株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版の「株式需給の達人(おもしろ相場格言編)」を出版しました。
既刊の「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」「チャートの達人」「個人投資家の最強運用」「株式需給の達人(基礎編)」「株式需給の達人(投資家編)」とともに一読をおすすめします。

2018年09月

ウィークリー雑感(9/30産油国が買うか?)

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WTI(原油先物価格)が70ドル台に上昇し、ブレントも80ドル台に乗せてきた。
その背景にトランプの制裁に伴いイラン原油が国際市場から消え、ベネズエラの原油生産も落ちているところに、今月OPECが減産の継続を決めたことがある。
これによって原油需給のタイト化を懸念して先物が買われ、WTIやブレントがこのところの持ち合い上限をブレークした。
でも、OECD石油在庫はまだ28億バレルとピーク31億バレルからは減少したものの、2012-13年の24-27億バレル水準より多い在庫が残っているので、供給不安は想定しなくていい。
ガソリン価格がちょっと上がりそうなぐらいで大騒ぎするような問題にはならない。

それよりポイントは、この原油価格の水準だと中東産油国に経常黒字が溜まってくることだ。
特に重要なのはソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)を持つ産油国の経常収支だが、下の表の通り、経常収支/GDP比率が急速に改善してくることだ。
2018年の数字は4月までのもので、その後の動きを見ればさらに大幅に経常黒字が増えてくると思われる。
2012ー13年のような世界の資金を産油国が吸い上げてしまったような状況にはないが、着実に経常黒字が溜まり始めている。

SWFを持つ産油国の経常収支/GDP比率(%)
2014 2015 2016 2017 2018
サウジアラビア 9.75% -8.67 -3.16 2.67 5.46
クウェート 23.45% 3.50 -4.51 1.97 4.79
UAE 13.51% 4.90 1.40 4.67 5.31

では産油国はどう動くだろうか?
ワシの経験では、他のSWFに比べてサウジアラビアのSAMAが最も敏感に資金を動かす。
SAMAはSWFであると同時に中央銀行であり年金機構でもあるからだ。
経常収支と外貨準備を管理する責任を持つと同時に、中央銀行で余った資金をSWFで運用する責任も持っているので迅速な対応ができる。
運用会社のCIOの時に原油価格が大暴落したことがあったが、SAMAは毎年のように運用資金を引き揚げたのを鮮明に覚えている。
SAMAは現在60兆円程度の資金を運用しているが、ここもとの経常黒字の急速な増加で運用資金が増えている可能性が高い。
クウェートKIAとアブダビADIA(UAEで最大のSWF)は財務省の傘下にある運用専門会社なので、財務省に余剰資金が溜まり配分を受けるまで、通常タイムラグがある。
でも経常黒字の蓄積とSWFの運用資金は連動するので、黒字が溜まれば運用資金もいずれ増える。

SWFから資金配分を受けた運用会社は、まず先物でベータを確保するから証券取引所には最初に先物買い注文を入れる、その後、先物を現物株に置き換えるEFP(Exchange for physical)という取引を行う場合が多い。
もちろん、トランジッションと呼ばれる現物移管もあるが、これはマネージャーの変更時に使われる場合が多いので、資金純増の場合は現金での配分が普通だろう。
東証では9月後半外人の先物買いが顕著で、たいていの株式評論家は空売りの買い戻しで上昇したとコメントするが・・・???
SWFや他の長期投資家が動いたかもしれない。
少なくともSWFが買い出す条件は整ったように思う。




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就活ルールの廃止で何が変わる?

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経団連が就活ルールの廃止を言い出した。
新卒の一括採用が日本企業の競争力の阻害要因になっているとして、就活ルールを廃止し多様な人材を既卒/新卒の関係なく通年採用するという方針をあの経団連が表明した。
経済同友会の報告書では・・・
「社会人経験のない学生を大量採用し、均質なマインドセットを行うことが、画一的な人材を生み出し、イノベーション創出を阻害している可能性がある」
「外国人材、海外大学卒業生、留学生の採用が困難」
「育成に時間を要する。若い才能が力を発揮できなかったり、変化への対応が遅れる」

と指摘している。

つまり、外資系企業やIT新興企業に優秀な人材が流れ、経団連企業にイノベーションを担う人材が行かないという不満があるというわけだ。
でも、これって経団連企業の魅力の低下を若手人材のせいにしているだけとしか見えない。
もともと、出る釘が打たれる経団連企業には、先鋭的な個性的な人材を活躍させる土壌がない。
出る釘のような個性的な若手人材を満足させられる環境がなければ、どんな採用方法を取ろうが相手にされない。
就活ルールの問題ではなく、個性的な若手が活躍できる環境を社内に作る方がよっぽど重要だ。
経団連企業が優秀な人材を取れない理由を就活ルールのせいにせず、人事や成果評価、組織の柔軟さ、個人の能力開発サポートなど社内の様々なシステムが今の時代にズレてないかを考えてみることだろう。
ルールを変えたからといって、優秀な人材が外資系でなく経団連企業に流れるかは疑問だ。

一方、学生にとっては、就活ルールが廃止されることは良いことだろう。
最初はどうやっていいか分からず混乱することもあるだろうが、慣れてくれば多様な採用方法によって自分らしい時間の使い方ができるようになる。
例えば、・・・
卒業後1年間世界を放浪して見聞を広め、自分が進む方向を明確にしてから就職をするとか・・・
1-2年生の時から長期インターンをしてその会社をよく知ってから入社するとか・・・
大学の研究室で企業と協業しながら学生生活をして、そのまま企業の研究室に移るとか・・・
今までの学生は就活スケジュールに縛られてきたので、インターン、エントリーシート、解禁日、面接、すべて決められたスケジュールを追いかけていくしかなかった。
就活ルールが廃止されれば、それこそ自分の思ったように、多様な学生時代を過ごすことができる。
これが日本の学生の個性を刺激し、よりモチベーションの高い人材を産業界に供給することにつながらる。
就活ルールが変わることで、学生たちは最も恩恵を受ける。


ただし、通年採用をすると、人事部は一年中採用事務に忙殺されるのでたいへんになる。
随時、エントリーシートを受け付け、面接を用意し、役員のスケジュールを調整し、数回の面談をするだけでもけっこうたいへんだ。
さらに横並びの採用でないと学生を横比較できないので、会社の採用基準を明確にして一人一人を採点しなければならない・・・人事部にはお気の毒な話だ。

でも、人材コンサルには大きなビジネスチャンスになるだろう。
人材コンサルは今まで専門職や技術系を対象にヘッドハントするのがメインビジネスだったが、就活ルールの廃止で採用事務の外部委託が増えれば、新卒・既卒の数多いマス市場に参入できるからだ。
しかもエントリーシートの一括管理を受託すれば、新卒・既卒の膨大なデータを利用できる。
たとえば、学生の複数エントリーを分析し傾向を掴んだり、同業他社と比較したエントリー学生の傾向を分析したり・・・それによって人材コンサルはレベルアップし、成長業種になるかもしれない。
ワシもちょっとこの分野の企業研究してみたいと思う。



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ハチャメチャなトランプ外交の良いところ

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見た目にはハチャメチャな大統領だが、トランプ氏は選挙公約をマジメに実行している。
選挙キャンペーン公約は、不法移民の取り締まりとメキシコ国境の壁建設、オバマケアやイラク制裁解除などのオバマ政権の否定、TPPからの撤退とNAFTAの見直し、中国など貿易黒字国への関税引上げ、大幅減税と雇用の創出、銃規制の緩和と撤廃、などが主なものだが、こうしてみると公約を実行に移しているのがわかる。
選挙で応援してきた人たちにとっては、公約をきちんと果たす大統領は信頼できる存在だろう。
逆に言えば、公約を果たし支持層を固めることで、トランプは中間選挙を有利に戦えると考えている。

でも、もともとトランプに批判的だった人たちはそのままのスタンスだろうから、このトランプのやり方はアメリカ国民をプロ・トランプとコン・トランプに分断してしまう。
昔、ハンチントン教授が「分断されるアメリカ(原題Who are we?)」で米国人の複雑化するアイデンティティの問題を指摘した。
その後、オバマ氏が「一つのアメリカ」を掲げて大統領になったが、やっぱり、オバマ政権の間も米国民の分断は進んでいて、それがトランプ政権でさらに悪化した形で表面化してきたということだ。
とにかく、全米国民というより、自分の支持層にだけアピールするやり方を続けるトランプ政権が続いていく間に、米国民のアイデンティティの分裂・分断は一段と進んでいくのだろう。

でも、トランプが正しいと思う所もある。
それは国際機関による合意形成を否定し、二国間での交渉と合意を重視するということだ。
第二次世界大戦の悲惨な結果から、いろいろな国際機関が設立された。
国際平和・安全と国際協力のために設立された国際連合UN、国際金融と為替市場の安定のために設立された国際通貨基金IMF、自由貿易を促進するために設立された国際貿易機関WTO・・・数々の国際機関が設立されてきた。
しかし、まともに機能している国際機関がどれだけあるのか?

常任理事国の拒否権が強すぎて合意ができない国連、途上国融資が全く機能していないIMF、各国のエゴで自由貿易体制を作れないWTO・・・などなどが現実の姿だ。
崇高な理念で統合されたEUでさえ、加盟国のエゴで財政問題や金融問題で矛盾が生じてきている。
トランプはマルチラテラル(多国間の)交渉を全く信頼せず、常にバイラテラル(二国間の)交渉を重視しているが、これがトランプ外交が機能している大きな理由だ。
NAFTAでさえ全体での交渉をせず、メキシコと個別交渉し、合意後、カナダと交渉するという徹底ぶりだ。
でも、これが機能している・・・交渉時間も短く決定も速いし合意も迅速だ。
トランプ外交がさらに進んでいくと、うまく機能できない国際機関が軽視される状況に陥るかもしれない。

自動車関税の引き上げ凍結を見返りに、日本もアメリカとバイラテラルな物品貿易協定の交渉に入る。
タフな交渉になるだろうが、農産物をTPP合意並みの水準で合意できれば良しとして株高要因になる。
安倍さんの外交力が試される。


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アルファ(α)とベータ(β)の話(6)

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ロング/ショートはプロが運用すると、純粋にアルファを収益化するのが目的になるから、意外と自由度がない運用になりがちだ。
ロング/ショート運用に資金を投じる顧客は市場が上がっても下がってもプラスのリターンを期待しているから、その期待に応えるため完全に市場ニュートラルにポジションを持っていくからだ。
でも、我々個人投資家はそんなことに全く捉われる必要はない。
自由な運用こそがロング/ショートの醍醐味だからだ。

素人の運用は、投資期間を柔軟にできるところがプロとの違いだ。
プロの運用は時間で区切られ、3か月、1年、3年、5年の各期間でランキングを付けられ、競争させられる。
でも、素人は3か月だろうが1年だろうが関係なく、儲かる時点までホールドすることもできるし、売りたいと思ったらいつでも売れるし、場合によっては塩漬けにして株価さえ見ない(買ったことさえ忘れる)という選択肢もある。
この時間を自由に使えるというところは素人の強みの一つだ。

今回は素人の簡単なロング/ショート運用を考えてみよう。
もっとも良くないのは、ロング側でもショート側で両方で儲けようとすることだ。
上がりそうな銘柄を買って、下がりそうな銘柄を売る・・・思い通りになれば、2倍儲かるというポジションだ。
株式投資はそんなに思い通りになるものじゃないし、逆に上げりそうな銘柄が下がり、下がりそうな銘柄が上がるという股裂き(マタザキ)になってしまう可能性もある。
だから、ロング側は自分の好きな現物株式や金融商品でいいけど、ショート側はリスクを相殺するようなポジションにするのが基本だ。

具体的なやり方じゃが・・・
投信でもETFでも現物株式でも何でもいいので、自分が買いたい金融商品や現物株式をロングにする。
まず、その保有する金融商品や株式の特性を考えてみる。
例えば、アメリカ株が下落するとそれ以上に下落してしまうかもしれないとか、為替がドル安・円高に大きく動くと損してしまうかもしれないとか、金利が上昇すると業績が悪化してしまう(反対に良くなる)・・・などなど。

