NYダウ益回りと長期金利
NYダウ益回り202505

















トランプの関税騒ぎで多くの投資家は「米中関税協議」「トランプ中東訪問の多額のお土産」「AI半導体の大量販売」で株を買い戻している。
でも予想EPSは横ばい状態で、株価の戻りとともに再び「割高圏」に近づいている。

おそらく最大の問題は「トランプに罵倒されたパウエル氏が意固地になり、金利を必要以上に高止まりさせること」、もう一つは「米財政悪化による長期金利の高止まり」・・・どちらにしても長期金利と株式益回りの関係を整理してみる必要がある。


まずは、米優良企業30社のNYダウで確認してみよう(上のグラフ)。

今年1月にNYダウの益回りが4.5%で長期金利が4.8%と株式益回りと長期金利が逆転したことで株式の割高感が顕著になった。
基本的に「株式益回り>長期金利」が正常な状態、リスクの高い株式には高い利回りが期待されるからだ。

その後株価下落とともに正常化したが、再び両者が接近し始めている。
現在、NYダウ益回りは4.98%と再び5%水準を割れた、一方、長期金利は4.5%前後なので少し余裕があるにしても割高圏に入り始めているといえる。


米主要企業500社から構成されるS&P500益回りを見てみよう。

S&P500益回りと長期金利
SP500益回り202505
















S&P500でもNYダウと同様に、今年1月に「益回りと長期金利の逆転」が起こった。
トランプ下落でバリュエーションが調整したが、この戻り相場で再び「益回りと長期金利の逆転」が起こりそうな水準になっている。

上のグラフの通り、S&P500の益回りが急低下し、現在4.52%と長期金利とほぼ同レベル。
これ以上株価が上昇すると、再び「益回りと長期金利の逆転」が起こる、と言う意味で危険水域に入るといえる。


ハイテク成長株のNASDAQ益回りも見てみよう。

NASDAQ益回りと長期金利
NASDAQ益回り202505
















NASDAQは成長性の高いテック企業が中心なので、1年先予想EPSというよりも3年先の予想EPSを織り込んでバリュエーションが決まる傾向がある。
その分バリュエーションは割高で、NASDAQ100の益回りは現在3.66%と長期金利よりも低い。

それでも過去の関係を見ると、NASDAQ益回りが長期金利を1%以上下回るとやりすぎ場面となる。
現在の長期金利水準4.5%を基準にすると、NASDAQ益回りは3.5%程度が限界となるのだろう。


結論として言えることは、
S&P500、これ以上の株価上昇は危険水域に入る、
米長期金利が4.5%水準を越えてくると、金利の面から株式の割高感が強まる、
NASDAQは予想EPSが低下し成長性が落ちると割高が目立ってくる、
という三点に注目している。


下の一覧表はいつも使っている米株式指数の予想EPS、3か月の伸び率を比べたものだ。

各株価指数の予想EPS、3か月前比増減率
NYダウ Q/Q S&P500 Q/Q NASDAQ Q/Q R2000 Q/Q
2025年5月 2116.67 -1.9% 269.51 0.3% 792.38 1.7% 83.63 -9.2%
2025年4月 2029.39 3.4% 253.96 -8.5% 743.17 -8.1% 82.85 -4.3%
2025年3月 2181.54 12.0% 272.82 1.0% 802.6 4.9% 89.38 13.7%
2025年2月 2156.93 9.3% 268.66 11.4% 778.95 15.2% 92.11 35.2%
2025年1月 1961.99 -2.8% 277.43 13.5% 808.73 20.3% 86.55 23.1%
2024年12月 1948.6 -3.9% 270.2 12.8% 764.85 19.4% 78.6 13.2%
2024年11月 1973.35 -1.9% 241.21 0.0% 676.11 2.4% 68.11 -5.9%
2024年10月 2017.76 -1.9% 244.52 -0.5% 672.4 -2.7% 70.31 -10.7%
2024年9月 2028.43 -1.5% 239.63 -2.7% 640.74 -5.4% 69.41 -15.1%

今後の最大の焦点は、米国株EPSが伸びるかどうかだ。
5月の1年先予想EPSは3カ月前に比べほぼ横ばいで、良くも悪くもないと言えるが、トランプ関税による景気懸念はまだまだ織り込んでいない。
予想EPSが伸びないようならば、「バリュエーション調整」の可能性が高まる。



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