株山人の投資徒然草

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

大手運用会社をリタイアし、八ヶ岳に住む株山人の日記

株を職業にして38年、株式投資の楽しさを個人投資家に伝えたい。
Kindle版の「株式需給の達人(おもしろ相場格言編)」を出版しました。
既刊の「株式需給の達人(実践的バリュエーション編)」「チャートの達人」「個人投資家の最強運用」「株式需給の達人(基礎編)」「株式需給の達人(投資家編)」とともに一読をおすすめします。

2018年03月

素人の不動産投資(1 ワンルーム対リート)

長期国債の利回りがほとんどゼロの日本では、投資先に苦労している人たちが多くいる。
ワシャのところにも富裕層でもないのにワンルームマンションに投資しないかという電話勧誘が時々やってくる。
ワンルーム・マンションが次々と建設され、不動産業者が積極的にオーナーを勧誘しているようじゃ。
たしかにリッチ退職者や高齢富裕層には不動産投資が人気で、ワンルーム投資は一種のブームようになっている。

ワンルームマンション投資はNOI利回り(管理コスト控除後の利回り)が7%だ9%だと宣伝され、債券投資や銀行預金に満足できない人たちを巻き込んできている。
ワシの知り合いでもワンルームマンションを3-4部屋も買い、賃貸に回して収益を上げサラリーマンと不動産投資家の二足のワラジを履いているのがおる。
表面上のNOI利回りは高いので他の投資に比べとても儲かるように見える。
しかし、落とし穴もたくさんあり、その中には詐欺的な「かぼちゃの馬車、スルガ銀行」のような社会問題になる事件もある。
そこで素人ながら不動産投資を考えてみたいのじゃ。

まず2000万円でワンルームマンションに投資する場合と不動産投信リートに投資する場合を考えてみよう。

中古ワンルームマンション2000万円程度で買う(月次賃料8万円と仮定)。
敷金、礼金を1か月分、更新2年で1か月分とすると、初年の利回りは5.2%、2年目は4.8%、更新のある3年目は5.2%となり・・・平均年利回りは5%。
ワンルームマンション管理すべてを不動産会社に代行してもらうと、賃料の5%程度の代行コストがかかり、したがってNOI利回り(管理コスト控除後)は4.75%だ。

次に2000万円でリートのポートフォリオを作る。
リートにはオフィス(都心や主要都市のオフィスビル)、商業(ショッピングセンターなど)、物流(主要幹線道路に近い物流拠点の倉庫)、ホテル(都市型、リゾート型など)、住宅(レジデンシャル)、介護(老人ホームなど)それらを合わせた複合型などいろいろなタイプがある。
様々なタイプを混ぜて投資するのが基本で、おそらく今の時価で利回り4.2%程度のポートフォリオを作ることができる。

表面的にはワンルームマンションの方が利回りが高く、魅力的に見える。
税金などの諸費用、リターンの特性、リスクの特徴などを多面的に比較して、この二つの投資を考えてみよう。

田舎に家を持つ(4 土地マラソン)

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土地探しツアーが始まった。
土地探しの条件として、東京から車で3時間程度(高速道路を使って)、海よりは山に近い地域、積雪の比較的少ない地域を想定した。
それで軽井沢から始まって、佐久、八千穂、野辺山、清里、小淵沢、原村、茅野、蓼科・・・八ヶ岳をぐるりと一回りすることになった。
CR設計事務所ではこうした土地探しをマラソンと呼んでいて、かなり広い地域を次から次へとまわり、大まかな土地勘をつかむことをまず最初にするらしい。

軽井沢から佐久は、冬の気温が低く(夏は涼しい)、湿気が多く苔が生えやすい、条例で一区画が300坪以上と広いなどの特徴があるということだった。
軽井沢でも北軽井沢は気温が低く、浅間山の噴火や自然環境が厳しい。旧軽井沢は高級感が漂うが、湿気が多い。追分や御影用水の方は落ち着いていて雰囲気がよい。
八ヶ岳の北側、佐久から八千穂は降雪が多く(スキー場がある)冬が寒い。
野辺山から清里、小淵沢などの八ヶ岳の南側は日照時間が長く、降雪は比較的少ない。
八ヶ岳の西側、茅野から蓼科は気温が低く冬が寒い。特に蓼科は夏のみ使用する別荘が多い。
土地マラソンをしながら、ざっと大まかに理解をしていく。

個別の土地を探すときはさらに五行に気をつけて見ていくという。
木、火、土、金、水の五行だ。
木は空気の流れ(風の通り道)を作り、鳥の通り道(啄木鳥の被害を避ける)にも注意する。
火は土地と太陽の向き(特に夏の直射日光を避ける)、日照時間なども注意項目となる。
土は地盤の強さ、土地の傾き、地質を見る。
金は土地の値段、坪単価(割安な土地は理由がある)。
水は雨降ったあとの雨水に流れ、近くの川の位置、過去の水害記録。

たしかに見た感じよい印象でも道路より土地が低く、雨が降ると道路の水が流れ込むなどの土地もあったし、木がうっそうと生えでいて伐採や整地に費用がかかりそうな土地もあった。
こんなことまで考えなければならないとしたら、としたら、土地探しにはすごく時間がかかりそうと思った。
しかし、CR事務所のIさんは土地探しは出会いと一緒で、良い土地にすぐに出会う人もいるし、なかなか見つからない人もいる、要は縁だと言っていたが・・・その通り、意外とBINGOの土地がすぐに見つかった。

