株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版の「株式需給の達人(おもしろ相場格言編)」を出版しました。
既刊の「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」「チャートの達人」「個人投資家の最強運用」「株式需給の達人(基礎編)」「株式需給の達人(投資家編)」とともに一読をおすすめします。

2018年05月

オマーンの国家ファンド SGRF

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オマーンはペルシャ湾の出口と言うよりインド洋に開かれたと言った方がいい、アラビア半島の先っぽにある国だ。
アラビア半島の国というと広大な砂漠と砂嵐という印象だが、オマーンは他のアラビア半島の国と大きな違いがある。
それは山があるということだ。
だだっ広い砂漠の国ではなく、険しい山でサウジアラビアと区切られ、反対側はインド洋という大海原で自然の要塞のように守られている。
そのせいかオマーン人はおっとりした感じで、普通のイスラムとはちょっと違う独自の文化を持っている。

マスカット空港に着くと、まず眼に入るのがオマーン人の円筒形の帽子だ。
多くの中東国でみられる、頭に布をかぶり黒い輪で頭に固定するというスタイルとは明らかに異なる。
リャド空港やクウェート空港のような緊張感のある空気はなく、南国のリゾートに来たような妙な感覚にとらわれる。
なんか、おっとりした人々とリゾート感覚でホッとするのがマスカット空港だ。
入国ビザが必要だが、ドルやユーロで3000円ぐらいを現地で払えばそれで終わり、誰でも簡単に入国できる。

いつもホテルはグランドハイヤットだが、このホテルは古い伝統的な低層の建物でインド洋に面しているので、さらに浜辺のリゾート感覚が増してくる。
朝食は屋外のテラスでのブッフェスタイルだが、インド洋の大海原を見ながらゆっくり朝のコーヒーを飲むと仕事で来ていることさえ忘れてしまいそうになる。
それほどリラックスできる場所は、常に緊張感のある中東ではめずらしい。
カーブース国王のもとで政治はきわめて安定しており、治安も他の中東の国よりずっと良い。

そのオマーンの国家ファンドがSGRF(ステート・ジェネラル・リザーブ・ファンド)で、オマーン財務省直轄の運用機関だ。
原油や天然ガスは産出されているが規模は小さくGDPはおよそ600億ドルと世界70位水準で、当然国家ファンドの規模も2-3兆円ぐらいと推定される。
いつもダイレクター氏がミーティングに出てきて、マーケット状況から日本の投資家動向、市場見通し、推奨運用プロダクトなどの説明をすると、非常に熱心に聞いてくれる。
質問も多く議論は活発だが、ADIAやKIAなどと比べ洗練された投資家という印象はない。
でも、非常に感じの良い人で知識をどん欲に吸収したいという意欲がいつも感じられる。
現在の運用は株式よりも債券中心で安全指向、株式についてもグローバルインデックス運用が中心でリスクを抑制する運用方針なのだろう。
グローバルな新興国ファンドや社債を含めむグローバル債券ファンドが議論になった。
アクティブ運用は当時やっていない様子だったが、リターン水準を引き上げたいという考えもあって検討をしているというレベル。
オマーンだけあって安定的なグローバル運用を中心に着実な運用をしているという印象だった。

ちなみに首都マスカットで葡萄のマスカットが取れるわけではない。




実戦的バリュエーションの話(5 ソニー)

前々回からPBRについて見てきた。
PBRは企業の資産価値をもとにした株価評価だが、バリュートラップ(万年割安株にはまる)をうまく避けないとリターンは上がらない。
そのためには正確な資産評価、資産のクオリティ、そして業績ターンアラウンドを判断する必要がある。

もう時効だと思うので、実際に運用会社で起こった「ソニー論争」を題材にPBRを使った運用の実例を考えてみたい。
それは2012年から2013年のことだった。
ソニーは2012年3月期に5200億円の大幅な赤字に陥った。
日本のエレクトロニクス業界は、主要なデジタル製品で新興国の追い上げを受けた競争激化、リーマンショック後の1ドル=80円台への超円高で大きな打撃を受け、いかにソニーといえども例外ではなかった。
こうした状況下、ワシのいた運用会社のバリューグループが果敢にソニー株を買い始めた。
このグループはPBRを基本に運用を行っていて、ソニー株のPBRが2012年には1倍を割れ、割安となったため大きく買い注文を入れた。
ところが、運用に関係のない一部の役員が異を唱えはじめた。
それは日経新聞が2012年6月に「PBR1倍割れ、それでも買えない日本株」という特集を載せ、多くの株式評論家(山崎元など)が「市場が企業に与えた経営者失格の烙印」とコメントしたり、世の中ムードがこれらの運用を知らない役員たちに影響したわけだ。
これで社内がもめた。
運用については運用部門の専管事項で投資判断は尊重されなければならないはずなのに・・・ソニーが急落したら顧客にどう言い訳するんだとか言いたい放題の言われ様だった。

ではその時、ファンドマネージャーは何を考え、ソニー株を大口保有したのか?
まず、PBRのB(ブックバリュー)の精査だ。
2011年3月期のソニーの一株あたりブックバリューは2538円で、株価は0.7倍と1倍割れ。
2012年3月期に米国事業の繰延べ税金資産の引当を実施し赤字額が2000億円増加し、5200億円の最終赤字を計上した。
繰延べ税金資産はちょっとややこしいのでここでは説明を省くが、要は過去の赤字に対して前払いした税金分が将来の利益で戻ってくることを前提として資産に計上するものだ。
とにかく将来の収益予想が引き下げられると繰延べ税金資産も減額されるのだが、これはあくまで会計上の問題で実際に資金が流出するわけではない。
最終赤字分をブックバリューから引き下げても、一株あたり1900円の水準は維持され、PBR1倍割れの割安は変わらない。
しかもソニーの資金は流出するわけではないのでその分を将来のリストラに使える。

もう一つは金融部門、映画やゲームなどのコンテンツ部門など他の部門が順調に安定した業績を上げていること。
今後行られるエレクトロニクス部門の縮小やリストラで部門収益は赤字解消されれば、エレクトロニクス以外の成長によりソニー全体の業績は回復に向かうという読みだ。
実際、ソニーはテレビの分社化やVAIOの売却、大崎の本社ビルの売却などリストラ策を次々行っていった。

つまり、PBR1倍割れ+資産のクオリティの精査と業績ターンアラウンドの検討というPBR投資の基本を忠実に実行したといえる。
その後、ソニーの株価は1000円台を脱し、アベノミクス円安の波に乗って上昇。PBRも2倍近くまで上がっていった。
結局、このソニー論争はファンドマネージャーの軍配が上がった。
その時、株価が戻ってしまうと皆知らんぷりをきめ込む・・・想定通りの反応だな。



田舎に家を持つ(12 住のコスト総集編)

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田舎暮らしのコストを考えるコーナーじゃ。
田舎暮らしは安上がりなのか?衣食住のコストを取りあげ考えてみた。
前回は寒い田舎暮らしに必要な住のコスト(暖房費や電気代やガス代)を取りあげた。
今回はその他を考慮して住のコスト全体で安いか高いかを考えてみた。

まずは水道代。
八ヶ岳周辺地域の水は基本的には湧き水だ。
冬の間、八ヶ岳に積もった雪が春になり溶け出し、地下水として八ヶ岳の地下に蓄えられる。
これが湧き水となり、八ヶ岳周辺地域を潤す。
三分一湧水が有名だが、このあたりの農業用水から生活用水まで地下水が使われるので、水はとてもおいしい。

三分一湧水という呼び名は、昔三つの集落が湧き水を争った時、当時の3人のボスが集まり湧き水を三等分することを決めたことに由来しているらしい。
今でも湧き水が水路を通じて三つの分岐していく様子が見られる。
貴重な水資源をうまく公平に分ける昔の人に知恵を見る思いだ。
ちなみにその三分一湧水の近くにはおいしいミ水を利用した蕎麦屋があるので近くにお越しの際は立ち寄られるといいと思う。

水道代は2000円/月といったところだが、都心に比べ水のコストは極めて安い。
それは水道水以外にかかるコストが都心に比べ圧倒的に安い(もしくはかからない)からだ。
都心では水道水は普通のまないので、ペットボトルの水を買ったり(月30本として3000円以上はかかる)、浄水器を入れたりしている(浄水器3万円と毎年のメンテナンス1万円以上かかる)。
田舎ではこうしたペットボトルや浄水器は不要で、その分、大幅に安くなるわけだ。
また、氷も水道水で作ったもので十分おいしいので、氷をわざわざ買う必要もない。
この分を考慮すれば、水のコストは都心の半額以下と大幅に安上がりになる。

水と空気のおいしさが田舎暮らしの大きな魅力だな。
都心では空気さえも無料ではない。
都心では空気清浄機や加湿器などなど・・・人によって空気にも多大なコストを支払っている。
田舎では無料の空気がおいしいし、空気清浄機なんて不要だ。

その他では山が多いのでテレビ電波が届きにくく、たいていの家庭ではCATVと契約している。
東京と同じ地上波の番組、BS放送がCATVで見られ、2000円/月のコストがかかる。
もちろん多くのチャンネルを契約すれば80チャンネルぐらい見ることができる。
でも、田舎ではそんなにテレビを見ないのでワシは標準の契約しかしていない。
それとインターネット契約がLAN込みで2000円かかる。

これで住のコストすべてだ。
簡単に要約すると・・・・
固定資産税(年額) 6万円
電気代(年額)   6万円
暖房費(年額)   1万2000円
ガス代(年間)   3万6000円
水道代(年間)   2万4000円
CATV+インタネット 4万8000円・・・・合計24万円(2万円/月)ということになる。
これをどう思うか?
ワシは十分に安いと感じておる。




清里つつじ祭り

ちょっと前、清里では野生の藤のきれいな紫色の花が群がって咲いていた。
ワシの庭にも白樺の木に弦を巻き付けて藤が咲き、白樺の幹の白さを背景にした紫色がきれいなコントラストになっていた。
清里の山道でも自生している藤の花がいろいろな木に巻き付き垂れ下がるのが見えた。
そして、藤の花の時期が終わり、今度はつつじだ。

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いつもの散歩道の脇で見かけた山つつじ。
きれいに勝手に咲いている。
色は朱色だが、ちょっとオレンジ色にも見える。














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山の中に咲いていた野性のつつじ。
幅5メートルぐらいの力強い咲き方をしていた。
山肌にこの赤い花がよく目立っていた。













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庭に咲いたレンゲツツジの花
1本だけひっそりと咲いている。














今週末には清里つつじ祭りが開かれる。
美しの森はつつじで色が変わると言われている。
それはそれは見事なものだろう。
その後に清里高原つつじウオークが開かれる。
このつつじウオークのコースがワシの家のすぐそばを通るので、週末の家周辺は賑やかになりそうだ。



米朝会談に向けたポーカーゲーム

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よく見ると鹿がいます。














6月12日のシンガポール米朝会談をめぐって、トランプ大統領が書簡で中止を通告したり、北朝鮮がいつでも開催を歓迎するという温厚なコメントを出し、さらに緊急に南北首脳会談を板門店でやるという話になった。
まるでポーカーゲームを見ているようだ。
まさにブラフの掛け合いで、こんな外交ショーは見たことがない。
トランプは心理的に優位な立場でポーカーを楽しんでいるようだが、金正恩は相手に翻弄されるのを必死に我慢しているという様子に見える。
このポーカーゲームでワシの眼にはっきりと見えるのは金正恩のチップが無くなりつつあるということじゃ。

