
まず、ソフトバンクのファンダメンタルを今4-6月期で確認しておこう。
営業利益は7150億円のうち、通信のソフトバンク事業が2218億円、ビジョンファンドのSVF事業が2399億円、スプリント事業が981億円、ヤフー事業388億円という状況だ。
通信のソフトバンクがキャッシュフローを稼ぐキャッシュカウ(安定的なキャッシュを生み出す牛)で、ビジョンファンドのSVFはソフトバンクの将来成長のカギを握るというファンダメンタル構造を持っている。
しかし、通信のソフトバンク事業は孫さんは伸びていると主張しているが、国内のスマホ市場も成熟化し、今後、政府主導で通信料の低下が行われると減益になる可能性もあるだろう。
ヤフー事業は今回の子会社上場に紛れ込ませる形で通信ソフトバンク事業に株式を移し、事業再編を行っている。
スプリント事業は黒字化を達成しているが、売上の伸びがマイナスで今後の利益成長期待はない。
総じてこれらの通信・国内ネット事業部門はそれほどの成長は期待できないと思われる。
一方、ビジョンファンドのSVF部門は営業利益の33%の2399億円を計上し順調に伸びているが、孫さんはそのずっと先を見ている。
孫さんの考え方は、シンギュラリティ(技術的特異点)、AIによって機械が人間を越えていく時代に向けた投資を一段と積極化させるということだ。
その時代の中心に、ARMのAI化されたチップが、さらにNVIDIAのクラウドのAI化が地球のインテリジェント化、スマート化を実現するとしている。
ARMのチップ出荷量は+17%の55億個、シェアリングのWeworkやDIDI、ロボットのボストンダイナミックスなどビジョンファンドが出資している会社はたしかに伸び盛りだ。
しかし、NDIDIAの3割以上の下落に見られるように期待が先行しているだけに株価のボラは高い。
こうしてファンダメンタルを見ていると、今回の通信子会社の上場には二つの意味があると思われる。
一つは子会社上場で調達した資金を成長性の高いビジョンファンド部門へ回し、成長性の低い部門から高い部門に資金をシフトさせさらに成長を追求するという意味だ。
ビジョンファンド2号の設立も視野に入っており、ソフトバンクの群戦略(強いコミットメントで完全買収するのではなく、筆頭株主として自由な経営を支援する)を進めていくだろう。
もう一つは流動負債8兆2000億円、長期借入金5兆3000億円、社債7兆2000億円という負債を減らし、財務基盤を改善させようということだ。
ソフトバンクの借入金の大きさは金利上昇局面に入ると問題が多い。
したがって、通信子会社を上場させ、キャッシュを得ることで借入金を減らせることがグループ全体のプラスになるという判断だろう。
しかしながら、通信ソフトバンクの上場はキャッシュカウを部分的にでも手放すことで、ソフトバンクの借金だらけの経営リスクは高まる。
ビジョンファンドも投資先がかなり期待先行であり、金融情勢の悪化(長期金利の上昇=割引き率の上昇)とともに株価の現在価値も低下しやすく不安定化する。
ソフトバンクの親子上場はカオスとしかいえない。

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