そして、その特性からリスクを抑える方法を考える。
アメリカ株が下落すると大負けするかもしれない・・・となれば、アメリカ市場での売り上げが大きくアメリカ依存度の高い銘柄を少しだけショートする、
円高になると大負けするかもしれない・・・輸出比率のランク上位の銘柄を少しだけショートする、
金利上昇で大負けするかもしれない・・・債券ETFなどを少しだけショートする、などなどの対応ができる。
ショート側のポジション量はごく少々で十分で、読みが違って損が出る時、ちょっとヘッジが効いて損が少なくて済んだというぐらいでちょうと良い。

こうして、リスクを抑える方向でショート側を組み入れることで、ロング/ショートの大敵である股裂きや大負けをなくすことができる。
素人のロング/ショートは、大負けを避けて、少しづつでも利益が上がる、気長に運用できるポジションが適していると思うんじゃ。



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一帯一路の化けの皮

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現代版シルクロードとして、多くの国が賛同して(実際は中国資金を期待して)始まった中国の一帯一路政策。
なんか雲行きが怪しくなり、化けの皮が剥がされようとしている。
きっかけは、老獪な政治家マハティール氏がマレーシアの首相に再び返り咲いたことだった。

マレーシアの新都市建設「フォレスト・シティ」
これは4つの人工島に、マンション、オフィス、ホテル、商業施設を建設し、70万人が住む新都市を建設する総額1000億ドルの計画で、事業主体は中国の不動産ディベロッパー碧桂園。
マレーシアと共同開発とはいえ、中国人富裕層のための海外マンション建設だった。
マンションには9月までに482世帯が入居する予定で、すでにインターナショナル・スクールがオープンし、居住する中国人やその他外国人の子女が通っている。
この入居が始まるタイミングで、マハティールはフォレストシティに住む外国人にはビザを発給しないと言い出した。
現在は第一島の半分程度が完成したところだが、一気に前途不確実な状況に陥った。

マレーシアの東海岸鉄道計画、総事業費1兆5000億円、その85%は中国の融資。
マハティール氏は首相に返り咲くと、前任首相の背任・収賄も指摘された中国の一帯一路関連の事業を見直し、この東海岸鉄道事業の中止を命令した。
習近平の肝いりの一帯一路事業であり、中国にとっては大きな打撃となる。

スリランカは、一帯一路事業のハンバントダ港の建設費1500億円を返済できず、99年間の同港の運営権を中国に貸し出しを決めた。
中国からの借入金でインフラ投資をしたものの、その返済額が2014年の14億ドル、17年24億ドル、19年40億ドルとき急増していく予定。
とても返済しきれないと、同港の中国への貸し出しとなったわけだ。
スリランカから見れば、過大な融資でインフラ投資をさせ、返済できなくなると港湾の運営権を渡せという、債務トラップにはまった感じなのだろう。
でも、中国から見れば、うまくインド洋の要衝となる港を安く手に入れたというわけだ。

中国の莫大な資金に対する幻想(あるいは過大な期待)は霧散し始めている。
一帯一路は中国の巨額融資付き巨大インフラ事業で、当事国には当初の財政負担が少ない。
でも、その巨大な債務の返済と年6%を越える利払いが長期にわたって当事国を苦しめる。
しかも、港湾、高速道路、長距離鉄道事業などで、中国企業が設計から施工・監修まですべてを受注し、完工後のメンテナンスまで一手に引き受け、独占利益を上げる。
完成後も中国企業の国際運輸物流システムに組み入れられ、スリランカのように港湾の運営権を中国に奪われるケースもある・・・つまり、最大の受益者は中国自身だということだ。
一帯一路は、中国の、中国による、中国のための政策だったわけだ。
だから、今後、この一帯一路政策を成功させるには、中国のためではなく当事国の利益のための政策にする必要があると思うんじゃな。




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FOMC ダンディールだが・・・?

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今週の25日~26日でFOMCが開かれる。
9月の米経済指標は強かったので、市場はダンディールとして25bpの利上げを織り込みに行っている。
特に政策金利に連動する2年物利回りは先週末2.80%に上昇し、10年債利回り3.06%との差はわずか0.26%だ。
12月の利上げ0.25%が実行されると、この2-10年利回りスプレッド(差)はほぼゼロになる。
このイールドカーブのフラット化(長短金利差の縮小)さらに逆イールド(長短金利の逆転)が市場関係者の関心を集めている。

過去、長短金利の逆転は米国のリセッションを示唆してきたので、今回もリセッション入りのシグナルになるのではないかという見方だ。
経済が過熱し民間債務が膨張した局面では、政策金利の上昇が返済能力の低い企業や個人を直撃し、クレジット(信用)問題を引き起こす・・・それを先に織り込み、信用力の高い長期国債に資金が急激にシフトするので、長期金利が低下し長短金利の逆転を生じる。
過熱する住宅ローンとサブプライム問題が逆イールドを生じさせ、リーマン危機につながったのは記憶に新しいところだ。

現在、民間債務はそれなりに増加しているので、一部には警戒感を持つ人もいる。
しかし、名目GDPの伸びと民間債務の伸びはまだまだ均衡している状況なので、ワシはこのイールドカーブのフラット化は必ずしも将来のリセッションを示すものではないと考えている。
それは、景況感とは別に米国債に資金が流れる理由があるからだ。

一つはグローバルな国債市場は金利が大きくバラついていて、先進国でまともなリターンが取れる市場は米国3.06%、オーストラリア2.70%、カナダ2.43%ぐらいしかない。
さらにリスクを考えたら、債務問題が残るイタリアの2.8%も、ブレグジットの英国1.5%も躊躇するし、利回り水準でドイツ0.46%、日本0.12%は買えない。
こうして債券の運用資金は米国に集中することになるわけだ・・・この資金流入が米国債利回りの上昇を抑える要因になっている。

もう一つは米中貿易摩擦が心理的に安全資産への資金流入につながっていることだ。
これは先週のウィークリーでも書いたが、現在のグローバル景気に影響するというより、将来の経済に影響する市場心理の問題なのだ。
だからこそ、市場心理の振れ幅が大きく、市場トレンドの決定要因というより市場ノイズとしてボラティリティの拡大要因になる。
だから、ポートフォリオのボラティリティ調整のために安全資産を増やす=米債券買いということになるだろう。

こうした景況感ではない米国債の買い要因があるので、米10年債利回りが3%を越えて上昇していかない。
でも、今週のFOMCでの利上げ後、今までと違う展開も考えられる。
FOMC後、今まで通り材料出尽くしとして米国債利回りが3%以下に低下していくならば、株式市場も今までとそう変わらないだろう。
しかし、米10年債がFOMCを超えて3%台で定着していくようなら、イールドカーブがさらにフラット化しても株価はレンジを切り上げていく可能性がある。
これらの米国債の買い要因を景況感が打ち負かし、景況感による米国債売りが勝る=株式がさらに買われるということを意味するからだ。





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国籍とアイデンティティは別物だ!!!

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はっきり言って怒りを覚える・・・大坂選手に日本人のアイデンティティについて質問した記者がいたし、大坂なおみは日本人じゃないという記事を書いているジャーナリストもいたからだ。
この理解不足、偏見、差別的で偏狭な考え方に憤りを感じるのだ。

国籍とアイデンティティは全くの別物で、国籍を持った日本人が必ずしも日本人としてのアイデンティティを持っている必要はない。
通常、日本国籍は一定の要件を持つ人が日本政府に出生届を提出してもらえる(あるいは帰化申請)。
ワシの息子はロンドンで生まれたが、英国政府と日本大使館に出生届を出して英国と日本の国籍を取得した。
大坂選手も出生届を提出して日本国籍をもらったはずで、その後、アメリカに渡り米国籍を取得したとしても、日本国籍を持つことには変わりない。
二重国籍は日本国籍を否定するものではなく、彼女は間違いなく日本人だ。

一方、アイデンティティは、これを語る時にはアイデンティの尊重と相手への尊敬がなければならないものだ。
同じ国でも異なるアイデンティティを持つ人もいて、歴史上、そこに差別や迫害が起こった多くの事例があるからだ。
日本でも政府が移住を進め開拓した北海道・・・先住民のアイヌ族を差別し迫害してきた。
今でこそアイヌ族のアイデンティティを守ろうという運動が定着しているが、過去には残酷な歴史があった。
島津薩摩藩が武力で征服した沖縄・・・琉球民族を支配下に置き、本土との差別は随所に見られた。
肌の色、文化習慣、言葉、宗教、ちょっとした違いで同じ国民でも差別的な反応を見せることがある。
だからこそ、アイデンティティを語る時には相手への尊敬がなければならないと思う。
それがなく、センシティブな質問を無神経にした記者には本当にあきれる。

日本の少子高齢化が進み、外国人の移民を増やす政策を取らざるを得ないこの時代、もういい加減、ヘイトスピーチや偏狭な差別バッシングをやめて、日本人は良識を持った行動をしなければならないと思う。
野球のダルビッシュ選手、両親が中国から帰化した卓球の張本選手、サッカーでは活躍する多くのハーフ選手・・・活躍している人たちがたくさんいる。
大坂選手も2年後に国籍を選ぶことになるが、日本国籍を選択し日本人選手として東京オリンピックに出場してくれたら本当にうれしい。



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ウィークリー雑感(9/23政治がヤバイ)

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先週は自民党総裁選挙があった。
総裁選の結果は国会議員329票と党員224票を獲得して安倍氏の圧勝だったが・・・
地方組織中心の党員票では安倍氏と石破氏は224:181と僅差で安倍氏の一般党員人気が落ちていること、さらに安倍出陣式では334食のカツカレーが配られたのに議員票は329票と4人が造反して石破氏に投票したことなどなど、安倍政権も盤石ではないようだ。
まあ、派閥がどうのこうの、安倍氏にスリ寄れば閣僚ポストがもらえるとか、内閣改造で騒いでいる日本の政治家には毎度のことながらあきれる。
いっそのこと、議員も党員も完全に自由投票にして、日本の将来を誰に託すかを決めた方がいい。

とにかく、安倍氏がもう一期3年首相を続けることになったが、これがいろいろな問題を内包している。
第一に、もう一期3年だけの内閣になる安倍氏に求心力があるかだ。
安倍氏は残された懸案である憲法改正に向けて花道を飾りたいのであろうが、政局はポスト安倍に向けて急速に動き出すので影響力が低下してくるのは明らかだ。
レイムダック化するのも時間の問題だろう。

第二に、8/20に「アベノミクスの限界」を書いたが、三本の矢はいずれも有効期限が過ぎ、特に異次元緩和はいつテーパリングに入ってもおかしくない状況だ。
安倍政権にはもう次の経済政策がなく、あとは量的緩和がどこまで続くかだけの話だ。
新しい経済政策が次の三年間に何も出てこないとしたら、日本経済はどうなるのだろうか?