もともとこの小太り男は、リビアのカダフィ大佐的な惨めな結末を最も嫌がっていた。
そのためにあらゆるハッタリを使ってアメリカをテーブルに引き出し、身の安全が 保証されるように仕掛けた。
彼にとっては核もミサイルもハッタリにすぎないのだろう。
核弾頭を製造できる技術を持つこと、さらにICBMを持ち直接アメリカ本土を攻撃できることをアメリカに信じ込ませることができればアメリカを交渉テーブルに着かせることができるからだ。
だから、本当は核を持っていないかもしれないし、ミサイルもどこへ飛んでいくか分からないような使い物にならないレベルかもしれない。
だから、簡単に核実験設備も爆破できるし、必要なら、さらに核関連施設を破壊するだろう。

とにかくアメリカをテーブルに引きずり出した。
ここまでは彼の思惑どおりだったのだろう。
それが先の南北首脳会談、板門店での満面の笑みの正体なのだろう。
オリンピックでの南北共同参加はおそらく彼ののラストチャンスだったのだろう。
そのぐらい先進国による経済制裁で北朝鮮は困窮していたはずで、このチャンスに韓国の文ジェインを利用して一気に片付けようと思ったはずだ。
これがここもとの急展開を演出することになった。

ところが、相手のトランプのポーカーの腕はさらに上で、書面でのシンガポール会談中止をいとも簡単に通知できるブラフの名手だ。
いつもなら一方的に中止を通告したアメリカをボロクソに非難するのが北朝鮮の常とう手段だったが、今回は違った。
これで勝負あったという感じだ。
この一件でトランプは金正恩のチップの枯渇を見抜いたはずだ。
だから、この後はトランプが金正恩を一歩一歩追い詰めていくと思う。
最後の詰めは、リビア方式をチラつかせながら、核廃棄を先に制裁解除や経済支援はできるだけ後回しにすることだ。
これで金正恩は雪隠詰めだ。

おそらくその後はリビアのカダフィ大佐と同じように、北朝鮮国内で反金正恩の盛り上がりによって暗殺されることになるだろう。
そうなると、ワシの北朝鮮シナリオではシナリオ4、金正恩体制の崩壊+非軍事アプローチになる。
・・・・以上が、ワシの日曜日の空想だ。



日大アメフトと加計問題、根っこは同じ

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大相撲も正々堂々戦うのがおもしろい。
アメフトも正々堂々と勝負してほしい。















日大アメフト部の危険な反則プレー問題で世間は大騒ぎじゃ。
自転車で小淵沢の道の駅に行って足湯リラックスタイムを楽しんでいたら、隣にいたおばさん3人がこの話題で盛り上がっていた。
今朝、テレビをつけっ放しにしてても耳に入ってくるのはこの話題で、あーだこーだ、永遠にやっている。
その中、長嶋一茂のコメント(羽鳥のモーニングショーに出演)にはイラっとくる。
曰く、「これがボクシングでゴングが鳴ったあとに相手選手にパンチを入れるようなもので、選手はこんな事はしない。監督が嘘ついているに決まっている」
本人、「俺って良いこと言うね」とでも言いたそうな満足気なドヤ顔。
でも、問題の本質は全然違うところにあることに本人気がついていないし、トンチンカンなコメントだ。

この問題の本質は宮川選手の傷害罪で終わりなのか、また、犯罪教唆OR共謀共同正犯を立証できるかだ。
ワシの眼に見えるのは・・・
日大アメフト部の監督は自分が全く手を下さずに、強敵である関学のQBをつぶそうと考えた。
手下のコーチを使って、ターゲットを宮川選手に絞り、練習禁止にしたり、試合メンバーから外したり、日本代表を辞退させたり、精神的に追い詰めていった。
宮川選手は試合に出るために「QBと1プレーでつぶす」を「怪我させろ」と忖度して犯罪行為のタックルを実行した。
・・・というストーリーだ。

宮川選手は不利/有利にかかわらず全てを話したが、監督もコーチも「指示していない」と会見で表明、世間はこの矛盾に大騒ぎになった。
監督の会見は犯罪に対するある意味当然の自己保身で、指示したと言えば一発で共謀の罪を掛けられてしまう。
特にあの狡猾な監督がそんな言質を与えるようなことはしないだろう。
問題は宮川選手を徹底的に精神的に追い詰め重大な犯罪をさせるように仕向けたことを立証することだからだ。
このあたりは弁護士の八代さん(ひるおびに出演)はきちんと理解していた。
直接指示してなくても実行犯に犯罪をさせることは犯罪の教唆であり、悪質な場合は共謀共同正犯といっても主犯格として罰せられる。
このケースでは、監督やコーチによって宮川選手が追い詰められて行く過程の立証が必要になる。
それを知っているから、監督は直接指示していないと断言しているのだろう。

ただ、この井上コーチの立場はヤバい・・・コーチが監督の考えを忖度し怪我させろに近い表現を使っているかもしれないからだ。
このコーチ、まるで加計問題で首相に忖度する財務省の小役人そっくりに見えてくる。
財務省の小役人は法律知識が十分にあるので、文書廃棄ルールなどを盾にとって文書はないと主張したり(実際にはその後出てきたが)、視聴者をケムに巻きながら逃げられる。
しかし、このコーチは小役人のように権力者に忖度したまではいいが、自分を守るだけの知識を持っているのだろうか?

強力な権力者に媚びておこぼれをもらおうとするのは、古来、日本人の得意技だ。
だから、政治権力にスリ寄る小役人、絶対的権力を持つアメフト監督にスリ寄るコーチ、どっちもどっちだ。
本物の悪は、言質を取られるようなミスはしないものだ。
いつでも痛い目に合うのは媚びてスリ寄る小物たちだ。
かわいそうな、井上コーチ。






楽天(4755)の株価下落を考える

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サルでも反省する。
ワシも反省する。





友人から「楽天は一体どこまで下がるのでしょうか?そんなに悪い会社ですか?人気が無さですか?」というメールが来たので、ブログ上で一緒に考えてみたい。

まず、楽天の1-3月期の決算、5/10に発表された説明会資料を見る。
売上は14%増加、IFRS営業利益は30%減少・・・部門別にみると・・・・
1)国内ECを含むITセグメント: 売上+14%、 営業利益-44%
2)FINTECHセグメント: 売上+15%、 営業利益+20%

Eコマース売上の伸びも世界のEコマース企業は売上を30-40%伸ばしているのに比べやや低い。
日本全体(アマゾンを除く)のEコマースも前年同期比で+11%となり、やや飽和状態、あるいは、対アマゾンで競争激化が起こっていると思われる数字だ。
Eコマースは潜在顧客数の大きさが将来の伸びを決めるので、日本国内のみでやっていても所詮、最大1億2000万人の市場しかいない。
一方、中国の微博やアリババなどの潜在顧客数は国内だけでも膨大、なにせ、中国は14億人の人口の国だ。
アマゾンなど米国企業は3億人の国内市場でスタートし、70億人のグローバル市場で勝負する。
この点、日本の国内Eコマースは潜在市場が小さく、競争激化を招きやすい。
楽天もアジアに本格的に進出するとかしないと、成長の限界がある。

FINTECH部門は好調で、
楽天カードが売上+15%、営業利益+6%と伸び、
楽天証券が売上+33%、営業利益+62%と大幅な伸び、
楽天銀行も売上+10%、営業利益+20%。

楽天カードマンのテレビ広告をよく見かけるが、クレジットカードを成長のカギと見ているのだろう。
ショッピング取り扱いも+21%と伸び、リボ残高も+16%で好調だ。
さらに楽天銀行も住宅ローンや楽天スーパーローンで好調で、クレジットカードと貸し出しの金融部門が収益を引っ張ったといえる。

しかし、中身をよく見ると、楽天銀行の預金総額は2兆円に対して住宅ローンとスーパーローンの合計は8000億円で預貸比率は40%と低い。
つまり、差し引き1兆2000億円は貸出先が見つからず、有価証券での運用をしているはずで低金利の有価証券では儲けがない。
さらに貸し倒れ関連費用を80億円計上したが・・・カードの延滞債権が690億円、銀行の延滞債権が360億円で合計1050億円計上されている。
一方、貸し倒れ引当金は865億円と延滞債権の8割は引き当てされている。
しかし、毎四半期ごとに延滞債権が増加してきており、ここが金融事業のポイントになってきそうだ。

楽天証券は国内の株式売買高の増加とFX売買高の増加が大幅な増益の理由としている。
しかし、証券は変動が激しく、このまま増加するわけではないし、逆に減益要因となる場合も将来的には十分に想定される。

というわけで株価は下落歩調になっているのだろう。
しかし、PER13倍、PBR1.6倍はEコマース企業のバリュエーションとして割安だし、ネット証券と比べてもSBI証券と同レベルで割高感はない。
おそらく、700円か700円以下は株価のボトム圏になるかもしれない。
その後の展開は、Eコマースではアジアやグローバル市場への本格進出が重要だと思うし、FINTECHではマネックス証券のように暗号通貨ビジネスをどう楽天の金融部門に取り入れていくか・・・だとワシャ思う。
最後に、リスクは三木谷さんが金融界出身だけに金融にどっぷり浸かりすぎたら成長は止まることだ。
金融は競争が激しくさらに大きく環境変化する業界なので、そのスピードについていけるとは思えない。




やさしい株式需給の話(4 外人)

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東証の投資主体別売買動向から株式需給をどう見るかというコーナーの続きだ。
前回からは俗に言う外人投資家について話を始めた。
外人投資家は東証の売買高の半分以上を占める大口投資家だが、出来高のうち大きな部分を占めるのは外資系証券の自己売買と短期トレーダー(ヘッジファンドやアルゴリズムトレーダー)だろう。
外人投資家の中で中心的は存在である世界の年金やソブリン・ウェルス・ファンドは売買回転率が低く、日々の東証出来高の中で占める割合はそんなに高くないはずだ。

一方、外人投資家の日本株保有比率が4割あるが、その大きな要因は巨大年金やソブリン・ウェルス・ファンドの日本株保有だ。
つまり、日々の売買というフローの数字では外資系証券の自己売買や短期トレーダーの売買が大きな影響を持っているが、日本株の保有というストックの数字では年金やソブリン・ウェルス・ファンドが大きな影響を持っているわけだ。
そこで今回は株式需給をストック(保有)の面から話を進めたい。
まずは、海外の年金基金についてみていきたい。

世界の年金基金のうち最大なのは「世界の巨大投資家」のコーナーで話したとおり、日本のGPIFだ。
GPIFは日本全体のサラリーマンが加入する厚生年金であり、海外にはこうした国全体をひとまとめにした年金基金はない。
海外ではカウンティ(州、行政区)単位の年金があったり、教職員年金や公務員年金があったり、企業年金があったりするが・・・国民全体をカバーする年金はない。
それでも年金は加入者数によって規模が決まっていくので、人口の多い州や企業の年金サイズは巨大化する。
有名なのはカルフォルニアの教職員年金カルパースなどの州年金や、IBM年金など巨大企業で従業員数が多い企業年金だ。
欧州のフランスなどには公的年金があるが、アングロサクソン系の国には国民皆年金制度はない。
自己責任の原則が確立されており、国家が国民全員の面倒を見るという発想がないからだ。

