前回からPBRを用いた実戦的バリュエーションの話じゃ。
PBRを使うにはそのクセをよく考えなければならない。
まず、PBRのB、自己資本は簿価なので時価と差がある場合があり、この差を修正する必要がある・・・・正確な資産評価をする。
そして、バランスシートの右側にある資産項目を検討して、劣化している資産や利益を生んでいない資産(遊休資産)をチェックする・・・・資産のクオリティを評価する。
さらに重要なのが今回検討するターンアラウンドの確度だ。

低PBRの銘柄に投資する時は、バリュートラップに注意する必要がある。
バリュートラップとは「割安のワナ」で、割安銘柄を買ったものの永遠に割安な状態が続き、一向にリターンが上がらない状態だ。
株式市場には万年割安株と呼ばれている銘柄があるが、これらはバリュートラップにハマり込んでいる可能性が高い。
主なバリュートラップには、たとえば、投資した関連会社が損失を出したため将来減損が必要になるとか、遊休資産が多く適正な利益を上げられていないとか、将来の低収益を株価が織り込んでいる場合などが考えられる。
こうした万年割安株=バリュートラップ銘柄を避けることで、低PBRの割安株投資のパフォーマンスが大きく改善する。
業績ターンアラウンドのシナリオを考えてその確率を想定することがバリュートラップを避ける良い方法じゃとワシは経験的に思っておる。

話はちょっと変わるが、PBRとROE(自己資本利益率)は明確な関係がある。
ROEとは利益を自己資本で割った数字で、自己資本=株主資本=株主の持ち分に対してどのぐらいの利益が上がったかを図る尺度だ。
ROEが高いほど株主資本を元により大きな利益を稼いでいることになり、株価は高く評価される。
ROEの低い銘柄は株主資本に対して稼ぎ少ない=株主への利益貢献が少ない企業で、株主から低評価を受けることになる。

簡単な恒等式を使うと・・・・

       PER(P/E)=PBR(P/B)÷ROE(E/B)
       (Pは株価。Eは利益、Bは自己資本)

この式でPER10倍を想定すると、PBR1倍の会社のROEは10%になり、PBR2倍の会社はROEは20%になる。
つまり、低PBR銘柄のROEは低くなり、高PBR銘柄のROEは高くなる。
重要なことは低PBRの銘柄でも今後ROEが高くなればPBRは上昇していくことだ
業績ターンアラウンドのシナリオを考えることはROEを引き上げる経営戦略そのものであり、それがうまくいった時にはROEが上がり、PBRも高くなっているはずだ。
業績ターンアラウンドのシナリオはいくつかの代表的なパターンがあり、次回、そのシナリオのパターンを考えてみたい。