第三に、来年の消費税引き上げをスムーズに乗り越えられるかだ。
特に安倍政権が通した参院の議員定数増加法案が最悪の結果を招く可能性をワシは想定しておる。
消費税引き上げの前提として身を切る改革が国会議員や官僚には求められているが、これに逆行する政策だったからだ。
これが仇となり国民の不満が高まるのは必至で、来年の消費税引き上げ前には相当な混乱が予想される。

ワシはロンドン生活で20%のVATを経験したが、インフレで賃金が上昇し住宅価格が上昇している経済ではVATの引き上げの悪影響は比較的簡単に吸収された。
しかし、賃金が長期にわたって横ばいの日本では、消費税の引き上げはそのまま個人消費の鈍化につながる。
だからこそ、そのしわ寄せを受ける国民は、政治家や役人など税金を使う立場の人たちに自分たちの身を切る改革を求める。
国民がその点を納得できないと、消費税引き上げの大反対が起こり、政治が混乱する可能性が高い。

過去、政治の問題は株式市場にはあまり影響しなかったし、日本企業は愚かな政治にも関係なく成長してきた。
でも、来年の消費税引き上げはちょっと微妙で安倍氏の正念場になる可能性がある。
場合によっては、レイムダックになる前に辞任に追い込まれているかもしれない。
株式市場がその政治の混乱を無視できるかどうかは分からん。



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統計数字から考える(1法人企業統計)

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駆け出しのアナリストの頃から、統計数字を見ることが好きだった。
数字を眺めては考える、また数字を眺める・・・数字はワシの想像力の源泉といえるものだったからだ。
分からなくなったり、迷ったりしたら、統計数字に戻り考え直すのが一番だ。
人の話の受け売りをしたり、みんなが言っている意見に迎合したり・・・これが意味ないのは、数字という事実を見ていないからだ。
事実が数字で表されるなら、その数字をきっちり読み取ることが事実の理解につながる。
前置きが長くなったが、統計数字から考えるというのがワシの原点だった。
4-6月期の法人企業統計が財務省から発表されたが、これを例に数字から考えることをテーマに基礎編の話をしたい。

法人企業統計は全国97万社を対象にしたサンプル調査で、上場企業だけでなく中堅や中小企業が含まれているので、日本経済全体を広く見ることができる。
注目点の一番目は、日本企業の安定した企業成長だ。
全産業の売上高はだいたい前年同期比3-6%程度で増加しているが、その中で売上高経常利益率が2017年4-6月期の8.8%から、2018年4-6月期には10.6%と上昇してきている。
人件費の年率プラス3-4%、設備投資の年率プラス5-10%とコストを増加させながらの、利益率10%台乗せは日本企業の稼ぐ力の着実な向上を示している。

二番目は毎年の利益の集積である、内部留保=資本の蓄積、これは資本の良質さを表している。
日本企業は毎年の利益から内部留保することで資本の蓄積を図り、株主資本は676兆円にまで拡大した。
この株主資本には資本金と資本準備金という株主が払い込んだ資本と、利益準備金という過去の利益の蓄積があるが、資本金と資本準備金合計が約250兆円なのに対し、利益準備金は450兆円である。
つまり、過去の利益、内部留保の積み上がりが質の高い資本の蓄積につながっているわけだ。

三番目に蓄積された資本をどうやって使うのかという問題だ。
これが最も重要で、日本企業は蓄積された良質の資本をうまく生かしていないと言われる。
これは経営戦略そのものだが、現在の日本企業が保有する自己資本676兆円、しかも現預金で保有する201兆円をうまく使えば、日本企業の稼ぐ力をさらに引き上げられるだろう。
本気で自社株買いをすれば、現預金(201兆円)だけで東証の時価総額(650兆円)の30%を買えるし、本気でM&AをすればAI・フィンテックのITベンチャー企業をいくつも買える。
日本企業の問題は主として経営者の本気の問題なのだ。

自社株買いは一株純資産より高い株価で買うと償却する際に自己株式処分差損が出るし、一株純資産と同じか低い価格で購入し償却すれば逆に自己株式処分差益が出る。
つまり、一株純資産かそれ以下で自社株買いをすると、効果的に発行株式数を減らせ、一株当たりの価値を高めることができるわけだ。
自社株買いはタイミングが重要で、日本企業は株価の安い時期に積極的に自社株買いをすべきだ。
M&Aについては、良い企業はそれなりのプレミアムをつけないと買収できないので、買収時の株価が安いか高いかはあまり関係ない。
それよりも買収先の将来成長性や自社ビジネスとのシナジー効果などを読むことが重要だ。

いずれにしても、これだけの質の良い資本余剰を持つ日本企業は、その使い方次第では大きなビジネスチャンスをつかむことができるはずだ。



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金正恩の“大坂冬の陣“

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文在寅と金正恩が平壌共同宣言に署名し、北朝鮮の非核化、南北の軍事的緊張緩和、終戦宣言の方向が確認された。
6月の米朝会談から一歩進んだのは、お互いに軍事行動はしないという南北二か国合意だ。
これは米・中・露をしばるものではないが、背後にいるこの三国の意向が入っているのは間違いなく、この三国を含めて非核化と終戦宣言に向けて進み始める。

でも、この非核化と終戦後の朝鮮半島の有り様にはこの二人には最終決定権がなく、背後にいる米国、中国、ロシアの思惑が交錯していくだろう。
その意味では、この平壌共同宣言は大坂冬の陣なのではないかと感じる。
大坂の陣は、本格的に徳川の江戸時代の幕開けとなった、豊臣家の最後の戦いだ。
そのうち冬の陣で、激しい戦いのあと休戦に入り、豊臣秀吉の作った難攻不落の大坂城の外堀を埋めることになった。
それが次の大坂夏の陣での豊臣家の絶滅につながった。

北朝鮮の核施設とミサイル施設を破壊する、過去の軍事的緊張を緩和し平和条約を締結するということが、大坂冬の陣における大坂城の外堀を埋めることと同じ意味に思えてしまうからだ。
大坂夏の陣のあと本格的に江戸時代が始まるように、非核化と平和条約のあと本格的に朝鮮半島の地図が変わっていくだろう。
それぞれの思惑が交錯するが、今、見える範囲で整理してみよう。
まず、北朝鮮だが、その軍事費が突出した経済構造の問題だ。
北朝鮮の人口2500万人だが、軍人は190万人と人口の8%を占めている。
しかもこの軍人が北朝鮮のエリート層であり、都市部の高層マンションなどに住み、比較的高い生活水準をエンジョイしてきた特権階級だ。
南北緊張緩和が進み各国の支援で経済復興にはずみがついてくると、当然、軍事費が削減され、軍人の生活水準は低下し、不満が高まるのも自然だ。
軍事国家から経済国家への移行で、軍人を経済人に平和的に変えられるかが重要だ。

次に韓国と米国の思惑だが、極東軍事政策の見直しと米・韓主導の統一だろう。
韓国が北朝鮮を飲み込む形で半島を統一すれば、北朝鮮を民主国家に変えることができる。
米国にとっても日本にとってもいい形なのは違いない。
しかし、朝鮮半島の統一は、人口2500万人で一人あたりGDPが700ドルの北朝鮮と、人口5100万人で一人あたりGDP3万7000ドルの韓国と、経済水準が違いすぎるほど違う両国が合併するという問題がある。
単純な合併だと韓国の税金で北の人々の面倒を見るわけで、韓国経済への負担がきわめて大きいし、各国の経済支援とどう組み合わせていくかだろう。

そして、中国だが、北朝鮮からの大量難民への対応と、経済復興を中国主導でできるかだろう。
北朝鮮であぶれた人たちが難民となって、朝鮮族が多く住む中国に流れてくるのが頭に痛い問題で、北朝鮮の人口2500万人の3割と想定すれば700万人の大量難民を抑え込むことだ。
そして、経済支援を通じてどこまで影響力を残せるかだが、北朝鮮が韓国を飲み込む形での半島統一が考えられないだけに難しいポジションにある。

経済支援については、米国は拒否をしているし、日本は拉致問題の解決を条件にしている。
中国はある程度支援をするが、その本心は大量難民を防ぐことになるだろう。
ロシアは第二次大戦でも最後に参戦して千島列島をかすめ取ったように、支援をしているように見せかけながら、ドサクサに紛れて北朝鮮地域での鉱物資源の権益をかすめ取るのだろう。
となると、北朝鮮の支援の中心は韓国になる。
この辺を総合すると、経済負担の大きい韓国株は「売り」、安全保障がプラスになる米国・日本株は「買い」、どっちつかずの中国株は「ホールド」といった評価になるんじゃ。
ロシアはうまく鉱物資源をかすめ取れれば「買い」じゃ。


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ベンチャー・キャピタリストの給料

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ベンチャーキャピタリストは甘くない。
テッククランチによると、95%のベンチャーキャピタル(VC)ファンドは儲かっていないらしい。
といっても、実額で損しているわけではなく、リスク・費用控除後の収益が目標に達していないということだ。
未公開株への投資なのでリスクも高く、リスクに応じた投資目標は10年で3倍らしいが、わずか5%のファンドしかこの目標を達成していない。
10%のファンドが2-3倍、35%のファンドが1-2倍、50%のファンドは1倍以下だ。
10年というと2009年から2018年までで、例えばNYダウでも2.7倍程度、VCファンド流に言えばリターンは1.7倍だ・・・およそ半分のVCファンドはインデックスファンドにも負けているわけだ。
この10年ではユニコーン銘柄のIPOが多く良いエグジットが豊富だったはずで、それでもVCファンドは満足するリターンを上げていないようだ。

リターンでは十分とはいえないのに、ベンチャーキャピタリストの給料は高い。
同じくテッククランチの資料では、ジェネラルパートナー(無限責任を負うGP)の平均年収は64万ドル=約7000万円、マネージングダイレクター(MD)で50万ドル=5500万円、パートナー(有限責任出資のLP)で30万ドル=3300万円となっている。
このところの好調なIPO市場で成功報酬ボーナスを含めての数字だ。

運用会社の運用部門を担当していた時、外部リサーチを使って国内ファンドマネージャーの年収水準を調べた・・・部下のファンドマネージャーのボーナス評価をするためだ。
もう2年程前だが、国内のトップクラスで3000万円±500万円、優秀なファンドマネージャーで2000万円±500万円、普通のファンドマネージャーで1000万円±500万円という調査結果だったと覚えておる。
部下のファンドマネージャーのボーナスは?・・・・社外秘だ。

もちろん、国内の給料は海外より低いのは事実だが・・・比較してVCファンドのGPで平均7000万円、MDで平均5500万円はかなり高い。
100億円のVCFで、仮にリターンが10年で2倍とすると、200億円の収益で1年あたり20億円になる・・・ということは、GPの給料はファンドリターンの3.5%、MDの給料はファンドリターンの2.8%、れぞれ複数いるので合計は30%程度にはなるだろう。
GPとMDの役員給料の合計でファンドリターンの30%を食いつぶす・・・普通ではありえない。
通常の運用会社なら、ファンドマネージャーに加え、リサーチ部隊、営業部隊、ファンド管理、レポート部隊、さらに会社の経理や人事、役に立たない役員たちがいるので、これらのコストがかかり、数十人のファンドマネージャー全員には10%以下の配分になる。
VCファンドは、誰のためにあるのか?・・・GPやMDなどのファンド役員のためにあるようだ。



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追加関税はドル高要因

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トランプが以前から言っていた2000億ドル分の中国輸入にかける追加関税政策を実行に移す。
関税率は当初より低い10%だが、さらに25%への引き上げも含みに残している・・・また、アップルウォッチも除外され、一応もっとも厳しい論争的なところは避けたようだ。
評論家諸氏のコメントでは米中貿易戦争がこれで一段と激化し、市場の懸念が一層深くなり、リスクオフで円が買われる・・・・ホントか???

7/15のウィークリー雑感で書いた通り、米法人税引き下げによる財政収支の悪化を関税収入の増加で緩和する効果がある。
財政収支の悪化予想が年初からのドル安の一因になったが、米国に関税という大きな税収入が入ってくることで、財政悪化が緩和されドル高の要因になる・・・というわけだ。

ワシは関税引上げはドル高要因で、二つの経路で為替相場に影響を与えると考えている。
一つは米財政収支へのプラス効果だ。
法人税減税は10年間で1.5兆ドル、1年1500億ドルの財政悪化要因となり、19年の財政赤字を9800億ドルに増加させる(従来予想は6800億ドル)。
一方、関税収入の増加は、最初に500億ドル分(税率25%)で125億ドル/年、さらに今回の2000億ドル分(税率10%)で200億ドル/年、合計325億ドル/年になる。
というわけで、法人税減税分1500億ドルの2割は関税の増収でオフセットされ、さらに25%に引き上げられれば米関税税収入は625億ドルとなり、財政悪化要因の4割をオフセットする・・・これがドル高を生む。

もう一つは直接にドル為替需給に影響する・・・関税の支払いに伴いドル買い需要が発生するからだ。
先ほどの試算のとおり、500億ドル分の関税で125億ドル、さらに2000億ドル分の200億ドルと合計325億ドル、なので1か月あたり27億ドル=3兆円のドル買いが追加的に発生する。
通常に発生しているドル需給に追加される形でのドル買い需要になるので、直接の為替市場でのインパクトとなりドル高を生むことになる。

トランプはさらに2670億ドルの中国輸入にも関税引上げをチラ付かせているので、その期待値まで織り込み始めたら、先の試算の2倍6兆円のドル買い需要が毎月発生する計算になる。
もちろん、評論家の言うようにリスクオフの円高が起こる可能性も残っている。
今週のウィークリー雑感で指摘した最悪シナリオ(中国が関税以外の強硬措置を取る)で、このケースでは世界経済が相当混乱することになるので急激なリスクオフもありえる・・・

追伸
ドル需給を考える際、中国の米国からの輸入にも同様に追加関税が掛けられるので、中国当局に払う関税のために「ドル売り/人民元買い」が出る。
為替市場では「米国に払うためのドル買い」と「中国に払うためのドル売り」がぶつかることになる。
しかし、米国からの輸入は農産物中心で、関税がかかると中国の輸入業者は輸入先を米国から他の国に変更する可能性もある。
そのため、ここでは「中国に払うためのドル売り」は考慮の外にした。




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PL脳はダメなのか?

