
FRBの主要な政策目標はインフレと雇用だ。
パウエル氏は「インフレは一時的」として高まっている中間材中心の価格上昇を無視している。
もう一方の雇用情勢については「まだまだ、戻っていない」として慎重な姿勢だ。
つまり、現段階では「テーパリング」の必要はないとパウエル氏は言っている。
インフレと雇用の数字を確認してみよう。
7月 6月 5月 4月
消費者物価 +0.5 +0.9 +0.6 +0.8%
(前年比) +5.4 +5.4 +5.0 +4.2%
失業率 5.4 5.9 5.8 6.1%
雇用者増 +943 +850 +559 +226千人
消費者物価は前月比%(前年比%)、雇用者増は非農業雇用者(千人単位)
消費者物価の前年比はそろそろピークアウト(前年の数字が上がってくるため)するが、前月比で04%~0.5%の上昇が続くと、FRBのインフレ目標2%を十分に超えるインフレ率となる。
半導体だけではなく様々な中間財が不足し、トヨタを始め多くの製造業が減産を余儀なくされている。
新型コロナによるサプライチェーンの混乱とともに、部品生産にも支障が出ている。
米国や欧州の人出不足が顕在化し、雇用者数も確実な増加基調にある。
それでもワクチンが進む欧米企業を中心に人出不足感が強く、企業は雇用を拡大している。
おそらく、米失業率も数か月で5%を下回る状況に入ってくるだろう。
という意味で、FRBのデュアル・マンデートに関する経済指標は今後数か月は強い数字が続く可能性がある。
FRBはその職務に忠実ならば、着実にテーパリングの議論を進めて行くことになる。
一方で、問題なのが現在1.2%台まで低下してきた10年債利回り・・・長期金利の低下だ。
このところ、小売りや個人消費がやや低調になり、米経済の将来に暗雲をかけている。
長期金利の低下がこうした将来の景気鈍化を見ているとすると、FRBのデュアル・マンデート(インフレと失業)と実態経済(個人消費中心の鈍化)という不都合が生じる。
FRBの見ているインフレと雇用はまだまだ強い・・・しかし、個人消費などの景気には鈍化が見られる。
ここの食い違いだ。
FRBはインフレ指標の高止まり+雇用の戻りで「いずれテーパリングに入る」と市場は見ている。
一方、長期債が買われ長期金利が低下すると「将来、景気鈍化する」と市場は思う。
となると、「景気鈍化局面でのテーパリング」を市場は織り込もうとしてしまう。
その場合市場が混乱する可能性も残る。
長期金利の低下局面でのテーパリングは危険だ。
今春の長期金利上昇場面でバーナンキ氏のようにテーパリングを織り込ませるべきだった。
本来金融を徐々に緩めるべき局面で引き締め的なテーパリングをするべきではない。
ただ、今ここで金融政策を正常化しておかないと、次の景気鈍化局面で打つ手がなくなる。
そして日銀のように長期にわたる「永久緩和」状態に追い込まれる。
そうなれば、本来の金融政策の効果はほとんどなくなる。
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