前々回からPBRについて見てきた。
PBRは企業の資産価値をもとにした株価評価だが、バリュートラップ(万年割安株にはまる)をうまく避けないとリターンは上がらない。
そのためには正確な資産評価、資産のクオリティ、そして業績ターンアラウンドを判断する必要がある。
もう時効だと思うので、実際に運用会社で起こった「ソニー論争」を題材にPBRを使った運用の実例を考えてみたい。
それは2012年から2013年のことだった。
ソニーは2012年3月期に5200億円の大幅な赤字に陥った。
日本のエレクトロニクス業界は、主要なデジタル製品で新興国の追い上げを受けた競争激化、リーマンショック後の1ドル=80円台への超円高で大きな打撃を受け、いかにソニーといえども例外ではなかった。
こうした状況下、ワシのいた運用会社のバリューグループが果敢にソニー株を買い始めた。
このグループはPBRを基本に運用を行っていて、ソニー株のPBRが2012年には1倍を割れ、割安となったため大きく買い注文を入れた。
ところが、運用に関係のない一部の役員が異を唱えはじめた。
それは日経新聞が2012年6月に「PBR1倍割れ、それでも買えない日本株」という特集を載せ、多くの株式評論家(山崎元など)が「市場が企業に与えた経営者失格の烙印」とコメントしたり、世の中ムードがこれらの運用を知らない役員たちに影響したわけだ。
これで社内がもめた。
運用については運用部門の専管事項で投資判断は尊重されなければならないはずなのに・・・ソニーが急落したら顧客にどう言い訳するんだとか言いたい放題の言われ様だった。
ではその時、ファンドマネージャーは何を考え、ソニー株を大口保有したのか?
まず、PBRのB(ブックバリュー)の精査だ。
2011年3月期のソニーの一株あたりブックバリューは2538円で、株価は0.7倍と1倍割れ。
2012年3月期に米国事業の繰延べ税金資産の引当を実施し赤字額が2000億円増加し、5200億円の最終赤字を計上した。
繰延べ税金資産はちょっとややこしいのでここでは説明を省くが、要は過去の赤字に対して前払いした税金分が将来の利益で戻ってくることを前提として資産に計上するものだ。
とにかく将来の収益予想が引き下げられると繰延べ税金資産も減額されるのだが、これはあくまで会計上の問題で実際に資金が流出するわけではない。
最終赤字分をブックバリューから引き下げても、一株あたり1900円の水準は維持され、PBR1倍割れの割安は変わらない。
しかもソニーの資金は流出するわけではないのでその分を将来のリストラに使える。
もう一つは金融部門、映画やゲームなどのコンテンツ部門など他の部門が順調に安定した業績を上げていること。
今後行られるエレクトロニクス部門の縮小やリストラで部門収益は赤字解消されれば、エレクトロニクス以外の成長によりソニー全体の業績は回復に向かうという読みだ。
実際、ソニーはテレビの分社化やVAIOの売却、大崎の本社ビルの売却などリストラ策を次々行っていった。
つまり、PBR1倍割れ+資産のクオリティの精査と業績ターンアラウンドの検討というPBR投資の基本を忠実に実行したといえる。
その後、ソニーの株価は1000円台を脱し、アベノミクス円安の波に乗って上昇。PBRも2倍近くまで上がっていった。
結局、このソニー論争はファンドマネージャーの軍配が上がった。
その時、株価が戻ってしまうと皆知らんぷりをきめ込む・・・想定通りの反応だな。
PBRは企業の資産価値をもとにした株価評価だが、バリュートラップ(万年割安株にはまる)をうまく避けないとリターンは上がらない。
そのためには正確な資産評価、資産のクオリティ、そして業績ターンアラウンドを判断する必要がある。
もう時効だと思うので、実際に運用会社で起こった「ソニー論争」を題材にPBRを使った運用の実例を考えてみたい。
それは2012年から2013年のことだった。
ソニーは2012年3月期に5200億円の大幅な赤字に陥った。
日本のエレクトロニクス業界は、主要なデジタル製品で新興国の追い上げを受けた競争激化、リーマンショック後の1ドル=80円台への超円高で大きな打撃を受け、いかにソニーといえども例外ではなかった。
こうした状況下、ワシのいた運用会社のバリューグループが果敢にソニー株を買い始めた。
このグループはPBRを基本に運用を行っていて、ソニー株のPBRが2012年には1倍を割れ、割安となったため大きく買い注文を入れた。
ところが、運用に関係のない一部の役員が異を唱えはじめた。
それは日経新聞が2012年6月に「PBR1倍割れ、それでも買えない日本株」という特集を載せ、多くの株式評論家(山崎元など)が「市場が企業に与えた経営者失格の烙印」とコメントしたり、世の中ムードがこれらの運用を知らない役員たちに影響したわけだ。
これで社内がもめた。
運用については運用部門の専管事項で投資判断は尊重されなければならないはずなのに・・・ソニーが急落したら顧客にどう言い訳するんだとか言いたい放題の言われ様だった。
ではその時、ファンドマネージャーは何を考え、ソニー株を大口保有したのか?
まず、PBRのB(ブックバリュー)の精査だ。
2011年3月期のソニーの一株あたりブックバリューは2538円で、株価は0.7倍と1倍割れ。
2012年3月期に米国事業の繰延べ税金資産の引当を実施し赤字額が2000億円増加し、5200億円の最終赤字を計上した。
繰延べ税金資産はちょっとややこしいのでここでは説明を省くが、要は過去の赤字に対して前払いした税金分が将来の利益で戻ってくることを前提として資産に計上するものだ。
とにかく将来の収益予想が引き下げられると繰延べ税金資産も減額されるのだが、これはあくまで会計上の問題で実際に資金が流出するわけではない。
最終赤字分をブックバリューから引き下げても、一株あたり1900円の水準は維持され、PBR1倍割れの割安は変わらない。
しかもソニーの資金は流出するわけではないのでその分を将来のリストラに使える。
もう一つは金融部門、映画やゲームなどのコンテンツ部門など他の部門が順調に安定した業績を上げていること。
今後行られるエレクトロニクス部門の縮小やリストラで部門収益は赤字解消されれば、エレクトロニクス以外の成長によりソニー全体の業績は回復に向かうという読みだ。
実際、ソニーはテレビの分社化やVAIOの売却、大崎の本社ビルの売却などリストラ策を次々行っていった。
つまり、PBR1倍割れ+資産のクオリティの精査と業績ターンアラウンドの検討というPBR投資の基本を忠実に実行したといえる。
その後、ソニーの株価は1000円台を脱し、アベノミクス円安の波に乗って上昇。PBRも2倍近くまで上がっていった。
結局、このソニー論争はファンドマネージャーの軍配が上がった。
その時、株価が戻ってしまうと皆知らんぷりをきめ込む・・・想定通りの反応だな。