そのBI NGOの土地は、八ヶ岳の南側で冬の雪が少なく(根雪にはならない)、日照時間が長い(晴天が多い)、丘の上にあり北側に八ヶ岳、西側に南アルプス、南側に富士山、金峰山などが一望できる、東側は森で白樺などがうっそうと木が生えている土地だった。
さっそく、不動産屋さんと交渉に入った。


アブダビ投資庁

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アブダビ、ドバイ、ドーハの三都市はよく似ている。
まずアブダビはエティハッド航空の、ドバイはエミレーツ航空の、ドーハはカタールエアーのそれぞれのハブ空港であること。
巨大で近代的で航空路が放射線状に世界各地域、アジア、中近東、アフリカ、欧州、北米、南米とつながっている。
日本からこれらの空港を中継してアフリカや欧州へ旅行する人も多い。
第二に街の印象が似ていて、パイナップル型やトーチ型など奇妙な形の超高層ビルが遠目からも目立つ。
ショッピングセンターは非常に大きく、欧米の高級ブランドが並び、金ぴかな店がひしめいている。
この点がイスラム伝統的なサウジやクウェートとは大違いだし、他の地域オマーンやバーレーン、イランなどとも大きく異なっている。

サウジやクウェートから飛んで、アブダビのホテルにチェックインすると正直ほっとする。
アラブの古いホテルでは、トイレが昔の日本のように床に直接設置されていてシャワーが脇についている。
どうやって使うのか迷ってしまうような代物だ。
想像するにアラブ人は白いアラブ服をまくって用を足し、その後、シャワーで洗う??
とすると、この床の水びだしはアラブ人が尻を洗ったあとの水???
もう水を踏んでしまったし、汚ったねーな・・・という感じ。
アブダビやドバイのホテルは普通のホテルで普通のトイレでほっとするんじゃな。

さて、アブダビ投資庁(ADIA)だが、これまた世界最大級のソブリンウェルスファンド(国家ファンド)だ。
ADIAビルのセキュリティを通過し待合室に入ると、まずびっくりする。
巨大待合室に普通のコーヒー・ティー・アラビックコーヒーから、サンドイッチ・ハンバーガーなどの軽食まで完備され、ウェーターがサービスしてくれる。
世界中の有名運用会社が日参しているのが現状で、待合室ではいつも数組のマーケティング担当がたむろしている。
そして、ミーティングルームに通される。
現地人が主体のSAMAやKIAと違い、ADIAでは多くの欧米人が働いている。
外部運用委託の担当部署も、トップはアブダビ人だがその部下はイギリス人だったりオランダ人だったりする。
だから普通に欧州顧客を訪問したような感じで、特にアラブ独特の雰囲気がない。

運用資産が90兆円もある巨大国家ファンドだが、巨大すぎるせいかグローバル・インデックスで運用する資産が大半のようだ。
アクティブ運用はADIA内部で自社運用している部分と外部委託している部分に分かれる。
日本株の自社運用では、日本人のファンドマネージャーが数千億規模で資金運用しているようだ。
パフォーマンスはどうかよく分からないが、バイ・アンド・ホールドでほとんど売買していないらしいと現地ブローカーはつまらなそうに言っていた。
外部運用は競争が激しく日参したりワイロを使ったり、運用会社泣かせの巨大ファンドでもある。
ADIAにはADICという兄弟ファンドがあるが、こっちも何度か訪問したがベールにつつまれたファンドという印象だった。




急落相場の読み方(2)

前回、過去の急落相場を経験的に三つのパターンに分け、基本的な説明をした。
そのうち、最も危険なのは、「半値、八掛け」型の下落で、これを想定したら買いポジションは投げるしかない。
「40%調整」型は景気循環による下落で、再び景気が回復するまで買いポジションを持ち続けるという選択もできる。
そして「20%調整」型は需給による株価変動で、これを積極的に売買タイミングとして考え、より良い運用ができる。
この意味で「20%調整」の読み方は運用のテクニックとしても重要じゃな。

相場格言では「3割高下にむかえ」というのがあり、3割下落したら買えと押し目買いを勧める。
しかし、一方で「落ちてくるナイフはさわるな」ともいい、安易な押し目買いを慎めとしている。
ここで最も大切なのは説明した三つのパターンのどれを当てはめるかの判断だ。
需給による「20%調整」なら買い向かうのが基本になる。
「半値、八掛け」や「40%調整」では押し目買いは危険じゃ。

需給による急落は、市場心理の読み方で書いたとおり、市場心理が大きく影響している。
そのため、値幅と日柄から考えることが有効なテクニックとなる。

まず、値幅じゃが、今回のNYダウの動き(引け値ベース)をみてみよう。
1/26高値26616ドルから2/8の23860ドルまで2756ドル、10.3%の下落を記録している・・・これが第一段の下落。
その後2/26の25709ドルまで戻った位置から、第二段の下落に入る。
値幅のメドは、同幅の下落を想定すると22953ドル、同率の下落を想定すると23060ドルとなる。
しかし実際には第二段で下落ペースを加速させてくる場合もあるので注意が必要だ。

次に日柄じゃが、ワシはこっちの方が使えると思うんじゃな。
繰り返しになるが、日柄とは投資家の興味が持続する期間だ。
人間は忘れる動物、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」もので下落相場も期間限定だ。
今回のNY市場の急落が始まったのは3/22で、トランプの対中国関税引き上げでこれが米中貿易戦争への拡大が懸念されたことだ。
このニュースは全世界に広がり世界中の株式市場が大幅な下落、これが起点だ。

