
日本の投信はかなり特殊に展開されてきた。
投信に関して多くのの疑問が生じている・・・なぜ、「貯蓄から投資」がすすまないのか? なぜ個人向け投信なのに通貨選択が付いていたりカバードコールが付いていたりと高リスク投信ばかりなのか? なぜ販売手数料が3%と高いのか? なぜ同じような投信を各社から出してくるのか? なぜマゼランファンドのような旗艦ファンドが育たないのか?・・・・
今回は「投信ガラパゴス日本」として書いたブログをリメークして、この日本の投信のガラパゴス化を考えてみたい。
まずは、投資家から見た話だ。
日本の個人金融資産1800兆円のうち、投信100兆円とわずか5%強、株式10%弱で合計しても金融資産の15%にすぎない。・・・一方、アメリカ人の投信・株式/個人金融資産は50%弱、ヨーロッパ人のそれは25%と、比べて圧倒的に低い。
この数字から、日本人はリスクを取らないとか、運用を知らないとか、だから、投資教育が必要だとか、投信を買う制度を作れとか・・・・証券会社も銀行も政府も「貯蓄から投資」と大キャンペーン、金融庁ガイドラインを始めNISA,iDECOなど新制度を作った。
しかし、個人は本当にリスクを取っていないだろうか?
それを考える視点はいろいろあるが、まず一つは日本の資産家は土地持ちが多いこと。
しかも地価はバブルのピークから大きく下落、20年経ってやっと横ばいから底入れの動きで、多くの資産家がバブル崩壊で大きな打撃を受けた。
これは資産全体では土地に大きな割合を配分し、大きなリスクを取ってきたという証明でもある。
もう一つは金融資産の90%が現預金など元本保証もので、残りの10%で高リスク商品を買い、全体のリスクバランスを取ってきたことだ。
つまり、各種オプションが付いた、新興国株/債券/通貨や劣後債などを多く組入れた、流動性のないエキゾティックな商品を組入れた投信など、とても個人投資家向けとはいえない高リスク投信がどんどん売れたのは、90%元本保証があるからこそ過度な高リスク投信を買えた。
土地を組入れることで資産全体のリスクは大きく高まるし、金融資産のわずか10%でも高リスク投信を組入れれば金融資産ポートのリスクが高まるため、90%を預貯金など元本保証商品に入れてバランスを取ったというわけだ。
こうした超安全資産と高リスク資産の両極端な組合せは、その形になぞらえてバーベル型と呼ばれ・・・日本の個人投資家の大きな特徴であり、この事情が投信のガラパゴス化に大きく影響していると考えられる。
しかし、こうしたバーベル型ポジションは期待するほど儲からないことが多い。
100万円を運用すると想定して90万円を元本保証の預金(金利はほぼゼロ)に入れ、10万円で宝くじを買うバーベル型投資をするとしよう。
宝くじは数百万分の一の確率で百万倍になるものなので、ほとんどの場合、100万円が91万円(投資金額の10%は確実にもどる)になる。
これを毎年繰り返したら、ほとんどの場合、元本はマイナス9%で減り続けるだけで・・・高リスク投信は宝くじよりマシかもしれないが、こうした極端なリスクの取り方は合理的でない。
高リスク、ミドルリスク、低リスク商品にきちんと分散投資することで、それぞれのリスクの応じたリターンが得ることができ、資産全体のリターンも安定する。
親から引き継いだ土地などもあると思うが、個人投資家も資産全体のポートフォリオ、そのリスクとリターンを考えて金融商品を選ぶ時代がくると思われる。