
関税は輸入業者が通関時に輸入国に支払う税金だ。
生産者が他国で生産し、それを米国に輸出、通関時に輸入業者が税金を納め、米国内で小売り業者が販売する。
というわけで関税は生産業者、輸入業者、販売業者に分けて負担するのだが、トレードオフの関係であり、その負担配分は平等ではない。
日本の生産者が米国内に販売拠点を持っている場合、日本の親会社で生産し米国子会社が関税を支払って米国内の流通網に乗せることになる。
このケースでは、関税分を米輸入子会社が負担するが、連結決算なので親会社の企業収益が関税分だけ減少する。
そうすれば米販売子会社が価格引き上げすることもないので、米国内での競争力は維持される。
この場合では米関税の大きな部分が親会社の企業収益のマイナスとして現れる。
生産者が輸出価格を据え置き米輸入業者が関税を払い、その分を米販売価格に上乗せするケースも考えられる。
この場合、生産者=日本企業は当初の収益を確保できる、米国輸入業者が関税を払い、小売り業者が関税分の価格転嫁で一部を負担する。
関税負担は輸入業者も小売業者も負担していることになる。
ただ米国内の販売価格が上がるので長期的に売上げ減少の要因になる。
様々なケースが想定されるが、現実問題として米国の関税収入は大きく増加している。
トランプ関税がスタートした4月の関税収入は163億ドル、5月は228億ドル、6月は272億ドルと急増した。
このトランプ関税、3か月合計で663億ドル(9兆3000億円)は米政府の収入になると同時に、生産者が競争力低下を恐れて関税を負担すれば企業収益の減少、米輸入販売業者が価格転嫁すれば米消費者物価を上昇させる、その結果小売り売上高が減少する。
つまり、トランプ関税と米消費者物価と米小売り売上高の関係を見ることで誰が関税を負担したかが見えてくるだろう。
関税額 消費者物価 小売売上高
4月 163億ドル +0.2% +0.1%
5月 228億ドル +0.1% -0.9%
6月 272億ドル +0.3% +0.6%
消費者物価、小売り売上高は前月比
この3カ月の平均関税率は12%、8月以降相互関税が適用されると一段と上がるのは間違いない。
4月~5月はトランプの言動も不安定で先行きが不透明だった事、トランプ関税に備えて駆け込みで輸入したり在庫をタップリ抱えたりという企業も多く、関税の影響は限られていたと思われる。
しかし、6月物価が前月比+0.3%上昇(年3.6%)、小売売上高が前月比+0.6%上昇、関税分の一部が消費者物価に転嫁され+0.3%、その分も含めて小売売上高が上昇したとも見られる。
関税の転嫁が物価を0.3%押し上げ売上高に多少影響したといえるが、引き続き生産者が関税分の大きな部分を負担していると思う。
日本企業の多くは米国内に自社販売ネットワークを持っている。
こうした大企業は米子会社が関税を負担し、連結決算の収益減少として現れると思われる。
単純に言えば、米国輸出の10%が日本が占めているとすると、米関税収入9兆3000億円の10%程度、1兆円弱の収益減少が4-6月期決算に現れるかもしれない。
4-6月期ではまだ平均関税率12%なのでまだまだ限定的だが、8月以降25%の関税率が適用されるともっとマイナス影響が大きくなる。
年間ではもっと大きな負担が親会社の連結決算に出てくると思われる。
さらにトランプが米国内への価格転嫁を強く非難するとしたら、米国内物価への影響が限られる反面、生産会社の連結決算にはより大きな影響になる。
関税分は誰かが負わなければならない。
明らかに「近隣窮乏策」であり、トランプは近隣国の犠牲に上に自国の税収を伸ばそうとしているということだ。
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