日柄で重要なのは、まず7日目。
「放れ七手変化底」(酒田五法)と昔から言われているが、7日もたてば鈍感な人でもこのニュースを知っているし、専門家がいろいろ分析して説明している頃でもある。
というわけでまず最初に織り込み済になる期間なのだ。
途中で戻りを入れている場合は、もうちょっと期間を長く見ておく方がいいだろう。
経験的には9日、15日が重要な日柄だ。
3/22を起点に、7日目は4/2、9日目は4/4、15日目は4/15だ。
米中貿易問題を市場が織り込む期間として、ワシは注目している。



急落相場の読み方(1)

先週はNY市場の急落で終わり、市場関係者の言葉を借りれば「引け味が悪い」らしい。
急落がなぜ起こるか、ワシャ、経験的に三つのパターンがある思うんじゃ。

まず、一番危険なのは、「半値、八掛け、二割引き」型の下落だ。
これは何かのバブルが崩壊したあとに現れる暴落で、半値(50%下落)、さらに八掛け(20%下落)、そしてさらに二割引き(20%の下落)と合計68%の下落がメドとなる。
1990年の東京市場。バブルのピーク1989年末、日経平均の史上最高値39000円から暴落を始める。
当時の日銀総裁三重野さんがバブル退治を始め、不動産総量規制、急激な金融引き締めを実行したからだが、株価急落で企業のクレジット(信用)が大きく棄損してしまった。
これがさらなる下落をまねき、不動産価格も暴落状態になった。
その前数年で銀行融資が300兆円増加したが、その多くの不動産関連融資が次々と不良債権化してしまった。
結局、日経平均は半値の2万円で止まらず、八掛け15000円を割り下げ止まった。

もう一つは2008年のリーマンショック後の下落。
サブプライム危機から下落していた株価は、9月に大手投資銀リーマンブラザーズの破たんからさらに急落。
今でも忘れられないのは、その1-2か月後、商社などから入ってきた貿易がフリーズしているという情報だった。
モノの取引のうしろには必ずカネの流れ=融資があり、貿易は信用で成り立っている。
リーマン後のクレジットクランチ(信用収縮)で貿易金融が凍結されたようだった。
貿易はグローバル経済の血流で、これが止まると・・・ショック死しかねない・・・ギョッとした。
こうしてクレジットクランチが株価の下落をさらに拡大させた。
結局、リーマン前の高値19000円前後から半値(9000円台)、さらに八掛け(7000円台)までの暴落となった。

クレジットクランチを引き起こす株価下落はめったなことでは起こらない。
しかし、一旦起こるとたいへんな惨状をまねくから要注意じゃ。

次のパターンは、リセッション(景気後退)型で、だいたい、40%以内の下落だ。
これは数年に一度起こる株価調整で、通常の設備投資循環などによって引き起こされるものだ。
しかし、最近はきれいな投資循環もあまり見かけなくなってしまった。
経済も株価もショックで動いているからな。

最後は株式需給による調整で、だいたい、20%以内の調整だ。
これは買い手が目一杯のポジションを取ると、それ以上買う人がいなくなり反落する。
売り手が全部売却すると、それ以上の売り手がいなくなり反発する。
そんな需給よる株価変動で、普通に日常的に起こっていることだ。

この三つの急落パターンのどれが当てはまるかの判断が重要だ。
クレジットクランチの兆候があれば大きな調整を予想するし、景気後退につながるならMAX40%程度の調整を想定するし、単なる需給要因ならMAX20%程度を想定すれば十分だ。
次は一番よく起こる需給による株価調整をもう少し考えてみたい。

おまけ。
ビットコインはこの「半値、八掛け、二割引き」のパターンに入っている。2万ドルでピークを打ったてから、半値1万ドルを割り込み、八掛け8000ドルを割り込んだ。あと残るは二割引き6400ドルだけだ。




田舎に家を持つ(3業者選定)

田舎に家を持つ(2)で家のイメージがおよそ固まった・・・シンプル+コンパクト+ミニマル
そしてインターネットでいろいろ探して見た。
別荘や山荘というと、ログハウス、スウェーデンハウス、アメリカンハウス、在来工法の家、などなど、数えきれない種類があり、数えきれない業者がいる。

まず、アメリカンハウスの会社(ログリゾート)のHPを見た。
欧米の住宅らしくダイニングとリビングが完全に分けられ、広いアイランド型のキッチン、リビングには大きな暖炉・・・という感じ。
昔住んでいたロンドンの家を思い出す。
欧米人はホームパーティ好きなので、ダイニングやリビングは基本客用。家族はキッチンで食事し、ファミリールームでくつろぐ。
アメリカンハウスも同じ作りで家族が楽しむ家でなく、ホームパーティなどで来客をもてなすための家という感じなのだろう。
というわけで、パス。

次にログハウスの会社のHPをチェック。
北欧風のマシンカットのログハウスや北米風の丸太ハウスなど、多少テイストの違いがある。
でも、基本的にはキットの輸入販売で大きさやタイプがいろいろあるものの同じ様なもんだ。
スウェーデンハウスとか北欧風は色も鮮やかで森の中でよく映える。
アメリカンログハウスは、カバードポーチが付いていてカントリーウェスタンで見たことあるようなタイプの家だ。
でも、キットで輸入され組み立てるので、デザインの自由度が小さく、融通がきかない。
というわけで、パス。

在来工法の業者はそれこそ星の数ほどいるので選ぶのがたいへん。
その中で軽井沢や八ヶ岳周辺(佐野、野辺山、清里、原村、茅野、蓼科等)の寒冷地での実績が多くあり、特徴のあるデザインコンセプトを持っている業者となると、かなり絞り込める。
こうして絞り込んだ業者のHPをチェック、特に建築実績をよく見る。
家デザインの勉強になったのはhomifyのHPだな。
そして、シンプル+コンパクト+ミニマルな設計実績の、BINGO!と思えた業者に出会った。
それが森の家を標ぼうするCR設計事務所だった。
そのHPには土地探しから設計、施工の管理、メインテナンスまで面倒を見てくれるとあり、これまたBINGOな設計事務所だった。