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「少年よ、(ファイナンス思考で)大志を抱け」











「売上げを増やせ、利益を減らすな」、「無借金なので健全経営だ」、「黒字なからその事業は問題ない」・・・そんなフレーズが当てはまる会社はPL脳の病いに侵されているらしい。
PL脳とはPL=損益ばかり気にしている短期的な会社経営のことだ。
その反対に、ファイナンス脳・・・将来稼ぐと期待できる収益を最大化する発想のことらしい。

まあ、簡単に言えば、損益ばかり気にするチマチマとした経営でなく、将来の事業ビジョンを持って長期戦略を持った経営ということで、フェイスブック、アマゾン、グーグルなどFANG企業をイメージすれば分かりやすい。
高い事業ビジョンを掲げ、短期的利益を考えす巨額な投資を続け、新しい市場を創造する革新的企業だ。
日本にこうしたFANG企業がないのが、このPL脳に侵されているからだ・・・という論理で、日本の経営者をファイナンス脳に変えていくことが必要だと説く。

しかし、日本の現実をよく見た方がいい。
日本で革新的なスタートアップ企業が生まれないのは、経営者のPL脳というより、スタートアップ企業にリスクマネーを提供する投資家が少ないことに大きな原因がある。
日本のスタートアップ企業の資金調達は2016年で979社2099億円にとどまり、同じ年の米ベンチャー企業の資本調達額420億ドル=4兆6000億円の20分の一という比べ物にならないぐらい少額だ。
しかも、アメリカのスタートアップ企業は、最初のシードラウンド(アイデアと製品のプロトタイプ開発)、シリーズA(アイデアのビジネスモデル化、7-15億円調達)、シリーズB(ビジネスのスケールアップ、数十億円調達)、シリーズC(成長加速、国際化、100億円以上の調達)と、それぞれの段階で資金調達をしながら成長を加速させていく。
そしてIPO段階では数兆円という時価総額に達している企業が話題を集めたことも数多く記憶に残る。
一方、日本ではこうした未公開企業の資金調達の仕組みが出来上がっていないし、シードやシリーズAの早い段階で資金を出す投資家も育っていない・・・そこに根本的な問題がある。

さらに日本のスタートアップ企業がわずか1億2000万人の国内市場をターゲットにして起業するが、米企業はシードラウンドでは米国内市場が中心だが、シリーズCの資金調達でグローバル市場へ進出する例が多い。
日本のユニコーン企業でも、LINEがアジア市場で成功したりメルカリも苦労しながらもアメリカに進出しているが、グローバル市場を目指すのは上場のIPO段階かそれ以後になる。
この経営スピードの違いが、成長スピードや企業スケールの違いになっている。
日本にFANG企業が現れないのは、スタートアップ企業の資金調達やターゲット市場の規模が一番の問題だろう。

PL脳はダメなのか?
ワシもPL(損益計算書)やBS(貸借対照表)でモノを考える習慣が昔から身についている。
PLやBSをしっかり読むのは基本だし、そこから導き出される数字を元にした戦略も重要だと思う。
確かに単年度だけの利益にこだわるのは意味がないと思うが、長期的な視野に立ってPLを見ていけば、長期的な経営もできる。
PL脳だからダメなのではなく、シード段階からの資金調達の仕組み、シリーズBやCの早い段階からグローバル市場をターゲットにしていくスピード感がより重要なのだ。
これからの金融業界の大きな役割はスタートアップ企業をサポートする環境づくりにある。
逆に古い人間のワシには、ファイナンス思考とかいうと、長期の夢ばかり語っていつまでたっても実現しない詐欺的なスタートアップ企業を思い出してしまうが・・・



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やさしい投信運用(4 iDeCo運用例)

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iDeCoの優れた特徴は前回説明した通りだが、今回はワシの投資経験から、実際の確定拠出年金の運用例を検討してみたい。

振り返ってみれば、ワシは2007年に運用会社に移った時、それまでの確定拠出年金の企業型から個人型に移行したんじゃ。
それまでは会社と従業員が半々づつ拠出する企業型だったが、個人型に移行したため会社の拠出はなく個人で月23000円を拠出することになった。
企業型からの移行時に約250万円程度でスタートし、定年退職月まで10年と10か月の間毎月2万3000円の拠出を続けたので、合計拠出金は約250万円+約300万円の約550万円となった。
それに対して、退職月末の残高は880万円だったので、330万円の儲けとなった。
年率リターンの計算は難しいが、確定拠出年金のサイトでは年率5%程度のリターンと表示されていたと思う。

iDeCoの運用はいろいろなやり方があると思う。
当時流行っていた新興国投信に大半をつぎ込んで一時は大儲けをしていた同僚もいるし、定期預金にずっと入れて安全確実に運用していた同僚もいた。
でも、ワシは最も基本的な4資産のバランス運用、つまり、日本株、日本債券、外株、外債という4つの資産クラスによる運用を行った。
これは日本の年金基金が普通にやっている基本的な分散投資で、ほとんどの運用会社でバランス運用の商品を扱っている。
当然のことだが、GPIFなどの大手年金はそれぞれの資産でベンチマークを持っている。
たとえば、日株ならばTOPIXが基本ベンチマークだし、外株ならばMSCI-KOKUSAI(日本投資家向けにMSCIが開発したもので、日本株を除いたグローバル株式を組み入れたベンチマーク)だし、債券はボンドインデックス(ノムラBPIやシティボンドインデックスなど)をベンチマークとしている。
各資産クラスでベンチマークを上回る運用ができれば、ポートフォリオ全体でも超過収益が稼げることができるというわけだ。

ただし、iDeCoの場合は年金のバランス運用とは違い、ベンチマーク運用(株価指数や債券インデックス対比でプラス・リターンを目標にする)ではなく、絶対値運用(プラスの絶対リターンを目標にする)でないと意味がない。
個人にとっては、「ベンチマーク対比ではプラスだったが、絶対リターンでは損失だった」では満足できない・・・リアルの儲けが必要だからだ。
絶対値のプラスリターンを上げるには、(1)短期変動を気にせず、長期で上がるモノに集中投資する、(2)下落する時ポジションを縮小し、上昇する時ポジションを拡大するキャッシュ比率を動かす、(3)基本キャッシュや債券ファンドで保有し、儲かると思った時だけ株式に投資し、プラスになったら売却してキャッシュに戻す、などの方法が考えられる。
その中で、ワシは(2)のキャッシュ比率を変えることで絶対値リターンを上げていこうと考えた。

実際のやり方としては、(1)iDeCo資金を4等分し、日株、日債、外株、外債の4つのインデックス投信を毎月等金額を買う、(2)NY市場の動きと為替(円/ドル)の動きを見て、外株と外債のキャッシュ比率を決める、(3)円ポジション(日株と日債)は基本的にホールドし、NY市場の動きによっては日株のキャッシュ比率を動かす・・・という、比較的簡単なやり方だろう。
外株と外債については、資産価格の値動きもあるが、それ以上に為替の動きが重要だ。
せっかく外株が上昇したのに、為替が円高になり損失が膨らんだということも考えられるからだ。
だから、外株、外債のインデックス投信の配分は、市場の動きだけでなく為替の動きにも注意が必要になる。

2007年から2017年までワシがどう考えて配分やキャッシュ比率を変えてきたかは次回話そう。



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ウィークリー雑感(9/16シナリオ)

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日経平均が週末の引け値で23094円と、一般の評論家に壁と呼ばれた23000円水準を上回ろうとしている。
これをどう考えるか?

でも、関税引上げ競争はさらにトランプの最後通牒(中国からの全輸入に追加関税を掛ける)まで行き、不透明感がたち込めている。

第一弾 第二弾 第三弾
トランプ 500億ドル追加 2000億ドル追加 2670億ドル追加
習近平 500億ドル追加 600億ドル追加 ???

トランプの最後通牒まですべてのカードを切っており、習近平の対抗策(???の部分)がこの問題の行方を決める。
三つのシナリオが考えられる。
第一に中国が内需拡大による貿易不均衡の改善へ政策変更すること。
米国からの輸入拡大を目標に内需拡大し、米企業に対して一段の市場開放を行う、中国製造2025に向けた補助金を見直す、など政策変更が考えられる。
この仮説では、中国経済はバブル的に拡大し、日経平均も23000円水準を越えて長期上昇トレンドに入るだろう。
ただ、債務膨張した中国経済がさらにバブル的になるため、火種を残すことにもなる。

第二に中国が関税以外の強硬手段に出ること。
米企業に対し中国内での活動を制限したり、中国市場から完全に締め出したり、などの強硬手段に出るケースで、これはグローバルに混乱を招く。
中国も無傷ではすまないリスクが高い政策なので、トランプのブラフに対し習近平が強硬手段に出るとは考えにくい。

三つ目はステイタス・クオのシナリオで、関税競争が行くところまで行きつき(お互いの輸入に追加25%関税を掛けあう)、その後しばらく、その効果が出るまで現状維持となる。
この場合は影響は徐々に時間をかけて表面化するので、米中貿易量が徐々に減り中国経済は徐々に減速し、同様にグローバル経済もさらに時間をけて減速し始めるだろう。
日経平均は23000円を越えて当面は上昇基調は続くが、中国やアジア株は戻りが鈍く、日経平均の上値を抑える。

この三つのシナリオのうち、シナリオ1がもっとも可能性が高く、ワシは50%程度の確率があると思っている。
シナリオ3の現状維持も30%の確率があると考えているので、当面、上昇基調を続ける可能性が合計80%と想定している。
シナリオ2が最悪の米中貿易戦争となるが、あまりにリスクが高すぎるので習近平もこれはさずがに回避するだろう、だから、ワシは確率20%程度しかないと思っている。
したがって、株価はゆっくりと上昇しながら、習近平の次の一手を待つことになるだろう。
現状、EPSの増加率、PER等のバリュエーションから見て割安なので、警戒感を持ちながら下値を切り上げるという展開かもしれない。



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アリババ株と米中貿易摩擦

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NY市場に上場するアリババ株の値動きは、米中貿易摩擦に対する米国投資家のセンチメントを表していると考えている。
6月に211ドルの株価ピークを付けてから、徐々に下落し、1回目の関税引上げが実施された7月初旬、2回目の関税引き上げが行われた8月下旬に向けた時期に下落が加速した・・・市場に警戒感が高まる二つの時期に、米国投資家がNY市場で示したセンチメント指標ともいえる動きを示したことに注目じゃ。
現在の株価(9/12)は161ドルで、6月から23%の株価下落を記録した。
NY市場に上場しているアリババ株が物語るものを受け止めるのことが重要だろう。

まず、アリババの2018年3月期の決算でファンダメンタルを確認しておこう。
売上げは前年比58%増加の約400億ドル=4兆4000億円、中核事業のEコマースは341億ドル(+60%)、クラウドコンピューティングは21億ドル(+101%)、メディア・エンターテイメントは31億ドル(+33%)だ。

アマゾンの決算と比べ、Eコマース事業への依存が80%以上と極めて高く、アマゾンAWSに相当するクラウドコンピューティングは伸び率こそ高いものの売上げのわずか5%にすぎない。
アリババは主として中国市場(13億人)を対象としているのに対し、アマゾンはグローバル市場(70億人)を対象としているため、ビジネスモデルに違いが出てくる。
中国ではデジタルデータは政府の管理下にあり、AWSほどの展開力がないかもしれない。
おそらく、アリババのEコマース依存は比較的長い間高いまま推移すると思われる。

Eコマースの月間アクティブユーザー数は6.17億人で、中国の人口13億人の約半分近いユーザー数を抱えている。
最近のフォーブスの調査では、中国のインターネット人口は8億200万人とされており、そのうち7億8800万人がモバイルインターネット、つまりスマホのユーザーだった。
つまり、中国のスマホユーザーの8割以上がすでにアリババのユーザー・・・ということはアリババが中国市場を対象にしている限り成熟化しつつあるのかもしれない。

この二点を考えると、アリババの業績は中国経済の好不調に連動してくると思う。
つまり、中国が好景気ならばアリババの業績も向上し、中国景気が悪化すると業績も下がる。
マクロ環境に影響されずにアクティブユーザー数を伸ばして独自に成長をする段階は終わり、マクロ環境に影響される段階に入ってきたということだ。
だから、アリババ株はNY市場の、中国に対する、米国投資家のセンチメントを示すと考えている。

米中貿易摩擦で今懸念されているのは、中国からの全輸入に追加関税をかけるというトランプ発言だ。
もし実施したら、中国で受託生産される、アップルのiPhoneを始め多くのハイテク製品が追加関税の対象になり、米国内の販売価格をダイレクトに引き上げられ、販売が落ち込む可能性があるからだ。
ハイテク製品に使われる様々な部品、半導体、ディスプレーなどにも懸念を生じさせる。

この問題は複雑で難しいが、NY市場ではアリババ株がセンチメント指標性を発揮するのではないか?つまりアリババ株が下落すれば対中国に悲観、株価が上がれば対中国に楽観・・・と、ワシはアリババを見て米中貿易摩擦を考えている。
アリババ株は少し反発を見せた・・・本格的な反騰につながるかはまだ不明だが、アリババ株から目を離せない状況が続く。



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貿易赤字でアメリカは搾取されてきたのか?