さて、こうした海外年金の日本株投資について見てみよう。
まず海外年金の運用だが、規模の大きい年金ほど世界の株式市場にきちんと分散した運用の仕組みを持っている。
たとえば、MSCI世界指数。
これはMSCI(モルガンスタンレー・キャピタルインターナショナル)が算出している世界株価指数だが、世界の大手年金が指標として使っているものだ。
浮動株数(市場で売買可能な株式数)をベースに世界各国の時価総額を調整して、世界各国の時価ウェートを算出し、これをもとに世界株価指数を公表している。
そして海外年金はこの時価ウェートを元に各国市場へ分散投資する。
日本は世界指数の1割弱のウェートがあり、海外年金は基本的に株式ポートフォリオの10%弱を日本に振り向けている。

しかしここからがいろいろあるのじゃな。
海外年金のうちアメリカ年金は合計サイズはべらぼうに大きいが、アメリカ市場の時価ウェートが世界市場全体の半分あるため、この自国市場の運用が最も大事でここに関心が集中している。
アメリカ以外の半分のうち、欧州市場が半分、アジアその他で半分・・・つまり、アメリカ半分、欧州4分の1、アジア4分の1という割合だ。
よくあるケースが、重要なアメリカ市場は複数の運用手法で運用し、当然アクティブ運用も行っているが、それ以外の欧州・アジア市場は一まとめにしてパッシブ運用(指数連動運用)のみを行うというタイプだ。
この一まとめにしたアメリカ市場以外の部分をEAFE(イーファ)と呼んで、EAFEのパッシブやアクティブ運用を運用会社に委託する例が多い。
そうすると、日本には株式運用のうち1割弱がパッシブ運用で入ってくるだけの話になるし、EAFE全体の運用ができていない日本の運用会社は採用されにくい。
もちろん、一部の海外年金はアジアを重要市場と位置付け、国別にアクティブ運用を行っている。
しかし、ワシの経験では、こうしたアジア重視の年金はそう多くない。

というわけで、海外の年金基金は日本市場にあまり大きな影響力を持っていない。
日本市場の時価ウェートが変更されたり、指数対象銘柄が変更されたりする場合に大きく動き、市場でも目立つ存在になるが、それ以外は比較的おとなしい投資家だ。


雑草テロとの戦い

田舎に家を持って2回目の夏がくる。
昨年はとても痛い経験をした。
それが雑草による無差別攻撃、雑草テロだ。
夏が近づくと八ヶ岳地域では、というか田舎はどこでも、雑草がものすごい勢いで伸び始める。
昨年はそれを甘く見て、というかよく分からずに放置していしまい、あとから大変な事になってしもたんじゃ。

去年の今頃からカヤが庭の奥の方で育ち始め、メヒシバがあちこちに芽を出し始めた。
最初はほんの小さい草だと思い、甘く見ていた。
それがどんどん大きくなり、まるでインベーダーゲーム(ちょっと古いけど分かる人は分かる)のようにドッドッという感じで庭の中央をめがけて進出してくる。
さらにカヤはどんどん背が伸び、高さ1メートルぐらいまで巨大化する。
メヒシバも最初は小さく土の上にへばりついているが、どんどん大きくなり、背も高くなり、存在感が出てくる。
庭をこれらのインベーダーに占領されてしまったかのようだった。

問題はここまで育ってしまうと除去が困難になることだ。
地上にある茎の数倍の根っ子や地下茎を張り巡らしていて、とても引っこ抜くことはできない。
雑草は小さいうちに手で引き抜くか、根こそぎ取る道具を使って除去できるが、成長すると厄介でどうにもならない。
しかも冬の間、枯れたように見えるが春になると再び活発になる。
メヒシバのように1年草であっても花を咲かせ種を飛ばすことで翌年も生き残る。
これが昨年のレッスンだった。
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砂利の部分がカヤ防衛ライン。
深さ30センチの堀り、その上に砂利を敷き詰めたもの。













そこで今年は雑草テロ対策を早めにすることにした。
第一は、雑草防衛ラインを設定して、そのラインの雑草を徹底的に除去すること。
そこで庭のカヤ防衛ラインを作り、地面を深さ30センチほど掘り返した。
そのとき初めてカヤの地下茎の巨大さにびっくりした。
地面の下は地下茎だらけで、スコップを地面に差し入れようとして全体重をかけてもスコップの先が地面に入らい。
なんとか力を込めてスコップを地面に差し入れて雑草の地下茎を切り裂き、体重をかけてスコップで掘り返す・・・これはホントに重労働だった。
こうしてなんとかカヤの地下茎や根っ子をカヤ防衛ラインから取り除くことができた。

第二に、この防衛ラインに砂利を引き詰めて、再発防止を行うことだ。
この砂利は近くのJマートというホームセンターで買ってきたが、これがまた物凄く重い。
一袋で15キロあり、全部で70袋を購入したので、総重量は1トンを越えた。
当然、ワシの車では1回で運べないので、結局、3往復して1トンの砂利を家の庭に運んだ。
そして、掘り返した防衛ラインに砂利を引き詰めてから踏み固めた。
これも重労働で腰が痛くなる作業だったがなんとか克服し、上の写真のような状態になった。

第三に防衛ライン上に生えてくる雑草を徹底的に引く抜こと。
周りに植木のない部分は除草剤も使い、植木の近くは手で引き抜くことにした。
防衛ラインの外側は草刈り機を使って刈り上げる予定だ。

さてさて今年はどうなるだろうか?
防衛ラインを死守できるだろうか?
ワシの挑戦は続く。









地元愛にあふれる山梨放送

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八ヶ岳地域ではテレビといえば山梨放送だ。
もちろんNHKが好きという人もいるが、民放の民放中心は山梨放送YBSだろう。
このYBSはホントに地元愛にあふれるというか、地元愛が凄すぎる。

天気予報でも山梨の各地域を細かく伝える。
主要な中心部と上げて甲府、大月、河口湖、大泉、韮崎、勝沼、身延・・・という分類もあるし・・・さらに、峡北(韮崎、北杜、八ヶ岳)、峡中(甲府、甲斐など)、峡西(南アルプスなど)、峡東(笛吹、山梨、甲州など)、峡南(南巨摩郡など)という分類もある。
天気から気温、湿度・・・今日洗濯すべきか否かまで地域別に伝えられる。
山梨の天気は変わりやすいので、住民にはとても便利な放送局だろう。

でも、ニュースはおかしいというか地元ヒイキがすさまじい。
昨日のニュースでは、まず、サッカーのJ2が最初に報道された。
ヴァンフォーレ甲府という山梨のJ2チームだ。
3連勝・・・ゴールシーンが流れ・・・アナウンサーの喜びの声・・・J2の順位表・・・ヴァンフォーレが順位8位に上がった・・・・終わり。
つまり、J2全体の勝敗、好プレー/珍プレー、リーグ全体のストーリーなどは全く無視。
ひたすら山梨のチームのみを報道するし、山梨のチームがいないJ1には全く触れない。
不公平といえば、極めて不公平な偏った報道で、しかし、地元愛にあふれている。

NHK杯体操の女子総合の報道もすごい。
梶田選手という地元出身の選手がNHK杯で5位に入り、全日本代表候補に入ったというニュースだ。
NHK杯で誰が優勝したのかも、どんなスゴ技が出たのかなども全く報道されない。
見ている方はNHK杯の試合の全体像が見えない。
極めて分かりにくい報道だ。

さらに極め付けは大相撲だ。
最近60歳台以上の暇人が増えているので、大相撲人気は爆発している。
でも、YBSのニュースでは「今日の竜電」と伝えられ、大相撲とは言われない。
甲府市出身の竜電がこの日負けて1勝8敗で今場所の負け越しが決まったというニュースだ。
他の人気力士がどう戦ったのかとか、白鵬や鶴竜などの横綱の取り組みさえ全く報道されない。
普通、その日の大取り組みはダイジェストで伝えられるが、YBSのアナウンサーは全く触れない。
これでは誰が勝敗でリードしているのか誰が優勝しそうかも視聴者には全く分からない。

まあ、NHKのニュースを見れば大相撲全体の状況はわかるので、地元愛にあふれたYBSはこれでいいのかもしれない。
でも、公共の電波を使った報道はこれだけ偏向しているのはいかがなものかとも思う。
山梨放送ばかり見ている人は世の中の動きが全く分からない状況になるし、山梨県内がその人の人生のすべての範囲ということなのだろう。
東京から2時間で行ける地域で県内から出たことがないという人がいるとは思えないし・・・





米長期金利3%時代を考える(3)

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米長期金利が3%以上の水準で定着しそうだ。
この金利水準が経済ファンダメンタルに、また、グローバル資金フローにどう影響するかを前回、前々回で考えてみた。
ただ、いろいろな可能性を列挙しただけなので、「結局、何が言いたいの?」よく分からんと指摘されそうだ。
そこで今回はワシの見方を中心に書いてみたい。

ワシの基本的な見方は、今の状況、つまり、タイトな米雇用、トランプ減税による景気上昇、賃金や物価の安定という3点が続くかぎり、株式への資金流入は続いていくということ。
問題は3%台の歴史的低水準にある失業率と極めてタイトな労働需給の中、賃金上昇が抑えられ物価も比較的安定しているという状況はやはり継続的ではないのではないかということだ。
今年はないと思うが、来年あたりには物価上昇ペースが加速していく可能性が高いとみている。
したがって、来年の可能性は、1.賃金上昇に拍車がかかりインフレ懸念が増していく、2.米財政赤字が拡大ペースを速めドル安が加速していく、3.米長期金利は4%以上に上昇していく、という3点だ。
そういう見方にたって、今年、来年の株価がどうなっていくのだろうか?

基礎編の中で3/25に「急落相場の読み方」を書いたが、その中で急落相場の3つのパターンを説明した。
1つは通常の需給調整型で下落率はおよそ10%以内だ。
これは買われすぎによる反動の調整で、経済ファンダメンタルには変化がなく比較的短期で終わるケースが多い。
今年の1-3月の調整はまだこの範囲であったわけで、需給調整から徐々に安定し始めている。
2つ目は景気循環による調整で、大体40%以内の下落率が想定される。
数年に1回はこうした景気調整型の株価下落が起こっているが、景気の悪化を伴うため1年を越える調整期間になるケースも多くある
3つ目はクレジットクランチ型の調整で、これは厳しい下落が考えられる。
単に景気が悪化するだけでなく、企業の信用不安が起こり信用収縮を招くケースだ。
リーマンショック後の調整はこの典型的なパターンといえるだろう。
ワシは個人的にこのパターンの調整を半値八掛け型を読んでいるが、これは10年に一度ぐらいのペースで起こる、株価が半値・八掛け・二割引きという大幅な下落になる。

来年想定されることを前提として考えると、クレジットクランチまでは想定できないが、金融引き締めの強化で循環的な景気調整は起こる可能性はある。
そのカギとなるのは、インフレが加速するかどうかだろう。
また、米長期金利の上昇とともに非産油の新興国の資金調達には注意しておく必要があろう。
次の大きな株価下落はFUNGなど米IT関連株が大きく下落する可能性も考慮に入れておきたい。
個人データに関連する規制がどうなっていくか不明だが、規制によりIT関連の将来収益予想が大きく引き下げられ、バリュエーションが大きく低下する事態も予想されるからだ。

ワシ個人的には、今年はともかく、来年は波乱を覚悟している。







米長期金利3%時代を考える(2)

