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東証の投資主体別売買という統計が株式需給を考えるのにとても参考になるという話を前回したが、今回はその中でも読み方が難しい海外投資家を考えてみたい。
海外投資家は非居住者という意味で、日本人でも海外に居住し海外から株式注文を出せば海外投資家の範疇でカウントされることになる。
逆に外人投資家は国内に居住しても外人だが、国内居住者は海外投資家には含まれない。
でも面倒なので外人と一括りにして話をすすめたい。

外人投資家は上場株式全体の約4割を保有し、流通市場では一日の売買高のおよそ6割を占める大口トレーダーだ。
これだけの市場占有率を占める外人投資家だが、その中身は複雑で、一口に外人投資家といってもいろいろいて全体像をとらえるのはかなり難しい。
ワシの理解している範囲で話をしていくので、間違いもあるかもしれないがご容赦いただきたい。

まず、最初の外人投資家は外資系証券会社だ。
日本にいる外資系証券は、大体、グローバルな投資銀行の日本現地法人だ。
日本現地法人の自己勘定を持っている場合も考えられるが、通常、日本現法人の自己資本は限定的で自己資本規制により大きな自己勘定ブックを持つことはできない。
こうしたグローバルな投資銀行はグローバルブックを持っていて、自己勘定で保有する各国の株式を一元的に管理している例が多い。
グローバルブックを使うと、東証では非居住者の海外投資家に分類されることになる。
たとえば、外資系証券が東証でインデックス裁定取引を100億円実行したとする。
東証で現物株の指数連動バスケットを100億円買い、同時に指数先物を100億円売り建てる。
そうすると、東証の投資主体別売買では100億円の外人買いとして公表される。
株式取引は日本国外でもいろいろ行われているのは前の回で説明したが、その取引の帳尻合わせが東証を使って行われるという理解でいいと思う。
つまり、結論として外資系証券の自己勘定の売買が外人に分類されている場合が多いということだ。

次の外人投資家は海外にいるトレーディング会社だ。
これにはヘッジファンドも含まれるし、アルゴリズム・トレーディング会社も含まれる。
いずれにしろ、短期トレーディング中心の投資家たちだ。
10数年前に東証は完全に自動化され、板という売り買い注文が並んだ表も公開されるようになった。
それまでは日本の大手証券会社だけが独自にシステム売買を行い、板情報も会員証券にだけ配信されていたが、海外からの圧力と技術の進歩による市場開放が流れを変えた。
それを機に海外のヘッジファンドやトレーダー連中が大挙して東証に参入してきたんじゃ。
その結果、東証の一日の売買高の6割を外人投資家が占有するという現象を生んだわけだ。
こうしたヘッジファンドやアルゴトレーダーはプライムブローカレッジという専門的なブローーカーを使っている。
プライムブローカーはポジション管理から損益、融資/貸株、取引まで一社でカバーしている。
彼らプライムブローカーはたいてい大手グローバル・投資銀行の子会社で、ヘッジファンド向けにロング/ショートやオプション取引の専門ブローカーとしてファンドのニーズを一手に対応してきたのが始まりだ。

アルゴトレーダーはヘッジファンドと比べ、一般投資家にはわかりにくい。
もっと知りたいという人には、ワシは「アルゴリズムが世界を支配する」という本をすすめたい。
そこに元祖アルゴトレーダーと言われるピーターフィーの物語がのっているが、1980年代にはNY市場でアルゴ取引を実践し大儲けしている。
同じ頃、日本はバブルで何も考えなくても儲かる時代だったが、バブル時代の思考停止でアメリカに大きく遅れてしまったというわけだ。
ワシが大手証券で自己勘定を担当し始めた頃、その証券会社がアメリカのアルゴトレーダーのハルトレーディングと提携した。
隣のデスクで数人のアメリカ人が駐在してアルゴ取引を行っていた。
当時は何をしているのか全く分からなかったが、毎日毎日トレード益を積み上げており、その実力に目を見張ったことを覚えている。
一緒に飲みに行ったり、隣のデスクに部下を配置してトレードを観察し、ノウハウを学んだ。
ハルトレーディングはゴールドマンに買収されてしまい提携は解消されたが、ワシのチームでも同じような短期トレーディングシステムを実行した。
これが毎日毎日儲かり、他の戦略を合わせて大きな儲けを上げた・・・・昔話だな。