そして、CR事務所のIさんとWさんにアポを入れ、表参道のショールームを訪ねた。
実際に土地探しがスタートすることになったんじゃ。






マサカという坂

小泉さんの名言だが・・・
「人生には上り坂、下り坂があります。そしてもう一つ坂があります。マサカという坂。」
マサカ、そうくるかと思ったのが、昨晩のトランプ氏の大統領令(対中国関税強化)署名だ。
あわてたNY市場は急落、NYダウが2.9%さげた。
ちょっと不思議な感じだがグーグル株は3.8%下げアリババ株は5.4%下げた。
グーグルはずいぶん前に中国市場から締め出されており、中国の報復対象となりにくいのに???

マサカではあったが、これは単なる貿易問題や貿易戦争じゃない。
全人代で習近平が無期限の絶対支配者になったこのタイミングで中国にクサビを打つトランプ大統領令に、ワシャ、大いに賛成じゃ。
習近平支配の中で、中国が先進国と別のルールで世界と対峙してくるのは目に見えている。
その別のルールのうち知的財産はその大きな争点となるはずだ。
そもそもコピー天国の中国には知的財産権という発想はない。
先進国企業が中国進出する時は中国企業との合弁が義務付けられている。
そして、その合弁企業は昼間正規製品を作り、夜間コピー製品を作ると言われている。
技術レベルが低かった頃はせいぜいブランドのモノマネ程度だったが、今日の技術レベルでこれをやられたら先進国はたまらん。
先進国にとっては膨大な研究開発費を回収できない事態が見えているからだ。
さらに先端分野で中国のコピー製品にシェアをとられ、ロボットでもAIでもEVでも勝てなくなる。

その前にトランプがクサビを打った。
しかし残念ながら、このやり方じゃ、先進国全体での対中国政策にはならない。
なぜなら通商法301条を持っているのはアメリカだけだからだ。
本来、中国に国際的な知的財産保護ルールを守らせるように国際協調するのがスジだ。
ただし、共産党独裁の中国はルールを作るのは自分だと思っているので、けっして自分から国際ルールに合わせていこうとはしない。
ここからの先進国の知恵と対応に期待したいところじゃ。





投信ガラパゴス日本(金融当局編)

日本投信はきわめて特殊に発展してきた。
しかも投資家、販売会社、運用会社、金融当局のそれぞれがこの特殊な投信ビジネスを育ててきたともいえるんじゃ。
日本のガラパゴス投信がどのような仕組みで成り立ってきたのかを考えるコラムの最終回。
金融当局編だ。

金融庁はここ数年大きく舵を切り欧米諸国で常識となっている原則を相次いで導入した。
英国の統合規範を手本にしたコーポレートガバナンスコードとスチュワードシップコードだ。
コーポガバナンスコードでは、上場企業に向けて株主権の保護や株主との対話、情報開示と透明性、取締役会の責務などの原則を・・・スチュワードシップコードでは機関投資家の受益者責任を明確にして、利益相反、経営者との対話(経営モニタリング)、議決権行使と結果の公表(定期報告)などが定められている。
いずれも罰則規定はないが実施しないとその説明が求められるので、ほとんどの上場企業、運用会社がこれにそったガイドラインを作った。

しかし、欧米の仕組みをそのまま取り入れても同じ効果を見込めない。
たとえば、次期社長を選ぶとしよう。
欧米企業では、まず株主の委託を受けて、取締役会(独立、社外が中心)が社内/社外の社長候補を比較検討し、次期社長を決め、最終的に株主総会で決定する。
社外取締役の広範囲の知見・人脈を利用して、株主にとって最適の経営者を登用する仕組みだ。
日本企業では社長は従業員のトップであり、現社長と少数の社内取締役が実質的に決める。
経営(監視)と執行(事業推進)がきちんと分離していないため、会社の不祥事や不正の隠蔽などが横行する。
欧米流のガバナンスを取り入れるなら、欧米企業の仕組みを取り入れないと難しい。

国内投信でも金融レポートを発表したり、金融庁の圧力が増している。
当コラムでも指摘したような、手数料が高く手数料控除後のリターンが低いとか、販売会社と運用会社の系列関係などが挙げられている。
そして、特に問題視しているのが毎月分配の投信だ。

4000円程度の基準価額の投信が20%の分配を出す・・・異常に高い分配じゃ。
そして毎月分配投信は、タコ足で自分が払い込んだおカネをもらっているだけだとか、高い分配で複利効果が全くないとか、分配金に税がかかるので無駄が多いとか批判される。
しかし、多くの高齢受益者にアンケートすると、年金不足を投信の分配金で埋めてくれるのでありがたいとか、元本部分は相続で親族のモノになってしまうが分配金は生きている間に自分が使えるのでありがたいという声をよく聞いた。

投資常識からいえば金融庁の言う通りだが、高齢者の事情を考えれば別にあってもいいと思うんじゃ。
欧米の仕組みや理論をそのまま日本に持ち込もうとしてもいろいろ矛盾がでてしまう。
お勉強のよくできる役人が形式だけでやると、手数料が安く効率的なインデックス投信だらけになる。
そうなると、投信のイノベーションが逆に停滞し、つまらない投信ばかりになってしまうんじゃないかとワシャ、危惧している。


田舎に家を持つ(2家のイメージ)