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トランプは「アメリカは貿易赤字で搾取され続けてきた」と言ったが、貿易収支が国の実力を示すモノの経済はとっくに終わり、ソフト・サービスの競争力を決めるソフト経済に移行していることを理解していない。
貿易収支の赤字は国力の低下でもなんでもなく、むしろソフト経済の中で高い付加価値がアメリカの国力を引き上げてきた。
でも、このトランプの恐ろしい認識違いが世界を混乱に落とし込んでいる。
3/8のブログ「貿易戦争はディジャヴ」を再掲し考えてみよう。

1980年代の日米貿易摩擦は国を揺るがす大事だった。
当時は家電・カメラ・事務機などのエレクトロニクス中心のモノの経済で、貿易黒字=利益=国富の増加=善であり、貿易赤字=損失=国富の流出=悪だった。
米国は国家の威信をかけて貿易不均衡の是正を要求した厳しい貿易戦争の時代だった。

しかし、時代は変わり、今やIT技術・サービスを中心としたソフト経済になった。

貿易黒字が利益を生む、貿易赤字だから国家が衰退する、なんて全くの幻想で、貿易赤字なんて、単に "安いから外国製品をいっぱい買っちゃった"  程度のことにすぎない。

アメリカはこの20年で圧倒的なソフトパワーの国になったが、その原動力が比較優位産業への集中とグローバル化だ。
比較優位をなくした重厚長大産業や競争力のない加工組立産業を切り捨て、比較優位を持つIT技術・サービスに特化したことによりインターネットを中心とした技術革新で圧倒的なポジションを作り上げた。
これがアメリカ全体の生産性を大きく引き上げ、圧倒的なソフトパワーを持つ大国に押し上げた。

もう一つがグローバル化で、アメリカのビジネスルールや慣行をグローバル市場に広げることに成功した。
つまり、3億人のアメリカ経済で成功すれば、そのまんま、70億人のグローバル市場で成功することが保証される・・・グローバル化により売上高を一気に20倍以上へ急成長させられる。
アップルもアマゾンもグーグルもファイスブックも同じパターンで急成長を実現してきた。


ところが、トランプは貿易赤字で搾取されてきたと思っている時代錯誤の大統領(あるいはそれを演じている)だ。
関税をいくら掛けようが、アメリカ製造業の復活はないし、アップルが自らアメリカに工場を建設することもありえない。
おそらくアメリカ政府の戦略的で優秀な人材がこの時代錯誤を利用して、中国の知財・IT戦略を徹底的に叩き、中国のスーパーパワー化を抑え込もうとしているのではないだろうか・・・この長期的な対中戦略が動き始めたといえる。
彼らは貿易収支の意味を十分に把握しているし、その上で対中国貿易摩擦を仕掛けている・・・ある意味、確信犯だ。
とすれば、今回の貿易摩擦にとどまらず、あらゆる次世代成長分野で米中は衝突を繰り返していくことになる。




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田舎の健康法(6温泉その2)

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温泉のある日常・・・田舎暮らしの健康法だ。
ワシの住んでいる山梨県北杜市には多くの温泉があるが、前回はワシの家に近いところにある温泉を紹介した。
家から歩いて行ける「天女の湯」、近くの大泉にある「パノラマの湯」、そして、小淵沢道の駅にある「延命の湯」と・・・ワシがごくごく日常的に通っている温泉だ。
今回はもう少し足を伸ばして、北杜市の名物温泉を紹介したい。

まず、圧倒的な存在感が光る「増冨の湯」だ。
中央道の須玉インターから30分ほど山の中に入り、瑞牆湖のさらに奥にあるちょっと風流な温泉だ。
増冨の湯という日帰り温泉もあるし、不老閣などの温泉旅館もあるのでいろいろ使い方がある。
ワシは日帰りの増冨の湯がお気に入りだ。

湯質はちょっと濁った茶色で、湯舟がたくさんありそれぞれ温度が違う。
35℃ぐらいの低温浴槽ではゆったりと20-30分浸かり、リラックスできる。
落ち湯もあるので、肩から背中で湯を受け止めて肩こりをほぐすこともできる。
熱い湯は40℃ぐらいだが。ゲルマニウムの岩石が中に置いてあり、ゲルマニウム温泉を堪能できる。
一回行くと1時間以上いろんな浴槽を味わえるし、リラックス度マックスな温泉だ。

次のお気に入りは、「フォッサマグナの湯」
国道20号をずっと下り、長野県との県境(富士見町)に近い所にある温泉施設だ。
ここは源泉が二種類あるのが特徴かもしれない。
1つは塩沢川に自然に湧き出ている、昔からの湯治場の源泉で、もう一つは地下600メートルの断層(フォッサマグナ)から湧き出している源泉だ。
昔からの湯治場の湯は温度の低い「ぬる湯の寝湯」で、ゆったりと横になり寝転んで温泉を味わうことができる。
この寝湯にゴロンとして20-30分ゆっくりするのもお勧めだ。
また、外には露天風呂は南アルプスの山々を目近に見ながら、ゆったりと浸かれる。
内湯の一番温度の高い浴槽は40℃を越える高温で、ジャグジー(背中のみ)も付いている。
でも、あまり長くは入ってられない。

そして、三番目のお気に入りは、「尾白の湯」だ。
ここは、北杜市の蕎麦屋で一番か二番の人気店である「久保田」から車で数分のところにあり、蕎麦を楽しんでついでに温泉にという人にはお勧めだ。
尾白の湯は「べるが」という山梨県のリゾート施設の中にある温泉で、他にもキャンプやバーベキュー、レストランで食事など楽しめる。
ここの特徴は源泉露天風呂の「赤湯」と名水露天風呂「白湯」という二種類の露天風呂があるところだ。
赤湯はミネラルを多く含む湧き出した温泉が酸化して赤みを帯びるということらしい。
温泉の有効成分を身体に浸透する感じで、なんか効果が高いような気分になる。
一方、白湯は甲斐駒ヶ岳からの伏流水を源泉に混ぜている露天風呂で、名水と源泉の両方を楽しめる。
内湯にはサウナ、打たせ湯など様々なタイプを楽しめるようになっている。

増冨の湯、フォッサマグナの湯ともにちょっと田舎の風情が漂う感じだが、尾白の湯は近代的な建物できれいな施設だ。
山梨県の温泉でも、この三つは人気上位にランクされるほどだろう。
是非、山梨に来たら、堪能してほしい温泉じゃな。



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ふるさと納税の経済学

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2016年度には2000億円を越え217年度には3600億円という巨額の寄付金が地方の市町村に流れた・・・地方創生の政策では唯一の成功事例がふるさと納税だ。
でも、都心の自治体が税金の流出に悲鳴を上げ、返礼品の競争過熱も響き、不公平と反対の大合唱・・・野田総務相が「ふるさと納税は存続の危機」と発言し、返礼率3割、地場品以外はダメと言い出した。
妬みや嫉妬・・・日本人の特殊な感情が噴出し、せっかくのふるさと納税を規制ばかりの魅力のない制度にしてしまうことが本当の危機だ。

経済学的考えると、ふるさと納税は大きく三つの効果がある。
第一に、単に税収が都会から地方の自治体に移動するだけではなく、返礼品を通じて地場産業を活性化させることだ。
例えば、諏訪市にふるさと納税をして、家電品を受け取ったとする。
10万円程度の寄付で、諏訪市の企業であるエプソンの製品(5万円分)がもらえる。
この10万円は2000円を差し引いて、ワシの支払った所得税と地方税から諏訪市に移されることになる。
諏訪市の税金が差引き4万8000円ほど増え・・・そして、5万円のエプソン製品を諏訪市が買うのでエプソン社に売上げが5万円計上され・・・そして、さらに諏訪市周辺の様々な部品会社や下請け会社に売上げの一部が計上されるという波及効果を生む。

第二に、返礼品を通してその地方の良い産物や製品を全国にアピールし顧客を開拓できることだ。
つまり、ふるさと納税は、返礼品の魅力で地方税収も増える効果もあるし、顧客の開拓もできる一石二鳥の制度なのだ。
しかも、ふるさと納税サイトが勝手に広告してくれるので、広告宣伝費もかからない・・・これが地場企業の大きなメリットになるだろう。

第三に、総務省が返礼率を3割以内と指導しているが、返礼率には意味がないことだ。
先ほどの例で、もし返礼率が3割ならば3万円を地場企業の売上げに計上し、諏訪市の税収がその分増え6万8000円になるだけの話だ。
つまり、諏訪市の税収4万8000円+地場企業の売上5万円か、税収6万8000円+地場企業の売上3万円かという違いだけだ・・・いずれにしろ地元に9万8000円落ちることは変わらないので、経済学的にはどっちでも同じだ。

税収の移転だけでなく返礼品の売上が波及効果を持って地方を潤すこと、返礼品の魅力で全国の顧客開拓ができること、さらに総務省の間違いだが返礼率がいくらでも実経済には関係ないこと、ふるさと納税の大きな経済学的効果だ。
その効果が非常に大きいにもかかわらず、総務省は不公平だとか都心の自治体がたいへんだとか偏った見方ばかりする・・・でも、そもそも地方におカネを回し地方経済を活性化するのが目的だから、税収が集中している都会の自治体には反対する権利がない。
役人が余計なことをしないことが一番だ。




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トランプ、西部劇の保安官説

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トランプが中国に最後通牒ともいえる2670億ドル追加関税を突き付けた。
500億ドルに対して25%の追加関税はすでに実施され、次の2000億ドルの追加関税も実施に移される可能性が出てきたところでの今回のブラフ2670億ドルの発言。
これで全部足すと5000億ドルを越え、アメリカの中国からの全輸入に相当する金額になる。
こんなことしたら、中国だけでなく、アメリカのハイテク企業にも大きな影響がある。

以前、6/29のブログで・・・
たとえば、iPhone。
部品の調達先は200社以上、クアルコムなど米企業40社以上、フォックスコンなど台湾40社以上、村田製など日本企業30社以上、サムスンなど韓国企業10社弱・・・・などなど。
しかも受託生産のフォックスコンが従業員100万人近い中国の巨大工場で生産する。
つまり、iPhoneは200社以上の企業が世界各地で生産した部品をフォックスコンやペガトロンなどの巨大中国拠点で組み立てて世界中に供給している。
じゃ、誰が関税を払うのか?・・・受託企業は生産を受託しているだけだし、輸入している米企業アップルが関税を負担するのも変な話。
要するに、国境のない企業活動に、追加関税という特定国を対象にした政策を押し付けることが無理筋だということだろう。
・・・と書いた。

トランプは次回の2000億ドル追加関税の対象品目にアップルウオッチを加える・・・「関税をゼロにする簡単な解決法は国内で生産することだ」と言い放った。
今回はiPhoneは対象外になるが、中国からの全輸入に追加関税を掛けると、グローバル・サプライチェーンで生産されているiPhoneなどのハイテク製品にも追加関税が掛けられることになる。
誰がどう関税を負担し、それがどうグローバルな販売に影響するのかは難しいが、一つ言えるのは「アメリカもただじゃすまない」・・・アップルの対応によっては波乱も考えられる。

なんか、トランプを見ていると、子供の頃見た西部劇(マカロニウェスタン含む)を思い出す。
西部開拓の町を悪漢たちが襲い、カネを奪い、美女を奪い、やりたい放題をする・・・正義のシェリフが町を守るため立ち上がり、悪漢たちを懲らしめる・・・そして、最後に言う「10数えるうちに出ていけ」・・・テン、ナイン、エイト、セブン・・・ゼロ・・・バキューン、バキューンと発砲音・・・悪漢たちは尻尾を巻いて逃げ出すというシーンだ。

トランプは正義の西部劇のシェリフを演じていて、悪漢=中国に「10数えるうちに出ていけ」と最後通牒を突き付けているという感じがする。
「早く降参しろ、さもなくば、追加関税を掛けてハチャメチャにするぞ・・・」とブラフをかけ、もうカウントダウンを始めた。
さてさて、この最後通牒に対して、中国はどう反応するのだろうか?

