
トランプ関税が大きく増加してきている。
下の表は米財務省の公表している純関税収入(月次)だが、トランプ関税が始まった4月以降、着実に増加してきている。
4月163億ドルから8月295億ドル(約4兆3000億円)まで増加、5ヶ月間で1238億ドル(約18兆3000億円)と巨額になっている。
米純関税収入 コアCPI 小売売上高
4月 163億ドル +2.8% +5.1%
5月 228億ドル +2.8% +3.2%
6月 272億ドル +2.9% +3.9%
7月 280億ドル +3.1% +3.9%
8月 295億ドル +3.1% +5.0%
合計 1238億ドル
(消費者物価、小売り売上高は前月同月比%)
米関税収入は生産者・輸入業者・消費者の誰かが負担しているわけで、この分、海外の生産者の利益が減り、輸入業者が一部を小売価格に転嫁し、消費者が高い小売価格で商品を買うことになる。
関税自体は通関時に輸入業者が支払うが、実際の負担は三者で分担している。
それにしても毎月4兆円以上の負担になり、欧州、日本を含むアジア企業(生産者、サプライヤー)の大きな負担になっていると思われる。
現在のところ、輸出業者=生産者が輸出価格を引き下げて負担していると推測される。
米国内の小売価格がそれほど上昇していないからだ。
自動車大手などの大企業は米国内に自社の販売ネットワークを持っているので、生産者であると同時に輸入業者でもある。
誰が負担するかの問題ではなく、連結決算では関税分がそのまま負担増につながる。
今後のポイントは生産者や輸入業者が負担を耐えきれず、いつ、どの程度小売価格に転嫁するのかということだろう。
米国の消費環境は、このところの株高の資産効果が大きく個人消費が拡大している。
8月の小売売上高でも前年比5%の増加と順調だった。
コアCPIはトランプ関税が始まった4月+2.8%から8月+3.1%まで若干の上昇にとどまっている。
小売価格への転嫁が一段と進むと、コアCPIが一段と上昇してくるだろう。
小売売上高は名目なので、コアCPIが上昇してくれば小売売上高も高くなる。
関税の小売価格への転嫁が進んだ時コアCPIが上昇するが、それ以上に小売売上高が増えるかどうかを見ている。
コアCPI以上に売上が増えれば景気は順調といえるし、売上の伸びがコアCPIを下回れば景気の悪化を気にするべきだろう。
なので、この関税、物価、企業収益の関係に筆者は注目している。
小売価格の上昇と売上げ高の増加が同時進行すれば、日本企業にとってはプラス要因。
利益率の向上とともに売上の増加も期待できるからだ。