田舎に家を持つ(1)・・・というわけで、土地探しを始めた。
田舎の土地は難しい。
都会の土地は駅から徒歩何分とか、コンビニが近くにあるとか、利便性が判断基準になる。
ところが、田舎の土地には利便性は関係なく、森の中、山の斜面、牧草地の隣など判断基準が違い、都会人にはこの土地にどんな家が建つのかのイメージが持てず難しい。
そこで、先に建築家や設計事務所を選んでサポートしてもらうことにしたんじゃ。

そのために自分がどういう家をほしいのかを考えた。
自分の理想の生活をイメージする。
大きなテーブルの真ん中に座り、PCと遊んでいる。
手の届く範囲に好きなものが並んでいる。
チョコレート、淹れ立てのコーヒー、ウィスキーの水割りとつまみのナッツ、小腹がへった時のハムエッグトースト、BOSEのステレオ、愛犬などなど。
片手の範囲にすべて欲しいものがあり、好きな時に好きなものを使える(食べられる)・・・これが理想だと思った。
でもこの理想の生活の住人はすぐにゴミ屋敷の住人に変化する。
食べ終えたチョコレートの箱、コーヒーの豆かす、ナッツの袋、油で汚れたフライパン、聞き終えたCDのやま、そして愛犬のウンチ、などなど。
テレビでよく見るゴミ屋敷は、理想の生活を続けてきた人の末路なんだろう。

というわけで、理想の生活ーゴミ屋敷ー断捨離ー理想の生活ーゴミ屋敷・・・というサイクルを回すのが大切で、それに適した家というのが結論だ。
そうなると、手の届く範囲じゃ狭すぎるので、数歩で行ける範囲に広げる。
ここで家のイメージができた・・・シンプル、コンパクト、ミニマルな家
シンプル
は「芸能人のお宅拝見」の正反対のイメージ。
芸能人は見栄もあるし、訪問者に「すごーい」とか言われたいために家を持つ、その反対に自分の生活だけのために持つ。
コンパクトは豪邸の正反対のイメージ。
豪邸はその維持に多額のコストがかかる、その反対でメインテナンスが簡単でコストが安い家が理想。
ミニマル、ミニマムを越えるイメージ

ミニマムは最低限という意味で、ミニマム生活は、例えば、スエット1着、鍋一つ、寝袋一つで衣食住をカバーするイメージ。
そうではなく、絞り込んだ自分の好きなものだけに囲まれて住むというのが、ミニマル(必要最低限)な生活のイメージで、ミニマムを超越する。

こうして、シンプル、コンパクト、ミニマルな家を建築する設計事務所を探すことになったんじゃ。



フェイスブックの急落を考える

フェイスブックの個人情報5000万人分が2016年の米大統領選でドナルド・トランプ候補(当時)陣営に不正に利用されていたというニュースが飛び込んできた。
トランプがいろいろ無茶苦茶をやるのは慣れてきたけど、ロシアゲート事件も明らかになっていないのにまたまた出てきた。
しかもSNSの個人データを使って投票者の行動に影響を与えようというのは、民主主義国である米国にとってはアキレス腱だろう。
フェイクニュースだと文句言いたい放題だったトランプ氏陣営がフェイクだったという逆説じゃな。

・・・New York Timesの報道は、CAの元幹部、クリストファー・ワイリー氏のインタビューに基づくもの(Facebookは同氏のアカウントも停止した)。CAは、トランプ氏の選挙対策本部のCEOを務めた保守系ニュースサイトBreitbart Newsの会長、スティーブン・バノン氏や共和党支持者から、「米国の投票者の行動に影響を与えられるツール」提供を条件に資金を受けたという。
・・・Facebookは、5000万人の個人データはサイバー攻撃などで流出したのではなく、ユーザーの許可を得て集められたものだが、それを第三者に売却したことがポリシー違反だと説明する。ホーガン氏はFacebookアプリを公開し、このアプリの利用条件としてユーザー本人とその友達のデータを収集するとアプリの概要で明記していた。このアプリは約27万人がダウンロードし、そのアプリ経由でユーザーとその友達を合わせた5000万人分のデータをコーガン氏が入手した。
・・・CAもFacebookも、自らの行為は違法ではなかったとしている。Guardianによると、ロシア出身のコーガン氏はFacebookユーザーの感情に関する研究でロシア政府から補助金を受けていたという。
これからどう展開していくかは予測困難だが、ロシアゲート事件をつながり拡大すると嫌な感じだ。

しかし、マーケット的に見ると一番堅調だった米・ITセクター、FANGが下落することは一つの底入れの条件じゃろう。
市場の底入れは参加者全員が真っ青になり、ギブアップ状態になった時に起こることが多い。
今までNASDAQが新値を取るなど部分物色/部分整理の状況から、全面安に移ってきているように思う。
だとしたら、底入れが近くなってきた感じがする。
ここ1-2週間が正念場か?