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アメリカの長期金利が3%を越え、しかも今後も3%水準を継続的に上回るとみられている。
前回は長期金利3%水準が企業業績にどう影響するか考えてみた。
企業の事業利益率との比較や企業債務水準による影響だ。
アメリカ企業の事業利益率は10%前後とかなり高く、3%の長期金利は全体として問題にはならない。
また、企業債務はGDPの45%と高水準にあるが、金利の低い時期の借入でありすぐには問題にならない。
ということで今年中は長期金利がさらに上がっても企業のファンダメンタルへの影響は限定的と見る。

しかし、グローバル資金フローはさらに先の問題を織り込んで動いていくので注意が必要だ。
しかもリスク/リターンに敏感に動くので、必ず、何かしらの因果関係をもとに変化する。
何か理由があって資金を動かしていくわけで、理由もなく動かすことはない。
だからこの因果関係を読むことで先の資金フローを考え、市場の動きを想定できる。

まず、重要なことは今年の1-3月期に起こった株式市場の調整が変化の前兆である可能性が高いこと。
1)米企業業績
 ・トランプ減税によりEPSは二けた以上の増加期待。
 ・原油価格の上昇でエネルギー関係企業業績の向上期待。
 ・長期金利の上昇による利ザヤの拡大で銀行や金融機関の業績も順調に推移すること。
2)米中の貿易問題
 ・全面的な関税の掛け合いは避けられる見通し。
 ・先端技術のパクリ、知財権の保護は今後どうなるかわからない。
3)インフレ懸念
 ・来年以降の米財政赤字の拡大。
 ・米失業率はすでに3%台まで低下、雇用関係はタイトで奪い合いが起こること。
 ・原油価格が70ドル台への上昇と物価への影響。
4)IT技術企業の規制問題
 ・フェイスブックの個人データ大量売却問題の拡大。
 ・ビッグデータの規制の強化問題。

今後予想されるグローバル資金フローはこの4点の掛け算だろう。
1)来年の企業業績のピークアウトを織り込む形で株式から債券への資金フローが起きる。FRBの政策金利引き上げペースが緩やかだとしても、来年の企業業績は今年の反動で伸び率は低下する。

2)新興国は米金利の上昇によるマイナスを受け、資金流出の懸念がある。非産油の新興国は調達金利の上昇でドル資金のファイナンスが難しくなる。

3)物価上昇が現実化しFRBの引締めが本格化、逆イールドで株式から債券にシフトが進む。雇用の限界点に近づき、さすが賃金上昇でインフレ懸念が一段と強まる。

4)米IT企業の規制強化で将来成長がダウングレード、IT企業から資金が流出する。どのような規制が起こるかまだ分からないが、この可能性も考えておく必要があるだろう。

5)米中の経済問題の拡大で中国からの投資が引き上げられる可能性。すでにZTEが表面化したが、知財権の問題で中国企業が先進国市場から締め出される可能性も考えておく。
 
というのはワシの空想だが・・・・
起こるかもしれない将来の資金フローだと思うんじゃな。


米長期金利3%時代を考える(1)

2/19に「ドル安はゲームチェンジャー」という話を書いた。
その後も長期金利は上昇し、最近、3%の節目を越えてきた。
おそらくこの金利上昇はまだまだ続く。

金利は経済の体温計みたいなもので、低金利の国は経済の停滞と低いインフレ率、高金利の国は高い経済成長と高いインフレ率の国が多い。
今の先進国ではアメリカの10年金利3%が最も高く、ドイツやフランスなど欧州では1%以下と停滞感が残り、日本は依然としてほぼゼロでデフレ脱却というには金利が低すぎる。
これはアメリカ経済が先進国全体を引張っている状況を示しているわけだ。
もちろん世界経済のけん引役としては中国もあるが、規制ばかりの国で実態がつかみにくい。
景気が良く失業率も3%台なのにインフレ率が安定しているアメリカをどう見るかがもっとも重要だ。

金利上昇は普通は2つの経路で企業に影響する。
一つは事業利益率と借入金利の問題。
企業の投資に対する利益である事業利益率が借入金利を上回れば、企業は借入れを実行して投資する。
金利が上昇した分それだけ高い利益率の事業のみに投資することになる。
企業にとっては投資機会が少なくなるわけで、これが投資制約となる。
もちろん借入金利は10年国債金利とは違い企業の信用度による上乗せ金利が直接影響するが、長期金利が上昇すればそれだけ上乗せ金利も上がる。
S&P500の企業利益率はここ10年の平均で10%程度あり、3%の長期金利が利益率の低い企業をふるい落とすにしても米企業全体では問題となる水準ではない。
マクロ的にはアメリカの潜在成長率が3%台後半と想定されており、長期金利の3%台は潜在成長率に近い水準となる・・・一部のエコノミストは長期金利が成長を抑制すると懸念しているけど・・・

もう一つは企業債務残高の問題。
債務は無限に増えるわけではないし、永遠に借りられるわけでもない。
すでに米企業債務は事業向けだけではなく自社株買い向けにも増加していて、すでにGDPの45%という過去最高水準に達している。
さらに今後も企業買収ブームと自社株買いブームで企業債務は増加基調をたどることになる。
そして、数年後の借り換え時期に金利が上昇していることになるので、米企業の金利負担は相当大きくなると予想されている。
FRBは政策金利を年3回から4回のペースで引き上げられるし、このペースでも引き上げが今後も続くと借り換え時には1-2%程度の借入金利の上昇は十分にある。
その時は企業収益にはマイナス要因になるのは間違いないが、ちょっと先の話だ。

3%の長期金利はすぐに企業業績に影響するわけでもないし、おそらく単なる通過点にすぎないのだろう。
でも、さらなる長期金利の上昇により、国際的な資金フローは大きく変わってくると思う。
債券から株式への流れも変わる可能性があるし、新興国への影響も大きくなる。
次回は米金利の上昇と資金フローを考えてみたい。




テレビで話題の韓国財閥

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最近はセクハラ・パワハラなどスキャンダラスな問題がよくテレビで取りあがられる。
ワシャ、定年退職後のヒマ人なのでたまに「羽鳥のモーニングショー」を見る。
ちょっと気がついたのは、番組に登場する玉川さんというコメンテーターだ。
彼は時々、知ったかぶりをする。

水かけ姫のパワハラ行為が報道されたとき、韓国財閥の韓進グループのオーナー一族のスキャンダルを番組で取り上げ、いろいろあーでもないこーでもないとコメンテーターが話題にしていた。
その中で、テレ朝の玉川さんというコメンテーターが・・・
「韓国はいまだに大財閥が経済を牛耳っている。 資本と経営の分離ができていない未熟な経営が問題で、オーナー一族が特権階級のように振る舞い、パワハラが横行する。 だから、資本と経営を分離させ、近代的な会社経営をすべきだ。」
・・・というような主旨の発言をした。

マジか?
テレビでこんな認識で全国放送していいのか?
というわけで、今日は韓国の大財閥の経営問題を考えてみた。
玉川さんの最大の誤解は、オーナー企業はダメという論理だろう。
今の時代、オーナー経営は企業成長の大きな原動力になっている。
特に現在の急成長企業にはオーナー企業に多いことが、企業経営論の分野で見直されるきっかけになった。
ベソスのアマゾン、イーロンマスクのテスラ、ザッカーバーグのフェイスブック、アジアでも古くは李嘉誠の長江実業、最近ではジャック馬のアリババ、郭台銘の鴻海、などなど。
日本でも株式保有が10%程度なのでオーナー企業といえるかどうかちょっと微妙だが、孫さんのソフトバンク。
オーナーの強い思いが企業を引っ張り、トップダウンの判断が迅速なオーナー企業の多くは経営スピードが速く成長力がある。
韓国財閥でもオーナー経営自体が問題なのではないと思う。

韓国財閥の問題点は、コングロマリット経営の方だろう。
たとえば、韓進グループはももともと運輸企業でベトナム戦争の米軍物資輸送で大儲けし、その後、朴大統領(当時)の要請で民営に応じ大韓航空を手に入れた。
その後、コンテナ輸送や様々な分野に手を伸ばし大手財閥に成長した。
現代財閥も造船や重工業から自動車・建設など複数の産業にまたがるコングロマリットに成長した。その後創業者の死後の後継者争いで分裂したけど・・・。
三星(サムスン)財閥は家電・電子部品の電子工業が世界的に強いが、重工業、建設、商社、生命保険までカバーするコングロマリットだ。
しかしながら、現在の経営ではより強い分野に集中し、競争力のない分野からは撤退する、集中と選択が経営のカギになっている。
日本でも総合なんとかと名前が付いている企業はコングロマリット的だったが、今や集中と選択を繰り返し企業変貌しているし、脱コングロマリットで成長力を取り戻すのが現代の経営戦略だ
株式市場でもコングロマリット・ディスカウントと呼ばれ、専門的な競争力を持つ企業が高く評価され、何でも屋的な企業は評価されにくい。
現代の企業論からは、韓国財閥も集中と選択の時期にあるのではないかと思うんじゃ。

また、パワハラやセクハラはコンプライアンスの問題で、独立したコンプライアンス専門を置き、直接取締役会や株主総会に報告する体制が必要だ。
オーナー企業だからパワハラやセクハラが多いとはいえないのではないだろうか。







やさしい株式需給の話(3 外人投資家)

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東証の投資主体別売買という統計が株式需給を考えるのにとても参考になるという話を前回したが、今回はその中でも読み方が難しい海外投資家を考えてみたい。
海外投資家は非居住者という意味で、日本人でも海外に居住し海外から株式注文を出せば海外投資家の範疇でカウントされることになる。
逆に外人投資家は国内に居住しても外人だが、国内居住者は海外投資家には含まれない。
でも面倒なので外人と一括りにして話をすすめたい。

外人投資家は上場株式全体の約4割を保有し、流通市場では一日の売買高のおよそ6割を占める大口トレーダーだ。
これだけの市場占有率を占める外人投資家だが、その中身は複雑で、一口に外人投資家といってもいろいろいて全体像をとらえるのはかなり難しい。
ワシの理解している範囲で話をしていくので、間違いもあるかもしれないがご容赦いただきたい。

まず、最初の外人投資家は外資系証券会社だ。
日本にいる外資系証券は、大体、グローバルな投資銀行の日本現地法人だ。
日本現地法人の自己勘定を持っている場合も考えられるが、通常、日本現法人の自己資本は限定的で自己資本規制により大きな自己勘定ブックを持つことはできない。
こうしたグローバルな投資銀行はグローバルブックを持っていて、自己勘定で保有する各国の株式を一元的に管理している例が多い。
グローバルブックを使うと、東証では非居住者の海外投資家に分類されることになる。
たとえば、外資系証券が東証でインデックス裁定取引を100億円実行したとする。
東証で現物株の指数連動バスケットを100億円買い、同時に指数先物を100億円売り建てる。
そうすると、東証の投資主体別売買では100億円の外人買いとして公表される。
株式取引は日本国外でもいろいろ行われているのは前の回で説明したが、その取引の帳尻合わせが東証を使って行われるという理解でいいと思う。
つまり、結論として外資系証券の自己勘定の売買が外人に分類されている場合が多いということだ。

