サウジアラビア通貨庁(SAMA)は、サウジの中央銀行であり、公務員年金機構であり、国家資金を運用するソブリン・ウェルス・ファンドじゃ。
その特徴を簡単に言えば・・・
厳しいイスラム法(利子をタブー視する)を順守する国の中央銀行で金利政策のない珍しい中央銀行であり・・・
人口3000万人の国だが、70%がサウジ人、同じく、70%が公務員ということで、計算すればサウジ人のほとんど全員が公務員という、人口の割に大きい年金規模を持つ年金機構であり・・・
以前資産が80兆円ぐらいあったが、原油の急落、イエメン空爆など軍事支出の増加、新サルマン国王即位に伴うバラマキなどで60兆円ぐらいまで急減しているソブリン・ウェルス・ファンド。

石油が枯渇する将来に向けて石油収入による国富の蓄積を着実に運用し、将来にわたって王族全体の繁栄を保証するのがSAMAの大きな役割じゃ。
そのため、運用はきわめて保守的で失敗は許されない。
だから厳格に各資産に分散投資され、ベンチマークにそったリスクを抑えたものになる。
弱点は、基本的に運用資産規模が原油価格に連動することじゃ。
数年前の原油価格の下落でSAMAは一方的に資産売却を続け、世界の市場で売り手として警戒されてきた存在だった。

しかし、ムハンマド・ビン・サルマン(MBS)氏がクラウン・プリンス(皇太子)となり、矢継ぎ早の経済改革と腐敗撲滅運動を展開し、大きな流れの変化が出てきている。
その中で運用に関係するところを考えてみよう。

まずは最大級の石油会社であるサウジ・アラムコの株式上場。
その上場時に発行済株式の5%を10兆円で売り出し、その資金をもとにパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)で運用し経済改革をするという。
しかし、2018年にも予定されているこの巨大石油会社の上場は、大きな波乱要因になるだろう。
その原油と天然ガスの埋蔵量から当然巨額な時価総額が想定されているわけじゃが、その上場は巨額資金をグローバル市場から吸い上げ、成長性の低い巨大石油会社にぶち込むことになる。
しかもサウジはその調達資金をサウジの経済改革に使うので、グローバル市場にどう還流されてくるか全く不明じゃ。
結局、巨額資金が吸い上げられた時のマイナス要因をその後の資金還流のプラス要因で相殺できるかは全くわからん。

もう一つはパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)がどうなっていくかじゃ。
昨年ワシャ、やはりリャドにあるPIFを訪問したことがある。
高層オフィスビルを建設途中だったが、その一室でPIFのアドバイザーと会った。
意外だったのは、てっきりサウジアラムコの売り出しが資金源と思ってたが、上場前でもすでに数兆円規模にまでファンドが拡大してきていることだった。
おそらく、すでにSAMAとか他の政府資金を徐々にPIFに移し始めていたのだろう。
そして、昨年、孫さんと会ったMBS氏はソフトバンクのビジョンファンドへの数兆円規模の出資を決めた。
すでにPIFによるリスクの高い運用は始まっているのじゃな。
と同時にSAMAの資金は徐々にPIFに移されるとも想定できる。
SAMA資金の減少はグローバル市場の不安要因になるじゃろ。

まだまだ、サウジの改革がどうグローバル市場に影響するかはわからん部分が大きい。