20日午後5時追記
午後、日経CNBCを見ていたら、コメンテーターを自称するオッサンが、しきりに「3番底になるかが重要だ。3番底になれば反発局面に入るが、割れればもう一段安する」とコメントしていた。
この人、自分のカネで相場やったことないんじゃないかと思った。
こんなコメント、全く意味不明で、じゃ、どうすればいいの?という感じだ。
ワシが思うのは、割れるか割れないかなんて全く意味がない。
ワシは、割れないで3番底を打てば、きれいなトリプルボトムだし…割れて突っ込んでも大底を形成すると考えているからじゃ。
おそらく、21000円前後での2回のボトム(2/14と3/5)を割り込めば、この低レベルのコメンテーターも含めて市場全体が一気に弱気に傾く。
逆にそれが底入れの条件だと思う。
その意味で正念場と言ったわけじゃ。


田舎に家を持つ(1)

長い都会のサラリーマン生活。
ずっと、ワシは田舎に家を持つなんて考えられなかった。
田舎の家に時間をかけて行く、家の掃除、庭の雑草取り、芝生の手入れ、そんな雑用ばかりで週末がつぶれる。
だから、週末別荘を持つ人たちの気持ちなんて全く理解できなかった。

それが変わってきたのが、定年まで数年を残す頃じゃった。
子どもも大きくなり、妻と車でいろいろな場所を見て回った。
松島から仙台、岩手を回り、秋田、山形を通って東北1周。
長野から富山、金沢、琵琶湖を回って名古屋から帰るコース。
神戸から徳島、香川、高知、愛媛を回って大阪から帰る四国1周。
神戸から広島、島根、山口、下関の中国地方1周。
青森から岩手から宮城・福島の海岸線を延々と走り、東北地震のあとを見て回ったりもした。
一回の旅行で3000キロ、4000キロ、またはそれ以上車で走った。
車で走ると飛行機や新幹線にない旅行の臨場感が得られる。好きな場所に寄り道したり、気になったところで止まることができる。
そんな中で強く感じたのが、日本の田舎がそれぞれ全く違うことだった。
温泉も場所により湯質も温度も全然違う。
好物のうどん、そばなどの麺類も地方によって全然違っている。
山も森も湖も全く異なった佇まいを持っている。
日本の田舎ってこんなに個性があるんだとあらためて思った。

それに伴って旅人として通り過ぎるのだけでなく、田舎に家を持つ暮らしをしてみたいと思い始めた。
一か所に住んでみないとわからない良さも多いのじゃないか・・・
田舎の時間をじっくりと味わってみたい・・・
これが一つの理由じゃった。

もう一つは学生時代からやってみたくて、時間がなくてできなかったり、その他いろいろ言い訳をしてできなかったり・・・ことがいっぱいあった。
こうした事に決着をつけずに人生を終わることに納得できなかった。
人生の後半でやり残したと思ったことを全部やっておこうと思ったことがもう一つじゃな。
それで2年ほど前から条件に合う土地を探し始めたんじゃ。


北朝鮮リスクを考える(2)

北朝鮮が今後どうなるかは、2つの軸で4つの可能性が考えられる。
一つの軸は、金正恩体制が維持されるか、または、変更されるか。
もう一つの軸は、それが軍事的(戦争を含む)に行われるか、または、非軍事的に行われるか。
この2つの軸から4つのシナリオが想定される。

まず、金正恩体制維持+軍事的アプローチのシナリオ1。
これは現状となんら変わらない。
相変わらず、北がドンドンミサイルを打ち上げ、核実験を繰り返す。
それに対して、トランプが威嚇を繰り返す。
これは危険なシナリオで、いつ日本や韓国、米国がミサイルの被害に合うかわからん状態じゃ。
しかし、現状維持なので株価には短期的に大きなマイナスはない。
長期的には万が一のリスクが残る。

次に、金正恩体制維持+非軍事的アプローチのシナリオ2。
これは対話を通じて金正恩がミサイルの発射と核使用を凍結し、米国は経済制裁を緩和するお互い歩み寄りのシナリオ。
金正恩体制が続くという点で将来に不安を残すが、当面はミサイルも飛んでこないし核実験もないというところで、一番穏健で妥当性が高いと思うんじゃな。
実体経済には中立で、株式市場にはプラスをもたらすじゃろ。

三つ目は、金正恩体制崩壊+軍事的アプローチのシナリオ3。
これは最悪で、ミサイルの打ち合い、地上軍の投入、その結果、金正恩体制が崩壊するシナリオだ。
この場合、北の国内経済が壊滅的ダメージを受けるので、人口2500万人の国から大量の難民が韓国や中国へと脱出を図る。
仮に人口の3割としても750万人の大量難民となる。
彼らを食わせるのに一人年間100万円かかると、食わせるだけで7兆円以上もかかってしまう。

1000万人以上の大量難民の可能性もあり、中東から欧州に来て問題となっているシリア難民の比じゃない。
この場合、韓国と中国の東北部の経済は大きくダメージを受け、大混乱は必然。
年単位で経済混乱し、東アジアの株式市場も大きく下落する可能性がある。

最後に、金正恩体制崩壊+非軍事的アプローチのシナリオ4。
これは、経済制裁などが効果を発揮して、内部からクーデター等で体制変更が行われるシナリオだ。
ただ体制崩壊後の北側への経済支援だけでもとてつもないカネが必要になる。
北は一人当たりGDP(国連推計で)700ドルしかない最貧国だから、韓国が北を併合したら韓国の一人当たりGDP3万7000ドルが3万ドル以下に激落するかもしれない。
いずれにしろ韓国経済には非常に大きな負担になるのは間違いない。
ベルリンの壁崩壊後のドイツの苦難なんて比べ物にならないぐらいじゃ。
中国東北部に一部難民が押し寄せるかもしれないが、中国の経済規模を考えれば吸収可能だろう。


ワシの見立てでは、シナリオ1が30%、シナリオ2が50%、シナリオ3が10%、シナリオ4が10%の発生確率じゃな。
シナリオ3は最悪で東アジア経済全体に大きなダメージとなり、株価も大きな下落が予想される。
シナリオ4は、北側の物理的経済的ダメージは少ないものの相当な額の経済支援が必要となり、北を併合する韓国経済や株価には大きなマイナスとなりそうじゃな。
誰もこんな状態を望んではいない。
だからこそ、金正恩が韓国代表団に甘い言葉をかけたとき、文ジェインやトランプはすぐに乗ってきたのだろう。
もちろん、低い確率で交渉が決裂し、軍事オプションに行く可能性も否定できない。
しかし、ワシャ、北・米ともに歩み寄りを最良と考えているような気がする。
シナリオ2が成立する可能性が一番じゃと見るがどうだろうか。