次の外人投資家は海外にいるトレーディング会社だ。
これにはヘッジファンドも含まれるし、アルゴリズム・トレーディング会社も含まれる。
いずれにしろ、短期トレーディング中心の投資家たちだ。
10数年前に東証は完全に自動化され、板という売り買い注文が並んだ表も公開されるようになった。
それまでは日本の大手証券会社だけが独自にシステム売買を行い、板情報も会員証券にだけ配信されていたが、海外からの圧力と技術の進歩による市場開放が流れを変えた。
それを機に海外のヘッジファンドやトレーダー連中が大挙して東証に参入してきたんじゃ。
その結果、東証の一日の売買高の6割を外人投資家が占有するという現象を生んだわけだ。
こうしたヘッジファンドやアルゴトレーダーはプライムブローカレッジという専門的なブローーカーを使っている。
プライムブローカーはポジション管理から損益、融資/貸株、取引まで一社でカバーしている。
彼らプライムブローカーはたいてい大手グローバル・投資銀行の子会社で、ヘッジファンド向けにロング/ショートやオプション取引の専門ブローカーとしてファンドのニーズを一手に対応してきたのが始まりだ。

アルゴトレーダーはヘッジファンドと比べ、一般投資家にはわかりにくい。
もっと知りたいという人には、ワシは「アルゴリズムが世界を支配する」という本をすすめたい。
そこに元祖アルゴトレーダーと言われるピーターフィーの物語がのっているが、1980年代にはNY市場でアルゴ取引を実践し大儲けしている。
同じ頃、日本はバブルで何も考えなくても儲かる時代だったが、バブル時代の思考停止でアメリカに大きく遅れてしまったというわけだ。
ワシが大手証券で自己勘定を担当し始めた頃、その証券会社がアメリカのアルゴトレーダーのハルトレーディングと提携した。
隣のデスクで数人のアメリカ人が駐在してアルゴ取引を行っていた。
当時は何をしているのか全く分からなかったが、毎日毎日トレード益を積み上げており、その実力に目を見張ったことを覚えている。
一緒に飲みに行ったり、隣のデスクに部下を配置してトレードを観察し、ノウハウを学んだ。
ハルトレーディングはゴールドマンに買収されてしまい提携は解消されたが、ワシのチームでも同じような短期トレーディングシステムを実行した。
これが毎日毎日儲かり、他の戦略を合わせて大きな儲けを上げた・・・・昔話だな。

田舎に家を持つ(11 住のコスト続き)

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ここ数回は田舎暮らしは安上がりなのか?というテーマで考えてきた。
最初に衣・食・住のうち食のコストを取りあげた。
ワシの結論は全体として田舎は安いわけでないが、旬の食材、新鮮な野菜や果物は都会と比較すると、ムチャクチャ安く味も美味しい、旬のモノを食べれば安上がりで豊かな食生活が送れるということじゃ。
そして、住のコストだが、家を持ってすぐにかかる登記費用、さらに税金(不動産取得税、固定資産税)はなぜか都会の税金と比べメチャクチャ安い。
八ヶ岳地域は冬が寒い寒冷地に分類されているので、都会とな異なるエネルギー事情がある。
光熱費を中心に寒冷地の事情をみてみたい。

まず暖房費。
冬はマイナス10度ぐらいまで下がるので、冬の暖房は重要だ。
一般的には灯油の暖房が使われ、その他ではガス、薪、電気などがある。
ワシの家では冬の間は東京で過ごすことが多いので、薪ストーブと補助的に電気のオイルヒーターを使っている。
薪は近所のストーブ屋と契約し、必要な時は電話一本で運んでもらえる。
専用の薪のラックが設置され、薪はそのラック一杯を一単位として買う。
ラック一杯の薪で1万2000円だ。
使い方は人によっていろいろだろうが、ワシの家ではひと冬、ラック一杯程度の使用量で間に合っている。
つまり、暖房費は年間で1万2000円ということになる。
たいした金額にはならない。

次に電気代だが、これがやや問題じゃ。
4月から11月の電気代は2000円/月ぐらいで、都会よりずっと安上がりだ。
夏の気温が低く家にエアコンがいらないので、特に夏の期間は都会に比べムチャクチャ安い。
しかし、逆に冬の電気代は目が飛び出るぐらい高い。
それは、冬の寒さで水道の配管が凍らないように設置されている凍結防止ヒーターが作動するためだ。
このヒーターは気温によりオン/オフが設定され、マイナス3度でオンになり、プラス10度でオフとなる。
1月から3月は気温10度を超えることが少なく、この凍結防止ヒーターがずっとつきっ放しになる。
だからこの期間の電気代はべらぼうになる。
冬の電気代は1万円から2万円/月と、割高になるんじゃ。
でも、冬の期間でも電気代が月8000円前後になるスグレ物がある。
それはセーブ90という外付けのスイッチで、気温3度以上、しかも、風や日照状況によりオン/オフが調整される。
1月2月はずっと気温が低いままなのであまり効果がないが、特に3月4月の気温の変化が激しい時期は状況に応じてオン/オフが細かく繰り返されるため電気代を大幅に減らすことができるわけだ。
これらすべてで年間電気代は6万円から7万円ぐらいだ。

そしてガス代。
田舎は都市ガスがなくプロパンガスで、業者がボンベを毎月運んできてくれる。
コストは都会とそんなに変わらない。
大体、月3000円ぐらいで、暖房にガスを使えばもっと高かくなるだろうが、ワシは薪ストーブ派なので毎月ほぼ一定だ。
ということでガスの年間費用は3万6000円ぐらいだ。
ただし、予備を含めて2本のボンベがあるが、その切り替え時にガスが出なくなることがあることには気をつけなければならない。
シャワーの途中で急にお湯が出なくなり、冷たいシャワーでまいったことがあったな。

合計の光熱費は年間11万から12万円ぐらいで、薪・電気・ガス全部で月間1万円とみておけばいいと思う。
高いとはいえないと思うな。





投信のコストを考える(2 信託報酬)

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日本の投信のコストは高いと言われている。
投信のコストがどうして高いのか、高いコストの投信をどう選ぶのかを議論してみたいと思い、このコーナー「投信のコストを考える」を書き始めた。
「投信ガラパゴス日本」の続きとしても個人投資家が知っておくべき事実だと思うんじゃな。
前回は販売手数料を取りあげたが、今回は運用会社の収入源である信託報酬を取りあげたい。

信託報酬って言葉は難しいが、簡単には運用フィー(手数料)のことだ。
大口の機関投資家のお金を預かって運用すると運用フィーがもらえるのと同じで投信を運用すれば信託報酬がもらえる。
しかし、運用フィーは契約で決められた日に口座から引かれるのに対し、投信の信託報酬は毎日の基準価額の計算に含まれている。
だから毎日少しづつ引かれるため、ほとんどの投資家は信託報酬を引かれているのに気がつかない。

さてその信託報酬だが、アクティブ株式投信では年1.5%から1.8%ぐらいかかっている。
ちなみに機関投資家向けの同じ株式運用商品は運用フィーが0.3から0.5%程度で個人向けの投信に比べ大幅に低く設定されている。
一応、大口10億円以上の機関投資家向けなどと限定して低い運用フィーで受託するという理屈でこの違いを正当化しているわけだ。
もう一つ重要な違いは、機関投資家向け商品の運用フィーはすべて運用会社の収入になるが、投信の信託報酬はずべて運用会社に入るわけではないことだ。
投信の信託報酬は運用会社と販売会社と資産管理会社で分けられ、大体、運用会社が5割以上にもらい、販売会社も4割ぐらいはもらえる。
資産管理会社は管理するだけなので0.1%程度と極少ない部分を信託報酬から受け取る。
なぜ、販売会社も信託報酬をもらえるのかは慣習というだけで理屈はないが、販売会社を頂点とする金融グループで投信ビジネスが行われてきたという構造問題が影響しているのだろうと思う。
信託報酬に販売会社への分け前があるので、信託報酬全体が必然的に高くなってしまうんじゃ。

ここ10年ぐらいの間、個人投資家のレベルも向上してきて、単なる日本株なら自分で運用できる投資家が増えている。
だから、投信会社は個人投資家が自分でできないような商品を組み入れた投信の開発をすすめてきた。
たとえば、海外のリートを組み込んだグローバル・リート投信、海外の運用会社の提供するエッジの効いた商品(優先株やMLPなど)を組入れた投信、新興国の株式を組み入れた投信、などなどだ。
でも問題はこうしたエキゾティックな商品は日本の運用会社にノウハウがなく、海外の運用会社に再委託することになることだ。
海外の運用会社は運用フィーに対して厳格なポリシーを持っているので安いフィーでは受託しない。
したがって、こうした投信の信託報酬は、たとえば、海外運用会社に0.7から1%、国内運用会社に0.3%、販売会社に0.5%、管理会社に0.1%というような分け前になる。
そうなると、合計の信託報酬は1.5%から2%という高水準になってしまう。

投信の信託報酬は日本の運用業界の特徴をよく表している。
その中心には販売会社があり、その意向にそって周りが動いていく。
だから、投資家の利益というより、販売会社の利益が重視されることになる。
それでホントにいいのか?それで投信は発展していくのか?という疑問が残ってしまう。




副業の解禁っておかしくない?

政府の働き方改革でサラリーマンの副業の解禁が議論を呼んでいる。
でも就業規則で副業を禁止してきたことがそもそもおかしいんじゃないかい?
就業規則には、就業時間、休暇の期間・取り方、諸手当、出張や転勤、病気や出産、などの項目があり、会社員の日常生活に必要な規則だ。
ワシャ、38年間サラリーマンをやってきたが、副業の禁止が就業規則に盛り込まれていた記憶はない。
本業が忙しくしかも自分が株の世界でどうやって生きていくかに一生懸命だったので、副業で儲けようとか考えたことがない。
だから、就業規則に副業の禁止があったかどうかさえ覚えていないのかもしれない。
でも、改めて今の議論を聞いていると、超違和感がある。

そもそも就業規則は従業員の就業時間が有効範囲で、就業後は何をしようが個人の自由ではなかったのか?というのが疑問だ。
従業員の権利という意味では、就業時間内は与えられた職務を行い給料をもらう、それ以外のプライベートな時間は本人の自由だというのが普通じゃないのか。
たとえ、副業をしていようが、プライベートな時間まで会社に管理されるなんておかしいと思う。
副業の解禁とか言っている前に、従業員の雇用上の権利を明確にしなければならないのじゃないの?

根っこの部分には総合職という雇用契約形態に問題があるのじゃないかとワシャ、思うんじゃな。
従業員と会社の重要な雇用契約なのに総合職契約には内容が全くない。
総合職とは会社の都合で勤務地も処遇もすべて決められる、従業員にとっては不平等契約だ。
従業員は総合職というあいまいな雇用契約があるので、辞令一つで世界中どこでも行かなければならないし、嫌な仕事に異動になってもひたすら我慢しなければならない。
欧米ではジョブ・ディスクリプションという雇用契約があるが、もっと細かく仕事の内容・責任の範囲・処遇条件などが決められ、従業員本人の権利が明確に規定されている。
会社が勝手に従業員の仕事の変更や転勤はできないし、必ず本人の同意が必要となる。
もちろん、プライベートな時間にデートしようが副業しようが何も問題にならない。
それらは本質的に個人の自由という従業員の権利だからだ。

総合職って昔の徒弟制の名残りで、会社に尽くす滅私奉公のようなイメージがある。
働き方改革を進めるなら、このあいまいな総合職という雇用契約を見直すべきじゃないのか?