トランプは日本にも関税で圧力を掛けると発言したらしいが、日本は気が弱いので強硬な発言はしない・・・黙ってアメリカの言いなりになる???



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スルガ銀行でガバナンスを考える

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ここまで酷い銀行があったとは・・・
「かぼちゃの馬車」は不動産投資の問題点を浮き彫りにする事件として勉強してきたけど、スルガ銀はワシの想像をはるかに超えていた。
ヤクザ系金融業者の方がまだマシに思えてくるほどのハチャメチャさだ。

第三者委員会の報告書が公表されたが、スマートデイズの「かぼちゃの馬車」だけでなく、スマートライフの寄宿舎シェア、サクト・インベストメントのシェアハウス、不動産のガヤルドなどの問題業者を不動産チャンネルと呼び、彼らチャンネルと結託して、シェアハウスやアパートのオーナーへの不動産ローンにのめり込んでいく姿が描かれていた。
その過程では、組織的な不正融資、書類の偽装、過度なノルマ営業、組織的パワハラ、叱責や言葉の暴力、不透明な人事評価、人事異動の私物化、あらゆる不正のベクトルが同一方向に向き、営業部門では80%の一般社員が正しくないと思いながら仕事をしていたという。
だが、不正を正そうとする取締役も役員も社員も誰もいなかった。

一番の問題は内部監査が機能せず、取締役会ですら事態を静観していしまうガバナンスの欠如だろう。
社長、会長、取締役、社外取締役・・・彼の監督責任は非常に重いはずだ・・・第三者委員会でも「善管注意義務違反」として取締役の責任は重いと指摘している。
そして、会長、社長をはじめ5名の取締役が辞任したが、社外取締役も含まれなければならないはずだ。
元マイクロソフト社長の成毛眞氏、元マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナー大石佳能子氏は6月の株主総会で退任したが、事件当時の社外取締役だったわけで「善管注意義務違反」は、岡野会長と同罪だろう。
社外取締役だけでなく社外監査役も全く同罪で、退任する伊藤哲夫氏(静岡県弁護士会会長)もきちんと責任を取るべきだ。
社外取締役、社外監査役などは、第三者の視点から会社を正しい方向に導くガバナンス制度の根幹だったはずだ・・・少なくとも説明責任をきちんと果たしてもらいたいと思う。

もちろん、現場にこれだけの組織的不正の温床を作り上げた麻生治雄氏の責任は一番重いし、現場でパワハラしまくり、改ざんや偽装、あらゆる不正をやらせてきた罪は大きい。
でも、その麻生氏は執行役員のままで、取締役には選任されなかった・・・これは取締役会の正義感なのか? 会長がさすがにこの人ヤバいと思ったのか?
 経営者にしてはならない人格の欠如だったのか?・・・取締役に昇任できないほどの問題があったのなら、取締役会がこの麻生氏を止められなかったのは何故なのか? 
なぜ、これだけの優秀な人材を集めた社外取締役がいながら、長年にわたる組織的不正・法令違反を見逃してきたのか?・・・きちんと説明していほしい。
取締役会のあり方や内部監査のプロセスなど、さらに社外取締役・監査役の機能不全、これらはコーポレートガバナンスの生きた教科書だろうから、学べる点は多くあると思うんじゃ。

この第三者委員会の報告を受けて、「かぼちゃの馬車」だけでない、もっともっと大きな深い闇を抱えていたことが分かり、普通に考えたら預金は大量に引き上げられ、資金繰り悪化でスルガ銀行は破たんしてもおかしくない状況に追い込まれた。
収益不動産ローン残高は1兆9000億円にのぼり、スマートデイズ向けの2000億円なんて氷山に一角に過ぎなかったし・・・
貸出残高4兆円のうち、半分の2兆円が不動産融資、しかも多くはチャンネル経由のシェアハウス・アパート融資で、どこまで貸し倒れ損失が増加していくのか分からない。
ほとんど絶望的に見えてしまう。
最後にこれだけ悲惨な銀行を地銀の優等生として高評価し、税金を使って地銀を監督していきた金融庁もきちんと責任を果たしでほしいと思うんじゃ。・・・納税者をバカにしないで説明してほしい・・・元長官の森さん。



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ウィークリー雑感(9/9内部留保)

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株式市場を考える時は、できるだけいろんな人の意見に耳を傾け、いろんな記事や評論を読み、株式関係のテレビ番組も見る。
様々な見方・意見・評論に接することで、市場が今織り込んでいる事を想像できる。
そして、自分の考え方と比較して、何をどうすればリターンを上げられるか考える。
・・・と言うのは簡単だが、人の意見をちゃんと聞くのはけっこう苦痛なのだ。

先日、株式関係の東京MXテレビにエハラ・キャピタル・なんとか?いう会社の代表取締役と称するオッサンが出演していた。
盛んに、自社株買いや配当に積極的なアメリカ株を勧め、内部留保を株主還元していない日本企業は買う価値もないと言い放った。
これは海外を回れば必ず出てくる話題で、外人投資家が、動きの遅い日本の経営者にイライラして言うのは理解できる。
だけど、日本人がこれを言うとは信じられない・・・こっちがイライラしてしまった。
だいたい、評論家が使えなんて言う時に内部留保を使うとロクなことにはならない。

日本企業には膨大な内部留保の蓄積(過去の利益の蓄積である利益準備金だけで450兆円)があり、200兆円は現預金のまま保有されている(法人企業統計)。
これは将来自社株買いに使うこともできるし、AIやフィンテックのIT企業を買収することもできる良質な余剰資本だ。
過去の利益の蓄積である余剰資本を保有する企業に買う価値がないとはどういうことだろうか?
この良質の資本そのものに価値がないという論理をワシは全く理解できない。

株価が高い今の時期に、焦って余剰資本を使う必要は全くないし、企業買収も自社株買いにも良いタイミングではない。
じっくりバランスシートに貯めておくのがベストだ。
いずれ数年後には米国は景気後退期に入るし、株価は大幅な暴落をするかもしれないが・・・その時、この余剰資本が日本企業の救世主になる。
そんな苦しい時期に経営者が本気になって内部留保(現金200兆円)で、東証時価総額(650兆円)の最大30%の自社株買いをすればいい。
暴落時にBPS(一株純資産)以下の株価で自社株買いをするのが、もっとも効率が高い・・・プレミアムなしで自社株買いでき、発行株式数を効果的に減らせ、一株利益や一株配当を効率的に増やせるからだ。
それを考えたら、ヘッジファンドも迂闊に日本株を空売りできないし、長期では日本株は米国株を上回るパフォーマンスを上げているかもしれないのだ。
10年単位の長期で考えたら、余剰資本が拡大しバランスシート上に膨大な現預金が溜まっている状態は非常に重要で、その使い道が将来の日本株のパフォーマンスを決定するといっていいぐらいだ。

法人企業統計には重要な数字がたくさん盛り込まれているから、よく読んだ方がいいよ。



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銀行はもういらないのか?

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金融業界にはこのところ逆風が吹き荒れている。
文系男子の就活人気ランキング(2019年卒、マイナビ)を見ても、東京海上が2位、損保ジャパンが7位、野村證券が12位だが、銀行は三菱UFJ14位、SMBC17位、みずほ18位・・・
大手銀行がトップ10に入らなくなった。
ひと昔前まで大手銀行は官僚志望以外の東大卒、一ツ橋、早稲田、慶応卒などの優秀な学生の人気を集めていたが・・・最近は様変わりだ。

財務省の法人企業統計(18年4-6月期)を見ても、金融業界の変化が見える。
全産業の経常利益は+15.5%に対して、金融業界の経常利益は+0.9%と伸び率が低い。
全産業の人員+2.7%、人件費は+3.4%と増加しているのに対して、金融業界の人員は-0.5%、人件費は-2.7%と減少だった。
日本経済全体では人員数も人件費も伸びているのに対し、金融業界では人員数も人件費も減少した・・・四半期ベースで初めてマイナス・・・大きな構造変化が統計でも表れ始めたということだ。
預金、送金、クレジット決済など金融仲介などの伝統的業務だけなら、このネットの時代、インターネットバンキングですべて事足りる。
数百店舗ある支店数も数万人いる従業員数もいらないし、伝統的な銀行業務は縮小していく。
すでに大手銀行は店舗数や人員数の大幅な削減のリストラ計画として発表しており、それが現実に動き始めたようだ。

金融の技術革新はこれからもの凄い規模とスピードで始まるが、フィンテックを駆使するIT企業が金融サービスを拡大し、銀行は衰退していくのだろうか?・・・極端な評論家は銀行はいらないと言う、本当だろうか?
例えば、フィンテックのIT企業の融資仲介業務。
過去の財務や資金ぐりをAIで分析し、システム上で資金が欲しい企業を数段階に格付けし、格付けに応じた金利を設定することはできる・・・でも、誰が資金を出すのか? 一般の投資家が融資に参加するだろうか?
以前、お笑い芸人が絵本を作るために行ったクラウドファンディングを取り上げた(ウィークリー雑感7/1参照)が、個人が資金を出したのは善意の寄付でなく、立ち上げたビジネスによる優待品目当てだった・・・つまり、個人は絵本を買っただけで、賛同して支援したわけではなかった。
クラウドファンディングやICOには欲ボケしたインチキ野郎がたくさんいたし、そんな連中の中で個人投資家をちゃんと保護し、安心して資金を出せる仕組みを作るのは簡単なことではない。
結局、フィンテック企業の金融仲介でも同じで、欲ボケしたインチキ野郎を排除して、最後の資金出し手(個人)をどうやって確保するのかが課題になる・・・性善説では通用しない場合も数多くあるはずだ。
最後の出し手(個人)を直接掴めなければ、間接的な出し手として銀行や郵貯に頼らなければなくなる。

銀行には900兆円という膨大な預貯金が金利ゼロの預金口座に眠っている。
郵貯に177兆円、三菱UFJ銀131兆円、みずほ銀100兆円、三井住友銀98兆円・・・・
預金には安全性、金利などの収益性、決済などの利便性の三つの動機があるが、これらはただひたすら安全性を目的に預金口座に滞留する資金だ。
決済などの利便性を目的にした資金も少しあるが、ゼロ金利で収益性は全く問題にならない、だから、安全性の低いところ(フィンテック企業など)にはその資金は移動しない。
結局、銀行や郵貯が動かなければ、その膨大な金利ゼロで眠る資金は動かない・・・つまり、フィンテック企業といえども銀行や郵貯と組まなければビッグビジネスはできない・・・逆に言えば、銀行や郵貯をどう動かすかでフィンテック系の新ビジネスの将来が決まる。