北朝鮮リスクを考える(1)

北朝鮮はホントにお騒がせな国じゃな。
国際社会の圧力を無視して核実験をしたり弾道ミサイルをバンバン打ち上げたり・・・まるでキューバ危機か?・・・と思えば、今度は態度を一変させ米朝対話に向かう・・・懐疑と不信の中でブレにブレている。
こうした北朝鮮リスク、金正恩とトランプのリスクは、株式市場へのどういう影響をどう考えるのか?

政治イベントが大きく経済を変え、株式市場にも大きな変動を与えた例は、1971年のニクソンショック、1974年前後の石油ショック、1985年のプラザ合意などある。
ニクソンショックは米ドルと金の兌換停止、その後為替の変動相場制への移行につながった。
米ドルは1オンス=35ドルで金と交換でき価値が固定されてきたが、変動相場制への移行で世界は一気に不安定化してしまった。
当然株式市場にも激震が走り、日経平均は1週間で25%下落。

石油危機は湾岸の産油国が原油価格を短期間で一気に4倍に引き上げたことから、原油輸入国の日本は狂乱物価とインフレ不況で株価は1975年までの2年間で37%の大幅下落。
高度成長の終わり、長期の不況を経験した。

プラザ合意は日本のエレクトロニクス産業の台頭とともに米国の貿易赤字が拡大、ドル暴落が先進国の間で懸念され、先進国の財務相が協調的なドル安路線で合意。
ドル/円は235円から一気に20円引き上げられ、さらに翌年120円台までの超円高を引き起こした。
日銀が円高不況に対して金利を大幅に引き下げ、日本バブルの元をつくった。

これらの例はいずれも政治的決定が大きく経済の枠組みを変え、株も為替も大きな動いたイベントだ。
時として人間が決定することが本質的な変化を促す。
金正恩とトランプはどんな決定をするのか?
これらのイベントと並ぶほど重要なものになるのか?
たんなる北朝鮮という小国内の変化だけに留まるのか?
いくつかのシナリオで見てみようと思うんじゃな。





スポティファイの直接上場を考える

スポティファイが4月3日にNY市場の上場されるとのニュースを見た。
通常のIPO(イニシャル・パブリック・オファリング)とは違い、新株を全く発行せずに直接NY市場に上場するという。
新株発行しその調達資金を事業拡大に再投資し、上場後の成長を高くより確実にしていくというパターンが一般的だが、スポティファイの狙いは何なのじゃろか?

まず、考えられるスポティファイ側のメリットじゃが・・・
IPOでは、幹事証券会社が新株発行などの手続きを仕切り莫大な手数料を稼ぐのだが、直接上場するとなると幹事証券に支払う数十億円の手数料を節約できること。
さらに、新株発行しないので既存株主の持ち分が希薄化しないこと。
スタートアップ企業では創業関係者の保有株比率を維持するのは非常に重要で、会社の支配権を確保し、経営判断がトップダウンで迅速化できる。
また、株式の売り手が既存株主のみとなり、自分たちの意思で売却できるので上場後の価格をコントロールしやすいこと。
・・・などを思いつく。

逆に投資家側のメリットは・・・
株価が下がるときには既存株主の売りが減るだろうから、下値での需給が改善する期待が生じること。
新株発行なしで上場後の需給がタイトな状態を続くので、株価がオーバーシュートしやすい。
でも、IPOで大量に買うことができないことや株価変動が予想以上に大きくなることなどがデメリットだろう。

スポティファイのファンダメンタルをチェックしておこう。
売上高は、2015年 約2500億円、2016年 3800億円(+52%)、2017年 5200億円(+39%)
営業キャッシュフローは、2015年 -50億円、2016年 130億円、2017年 230億円(+77%)
税引利益は、2015年 -290億円、2016年 -700億円、2017年 -1600億円
月間アクティブユーザー数、2015年 0.9億人、2016年 1.23億人、2017年 1.59億人
ARPUは、2015年 889円、2016年 806円、2017年 691円  
(すべて130円/ユーロで換算)

まず、売上高だが、SaaSの40%ルールから見ると・・・
このSaaS(ソフトウェアサービス)業界では、売上げの年成長率+営業利益率が40%以上を出して評価されるという経験則じゃ。
たとえば、売上成長率100%の会社なら営業利益率で60%の赤字まで許されるということになる。
このルールを当てはめると、年成長率39%では営業利益トントンが期待されることになるが実際は営業赤字。やや期待を下回る利益水準じゃな。

営業キャッシュフローが黒字で、金回りは問題ない。
これがあるから、新株発行せずに上場しても大丈夫ということなんじゃろ。

また、アクティブユーザー数は30%で伸びているもの、ARPU(ユーザー当たりの単価)は逆に減少している。
マネタイズ(利益を出し方)に苦労しているのが見える。ここはマイナス評価になるじゃろ。

というわけで、そんなに魅力的な数字ではないのじゃが、直接上場という特殊な需給関係によってけっこう騒がしくなるかもしれない。
この形がうまくいくと、他のスタートアップ企業の上場でも同様の直接上場が行われる可能性が出てくる。
そうなると、証券会社はIPOで大儲けするチャンスを棒に振ってしまう。