運用会社、統合・合併の意味(2)

前回「運用会社、統合・合併の意味(1)」で指摘したが、メガ銀行により系列再編されてきている投信運用会社が合併により発展し、日本の投信が投資家の信頼を得て拡大していくかというとそうでもない。
アクティブ運用会社は統合巨大化しても規模のプラスは出にくいし、メガ銀行の系列による投信ビジネスには販売サイド中心の発想という問題があるからだ。
しかし、運用会社が統合により大きく発展した例は海外には多くある。

アクティブ運用には規模の経済が働きにくいが、パッシブ運用には規模の経済が大きく働く。
パッシブ運用会社はインデックスファンドやETFを企画・運用する会社で、基本的にコンピュータで株価指数との連動性を確保して株価指数のリターンと同じリターンを投資家に提供する。
ワシも裁定取引をやった経験があるが、このインデックス連動性の確保はけっこうたいへんなのじゃ。
株価指数に連動させるためには発行済み株式数と時価ウェートを毎日調整していかないと連動性を保てない。
発行済み株式数は自社株買いがあれば少なくなり、転換社債(オプション含む)の行使があれば増える。
また、増資や売り出しなどのイベントがあれば大きく増える。
こうして日々変化している発行株式数をきちんと管理し、個々銘柄の時価ウェートに反映させる必要がある。
こうした調整作業を、パッシブ運用会社は自動化し専門担当が行っている。
基本これらのコストは規模に関係なく、ファンドサイズが大きくなればなるほど単位あたりのコストが下がる。

もう一つはETF、エクスチェンジ・トレーデッド・ファンド、市場で取引できる上場ファンドだ。
運用会社が連動させる株式指数とそのための組入れ銘柄とウェートを公表しているので、市場で同じポートフォリオを買い運用会社に持っていけばETFに交換してくれるし、逆にETFをバラして個別銘柄のポートフォリオに戻してもらえる。
これにより裁定業者が個別銘柄とETFの裁定取引をするのでミスプライスが修正される。
だから、投資家は安心してETFを市場価格で売買できる仕組みになっている。
最近特に、様々な種類の株価指数が開発され、多様な株価指数に連動するいろんなタイプのETFが上場されてきたことで、ETFの人気に拍車がかかり運用の世界で大きな存在感を示すようになった。

合併・統合により規模の経済性を追求し、多様なETFを開発して急成長し、超巨大な運用会社に成長した会社の代表例がブラックロックだ。
ブラックロックは2006年にメリルリンチの運用部門を買収、2009年バークレーズの運用部門を買収し特にこの買収でⅰシェアーズというETFのトップブランドを獲得したことが大きな成長力となった。
その間、多くのアクティブファンドマネージャーが解雇され、よりコンピュータ・ドリブンの業務改革が行われインデックス装置会社に変貌し、世界最大のバンガード・グループに並ぶ巨大パッシブ運用会社に成長した。

また、アクティブ運用の世界でも合併により成長した会社もある。
PGI、プリンシパル・グローバル・インベスターズという会社で、ブティック型運用会社(小さいが専門性の高い運用会社)を次々と買収し傘下に収め急成長した。
ファンドマネージャーが嫌がる管理・コンプライアンス業務を親会社のPGIで一括して行い、ファンドマネージャーには運用に集中できる環境を提供することで、ブティック運用会社の良さを引き出した。
優先証券の専門運用会社であるスペクトラム、その他特徴のあるブティック運用会社の集合で、マルチブティック・マネージャーと彼らは呼んでいる。
こうした合併・統合のやり方もある。
アクティブ運用会社の規模追求という訳のわからないことをする必要はないと思うんじゃな。



素人の不動産投資(8 かぼちゃの馬車まとめ)

「素人の不動産投資」のコーナーでは、ワンルームマンションへの実物投資と上場不動産投信(リート)への証券投資を比べて、不動産投資のいろんな側面を考えてきた。
さらに不動産投資の問題点が凝縮している事件「かぼちゃの馬車」を例に過大な融資・サブリース・空室率の問題を取り上げてきた。
今回は不動産ビジネスにまつわる詐欺または詐欺的な勧誘をどうやったら見分けることができるのかを取りあげたい。

かぼちゃの馬車は詐欺なのかまだはっきりしいない。
ただいくつかの点では詐欺的な点がある。
一つは融資金額だが、スルガ銀行に偽の口座内容を提出し、普通の一般人では難しい1億円以上の融資を受けていたことだ。
この不動産融資の場合は建てたシェアハウスが担保に入っているので、ある程度その他の資産があれば融資をパスするとは思う。
しかし、口座の預金を水増しして融資を受けるのは問題だし、スルガ銀行サイドでも見抜けないはずはない。
この点は詐欺的だといえる。

二つには建築業者との癒着で、おそらくスマートデイズの役員たちが1件1億円を超える建築案件を業者に出す見返りにバックマージンを受け取っていたことだ。
たぶん、これらの見返りバックマージンは役員個人のふところに入っているはずで、スマートデイズが倒産しようが手元にたんまりと残っているはずだ。
そして、この癒着により建築費が高めになっているはずで、それを負担しているのが「かぼちゃの馬車」の契約者たちというわけだ。
さらに高い建築費をカバーするため家賃も高めになり、高めの家賃が空室率を高めにし、結果的にスマートデイズの破たんの原因になった。

三つ目は高い空室率と保証家賃の問題から、新規契約者の資金をチョロまかして既存契約の保証家賃に回していたことだ。
これはねずみ講と一緒で、新規契約者が増え続けている間は資金が回るので大丈夫だが、一旦新規契約者が減少するとすぐに資金が回らなくなり・・・・最後はキャッシュフローの不足で破たんとなる。
これは新規契約者のお金を別の契約者の保証家賃に転用する、典型的な詐欺的な手法で問題が多い。

ではこうした不動産にかかわる詐欺的な勧誘をどうやって見分けるかだが・・・
これは常識で見分けるしかない。
そもそも運用の世界にはフリーランチはない。
通常可能な融資金額上限はその人の支払い能力や保有資産によって決まっており、給料も低く担保となる資産もない人には銀行は貸さない。
家賃もその地域で駅からの距離とかいろんな条件で競争的に決定され、異常に高い家賃は空室を増やすだけだ。
サブリースも長期的にその賃貸物件の収益性に合わせて条件変更されるし、時間が経って不動産の価値が下がれば家賃も下がり、保証家賃も下がらざるを得ない。
こうしたことは極々普通の常識だ。
この常識にそって判断すること・・・何か変だと思ったら疑ってかかる、これが詐欺的勧誘を見抜くカギじゃな。




運用会社、統合・合併の意味(1)

メガ銀行中心に運用会社の再編の動きが続いている。
2015年に三菱UFJ投信と国際投信という三菱系投信会社が合併し、また2016年にはDIAM、みずほ信託の運用部門、みずほ投信、新光投信のみずほ系運用会社が統合された。
そして、今回の発表では2018年SMBC系の2社、大和住銀と三井住友アセット(SMAM)が合併するという。
もともと金融界のトップたちには、100兆円を超える運用資産規模を持つ世界の運用会社に対して、日本の運用会社の規模が小さすぎるという懸念を持っていた。
世界で生き残るためには運用資産規模が40兆円以上必要だとかいう議論がまかり通っていた。
運用資産規模40兆円を基準とすると、日本では野村アセット、アセマネONE(みずほ系の統合会社)ぐらいしかが世界レベルの運用会社といえない。
まあ、こんなのはワシに言わせれば全く意味のないものじゃがのう。

問題なのは、第一に再編の中心にいるメガ銀行の総合企画部だが、彼らは全く現場を理解していないことだ。
アクティブ運用には長期のGOODなトラックレコード(運用成績の記録)が何より大切で、これが顧客の信頼を得るための必要条件だ。
このトラックレコードは、明確な運用哲学、それを実現する適切な運用プロセス、それを支える安定した人材(運用チーム)によって作られる。
決して規模が大きいからGOODなトラックレコードを作れるわけではない。
なにより大切なのはトラックレコードだという基本をメガの企画部連中は理解していない。
むやみな人の異動はトラックレコードのマイナスでしかない。

第二に、アクティブ運用会社の合併はシナジー効果がないことだ。
昔、アライアンスというグロース運用の名門会社がバリュー運用のサンフォード・バーンスタインを吸収合併した。
これでグロースからバリューまでのオールマイティな運用会社が誕生すると皆思った。
しかし、結果はグロースチームとバリューチームがバラバラで新しい運用コンセプトは作られなかった。
ただ単に一つの会社に二つの会社がぶら下がっただけにすぎなかった。
同じことがJPモルガンでも起こった。
グロース運用で定評のあったロバートフレミングを買収したのが、バリュー運用のJPモルガンだ。
でも、チームの統合は困難でグロースチームとバリューチームが並列する組織のままで、シナジー効果があったとは言えない。
バリュー運用の大和住銀と保険運用育ちのSMAMが合併したところで何も新しく生まれない。

第三に、再編により投信ビジネスの系列化を一段と進めてしまうことが最大のマイナスだ。
「投信ガラパゴス日本」のコーナーで日本の投信も問題点として挙げたのは系列の問題だ。
詳しくは「投信ガラパゴス日本」を見てほしいが、日本の銀行・証券を頂点とする系列金融グループ内で投信ビジネスが展開されているのでどうしても販売会社(銀行・証券)の利益追求が全面的にでてきていしまうことだ。
傘下の運用会社を統合することで、投信関連収益をすべてグループ内に留めることができるということだが・・・
でも、そういうグループ優先の論理が一般投資家の不信感をあおり、投信の発展を台無しにしているのに気がつかない。
全く困ったものだ。

しかし、世界は広い。
海外にはこの運用会社の合併・統合をうまく企業戦略として使い、成功している運用会社もある。
次回はこうした運用会社を取りあげてみたい。

強権的独裁者の末路

南北首脳会談で「アレ?」という感じのいい人を演じた金正恩。
米朝首脳会談を前に対米強硬とけん制を繰り返したり、習近平に接近したり、様々な策を弄しているところだろう。
金正恩の立場で考えると、自分がどうやったら生き延びられるか、まさに今が正念場なのだ。
小太りの男自身もそう認識し、ビビッて緊張感のある毎日を過ごしていることだろう。
なぜなら金正恩と同じように軍部をバックにした強権政治を長期間続けてきた過去の独裁者は、みんな、悲惨な最期を迎えているからだ。

特にアジアから中東・アフリカ地域にけけては金正恩と同様の強権的独裁的指導者が数多く生まれてきた。
まず、インドネシアのスハルト氏
1965年クーデターを利用してデビ夫人の旦那であったスカルノ大統領を蹴落とし、30年にわたる長期独裁政権をつくり、恐怖政治を展開した。
1998年反政府活動や暴動が激化し大統領を辞任したものの、過去の様々な不正蓄財を暴かれ、一族郎党が悲惨な最期を迎えた。
フィリピンのマルコス氏
1965年大統領に就任し軍部を掌握し強権政治を展開した。
1986年国内の反政府活動を戒厳令を出して抑え込もうとしたが、結局、米国に亡命し死んだ。
言わずと知れたイラクのフセイン氏
1979年大統領に就任すると粛清と暗殺と投獄で反対派を消し権力を掌握。
イランで起こったシーア派のイスラム革命の拡大を回避するためのイランイラク戦争で頭角を現し、独裁強権政権を樹立し長期にわたって維持してきた。
しかし、最後は核兵器開発等の疑惑で米軍イラク侵攻を招き、アウト、2003年投獄され、その後死刑を執行された。
さらにリビアのカダフィ大佐
1969年クーデターで政権を掌握すると、長期強権独裁政権をつくった。
反米汎アラブ主義を展開し米国から狂犬と呼ばれた男も、2011年アラブの春、ジャスミン革命で反政府勢力に屈し殺害された。