中小企業や個人ビジネス向けの金融サービスはこれから本格的な技術革新で大きく変貌していくのは間違いないだろうが、そこで銀行や郵貯が演じる役割は予想外に大きいのではないかと、ワシは思っておる。
銀行株を安く買いたいなんて考えているのはワシだけだろうか?・・・ただし、大規模のリストラの後の話だが・・・



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リートの分散投資を考える(6商業リート)

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前回は内藤某評論家のリート評論についてちょっとイラっときてしまい、話がズレてしまった。
そこで今回はちゃんとリートの分散投資の話に戻したい。
というわけで今回は商業リートを取り上げてみた。

商業リートは大型ショッピングセンター、郊外型ショッピングモールなどの商業施設を保有し、テナントを誘致して賃貸料で収益を上げる。
日本リテール(8953)、イオンリート(3292)、ケネディクス商業(3453)、フロンティア(8964)などだが・・・じつは商業リートにはそれぞれ別々の切り口とリスクがあり一様ではない。

代表格のイオンリートだが、イオングループがスポンサーで強力なパイプラインを持つ。
イオンならではだろうが、GMSと呼ばれる大型ショッピングセンター(SC)が中心で、保有物件の8割はこの大型SCというリートだ。
また、フロンティアもスポンサーが三井不動産であり、三井ショッピングセンターや三井アウトレットパークなどの大型SCが総資産の44%を占める。
でも、逆にこのことが投資家の不安を煽っている・・・米国ではウォルマートなどの大型SCからアマゾンなどのEコマースに大きくシフトしてきているからだ。
日本でも大型SCの集客力に疑問を持つ投資家が増えているのだろう。
今のところ、イオンモールにしても三井アウトレットパークにしてもで集客力があり、安定した収益を上げていて問題はない・・・特にワシのように山梨の田舎に住んでいると、イオンの集客力の高さにはまさに脱帽だ。
イオンモールの甲府がちょっと前にオープンしたがものすごい人気で、山梨の子供たちのあこがれのTDLみたいなものだ。
たいした娯楽のない田舎にあっては、単に買い物だけでなく、家族みんなで楽しめるエンターテイメント施設なのだ。
日本での大型SCやアウトレットモールは米国とは違うかもしれない。

大型SCやGMSなどの大型商業施設から戦略を変化させているリートもある。
最大の資産規模を持つ日本リテールは郊外型の大型SCの比率をさげ、主要駅に近い都市型やプライム立地の都市商業施設のウェートを引き上げてきている。
商業施設の魅力を引上げ、集客力を上げることを上げる基本戦略を取っており、リート運用会社がリーダーシップを取って収益力の引き上げを行っているところにも特徴がある・・・リニューアル工事やテナントの選別などもリート運用会社が戦略的に行っている。
一方、イオンリートやフロンティアはスポンサーの戦略により大型SCの運営はされており、ここに大きな違いがみられる。

また、ケネディクス商業リートもイオンやフロンティアとは違い、大型SCやGMSから日常型/生活密着型へとシフトしている。
テナントの属性を見ても、食品が24%、サービス10%、スポーツ5%・・・と、生活に密着した店の出店が増えている。
これによってEコマースの急拡大の影響を最小限にしようとしているわけだ。

分配金利回りを見ると、小規模のケネディクス商業が5.2%と最も高く、強力なスポンサーを持つイオンが4.9%、フロンティアが4.5%、そして、日本リテールが4.3%と最も低い。
イオンやフロンティアの高めの分配金利回りは、Eコマースの台頭で大型SCの集客力が低下する可能性を織り込んでいるかもしれない。

財務面ではLTV(ローン・トゥ・バリュー)で40-49%で遜色はない。イオンやフロンティアはそれぞれイオングループ、三井不動産グループがスポンサーにあり安定感が強い。
日本リテールは自社株買いを実施し自社株を償却したが、財務面の余裕を示したものとして注目される。
いずれにしろ、日本の商業施設が大型SC中心で展開していくのか? それとも、米国のようにアマゾンなどのEコマースが中心になり大型SCは集客力を失っていくのか? あるいは、ネットとリアルが融合して新しい業態が生まれていくのか?・・・
リートのサブセクターの中でも、商業リートの運用はきわめて興味深い。
その他、注意する点は頻発する雨や風や地震などの自然災害だが、こればっかりは読めない。



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新興国の危機をどう見るか?

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ずっと問題を抱えて政治も経済もドタバタしてきたベネズエラやアルゼンチンだけでなく、先月にはトルコが通貨安に見舞われ、通貨防衛の利上げに追い込まれそうな展開だ。
それに加えて、今週はインドネシアの通貨ルピアが売られ、株価も下落した。
米国が引締め政策(金利高)政策を取りドル実効レートが上昇する(ドル高)局面では、資金がファンダメンタルの強い先進国に流れるのはよくある事で、先進国への資金還流により新興国には漠然とした不安が蔓延している。

そもそも新興国は資本の蓄積が不十分で、海外の資金に頼った景気回復をしてきているので、米国の金利・ドル高によって資金の流れが変調すれば、通貨安や株安に見舞われやすい。
これが明確で出たのが、もう20年前になるが、アジア通貨危機だ。
1990年代中盤のアジアは、中国やアセアン諸国の経済成長で景気が急速に立ち上がっていた時期で、特にタイ・ベトナム・インドネシアなどアセアン諸国では好調な国内景気が通貨危機を引き起こした。
要するに、国内景気が好調で輸入が増え、それによって国際収支の赤字が拡大し、それまで大幅に流入してきた海外の短期資本が一気に逆流(ヘッジファンドの攻撃も含む)し、ドルペッグ制度を破壊した・・・それを米国の金利高・ドル高局面がさらに拍車をかけた。
そして、この短期資本の急激な流出が新興国通貨を暴落させ、通貨防衛のため短期金利を数十%という極端な水準に上昇させた。
これでアセアン諸国の国内景気が一気に冷え込み、アジア危機と呼ばれる地域経済の混乱を招いたという一連の流れが見られた。

でも、今回の新興国の動揺とはずい分違っている。
第一に、新興国、特にアジアの国々は20年前の通貨危機の時とは異なり、資本の蓄積が進み海外の短期資金頼みの経済からすでに脱却していることだ。
経常収支/GDP比率を見てみよう。
シンガポール+18.8%、台湾13.8%、タイ+10.8%、ベトナム+4.1%、マレーシア+2.9%まで経常黒字だし、GDP比でも余裕がある。
一方、フィリピン-0.39%、インドネシア-1.7%、インド-1.96%と経常収支は赤字だが、わずかな赤字にすぎない。

第二に、通貨が暴落したトルコやアルゼンチンは経常収支が大幅な赤字で、しかもそれぞれ-5.5%と-4.8%とGDP比5%程度の大幅な赤字を計上しているが、他の大幅な経常赤字国に通貨動揺のコンテイジョン(伝染)が起こっていないことだ。
ここがアジア危機の時との大きな違いだ。
ずっと危機状態にあるベネズエラやアルゼンチン、そして今回のトルコと、単に米金利高・ドル高から派生した国際資金の流出問題ではない。
国内政治体制や政治指導者が対先進国に対して引き起こした国内政治問題も、自国の通貨安を招いている要因の一つだからだ。
これらの政治的要因は、各国ともそれぞれの事情に違いがあり、単純にコンテイジョンが起こるわけではない。

この二つの点から、1997年のアジア危機前後の状況と今回のグローバルな状況は異なっているとワシは考えておる。
ただし、米国の引き締め政策が続き、特に新興国通貨に対してドルがさらに上昇していく局面では、基本的に国際資金は米国を中心とした先進国に回帰することは頭の隅には入れておきたい。
あとは中国をよく見ておくことだろう。



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かぼちゃの馬車、自己責任か詐欺か

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素人の不動産投資として、ワンルーム投資とリート投資の比較を全8回にわたり書いた。
その最終回(5/11)で不動産詐欺に気をつけようということで、「かぼちゃの馬車」問題を取り上げた。
この「かぼちゃの馬車」には欲深い人たちが作り上げた数々の闇があり、不動産投資の自己責任を考える格好の教科書になると思うんじゃ。

まず、シェアハウス投資家の自己責任。
一件1億円以上のシェアハウスを買って儲けようと欲をかいたことだ。
頭金なしで1億円を借りるという非常識・・・いくらスマートデイズへのサブリース収入で金利支払いをカバーできるとはいえ、サブリースには契約期間があり一定期間後見直しになるのは通常で、普通、契約書に書かれているはず・・・要するに不労所得という欲に目がくらんで、契約書をよく読まなかったということだろう。
オーナー投資家はシェアハウスを売却すれば、それで発生する数千万円単位の損失を自己資金(自宅売却など)で埋めるか、自己破産して債務を棒引きするかを迫られる。
融資条件の緩和で利払いを続けられる場合も、シェアハウスの空室を埋めるため格安賃貸する必要があるかもしれない。
事実、かぼちゃの馬車が多く建てられた足立区や豊島区では、格安賃貸物件が出回っているらしい。
いずれにしろ、地獄が待っている。

次に倒産したシェアハウスの運営会社、スマートデイズの自己責任。
サブリースが永遠に続くかのような甘言で投資家を惑わし、スルガ銀行と組んで甘い融資条件で契約したこと(融資資料の改ざんもある)・・・これ自体、かなり詐欺的じゃな。
結局、空室率が高く、サブリースの保証家賃を払えなくなり、あえなく倒産・・・これで責任を取った形・・・でもそれだけでは済みそうもない。
スマートデイズの元社長は7000万円ぐらいの給料をもらっていたらしいし、民事訴訟などが次々来るだろう。

そして、今の問題になっているスルガ銀行の自己責任。
金融庁の森前長官から「ニッチで稼ぐ地銀」として高い評価を受けたが・・・預金量4兆円、貸出残高3兆円2000億円、貸出利回り3.6%の地銀の優等生は、社長が号令をかけた無理な融資姿勢で出来上がっていたわけだ・・・ここに大きな経営責任が生じる。
と考えると、スルガ銀の問題は不良債権の急増という経営問題になる。
シェアハウスのオーナー投資家は1200人以上で、一人あたり1億円以上の融資をしていたわけで、この関連融資の合計は2000億円程度(社内調査?)・・・株主資本は3200億円であり、今のところ債務超過はなんとか避けられそうだが、厳しい経営状況は続く。

このスルガ銀の4-6月期決算で確認してみよう。
破たん先債権  29億円(18/3)⇒   34億円(18/6)
延滞債権   623億円    ⇒  901億円・・・6か月金利支払いのない債権
3か月延滞   13億円    ⇒  180億円・・・次の延滞債権の候補、伸びが高いのが問題
条件緩和債権 125億円    ⇒  315億円・・・融資条件を緩めて利払いを続けている債権
合計不良債権 792億円    ⇒ 1430億円

「かぼちゃの馬車」関連の不良債権はこの4-6月期に計上されているが、3か月延滞債権の伸びを見ると、まだ増加する可能性がある。
ただこれにより株価も2700円台から500円台まで5分の一に急落し、創業家や株主は自己責任を取らされたし、おそらく経営陣も創業一族を含めて退任という責任が取らされる。
報道ではこの創業家の関係法人に500億円の融資を金融庁が問題視しているらしいが、「かぼちゃの馬車」よりガバナンス問題が大きくなりそう・・・退任だけでは済みそうもない気配だ。

「かぼちゃの馬車」については、オーナー投資家は数千万円の損失という形で、運営会社は倒産と賠償責任という形で、銀行は不良債権と評判悪化という形で、役員は退任という形で、創業家や株主は5分の一という株価下落で、各人各様に自己責任を取らされたといえる。
・・・というわけで賃貸アパートやワンルームマンション投資の問題点がすべて凝縮されている格好のビジネス教科書だ。
不動産投資の自己責任の厳しさをよく認識しておくべきだろう。
詐欺的な部分、特に、融資契約時の通帳や書類の改ざんや運営会社の営業姿勢等々の詐欺が立証されれば、訴訟でいくらか保障されるかもしれないが、自己責任の重さを痛感すべきだろう。



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銀行の窓販投信で損するのはなぜ?

