を見ると、過去の蓄積としてドル建ての預貯金が2000億円以上あり、一株あたり純資産は安定していた。

もう一つは前回説明した「永久キッズ・サイクル」によるコンテンツの長期的な価値が高いことだ。
ディズニーや任天堂にとってミッキーマウスやポケモンは世代を越えて人気を維持できる超長期コンテンツだ。
景気悪化サイクルでも次の回復時にポケモンゲームなどを出せば復活できるのが強みだ。

結果は言うまでもないが、株価1万円前後(純資産レベル)で任天堂を買うと、その後株価3~4倍になる・・・バリュー投資が有効な会社だ。

最近、問題だと思うのは「バリューかグロースか」という二元論的な相場解説が多いことだ。
特にPBRやPERを使って割安株と割高株に分類し、割安株をバリュー投資、割高株をグロース投資として区分けし、どっちが強いかを話題にする場合が多い。
しかし、同じ会社でもグロースの観点から評価できる時期もあれば、バリューの観点から評価できる時期もあるのが現実だ・・・任天堂や先の例に挙げたソニーでも・・・。

もちろん、テスラのように上場来赤字の会社はどう転んでもバリュー投資の尺度で買うのは無理だが、成熟化している日本企業は、たいていの場合、バリュー投資の時期とグロース投資の時期が交互に来る。
グロース投資の時期に業績の伸びを期待して買うのもいいが、業績不調の時期にバリュー投資として買うと大きなリターンが出る。
「バリュー投資がダメだ、効かない」と言う多くの株式評論家が言うが、こうした企業の業績サイクルを見て行う「バリュー投資」は今でも有効な投資手法だ。
あまりバリューかグロースかという二元論で考えない方がいい。
業績不調期のバリュー投資が最も簡単にリターンが上がる・・・これが結論だ。


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実践的バリュエーションを考える(9)

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バリュー投資は一種コントラリアン(逆張り投資家)であり、世間の評価からは大きくズレることも多い。
コントラリアン投資とは、辞書では一般の傾向と反対の行動をする人、逆張り投資とか書かれているが、実際にコントラリアン運用するとしたら、「逆張り」どころか「天邪鬼」に近い。
普通の人はみんな同じ行動をしていると安心する・・・人と違った投資行動するのはそれだけ強い精神力が求められる・・・だから普通の人から見れば「天邪鬼」だ。

バリュー投資の実例として取り上げたいのが・・・任天堂(7974)だ。
任天堂は家庭用ゲームで成長した・・・成長株だと見られている。
しかし、どちらかというと、バリュー株である時期の方が長いかもしれない。

任天堂は三つの側面を持つ・・・なかなか一筋縄ではいかない会社だ。

第一にゲーム機器のハード会社としての側面。
ハードのゲーム機も栄枯盛衰があるし、技術サイクルが短いのであっという間に世代交代していくビジネスだ。
しかも現在は専用ゲーム機からスマホ・ゲームアプリまで幅広く、人気ソフト次第では専用機ビジネスもかなり上下が激しい。

第二にソフト会社としての側面。
スクエア、エニックス、ガンホー、ミクシーなど人気ゲームで一時代を築き上げた開発会社が多くあるが、ブームが過ぎるととことんダメになってしまう会社もある。
ソフトは非常に荒っぽいビジネスで、うまく行けば大儲けできるが、失敗すれば開発費の回収もできない・・・また、ブームが去れば逆に売上の低迷期に入ってしまう。
ゲーム会社の業績はジェットコースターのように変動する・・・だから株価のボラも高い。
任天堂といえども、この高いボラから逃げることはできない。

三番目の側面は「永久キッズ・サイクル」だ。
子供はミッキーマウスで育ったり、ポケモンで育ったり、ドラえもんで育ち、大人になる。
大人になり家庭を持ち、子供が生まれる・・・すると、その子供もやっぱり、ミッキー・ポケモン・ドラえもんで育っていく。
一度、この「永久キッズ・サイクル」に入ったキャラクターやコンテンツもまた半永久に残っていく。
この「永久キッズ・サイクル」は長期キャッシュ・カウとして鉄板人気を作り上げる。

任天堂の株価にはこの三つの側面が大きく影響する。
ダメになると、とことんダメになる・・・ミクシーやガンホーを見ても業績も株価も大きく変動する。
2012年から2013年にかけてはこの任天堂も営業赤字に苦しんだ。
それに拍車をかえたのがスマホゲームの人気で、WiiUなどゲーム機の売上が伸びず、任天堂が営業赤字に転落した・・・株価も1万円まで下落した。
しかし、永久キッズサイクルが株価を支える・・・ポケモンなどの子供向けは圧倒的に強い。

次回実際の投資事例を取り上げたい。


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実践的バリュエーションを考える(8)

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前回からPBRを使った投資を検討している。
ソニー株をバリュー投資の事例をして上げたが・・・バリュー投資で大切な事は三つだ。
(1)資産を精査して正確なバリュエーションを計算すること・・・正確な資産評価、
(2)バランスシートの右側を精査して劣化した資産や利益を生まない資産をチェックすること・・・資産のクオリティの評価、
(3)業績のターンアラウンドの可能性だ。

この三点を考えることは、実はバリュー・トラップを避けることに通じる。
これはバリュー投資を行う上での「割安のワナ」であり、割安で買ったものの、永遠に割安のままでリターンが上がらないという状態だ。
株式市場では「万年割安株」と呼ばれている銘柄で、これが典型的なバリュー・トラップだ。

