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東証の投資主体別売買動向から株式需給をどう見るかというコーナーの続きだ。
前回からは俗に言う外人投資家について話を始めた。
外人投資家は東証の売買高の半分以上を占める大口投資家だが、出来高のうち大きな部分を占めるのは外資系証券の自己売買と短期トレーダー(ヘッジファンドやアルゴリズムトレーダー)だろう。
外人投資家の中で中心的は存在である世界の年金やソブリン・ウェルス・ファンドは売買回転率が低く、日々の東証出来高の中で占める割合はそんなに高くないはずだ。

一方、外人投資家の日本株保有比率が4割あるが、その大きな要因は巨大年金やソブリン・ウェルス・ファンドの日本株保有だ。
つまり、日々の売買というフローの数字では外資系証券の自己売買や短期トレーダーの売買が大きな影響を持っているが、日本株の保有というストックの数字では年金やソブリン・ウェルス・ファンドが大きな影響を持っているわけだ。
そこで今回は株式需給をストック(保有)の面から話を進めたい。
まずは、海外の年金基金についてみていきたい。

世界の年金基金のうち最大なのは「世界の巨大投資家」のコーナーで話したとおり、日本のGPIFだ。
GPIFは日本全体のサラリーマンが加入する厚生年金であり、海外にはこうした国全体をひとまとめにした年金基金はない。
海外ではカウンティ(州、行政区)単位の年金があったり、教職員年金や公務員年金があったり、企業年金があったりするが・・・国民全体をカバーする年金はない。
それでも年金は加入者数によって規模が決まっていくので、人口の多い州や企業の年金サイズは巨大化する。
有名なのはカルフォルニアの教職員年金カルパースなどの州年金や、IBM年金など巨大企業で従業員数が多い企業年金だ。
欧州のフランスなどには公的年金があるが、アングロサクソン系の国には国民皆年金制度はない。
自己責任の原則が確立されており、国家が国民全員の面倒を見るという発想がないからだ。

さて、こうした海外年金の日本株投資について見てみよう。
まず海外年金の運用だが、規模の大きい年金ほど世界の株式市場にきちんと分散した運用の仕組みを持っている。
たとえば、MSCI世界指数。
これはMSCI(モルガンスタンレー・キャピタルインターナショナル)が算出している世界株価指数だが、世界の大手年金が指標として使っているものだ。
浮動株数(市場で売買可能な株式数)をベースに世界各国の時価総額を調整して、世界各国の時価ウェートを算出し、これをもとに世界株価指数を公表している。
そして海外年金はこの時価ウェートを元に各国市場へ分散投資する。
日本は世界指数の1割弱のウェートがあり、海外年金は基本的に株式ポートフォリオの10%弱を日本に振り向けている。

しかしここからがいろいろあるのじゃな。
海外年金のうちアメリカ年金は合計サイズはべらぼうに大きいが、アメリカ市場の時価ウェートが世界市場全体の半分あるため、この自国市場の運用が最も大事でここに関心が集中している。
アメリカ以外の半分のうち、欧州市場が半分、アジアその他で半分・・・つまり、アメリカ半分、欧州4分の1、アジア4分の1という割合だ。
よくあるケースが、重要なアメリカ市場は複数の運用手法で運用し、当然アクティブ運用も行っているが、それ以外の欧州・アジア市場は一まとめにしてパッシブ運用(指数連動運用)のみを行うというタイプだ。
この一まとめにしたアメリカ市場以外の部分をEAFE(イーファ)と呼んで、EAFEのパッシブやアクティブ運用を運用会社に委託する例が多い。
そうすると、日本には株式運用のうち1割弱がパッシブ運用で入ってくるだけの話になるし、EAFE全体の運用ができていない日本の運用会社は採用されにくい。
もちろん、一部の海外年金はアジアを重要市場と位置付け、国別にアクティブ運用を行っている。
しかし、ワシの経験では、こうしたアジア重視の年金はそう多くない。

というわけで、海外の年金基金は日本市場にあまり大きな影響力を持っていない。
日本市場の時価ウェートが変更されたり、指数対象銘柄が変更されたりする場合に大きく動き、市場でも目立つ存在になるが、それ以外は比較的おとなしい投資家だ。