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今まで普通にそうだろうなと想像していたことが、金融庁の調査で明らかになった。
それは銀行窓口で投信を買った人の損益状況(投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIを用いた分析・・・とても官僚っぽい感じのタイトルだな)だ。
金融庁が主要9行と地銀20行を対象にアンケート調査したもので、投信の購入時点の評価額と、今年3月末の評価額(手数料、コスト込み)を比較して、46%の顧客が評価損失となっていた。
SMBCの顧客では60%がプラス評価、40%がマイナス評価・・・みずほ銀の顧客では54%がプラス評価、46%がマイナス評価・・・と続く。
さらに35%の顧客がー10%から0%未満であった・・・ということは11%の顧客はー10%以下のリターンだったというわけ。

金融庁をはじめ多くの評論家は、投資家の損失の理由として、銀行や証券会社で扱う投信のコストの高さを上げる。
販売手数料で3%程度、さらに毎年の信託報酬で1.5%程度(株投信の場合)と、投信を購入した最初の年は合計4.5%のコストがかかり、パフォーマンスを圧迫してしまう。
その背景には投信販売会社(銀行・証券など)の利益がすべてに優先し、系列の運用会社はハイハイと従うだけという日本の投信業界の悪い慣行がある(投信ガラパゴス日本を参照)。
このコストの高さが投資家の損益状況に影響しているのは間違いないだろう。

でも、かと言って販売手数料のない「ノーロード投信」や信託報酬の低い「インデックス投信」を買えばすべて解決するわけではない。
インデックス投信のみに投資すれば、確かにコストは低くなる・・・でも、だからといってリターン(益)が高くなる保障はない。
コストとリターンは全くの別物で、コストが高いからリターンが低いわけではない。
金融庁や評論家の間違いは、そもそも、リターンについて理解が不足していることだ。

リターンにはアルファとベータがあるが、インデックス投信で得られるリターンはベータだ(詳しくはアルファとベータの話を参照)。
そして、このベータは市場リターンそのものであり、努力や能力で上げられるものではない。
市場が上昇すればリターンが上がるし、市場が下落すればリターンが下がるだけのものだ。
要するにコストの安いインデックス投信を買えばいいという議論は、市場が上昇するかどうかにすべて賭けるということにすぎない。
逆にアルファはファンドマネージャーの能力で上がるリターンであり、良いファンドマネージャーを選択すれば、アルファ・リターンが上がる可能性が高くなる。
アクティブ投信を買うということは、市場のリターン+アルファ(ファンドマネージャーの能力)を得ることが目標で、良質なアクティブファンドに投資すればインデックス投信よりずっとまともなリターンを獲得できる。
結局、コストの安いベータだけのインデックス投信を買うのか、コストが高いけどベータに加えてアルファも取れるアクティブ投信を買うのかは個人の選択の問題だ・・・金融庁にとやかく言われる問題じゃない。

では、銀行の窓販投信で損するのはなぜか?・・・
顧客の利益より自社の利益が優先する投信ビジネスの慣行が問題だし・・・金融庁や評論家の大きな間違いはコストしか見ていないことだし・・・さらに、銀行や証券会社の投信販売の間違いは、良質なアクティブファンドを見極める眼がないことだ。
この良質なファンドマネージャーを見極めることは簡単ではないが、運用コンサルタントは毎年多くのファンドマネージャーにインタビューして定量(パフォーマンスなど)と定性(ファンドマネージャーの質)両面の評価を行っている。
こうしたコンサルタント評価を使うことで、少しはマシになるだろう。
でも、話題の多い売りやすい投信ばかり売る体質が変わらない・・・これが最大の間違いだ。




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雑草テロとの戦い(5白旗)

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今年の雑草テロとの戦いも終盤を迎え、相当タフな状況に追い込まれてきた。
わずか三週間で雑草が数十センチにも大きく育つような状況では、すべての対応が後手後手になってしまう・・・ちょっと東京に戻っていて、清里に帰ると雑草が見違えるほど成長し・・・ボーボーになっている。
右の写真は雑草テロへの防衛ラインとして、土を30センチ程度掘り、その上に砂利を敷きつめた部分だ。
左の写真は、そのわずか3か月後に砂利部分が雑草に覆われてきた時のものだ。
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無残にも雑草が生い茂り、砂利を敷きつめた雑草テロ防衛ラインが破られてしまった。
1.5トンの砂利を車で運び、土を20メートルに渡って掘り、雑草の根っ子を取り除き、2週間もかけて苦労して作った雑草防衛ラインがいとも簡単に破られってしまった・・・残念、ガックシ。
雑草テロに対する根本的な考え方に甘さがあったとしかいえない。

まず、今年の雑草テロ対策の反省点だ。
1.砂利を敷きつめても、わずかな隙間から雑草は生えてくる。
 一旦生えるとどんどん巨大化し、その雑草を引き抜くと大きな穴が砂利の中でできて、さらにそこから雑草が生えてくるという悪循環に入ってしまう。
2.雑草の伸びるペースは異常に速い。
 ずっと田舎に居られれば問題ないかもしれないが、行ったり来たりの生活をしていると、わずか3週間離れただけで雑草がボーボーになる状況では対応できない。
3.草刈り機を使うときは、砂利の上は使いにくい。
 草刈り機の歯が砂利に直接当たると歯を損傷してしまうので、草刈り機を砂利の当たらないように高い位置で使うことになる。・・・雑草が残ってしまう。

というわけで、今年の雑草テロ対策はワシの負けで終わった。
当面は、草刈り機で手当たり次第、切りまくるだけが対抗策だ。
それでも雑草は強く生えてくる。
恐るべし雑草テロ。

なお、友人から聞いた、熱湯を雑草にかけて殺す方法だが、たしかに効果はあった。
ただ、広い面積に熱湯をかけるのは、湯沸かし、それを運び、均等に熱湯を雑草にかけていく・・・その作業はとても大変だ・・・一部の雑草除去には効果的だった。



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ウィークリー雑感(9/2小ネタのパズル)

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今週起こったことは、それぞれ小ネタだが、それをパズルのように組み合わせると何かが浮かび上がるかもしれない。

まず、今週の小ネタを確認しておこう。
1)サウジ、予定していたサウジアラムコIPOの中止を発表・・・200兆円の時価総額が予想されていた超ビッグなIPOだが、おそらく、需要調査でサウジの思惑の価格を下回ったのだろうか、突然中止が報道された。
でも、これで10兆円レベルの資金が既存市場から吸い上げられる事態は避けられた。
グローバル市場には朗報じゃ。

2)テスラのイーロンマスク、MBOを断念・・・これもサウジのPIFがサウジアラムコのIPO中止で資金計画が狂い(?)、テスラにMBOのタネ銭を出せなくなったのだろうと思うんじゃな。
価格操作の疑念や中国への大型投資などで、イーロンは苦しい立場に陥る可能性もある。

3)米、メキシコの貿易合意・・・合意内容は域内部品調達を62.5%から75%に引き上げ、自動車製造工程の40-45%を時給16ドル以上の地域で行う、という骨子が発表された。
でも、これなら各自動車会社が対応可能な条項だろうし、カナダも参加できるかもしれない。
人手のかからない自動化されたラインを時給の高い地域に、労働集約的な工程を時給の低いメキシコに残せばいいだけだからだ。

4)ポンペオ長官の北朝鮮行きが中止・・・北朝鮮との思惑の違いは当然あるわけだが、トランプは背後にいる中国を非難した・・・ここにポイントがありそうだ。
急激な非核化が北朝鮮軍関係者に不安を与え国内を不安定することを金正恩は懸念しているということだと思うし、イランの再制裁やポンペオ長官の訪北中止など、トランプの無言の圧力が徐々に効果を出してきた。

5)中国官僚の訪米も結論なし・・・米中の関税引上げ競争が限界点に近付く中、注目された米中の次官級の交渉だったが、何も結論が出なかった。
中国側の歩み寄りも蹴られた格好で、最後は、習近平とトランプの直接対話になるのか???

小ネタをパズルのように組み合わせると、やはり、中国が浮かび上がる。
すでに欧州では自動車を除いて米ーEUの合意が結ばれているが、北米でも米ーメキシコのNAFTA合意、さらにカナダも加わる可能性もある。
アジア地域以外で合意ができ、米中貿易摩擦の外堀を埋め、最大の貿易対立を残している中国に圧力をかける動きを強めていると思われる。
北朝鮮の非核化もカードとして使い、トランプは習近平に無言の圧力をかけている。
米中次官級会談にしても半端な妥協策では飲めないと意思表示したもので、対米黒字のコントロールだけではなく、ハイテク製品の知財権問題に踏み込んだ解決策を中国に要求しているのだろう。
2000億ドルの追加関税対象をチラつかせながら、習近平に圧力を掛け、譲歩を迫る・・・さてさて、圧力をかけられた習近平はどう出てくるのだろうか?
中国では北戴河会議も終わり、いよいよ最終場面が近いのだろうか。



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朝日生命は体操から手を引くべきか?

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体操宮川選手に対するパワハラ疑惑で、朝日生命体操クラブの塚原女帝が話題だ。
再びワイドショーに救世主(ワイドショーの救世主たち8/10)が登場したようなもので、各テレビ局はこれで視聴率が取れると生き生きとし始めた。
それにしても日大の内田氏、女子レスリングの栄氏、アマボクシングの山田氏・・・そして体操の塚原女帝・・・と、よくまあ飽きずに同じ構図のセクハラ・パワハラがスポーツ界で起こるものだと感心してしまう。
ずっと長い間、裸の王様として君臨してきた独裁者が「王様は裸だ」と指摘され、ボロボロに批判され最低評価に引き下げられたようなものだ。

でも、体操クラブをずっと前に廃部、現在協賛だけしている朝日生命にはとんだとばっちりだ。
毎日、毎日、朝日生命体操クラブとテレビで大騒ぎ、非常に印象が悪くなっている。
さらにネットでは朝日生命・解約祭りと大騒ぎされている・・・単なる風評なのか?それとも本気で解約が殺到するのか?・・・どっちかはまだ分からないが・・・
朝日生命の2017年度の決算公告を確認すると、一応300億円以上の経常利益を上げているが、中身に問題が多く、今後解約祭りが騒ぎになるとマジでヤバ いかもしれない。


保険料等収入 3849億円・・・・保険料3834億円

資産運用収益 1665億円・・・・利息配当1099億円、有価証券売却益467億円(国債448億円

その他    1006億円・・・・責任準備金戻し入れ 832億円

収入計      6522億円

 

保険金等支払い 4389億円・・・保険金1248、年金1298、解約返戻金957、給付822億円

資産運用費用   385億円

責任準備金繰り入れ 10億円

事業費     1023億円

その他経常費用  338億円・・・体操クラブへの協賛金は不明だが、その他項目で12億円計上

費用計       6146億円    

 差し引き 経常利益 375億円


保険金・年金・解約返戻金の支払いが多く、保険料等収入より保険金等支払いが540億円も上回っている。
将来の保険金に払いのための責任準備金も「繰り入れ」より「戻し入れ」の方が多く、保険契約が減少しているのを暗示している。
この責任準備金の戻し入れによって、やっと経常利益をプラスにしているような有り様だ。
有価証券売却益にしても、日銀の超低金利オペがあるので国債で売却益を出しただけで、運用能力で上げているわけではない。

体操クラブ名から朝日生命を取った方がいいし、協賛もやめた方がいい。
その他項目で12億円の費用計上しているが、そのうちいくらかが体操クラブへの協賛金なのだろう。
その契約にオリンピック強化選手数などが入っていれば、宮川選手のクラブ移籍のためにコーチを追放したと受け取られてもおかしくないし、朝日生命の印象はさらに悪くなる。
実はワシの朋友が朝日生命に勤めていた関係でとても愛着のある保険会社だったが、サッサと塚原女史と縁を切り、朝日生命体操クラブの名前を変更すべきじゃとワシは強く思うんじゃな。



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株式需給の達人(おもしろ相場格言)
「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
株式需給の達人(バリュエーション)
PERやPBRなどバリュエーションを理解し割安/割高の実践的判断の基に理論的な株式投資を解説します。 割安とは将来のリータンを示すのか、単に成長性がないというだけなのか、事例をもとに解説します。 株式投資の基礎として大切なもので、是非一読をおすすめします。
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