
先週は米10年債の利回りが急低下し、3か月金利と逆転した「逆イールド」で日本株も急落して始まった。
その中で株式コメンテーターやストラテジストがいろんなコメントをした。
そのコメントはだいたい三つに分類できそうだ。
一つはテクニカルなコメントで「10年金利と3か月金利だけでは逆イールドとはいえない」という意見だ。
1~5年金利も同様に低下しているので、イールドカーブ全体で逆イールドになっていないのは確かだけど、だからといって「逆イールドではない」と言い張ることにどれだけ意味があるのかは分からない。
二つ目は論理の逆転で「逆イールドだから数か月後にリセッションになるという理屈はない」という意見だ。
これは勝手に因果関係を逆にした解説で、景気の減速を債券市場が織り込みに行くから長期金利が低下し「逆イールド」になったわけで、逆イールドになったから景気後退になるわけではない。
ただし、過去の景気後退局面を見ると、景気循環の後半の途中で「逆イールド」が起こっているケースが見られるということだ。
長期金利の低下そのものが期待収益率の低下を見て起こっているわけで、そこに基本的な懸念がある。
三つ目は過去事例との比較で「ITバブル期、リーマン危機時にもこのイールドの逆転が見られたが、今回とは経済環境が違う」という意見だ。
確かに、ITバブルのような「ニューエコノミーを買い、オールドエコノミーを売る」というような激しい市場でないし、リーマン危機前のようなサブプライム融資が急増しているわけでもない。
過去、それぞれの事情で景気後退が起こったのは事実で、だからといって、過去と違うから景気後退は起きないといえる根拠はない。
日本のコメンテーターは我田引水型というか、自分の考え方にそって現象を理解しようとするから、どうも偏った見方ばかりになってしまう。
きちんと理解しているエコノミストも多くいるが、人を違う独自の意見を言おうとするあまり、この我田引水型のワナに落ち込んでしまう。
「逆イールド」は、そもそもの景気減速と企業業績の悪化によって、投資家の期待収益率の低下が原因で、そのために株式から債券に資金シフトが起こり、その結果、長期金利が低下、短期金利を下回ってしまうという流れで起こっている。
その基本は期待収益率の低下であり、今後の景気後退を意味するわけではない。
もし、ここから株式市場が上昇していくとしたら、投資家の期待収益率が上昇するという確信が必要だろう。
そこの確信がまだ見えていないということかもしれない。

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