ヘッジ外債













このグラフは2023年に公表されたニッセイアセットの資料から使った。
ヘッジ外債のパフォーマンスが22年央から急速に悪化したのが分かる。
ニッセイアセットはこの時点でヘッジ外債に警戒感を出していた。

ヘッジ外債は日本のゼロ金利が続いた2010年代、米国債などの高い利回りを為替ヘッジすることで安定な円リターンを作り出す「打ちでの小槌」のように考えられていた。
筆者は運用会社のCIOをしていた時期で、農林中金だけでなく国内の年金基金にも円債代替(ゼロ金利の円債に代わる債券プロダクト)として人気があったのを記憶している。

年金基金からすれば、円債代替=円債の一部だった。
年金は4資産ポートフォリオで運用され各資産の中で実際の投資が行われるが、ヘッジ外債は外債なのに円資産に分類されていた。
そのため、他の円債と比較してヘッジ外債は高いリターンを出るので注目されたわけだ。


ヘッジ外債比較
















上のグラフは米国の利上げ局面での各種の債券プロダクトのリターンを比較したものだ。
FRBの引き締め局面であり、当然、債券金利が上昇し、債券価格が下落する。
しかし、この期間(21年~23年)の米国債リターンは円安が大きく効き、上下あがりながら5%程度のプラスだった。

しかし、ヘッジ米国債(ヘッジコストを含めた)は15%程度低下し、円建て米国債(単に円ベースに直した)も10%以上低下した。
このヘッジ米国債のパフォーマンスは、①日米金利差が急拡大しヘッジコストが大きく上昇したこと、②さらに米引き締めで米債券価格も下落したこと、これらの複合要因で悪化した。

本来ならば安定したリターンを約束するはずの「ヘッジ」外債投資が、日米金利差という大きな変動要因を見逃したことで大きな損失を被った。

農林中金が1兆5000億円の純損失を計上した、今年度の金融業界が巨額利益を上げているのに対照的な最悪決算だ。
報道では有価証券投資の失敗としか説明されていない。
でも外債に投資しただけではこんな巨額損失では考えにくい。
筆者はこの「ヘッジ」外債に大きく投資したこと、さらに日米金利差を読めなかったことが原因ではないかと考えている。

オルカンやSP500に投資している個人投資家にもいろいろ示唆に富む話なので、次回、もう少し考えてみたい。




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