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金融リテラシーという言葉を聞くと、証券投資理論と現実の仕事の間で悩んだ若い頃を思い出す。
「金融リテラシーを学ぶ」というのは、多くの人にとって「株式投資で大儲けしようというのは無理だ」ということを学ぶことに等しい。
一方、証券会社は「投資は儲かる」と言わんばかりだ。

30歳の時英国へ転勤し、マーチャントバンカー系運用会社のファンドマネージャーたちといろいろ話をし、投資を議論した。

当時、会社がノーベル経済学賞を取った有名なハリー・マルコビッツ氏と新しい投信を作った。
その関係でマルコビッツ氏が英国に出張してきて、顧客周りをしてくれることになった。
ある日、伝統あるマーチャントバンカー・ロバートフレミングに氏を連れていった。

今でも忘れられないのが、英国有数のファンドマネージャーとマルコビッツ氏のミーティングだ。
マルコビッツ氏が白板にあの有名な「有効フロンティア」を描いてプレゼンテーションをした。
ファンドマネージャーは「オー!!!」絶句した感じ、学生時代に学んだ有効フロンティアをここで見るとは・・・たいへん感激していた。

ミーティング後に電話でファンドマネージャーと「どうだった?」と話した。
有効フロンティアは理論として面白い、でも現実は違うよね・・・ということになった。
実際に有効フロンティアから分析して投資するファンドは失敗した。

進歩したコンピュータでは多くの銘柄のリスクとリターンを簡単に計算できる、その数字から有効フロンティアも簡単に計算できる、その有効フロンティアから最適ポートフォリオを作れる。
でも期待したようなパフォーマンスが出なかった。


結局一番の経験になったのは、「理論は学んで忘れろ」ということだった。
現実の世界では市場は歪んでいて、個別銘柄の数字も歪んでいて、理論上の超過収益を出ない。
でもその市場を熟知しているファンドマネージャーは市場の歪みからリターンを上げることができる。

「市場が歪んでいるから投資で超過収益を上げられる」
が結論だった。



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