ワシャ、中東地域に十数回出張し、アラビア半島やイラン、アゼルバイジャンと見てきたが、未だに何もわからん。
アラビアのロレンスを生んだ英国、セブンシスターズが油田で荒稼ぎした米国、さらにフランスなどの欧米人もおそらくわかっていなかったのだと思う。
歴史的にこの地域への欧米の介入はすべて失敗に終わったからだ。
最近でもキャンプデービットの合意、イラクの軍事介入、イランの核合意・・・歴代アメリカ大統領も大きな失敗を続けただけだった。

この地域の複雑さは三次元だ。
第一に宗教だが、同じイスラム教でも多くの派閥があり、その派閥争いが絶えない。
むしろ血縁関係の近い派閥ほど血を血であらう争いを繰り広げてきた。
今でもスンニ派とシーア派の争いが続くし、さらにアサド大統領のアラウィー派、12イマーム派などなど・・・多くの派閥が乱立し争っている状況は変わらない。
第二に民族だが、近代国家のネーションステートとは全く違い、英・仏が勝手に線引きして国家を作ったため民族が複雑に入り組んだ。
民族というより、部族中心の血縁社会という意味合いの方が強いかもしれない。
第三に歴史だが、「目には目を」の人たちで数百年前のうらみが脈々と若者に伝わっている生の歴史が強く影響している。
アラブ人がギャーギャーと大声で話している話題が数百年前の出来事だったりすることもよく経験する。
この宗教・民族(部族)・歴史の三次元構造をきちんと理解できる人をアラブ人以外ではほとんど見たことがない。

シリアはこの三次元の坩堝であり、国内情勢の複雑さに加えて米・露が後ろを突っつくという超複雑な国内情勢だ。
化学兵器を使ったケダモノと非難しミサイルをダマスカスに撃ち込んだが、おそらくトランプ大統領も失敗するだろう。
トランプは人権とか人道とか考える人ではないと思っていたが、急に人権派大統領となった。
このことにも違和感を覚えるが、国連の査察前に勝手に軍事行動を起こしたことも人権派としてはどうかと思う。
人権派の英・仏を巻き込んでリスク分散したものの、これで何かが変わるほどシリア情勢は簡単ではないし、だからといってグローバル市場に大きく影響するわけではないだろう。

残る問題は米・露の対立がどのぐらい拡大するかということだろう。
シリアでは「アラブの春」以降、独裁者アサドの反対勢力が台頭し内線が始まったが、この頃からずっとアサド=ロシア対民主勢力=アメリカという構図だった。
一時期ISが台頭したとき反ISで米・露が連携したこともあったが、何年もの間、基本的な構図は変わっていないし、当面の間、変わらないだろう。
今回のミサイル発射とこの刺々しい雰囲気がロシアから北朝鮮、中国などの独裁的非民主国への広がっていくとしたら、グローバル市場にとっても大きなリスクだ。
今回の米・露の戦いが次の北朝鮮をめぐる動きにどうつながるか注目しておきたい。