
民主主義は選挙を通じて「民意」を政治に反映させる仕組みだが、どうも「民意」が公共の利益につながっているのか微妙な感じがする。
国民一人一人が見ているものは個人の趣味や嗜好、個人的な利益だ。
人間は自分の個人的利益を最大化するように動く、社会学ではそれを「特殊意志」と呼んだ。
その「特殊意志」を国民全体で集めたものが「全体意思」だが、これは個人的な意志を寄せ集めであり、社会的な利益を最大化するわけではない。
そこで社会的利益を最大化するものとして「一般意志」が想定された。
選挙で買った候補や政党がこの「一般意志」に従えば、社会全体の幸福感が最大になるというわけだ。
インターネットの時代に入り、誰でも自分の考えをSNSで発信できる。
ネット言論を通じて国民全体の利益を考えることになれば「一般意志2.0」ができる。
そうなれば、それこそ「最大多数の最大幸福」という古典的な理論が現代によみがえるが、そうはいかないのが現実だ。
インタネットやSNSは「一般意志」どころか「デマゴーグ民主主義」を生み出してしまうからだ。
一部のネット影響力の高い人たちが「特殊意志」それもかなり極端な「特殊意志」を拡散し、特殊な利益を追求する。
それが表面化したのが兵庫県知事選、斎藤前知事のパワハラは大手メディアが作った「捏造」だと有権者を信じ込ませた。
その大手メディアを「オールドメディア」と呼び、ネット言論がそのウソを暴いて斎藤前知事を支援するという構図だった。
斎藤氏のパワハラ、公益通報、公選法疑義は、「オールドメディア対ネット言論」の対立に書き換えられ、これらが事実かどうか二の次になってしまった。
NHKナントカ党の立花氏は自殺した県職員は不倫問題が原因で自殺しただけでパワハラとは関係ないと主張して、自殺した職員のプライバシーをネットに晒した。
一部の報道では統一教会も大手メディアのインチキ説を主張して斎藤氏に接近したという。
オールドメディアが捏造したという前提に立てば、ネット言論は正義の主張となるが、相当に怪しい。
関西エリアでは神戸県庁のパワハラ問題をからオールドメディアの捏造説にすり替えが進んだ。
問題なのがこうしたネット言論の責任を誰も取らないことだ。
発信者が不特定なネット言論では誰が発言したか、その発言が正しかったか、などは全く問われない。
ネット上の「幽霊」のような人物がネット言論を牛耳り、無責任な結論を拡散する。
ルソーなどの社会学者の期待したような「一般意志2.0」が作られるような状況には全くない。
日本はこのままネット言論の暴走を抑えられず、事実や科学的な知見に基づいた主張が通らない国になっていくのだろうか?
それとも、良心的なネット・エンジニアが情報の真贋を判断するシステムを作るのだろうか?
日本人の良心が問われているような気がする。
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