
日本の投信のコストは高いと言われている。
投信のコストがどうして高いのか、高いコストの投信をどう選ぶのかを議論してみたいと思い、このコーナー「投信のコストを考える」を書き始めた。
「投信ガラパゴス日本」の続きとしても個人投資家が知っておくべき事実だと思うんじゃな。
前回は販売手数料を取りあげたが、今回は運用会社の収入源である信託報酬を取りあげたい。
信託報酬って言葉は難しいが、簡単には運用フィー(手数料)のことだ。
大口の機関投資家のお金を預かって運用すると運用フィーがもらえるのと同じで投信を運用すれば信託報酬がもらえる。
しかし、運用フィーは契約で決められた日に口座から引かれるのに対し、投信の信託報酬は毎日の基準価額の計算に含まれている。
だから毎日少しづつ引かれるため、ほとんどの投資家は信託報酬を引かれているのに気がつかない。
さてその信託報酬だが、アクティブ株式投信では年1.5%から1.8%ぐらいかかっている。
ちなみに機関投資家向けの同じ株式運用商品は運用フィーが0.3から0.5%程度で個人向けの投信に比べ大幅に低く設定されている。
一応、大口10億円以上の機関投資家向けなどと限定して低い運用フィーで受託するという理屈でこの違いを正当化しているわけだ。
もう一つ重要な違いは、機関投資家向け商品の運用フィーはすべて運用会社の収入になるが、投信の信託報酬はずべて運用会社に入るわけではないことだ。
投信の信託報酬は運用会社と販売会社と資産管理会社で分けられ、大体、運用会社が5割以上にもらい、販売会社も4割ぐらいはもらえる。
資産管理会社は管理するだけなので0.1%程度と極少ない部分を信託報酬から受け取る。
なぜ、販売会社も信託報酬をもらえるのかは慣習というだけで理屈はないが、販売会社を頂点とする金融グループで投信ビジネスが行われてきたという構造問題が影響しているのだろうと思う。
信託報酬に販売会社への分け前があるので、信託報酬全体が必然的に高くなってしまうんじゃ。
ここ10年ぐらいの間、個人投資家のレベルも向上してきて、単なる日本株なら自分で運用できる投資家が増えている。
だから、投信会社は個人投資家が自分でできないような商品を組み入れた投信の開発をすすめてきた。
たとえば、海外のリートを組み込んだグローバル・リート投信、海外の運用会社の提供するエッジの効いた商品(優先株やMLPなど)を組入れた投信、新興国の株式を組み入れた投信、などなどだ。
でも問題はこうしたエキゾティックな商品は日本の運用会社にノウハウがなく、海外の運用会社に再委託することになることだ。
海外の運用会社は運用フィーに対して厳格なポリシーを持っているので安いフィーでは受託しない。
したがって、こうした投信の信託報酬は、たとえば、海外運用会社に0.7から1%、国内運用会社に0.3%、販売会社に0.5%、管理会社に0.1%というような分け前になる。
そうなると、合計の信託報酬は1.5%から2%という高水準になってしまう。
投信の信託報酬は日本の運用業界の特徴をよく表している。
その中心には販売会社があり、その意向にそって周りが動いていく。
だから、投資家の利益というより、販売会社の利益が重視されることになる。
それでホントにいいのか?それで投信は発展していくのか?という疑問が残ってしまう。