たとえば、現在の市場では銀行株が万年割安株の範疇に入っているが・・・
銀行は全国をカバーする支店網があり、巨大な銀行オンラインでつなぎ、ATMや窓口で様々な金融サービスを行っている。
しかし、問題はこの巨大な支店網やオンラインシステムが大きなお荷物になりかけていることだ。
フィンテックが進み、暗号通貨が一般化しキャッシュレス社会になり、ネットバンキングですべてのサービスが提供される時代になると・・・巨大な支店網やATM網が遊休資産になってしまうかもしれない。
膨大な支店の土地建物、過剰な人材資産、ATMなどの機械資産などを考えれば、銀行のバランスシートには大きな無駄があると言われる時が来るかもしれない。
その分、銀行のPBRは低くなるのは当然の理だろう。

業績のターンアラウンドを考えることがバリュー・トラップを避けるコツだ。
PBRとROE(自己資本利益率)には明確な関係がある。
ROEは利益/自己資本で、自己資本=株主資本を使ってどれだけの利益が上げたかという尺度だ。
簡単な恒等式を使うと・・・

      PER(P/E)=PBR(P/B)÷ROE(E/B)

          Pは株価、Eは利益、Bは自己資本

この式の意味することは、低PBR銘柄はROE(利益率)が低いから低PBRなのであり、高PBR銘柄はROEが高いから高PBRなのだということ。
重要なことは、現在低PBRであっても、将来のROEが上昇するならば、PBRは上昇していくということだ。
業績のターンアラウンドを考えることは、企業のROEを考えることだ。
ROEが将来上昇するならば、バリュー投資は最高のリターンを生むだろう。


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実践的バリュエーションを考える(7)

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PBRを使った株式投資を前回から見てきたが、その二回目だ。
PBRを使う有利な点は利益のように予想する必要がないことだろう・・・利益予想自体がとても難しいし、無理して予想してもほとんど当たらない。
熟練アナリストでも当たらない予想を基にPERで投資するよりも、予想の不要なPBRで投資する方がとっても簡単だ。

もう時効だから問題ないと思うが、今回は運用会社が行ったPBR投資の実際例としてソニー株を取り上げてみたい。

これは2012年かた2013年にかけての事だった。
ソニーは2012年3月期に5200億円の大幅な赤字に陥った。
日本のエレクトロニクス業界は、主要なデジタル製品で新興国の追い上げと競争激化、リーマン危機後の1ドル=80円台の超円高で大きな打撃を受け、いかにソニーといえども例外ではなかった。

こうした環境で株価が暴落したソニー株をバリュー投資マネージャーたちが果敢に買い始めた。
ソニー株が1000円台まで暴落した・・・このPBRを中心にしたバリュー投資で成長株イメージのあったソニー株を買うのは珍しいことだったのでよく覚えている。
PBRが1倍を割れ超割安になった水準から大きく買い注文を入れた。

ところが、運用に関係のない一部の役員さんたちが異を唱え始めた。
日経新聞が2012年6月に「PBR1倍割れ、それでも買えない日本株」という特集を掲載し、山崎元氏などの評論家が「市場が企業に与えた経営者失格の烙印」とコメントしたりと、ソニーを否定するムードが世の中全体にあった。
本来、投資判断は運用部門の専管事項のはずだが、「ソニー株が急落したら、顧客にどう言い訳するのか」と言いたい放題の役員もいた。

では、その時、ファンドマネージャーは何を考え、ソニー株の大口保有を決断したのか?
まずは、B(ブックバリュー)の精査。
2011年3月期の一株純資産は2538円で、PBRは0.7倍だった。
2012年3月期に事業環境も悪かったが、会計上で米国事業の繰り延べ税金資産の引当を実施したため赤字額が2000億円増加した・・・その結果としての5200億円の最終赤字だった。
繰り延べ税金資産は過去の赤字で払い過ぎた税金分が将来戻ってくることを前提に資産計上するものだ。
この入り繰りのために赤字が増加したが、会計上の話で実際の営業キャッシュフローは変わらない。
これらをすべて修正した上で、PBRが割安だと判断したわけだ。

もう一つは金融部門、映画やゲームのコンテンツ部門が順調に安定した業績を上げていること。
エレクトロ二クス部門のリストラで部門収益が今後改善されてくる・・・それによりソニー全体の収益が回復してくるという読みだ。
実際、ソニーはテレビの分社化、VAIOの売却、大崎の本社ビルの売却などのリストラ策を次々と実行していた。

その後、ソニー株価は1000円台を脱し、アベノミクス相場に乗って上昇し、パフォーマンスに大きく貢献した。
PBRを使ったバリュー投資には、正確な資産評価、資産のクオリティの精査、そして、業績ターンアラウンドの検討という三つのプロセスが重要だということが分かる。
特にバリュー投資が難しいのは、PBRが低くなるほどの悪環境で、多くの人たちが弱気になっている中で投資判断することだ。
評論家や外野の人たちの言う事を無視する「胆力」が必要になるということ。


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「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
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PERやPBRなどバリュエーションを理解し割安/割高の実践的判断の基に理論的な株式投資を解説します。 割安とは将来のリータンを示すのか、単に成長性がないというだけなのか、事例をもとに解説します。 株式投資の基礎として大切なもので、是非一読をおすすめします。
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