こうした強権的独裁者の末路を金正恩もよく知っているはずだ。
大体、独裁者が政治体制が変更された後も生き残ったという例は記憶にないし、あっても非常に少ないだろう。
もし、朝鮮半島が完全な非核化を達成すれば、平和協定に金正恩自身の安全を保証する何かしらの条項を入れようとするんだろうなと想像できる。
この状況下、金正恩にとっては自身の保身が最重要課題だからだ。
逆に米韓からすれば、金正恩の安全と引き換えに朝鮮半島の完全な非核化を実現していくことになる。
でも、その先は読めない。



イランの国家ファンドNDF

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2016年オバマ政権下でイラン核合意の履行が確認され、国際社会はイランに対する経済制裁を解除した。
イランは石油を国際市場で売り、その代金を国内の開発や将来世代の貯蓄にまわすことができるようになった。
そんなタイミングで、ワシはイランの首都テヘランに向かった。

テヘラン市内のインフラや建物はひどく、この国の厳しい財政状態を見るような感じだった。
道路から建物、さらにビル内装を10年ぐらいそのまま放置するとこうなるだろうと思う風景が目の前にそのまま広がっている。
道路も舗装が痛んでいて、走っているバスや車も旧式で排ガスをまき散らしている。
交通ルールなんてあってないような感じで、40キロで走る車のすぐ前を歩行者が横切る、車線変更も強引でこれでよく事故を起こさないなと感心させられる。
テヘラン市内にはイスラム革命前のパーレビ国王の広大な屋敷が公園として残されていた。
広大な土地に大きな屋敷の他、いざという時の軍事拠点となる建物、武器・弾薬庫などが点在していて、往時の国王の生活を垣間見ることができる。
でも、これらの歴史的な建物や内装もそのまま放置しているだけなので、決して保存状態がいいとはいえない。
長期にわたった経済制裁下、財政に全く余裕なかった国というのが第一印象だ。
イスラム教シーア派の国だが、男性は普通の服を着ているし、女性は頭髪を隠す程度でアラブの保守的な国とは雰囲気が全く異なる。
でもスタバもないし、マックもないところはやっぱり中東だなと思った。

NDF(ナショナル・ディベロープメント・ファンド)はイランの国家財政を担うソブリンファンドだ。
やっと国際社会に復帰できるという状況の中で、NDFのダイレクターは強気に語った。
この5年計画でNDFは政府から独立した機関として、国民の将来を担うことになった・・・初年度から国家の石油収入の30%をファンドに入れて運用を行う・・・ファンドへの入金は毎年3%づつ増額され、国家資産を増やしていく・・・
でも、米国大統領がオバマからトランプに代わり一気に逆風が吹き始めた。
この5月にも制裁解除の見直しが行われる予定になっている。
このNDFはどうなっていくのだろうか?
再び、経済制裁に戻っていくと国家ファンドも全く活躍の機会がなくなる。
明らかにこの投資不足の国、きちんと計画的にインフラを整備し、産業を立て直していけば、経済成長の可能性が高いと思ったんじゃが。
テヘランの北は山岳地帯で、冬は山に雪が積もる。その先はカスピ海で素晴らしい風景が広がる・・・観光資源としての価値は高い。
このあたりは砂漠ばかりのアラブの国々とは違い、いろんな観光開発もできるだろう。
ちなみにイラン女性はアーリア系で色白、目鼻立ちがすっきりとした美人ぞろいだし・・・イランはホントにいろんな可能性を感じさせる国だった。

再び、イラン原油が国際市場から締め出されるのを予想して、昨日、原油価格が70ドルを越えた。






投信のコストを考える(1)

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よく「アクティブ投信はコストが高いから儲からないよな」とか「コストで選ぶならインデックス投信だよね」などと言われるが、投信のコストってなんだろう???
コストってわかっているようでわかっていない人が多い。
今回から数回にわたって投信のコストを考えてみたいのじゃ。

投信のコストは、まず、投信を買った時にかかる販売手数料、運用にかかる信託報酬、口座管理にかかる管理手数料、そして、分配金にかかるインカムゲイン課税、さらに売買益にかかるキャピタルゲイン課税がある。
でもこれだけだと思ったら大間違いで、株式投信なら組み入れ銘柄の売買にかかる売買手数料、外国投信などで為替取引にかかる手数料・・・
さらに投信の売却時にかかる場合もある信託財産留保額がある。
なんか費用や税金ばかりかかり、投信ってホントに儲かるの???という感じになる。

投信を選ぶ時にはどういうコストがどのぐらいかかるのかチェックするのは重要だ。
しかし、コストは安ければいいというわけではなく、組み入れる資産の変動性を考え、その期待収益とコストを比べるのが正しいやり方じゃ。
「投信ガラパゴス日本」のコーナーでも書いたが、販売会社と運用会社(再委託先の運用会社を含む)と証券の保管をする信託銀行の系列関係や様々な特殊事情が働いているため、投信のコストはかなり複雑になる。
その複雑さを簡単に考えてみたい。

まずは投信を買うと最初にかかる販売手数料だ。
販売手数料は投信の窓口となる証券会社や銀行の販売にかかる費用をまかなうためのモノだ。
販売手数料はノーロード投信で全くかからないものから、系列で囲っている専用投信で3%程度かかるものまで幅が広い。
インデックス投信はノーロード(販売手数料ゼロ)のものが多いが、わずだが販売手数料の必要なものもある。
また、市場に上場していて時価で売買できるインデックス型のETF(エクスチェンジ・トレーデッド・ファンド)は株式の売買と同様、売買委託手数料がかかる。
問題は系列の運用会社に投信を作らせて、専用投信として証券会社や銀行が販売するタイプだ。
他の販売会社では買えないため、どうしてもその専用投信を買いたい顧客は3%の高い販売手数料を払って買わぜるを得ない。
最近でもロボティックス投信とか、グローバルEV(電気自動車)関連投信のような夢を煽るタイプは専用投信として設定される場合が多く、その場合当然のように高い販売手数料を払うことになる。
こうした投信は証券や銀行の販売会社サイドから企画を持ち込むことが多く、販売会社としては企画料を上乗せするのは当然というところだろう。
逆に運用会社が企画し販売会社に持ち込む時は、できるだけ多くの販売会社(証券や銀行、さらにネット証券、地銀など)に販売してほしいので、専用(系列のみで販売する)ではなく公販(多くの販売会社が参加する)を希望する。

総じて企画が斬新で夢のある投信は販売手数料が高いと考えておいていいだろう。
逆になんの新味もないどこにでもあるような投信は販売手数料がゼロか低い水準に抑えられている。
でも、この「企画が斬新だ」とか「夢がある」とかは、あまりリターンには影響しない。
夢のある宝くじが実際儲からないのと同じじゃ。
このあたりの感覚がうまく儲ける人と儲けられない人の境い目かもしれない。


実戦的バリュエーションの話(4 PBR続き)

前回からPBRを用いた実戦的バリュエーションの話じゃ。
PBRを使うにはそのクセをよく考えなければならない。
まず、PBRのB、自己資本は簿価なので時価と差がある場合があり、この差を修正する必要がある・・・・正確な資産評価をする。
そして、バランスシートの右側にある資産項目を検討して、劣化している資産や利益を生んでいない資産(遊休資産)をチェックする・・・・資産のクオリティを評価する。
さらに重要なのが今回検討するターンアラウンドの確度だ。

低PBRの銘柄に投資する時は、バリュートラップに注意する必要がある。
バリュートラップとは「割安のワナ」で、割安銘柄を買ったものの永遠に割安な状態が続き、一向にリターンが上がらない状態だ。
株式市場には万年割安株と呼ばれている銘柄があるが、これらはバリュートラップにハマり込んでいる可能性が高い。
主なバリュートラップには、たとえば、投資した関連会社が損失を出したため将来減損が必要になるとか、遊休資産が多く適正な利益を上げられていないとか、将来の低収益を株価が織り込んでいる場合などが考えられる。
こうした万年割安株=バリュートラップ銘柄を避けることで、低PBRの割安株投資のパフォーマンスが大きく改善する。
業績ターンアラウンドのシナリオを考えてその確率を想定することがバリュートラップを避ける良い方法じゃとワシは経験的に思っておる。

話はちょっと変わるが、PBRとROE(自己資本利益率)は明確な関係がある。
ROEとは利益を自己資本で割った数字で、自己資本=株主資本=株主の持ち分に対してどのぐらいの利益が上がったかを図る尺度だ。
ROEが高いほど株主資本を元により大きな利益を稼いでいることになり、株価は高く評価される。
ROEの低い銘柄は株主資本に対して稼ぎ少ない=株主への利益貢献が少ない企業で、株主から低評価を受けることになる。

簡単な恒等式を使うと・・・・

       PER(P/E)=PBR(P/B)÷ROE(E/B)
       (Pは株価。Eは利益、Bは自己資本)

この式でPER10倍を想定すると、PBR1倍の会社のROEは10%になり、PBR2倍の会社はROEは20%になる。
つまり、低PBR銘柄のROEは低くなり、高PBR銘柄のROEは高くなる。
重要なことは低PBRの銘柄でも今後ROEが高くなればPBRは上昇していくことだ
業績ターンアラウンドのシナリオを考えることはROEを引き上げる経営戦略そのものであり、それがうまくいった時にはROEが上がり、PBRも高くなっているはずだ。
業績ターンアラウンドのシナリオはいくつかの代表的なパターンがあり、次回、そのシナリオのパターンを考えてみたい。





田舎の固定資産税はむちゃくちゃ安い???

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固定資産税は不思議だ。
東京の固定資産税は非常に高く、地方の固定資産税は東京より全然低い。
田舎と東京の両方に家を持つワシの実感じゃが、土地の固定資産税の違いは、土地価の違いの2倍ぐらいの開きがある。
一坪当たりの地価はワシの住む田舎と東京の差は40倍ぐらいあるが、一坪当たりの固定資産税は100倍以上ではないかと思う。
また家屋の固定資産税はもっと不思議なほど違う。
田舎の家の建築費と東京の家の建築費は一坪当たりに直せばそんなに変わらないのに、固定資産税は数倍ぐらい東京が高いからだ。

そもそも固定資産税は地方税法で決められていて、その年の1月1日の所有者に対して課税される。
その課税方法は、固定資産台帳に載っている課税標準額に標準税率1.4%をかけて算出される。
課税標準の元となる固定資産税評価基準は総務大臣によって告示され、市町村長はこの基準により課税標準額を決定し、固定資産台帳に登録する・・・とある。
そうなると、市町村の違いがあっても、計算方法と課税方法、あるいは住宅特例なども全国一律に決められているため、課税の不公平感はこの時点ではない。
それじゃ、田舎と東京の固定資産税の違いはどこからくるのじゃろ???

