
前回までに東証の公表データである投資部門別売買状況(現物と先物)の数字を分析し、主要な投資主体の特徴や動きの見方を考えてきた。
今回はそれらのデータを踏まえた上で、日本の株式市場について総合的な需給の見方を取り上げてみたい。
まず株式需給の中での外人投資家についてだ。
いろんな評論家がよくあきらめたように言う、「日本の株式市場は外人次第」で外人が買えば上がるし、外人が売れば下がる・・・と。
日本人には自国の株式価格を決定する力がないということだろうか?
外人投資家のコーナーで紹介したが、外人と一括りに言えないほど多様化している。
最も価格に影響力があるのは、ヘッジファンド、外資系証券会社の自己売買、アルゴリズムトレーダーあたりだろう。
彼らは意図してマーケットインパクト(株価を動かすインパクトのこと)をかけた売買をするからだ。
かつてヘッジファンドの連中が「日本市場はたやすい、株価を強引に3%動かせば、あとは日本の中小投資家がトレンドフォローしてくれるので自動的に儲かる」と言っていたのを思い出す。
昔証券会社にいた時、売り決めといって、大口の成行売りを出して下値で証券自己に株を引き取らせるという売買手法があった。
ソロス一派のファンドマネージャーなどがよく使っていた手法で、確かにその後、慌てた日本投資家が続いて売り出すので株価は瞬間的に急落したのをよく見た覚えがある。
でも、これはトレンドではなくノイズ(瞬間的な振れ、雑音)なので、ワシたちプロップ(自己勘定運用)は大きく下げたところを逆に買いを入れたこともある。
逆に同じ外人でも長期投資家はできるだけ安く買い/高く売ろうとするので、マーケットインパクトをかけずに株価を動かさないように売買しようとする。
典型的なのは巨大ソブリンファンドや大手海外年金だ。
証券会社の営業マンがソブリンファンドを注文を受けると、コンフィデンシャル(他に動きを伝えるな)だと念を押されることが多い。
大口の売買をするだけに市場の噂が広まってチョーチン売買(コバンザメのように張り付いて売買する)が付くのを避けようとする。
ただ、売り買いする数量がバカでかいので、結局、市場は彼らの売買に沿って動いてしまう。
だから、外人の1兆円以上売買は、背後でこうした大型の長期投資家が動いているのが普通で、結果的に市場は大きな影響を受けてしまう。
今年の年初からの急落はかなり大きな投資家が動いた結果だということだ。
外人投資家でもトレンドを作る長期投資家(ソブリンファンドや大型年金など)と、短期のノイズになるトレーディング中心のファンドは分けて考える必要がある。
証券会社の自己勘定(日系も外資系も含めて)やアルゴリズムトレーダーなどは、使える資金の枠やリスク枠が決められており、資金枠・リスク枠を使い切れば逆にポジションを縮小するしかなくなる。
というわけで、買えば売る、売れば買うというのが基本行動だ。
だから、長期にわたってネットの買い越しを続けることできないので、長期のトレンドには影響しない。
日本の株価は外人次第・・・確かに巨大な海外投資家が日本株のウェートを引き上げる時は、大口の買いが続き、株価は上昇する。
しかし、短期トレーダーたちが大きく動いたからといって、彼らが株価を決めるわけではない。
実は短期トレーダーたちは東証の売買高の半分以上の売買をしており、動きが派手でよく目立つ。
でもそれらはノイズでありトレンドではないから、この派手な動きに右往左往しないことが大切だ。
長期トレンドを決めるのは、地味な買い手だがネットで大幅な買い越しをする可能性のある海外年金、国内年金、グローバルファンドなどがだろう。

にほんブログ村