
英国のタンカーがホルムズ海峡でイランの革命防衛隊に拿捕される事件が起こった。
革命防衛隊はイランの支配階級である宗教指導者に直属した別組織だが、その頂点にいるハメネイ師を守るのが役目だ・・・ちょっと前、日本のタンカーに爆雷が仕掛けられ炎上したが、これも革命防衛隊の仕業と言われている。
この宗教指導者に直結する革命防衛隊の行動が、各国政府の思惑から離れて、ホルムズ海峡の将来を決めてしまうことに大きな不安を感じる。
トランプは「ホルムズ海峡を通過するタンカーへの依存度は、中国で65%、日本25%だ」として、これらのリッチな国を米国民の税金で守るのはおかしい、「自国のタンカーは自国で守れ」と言う。
しかし、そもそも、トランプの米国が始めた対イラン強硬策であり、それでホルムズ海峡が不安定になったからと言って、「自国のタンカーは自国で守れ」もないだろうと思う。
米国の発案による「有志連合」も欧州各国からは不人気で、これをディールにするために「自国のタンカーは自国で守れ」を取り上げたのかもしれない。
つまり、「有志連合」への参加を募るために「自国のタンカー・・・」発言をして、それならば「有志連合」に参加せよ・・・というわけだ。
でも、このディールに乗る国は限られているだろう。
NATO諸国はまだ「イラン核合意」から離脱していないので、おそらく、簡単には「有志連合」への参加ができない・・・その前に「イラン核合意」から離脱するのが順序だからだ。
ボリス・ジョンソンの英国は可能性がまだ低いが、トランプに嫌われたメイ前首相で悪化した米国関係を一気に修正するために参加してくるかもしれない・・・自国のタンカーが拿捕されたし、名分は立つ。
しかし、中国は一帯一路の要衝であるペルシャ(イラン)を取り込みたいため「有志連合」には参加しないし、中国籍タンカーは革命防衛隊には攻撃されないと信じている。
日本はなし崩し的に圧力を掛けられて最後は参加となるかもしれない・・・でもこの訳わからん「有志連合」より、自衛隊を派遣して日本のタンカーを自ら守る方が余程筋がいいかもしれない。
この地域の複雑さが急激に増しているからだ。
中東の不穏な空気は、宗教絶対制か、世俗的王制か・・・という支配層の駆け引きによって作られている。
イランはパーレビ国王を追放した宗教革命でイスラム絶対制を作った・・・と同時に、同様の宗教絶対制を指向するイスラム原理主義やヒズボラなどの過激派などと通じ、宗教革命をこの地域に拡大しようとしている。
もちろん、イスラム教のシーア派とスンニ派の戦いというイスラム教の派閥面が大きかったが、今や、宗教絶対制か世俗王制かという戦いの構図が強くなってきている。
だから、サウジアラビアなど世俗的王制の国は、このイスラム絶対制の拡大を何より恐れている。
それだけ、サウジの王様にとっては自分の一族の存続がかかり、自らの命をかけた戦いになりつつあり真剣さが違ってきていると見える。
米国はそこを理解し、ユダヤ教のイスラエルと、イスラム教スンニ派のサウジを共同戦線ラインに組み込み、イランと対峙する。
宗教的にはユダヤとスンニが組むこと自体が考えられないが、宗教絶対制と世俗王制との戦いという視点だったら、米ーイスラエルーサウジのラインが一定の範囲で理解できる。
そう考えると、今回の対立は・・・残念ながら・・・相当、根が深い。
サウジの王様かイランの宗教指導者が死んで体制が変わるまで続く公算が大きい。
安倍さんがハメネイ師を会ったというが、宗教音痴の日本人がこの地域でできることは全くない。
有志連合にしてもイラン包囲網にしても日本は傍観すべきだろうし、自衛隊を派遣して自国のタンカーを守る方がストレートにシンプルに日本のポジションを主張できるだけに余程いいかもしれない。
その方が政治色を薄められる・・・「自由な航行」の原則の下に自国のタンカーを自国で守るだけだからだ。

興味のある方は以下のURLからアクセスしてください。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07TFM4GNL/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_2UadDbTW8SSZM


にほんブログ村