そうなると課税標準額の決め方が田舎と地方では違うことになるが・・・・
土地の場合、課税標準額は公示地価の7割程度を基準に評価を行うとしているが、そもそも田舎の土地には公示地価も固定資産税路線価もない。
山林用途の土地はほとんど価値がなく課税評価も低いのはあたりまえだが、山林の中にある宅地はどうなるのだろうか?
おそらく宅地だからといって周りの土地評価とかけ離れた高い評価もできないだろう。
山林の中にある宅地はどうしても低い評価にならざるをえない。

では、田舎の家屋が低い評価なのはどう考えるんじゃろか?
新築住宅の場合、再建築価格という理論価格を算出する。
家屋の構成部分、骨組み、基礎、屋根、外装、内装、設備の材質・数量を積算して、その総計を家屋の評価とする。
そこから経過年数を考慮して課税標準額が決まるということらしい。
そうなると、材料費単価さえ変わらなければ、あとは広さの違いだけで、全国どこでも一律の評価となるはずだ。
同じ新築時点で東京の家と田舎の家を比べてみると、東京の家の課税評価額が一坪あたり30万円に対して田舎の家は20万円だ。
この課税評価額に加えて住宅特例やその他で税金額は数倍変わってくる。
両方の家はともに木造在来工法で材質の違いはそんなにないはずだ。
となると、この違いは材料単価の違いということになる。
材料単価が田舎は低いので、田舎の家屋の課税評価額が低くなり、固定資産税が田舎は安いというのがワシの結論じゃ。

というわけで、田舎は固定資産税がむちゃくちゃ安い。
税金を払いたくない人は田舎に家を持つといいよ。



田舎に家を持つ(10 住のコスト)

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前々回より田舎暮らしのコスト、衣・食・住のコストをみてきた。
食のコストは田舎暮らしが必ずしも安いとはいえないが、旬の地元の食材をうまく利用することで美味しく割安な食生活が送れる。
そこで今回は住のコストを取り上げて考えてみたい。

田舎に家を持つと、まずかかる住居関係費用が登記の関連費用だ。
まず土地の登記と建物の登記について考えてみよう。
土地については買った時点で所有権の移転であり、移転登記をいなくてはならない。
そうしないと、土地が自分のモノだと証明できない。
法務局に何回か行けば自分でもできるそうだが、司法書士に依頼しても数万円の手数料でできる。
でも建物については、新築でローンがなければ必ずしも登記する必要はないと、CR事務所のIさんから聞いた。
実際に別荘やセカンドハウスを持つ人の中には建物の登記をしない人も多いという。
役所のホームページを見ると1か月以内に登記しろと書いてあるが、新築の場合役所に届ければ固定資産税の対象になる台帳に記載してもらえる。
そうすれば登記しなくても固定資産税を支払うことができる。
登記には表題登記と保存登記の2種類があり、まず表題登記をして自分の建物を表題部にのせる、そして、所有権の保存登記をして所有者や抵当権などを登記簿にのせる。
ローンを組まなければ、保存
登記は必ずしも必要じゃない。
表題登記だけで役所は新築の家を確認できるし、税金の支払い手続きを進められるからだ。
ワシもどうしようかと思ったが、表題登記だけでもしておこうと土地家屋調査士に頼んだ。
これもコストは数万円程度だったと思う。

次にくるのは、不動産取得税と固定資産税だ。
不動産取得税は県税で、市町村が固定資産評価額を決定し、その後、県から納税通知がくるらしい。
でも、建築から1年半経つけど、県からは何の連絡もない。
もうしばらく経つとくるかもしれないが、山梨県のホームページで確認してみた。
住宅特例控除というのがあるらしい。
50㎡以上240㎡の新築住宅は一律1200万円を家屋評価額から引いて、税率3%で課税されると書いてある。
うちの北杜市の課税評価は650万円なので1200万円の控除があれば税金ゼロになるかも。
いずれにしても詳細は分からない。

固定資産税は市税で、市の担当者が訪ねてきて固定資産の評価のためのいろいろな計測をしていく。
なぜかよく分からんが、天井の高さとか壁の幅とかメジャーで細かく計測していった。
そして翌年に固定資産税の通知がきて、課税明細書が同封されている。
課税明細書を見てまずびっくり課税評価がとても低く、税金が少なくて済むことじゃ。
まず土地の課税評価だが、380万円となっていて売買価格の4分の一にすぎない。
市の説明を見ても公示地価の七割をメドにして、主要標準地の価格を出して、課税標準額を出す・・・と言っているが、よく分からんが、実際よりかなり低い額になっていて、税金が安くて助かる。
さらに別荘とセカンドハウスでは扱いが変わってくることだ。
毎月1日以上居住するとセカンドハウスとしての扱いになり、土地の固定資産税が半分になるらしい。
そういえば、市の担当者が訪ねてきたとき、領収書を確認していた。
そんな状況で税金が減額され、
年間1万5000円の固定資産税(税率は1.4%)が通知された。

家屋の課税標準額となると、もっとびっくり、実際の建築費用の5分の一だ。
評価額は再建築価格と損耗状況で補正するとのことだが、課税標準額で650万円だった。
これって大工の手間賃とか設計監督とか人件費関係をすべて差し引いて、材料費だけを計算しても実際の建築価格よりずっと安いだろう。
さらに新築の場合、最初の3年間は減額措置があり半分になるということらしい。
それで家屋の固定資産税は、年間4万5000円という。

東京に住んでいる感覚とドエライ違いだ。
不思議なのは家屋の建築費なんて全国どこで建てても同じなのに、固定資産税は東京だとむちゃくちゃ高い。なぜ??? なぜ???
固定資産税は地方税なので各地方で優遇措置があるのかもしれない。
興味がわいたので自分でもっと調べてみたいと思ったんじゃ。
次は田舎暮らしの住生活コストを考えてみたいのじゃな。



カタール投資庁

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「世界の巨大投資家」のコーナーだが、再び、中東に戻ってみた。
ということで、今回はカタール投資庁を取り上げてみたい。
カタールはアラビア半島の出べそのようにペルシャ湾につき出ているところにある小国だ。
でもカタールエアのハブであるドーハ空港は超近代的でラウンジが最高だ。
東京から中東に行くには、ドバイをハブとするエミレーツ、アブダビをハブとするエティハド、ドーハをハブとするカタールエアのいずれかを使うか、あるいは、香港経由でキャセイという手もある。
エミレーツのラウンジも良いが、やっぱり最高なのはドーハじゃ。
このラウンジではステーキからパスタまで注文サービス(ブッフェスタイルではない)してくれるし、高級フランスワインも飲み放題だ。
乗り継ぎにドーハを使えば、禁酒の国々での疲れをラウンジでワインと食事でゆっくりと癒すことができる。

さて、そのカタールじゃが、他の中東の国々との違いは人口構成だ。
人口約200万人でクウェートより少し少ない程度だが、問題は人口200万人のうち、純粋のカタール人はわずか13%しかいないことだ。
インド・パキスタン等からの移民が大半を占めていて、ドーハにいてもカタール人と遭遇することは少ない。
逆に人口が少ないことで、石油と天然ガスの輸出で大儲けしているこの国の一人当たりGDPは8万5000ドル、世界第二位と超リッチな国だ。

でもこれがカタールの限界でもある。
つまり、人口が少ないので兵力はわずか1万2000人、軍事力が弱いことのがこの国のアキレス腱になってきた。
米軍の基地を誘致し、中国と軍事協力関係を持ち、トルコ、エジプト、サウジ等中東の強国やムスリム同胞団や新興勢力と玉虫色の関係をもって自国を守ろうとしてきた歴史がある。
これが中東のコウモリのような国になってしまい、最近では新興勢力を支援しているとしてサウジやバーレーンなどの隣国から経済制裁を受けた。
トルコの支援でなんとか生き延びたが、そういう意味で微妙な国家関係を生き抜いてきた小国じゃ。

今回取り上げたカタール投資庁(QIA)だが・・・
ドーハはワールドカップの開催が決定しており、広大な砂漠にサッカースタジアムを建設している。
この建設地を抜けてペルシャ湾沿いの反対側にQIAのビルが建っている。
ワシが訪ねたのは5月で、気温が50度を超えギラギラした太陽が照り付けた日だった。
戸外には3分といられない状況でしばらく待たされた。
ここの外部委託担当者はラジャ・スリという印パキ系でいつもの面談相手だが、QIAの会議室で本筋のカタール人にはお目にかかったことがない。
これだけのリッチな国でリスクを取った直接投資をガンガンやっている投資家だ。
欧米のサッカーチームやホテル、老舗百貨店、その他の不動産を買いまくり、ワールドカップでさえカネで買収した疑惑がささやかれた。
少数のカタール人がトップダウンで決めていると想像できる。
このあたりが日本の運用会社では難しいところで、むしろ投資銀行の美味しい客じゃろ。


やさしい株式需給の話(2)

バブル時代「株価は夜つくられる」と言われ、夜の宴会接待で大口売買が決まり、翌日大口注文が執行され株価が暴騰するなんてよくある事じゃった。
市場売買は、多くの市場外での需給に基づいて執行される。
市場外での売買の一部(市場で執行された部分)しか一般人の眼には見えていない。
でも、この市場売買は統計数字として出てくるので、利用できるしその価値は高い。

この市場売買は東証が毎週、投資主体別売買状況として公表している。
2018年3月のデータを見てみよう。
投資部門別株式売買状況 東証一部 金額 全51社・・・とある。
東証のデータは、東証会員51証券会社からの報告に基づいているから、こういうタイトルになる。
後ほど詳細を見てみたいが、要は証券会社の自己申告であり、ホントに外人なのか自己なのかやや疑わしい場合もでてくる。
そして、自己計差引+3407億円、委託計差引-3529億円、総計-121億円・・・とある。
自己とは証券会社の自己売買部門で、委託とは証券会社に委託された売買である。
さらに、委託内訳として、法人+1964億円、個人+4055億円、海外投資家-9813億円、証券会社+264億円・・・とある。
この月は、外人の売りに対して、国内の法人、個人が買い向かう形だった。
証券会社とは東証の会員でない証券会社が会員に委託して売買した分である。

さらに細かくなり、法人内訳として、投資信託+1833億円、事業法人+452億円、その他法人+255億円、金融機関計-577億円・・・とある。
事業法人は2000年以降、法人間の株式持ち合いを解消してきたためずっと売越し主体だったが、ここ数年は自社株買いが増えてきたので買越し主体に転じてきた。
その他法人とは宗教法人だったり、団体や協会のような組織が含まれる。
さらに細かく、金融機関内訳があり、生損保-338億円、銀行-716億円、信託銀行+292億円、その他金融機関+185億円・・・とある。
特に注意が必要なのは信託銀行で、その背後に国内の年金がいたり、特金やファントラがいたりするので中身の分析は少し難しい。

これが東証の投資主体別売買動向の数字で、毎週、毎月、集計されて公表される。
数字の読み方として説明が必要になるのは、海外投資家と信託銀行だろう。
その他の投資主体は比較的単純なので、たとえば、投信は国内公募投信の売買だし、生損保や銀行はそのままだし、事業法人は先ほど説明したぐらいで理解できるじゃろ。
個人はIPOで個別銘柄を買っているし、オーナーの売りは個人にカウントされるから、基本的に売越しになりやすい。
次回以降、この二つの投資家、海外、信託についてもう少し考えてみたい。



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株式需給の達人(おもしろ相場格言)
「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
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PERやPBRなどバリュエーションを理解し割安/割高の実践的判断の基に理論的な株式投資を解説します。 割安とは将来のリータンを示すのか、単に成長性がないというだけなのか、事例をもとに解説します。 株式投資の基礎として大切なもので、是非一読をおすすめします。
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