2/19に「ドル安はゲームチェンジャー」という話を書いた。
その後も長期金利は上昇し、最近、3%の節目を越えてきた。
おそらくこの金利上昇はまだまだ続く。

金利は経済の体温計みたいなもので、低金利の国は経済の停滞と低いインフレ率、高金利の国は高い経済成長と高いインフレ率の国が多い。
今の先進国ではアメリカの10年金利3%が最も高く、ドイツやフランスなど欧州では1%以下と停滞感が残り、日本は依然としてほぼゼロでデフレ脱却というには金利が低すぎる。
これはアメリカ経済が先進国全体を引張っている状況を示しているわけだ。
もちろん世界経済のけん引役としては中国もあるが、規制ばかりの国で実態がつかみにくい。
景気が良く失業率も3%台なのにインフレ率が安定しているアメリカをどう見るかがもっとも重要だ。

金利上昇は普通は2つの経路で企業に影響する。
一つは事業利益率と借入金利の問題。
企業の投資に対する利益である事業利益率が借入金利を上回れば、企業は借入れを実行して投資する。
金利が上昇した分それだけ高い利益率の事業のみに投資することになる。
企業にとっては投資機会が少なくなるわけで、これが投資制約となる。
もちろん借入金利は10年国債金利とは違い企業の信用度による上乗せ金利が直接影響するが、長期金利が上昇すればそれだけ上乗せ金利も上がる。
S&P500の企業利益率はここ10年の平均で10%程度あり、3%の長期金利が利益率の低い企業をふるい落とすにしても米企業全体では問題となる水準ではない。
マクロ的にはアメリカの潜在成長率が3%台後半と想定されており、長期金利の3%台は潜在成長率に近い水準となる・・・一部のエコノミストは長期金利が成長を抑制すると懸念しているけど・・・

もう一つは企業債務残高の問題。
債務は無限に増えるわけではないし、永遠に借りられるわけでもない。
すでに米企業債務は事業向けだけではなく自社株買い向けにも増加していて、すでにGDPの45%という過去最高水準に達している。
さらに今後も企業買収ブームと自社株買いブームで企業債務は増加基調をたどることになる。
そして、数年後の借り換え時期に金利が上昇していることになるので、米企業の金利負担は相当大きくなると予想されている。
FRBは政策金利を年3回から4回のペースで引き上げられるし、このペースでも引き上げが今後も続くと借り換え時には1-2%程度の借入金利の上昇は十分にある。
その時は企業収益にはマイナス要因になるのは間違いないが、ちょっと先の話だ。

3%の長期金利はすぐに企業業績に影響するわけでもないし、おそらく単なる通過点にすぎないのだろう。
でも、さらなる長期金利の上昇により、国際的な資金フローは大きく変わってくると思う。
債券から株式への流れも変わる可能性があるし、新興国への影響も大きくなる。
次回は米金利の上昇と資金フローを考えてみたい。