前回「運用会社、統合・合併の意味(1)」で指摘したが、メガ銀行により系列再編されてきている投信運用会社が合併により発展し、日本の投信が投資家の信頼を得て拡大していくかというとそうでもない。
アクティブ運用会社は統合巨大化しても規模のプラスは出にくいし、メガ銀行の系列による投信ビジネスには販売サイド中心の発想という問題があるからだ。
しかし、運用会社が統合により大きく発展した例は海外には多くある。

アクティブ運用には規模の経済が働きにくいが、パッシブ運用には規模の経済が大きく働く。
パッシブ運用会社はインデックスファンドやETFを企画・運用する会社で、基本的にコンピュータで株価指数との連動性を確保して株価指数のリターンと同じリターンを投資家に提供する。
ワシも裁定取引をやった経験があるが、このインデックス連動性の確保はけっこうたいへんなのじゃ。
株価指数に連動させるためには発行済み株式数と時価ウェートを毎日調整していかないと連動性を保てない。
発行済み株式数は自社株買いがあれば少なくなり、転換社債(オプション含む)の行使があれば増える。
また、増資や売り出しなどのイベントがあれば大きく増える。
こうして日々変化している発行株式数をきちんと管理し、個々銘柄の時価ウェートに反映させる必要がある。
こうした調整作業を、パッシブ運用会社は自動化し専門担当が行っている。
基本これらのコストは規模に関係なく、ファンドサイズが大きくなればなるほど単位あたりのコストが下がる。

もう一つはETF、エクスチェンジ・トレーデッド・ファンド、市場で取引できる上場ファンドだ。
運用会社が連動させる株式指数とそのための組入れ銘柄とウェートを公表しているので、市場で同じポートフォリオを買い運用会社に持っていけばETFに交換してくれるし、逆にETFをバラして個別銘柄のポートフォリオに戻してもらえる。
これにより裁定業者が個別銘柄とETFの裁定取引をするのでミスプライスが修正される。
だから、投資家は安心してETFを市場価格で売買できる仕組みになっている。
最近特に、様々な種類の株価指数が開発され、多様な株価指数に連動するいろんなタイプのETFが上場されてきたことで、ETFの人気に拍車がかかり運用の世界で大きな存在感を示すようになった。

合併・統合により規模の経済性を追求し、多様なETFを開発して急成長し、超巨大な運用会社に成長した会社の代表例がブラックロックだ。
ブラックロックは2006年にメリルリンチの運用部門を買収、2009年バークレーズの運用部門を買収し特にこの買収でⅰシェアーズというETFのトップブランドを獲得したことが大きな成長力となった。
その間、多くのアクティブファンドマネージャーが解雇され、よりコンピュータ・ドリブンの業務改革が行われインデックス装置会社に変貌し、世界最大のバンガード・グループに並ぶ巨大パッシブ運用会社に成長した。

また、アクティブ運用の世界でも合併により成長した会社もある。
PGI、プリンシパル・グローバル・インベスターズという会社で、ブティック型運用会社(小さいが専門性の高い運用会社)を次々と買収し傘下に収め急成長した。
ファンドマネージャーが嫌がる管理・コンプライアンス業務を親会社のPGIで一括して行い、ファンドマネージャーには運用に集中できる環境を提供することで、ブティック運用会社の良さを引き出した。
優先証券の専門運用会社であるスペクトラム、その他特徴のあるブティック運用会社の集合で、マルチブティック・マネージャーと彼らは呼んでいる。
こうした合併・統合のやり方もある。
アクティブ運用会社の規模追求という訳のわからないことをする必要はないと思うんじゃな。