クウェート投資庁

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クウェートはサウジと同じイスラム教スンニ派の国だが、他の湾岸諸国とはずいぶん違った印象を持つ。
人口300万人程度の湾岸の小国だが、一人当たりの国民所得は4万ドル、ソブリンファンドの規模が60兆円と、湾岸の中でもトップクラスの超お金持ちの国じゃ。
でも、金持ちを見せびらかすわけでもなく、非常に質素な感じがするのがクウェート人だ。

まず、狭く、古く、汚く、ゴタゴタしているクウェート空港。
ドバイ、ドーハなどの近代的な美しい空港と比較したらまるでアラブ田舎の雰囲気じゃ。
空港からクウェートシティの中心部までは車で30分程度だが、シティセンターに近づくにつれて渋滞がひどくなり、側道を含めて交通カオス状態になる。
なんとかシティセンターにくると、PANASONICと大きく縦に書かれて高層ビル、クウェートタワーなど、いくつかの高層ビルが見えてくる。
しかし、全体としては廃墟のような古いビルが数多く残っていたり、伝統的な独特の雰囲気を形作っている。
クウェート人の話では廃墟ビルは1990年の湾岸戦争当時、イラクのミサイル攻撃で破壊されたビルで、その記憶を忘れないためにそのまま放置しているらしい。
ショッピングセンターはよくありがちな欧米ブランド品が並んでいる贅沢な感じではなく、個人住宅も一つ一つ大きいが土でできた伝統的な作りだ。
クウェート人は慎重で浮ついたところがなく、お金持ちなのに質素で倹約家なのだろう。

クウェート投資庁(KIA)はシティセンターの政府複合ビルの一角にある。
厳密にはクウェート財務省のオフィスの一部だ。
セキュリティは厳しいがけっこう古いオフィスで、やはり中はゴタゴタしている。
人口が少ないためだろうが女性官僚も多く働いているし、若手官僚も忙しそうに行き来している。
伝統的なスンニ・イスラムなのに女性登用が進んでいたり服装も髪を隠しているだけなので、女性に参政権も運転免許もなく目だけが出ている服を着ているサウジとはずいぶんと違う。

KIAは60兆円を有する巨大な機関で、財務省直轄で国家財産を管理運用している。
確認はしていないが、国家予算と分けてKIA資金は管理されているようだ。
原油価格が暴落したときサウジは予算をSAMA資金で穴埋めしたが、クウェートにはそうした動きが感じられない。
KIA資金は原油価格と関係なく、安定してずっと増えてきているようだ。
なのでグローバル市場への影響も安定していると思うんじゃな。

しかし、少人数の国民の将来を賭けているだけに、パフォーマンスには超厳しい投資家だ。
四半期ごとにパフォーマンスを精査して、運用結果が悪い場合によってはウォーニングレターという改善命令を出してくる。
資金を受託している運用会社、そして、ファンドマネージャーもKIAという名を聞くとピクリと緊張するような投資家じゃな。

一方、非常にオープンに常に優良なファンドを探しているし、良いものならきちんと精査して投資する合理性を持っている。
昨年大きな人事異動があり、オルタナ運用部門の責任者が運用最終責任者であるMDに昇格した。
これにつれて伝統運用部門も変更があったが、おそらく、KIAはより積極的なリターン追求に向けて組織を変えたのだろうと思うな。
今後、グローバル市場により大きな影響力を持つかもしれない、注目の投資家じゃな。





投信ガラパゴス日本(運用会社編)

日本の投信ビジネスが特殊であるのは、投資家、販売会社、運用会社、監督当局、すべてがこの特殊な仕組みを作り上げてきたからじゃ。
投資家編では、日本の富裕層の土地持ちと預金過多がごくごく少額の高リスク投信を買うことでバランスを取っていると書いた。
販売会社編では、銀行や証券など販売会社が金融グループの頂点に立ち、販売サイドの事情がすべてに優先していることが歪みのもとにあると書いた。
そして運用会社編だが、これも金融グループの一子会社であることが大きく影響しているんじゃ。


まずは運用会社のトップ人事が金融グループ親会社に握られていることじゃ。
独立系の小規模運用会社を除いて、日本の大手運用会社はすべて金融グループの子会社だ。
三菱UFJ国際投信は三菱UFJグループ、アセマネONEはみずほグループ、SMAMはSMBC、日興アセットは三井住友信託、野村アセットは野村証券、大和アセットは大和証券、東京海上アセットは東京海上、大和住銀はSMBCと大和証券といった具合じゃ。
運用会社の社長はグループ人事で決まり、グループ役員が社長として運用会社にくる。
たいだい任期は3-5年程度なので、めまぐるしく、ぐるぐると変わる。
つまり、運用会社の社長はグループの意向に逆らえないし、経営改革するには任期が短すぎるという訳で、運用会社は旧態依然とした経営が続いてしまうリスクが高いのじゃ。
運用会社がため込んだ内部留保さえ将来の自社成長に使えず、親会社に配当として献上せざるをえない経営ではいつまでたっても親の言いなり経営から抜けられない。

次に強い現場(ファンドマネージャーやマーケティングなど)が運用会社の根幹だがそれも限界があることじゃ。
ファンドマネージャー、アナリスト、マーケティングなどの専門職は非常に強いプライドと受託者責任を感じて仕事している。
それが運用会社の基本にあり、競争力の源泉じゃ。
彼らは、取締役など経営陣を親会社からフラフラ降ってくる落下傘部隊と呼んでいる。
経営陣がどうであれ、自分たちが運用会社を担っているという自負があるからだ。
でも、所詮、彼らは雇われで自分たちが経営者になれるとは思っていない。
だから、そのモチベーションはどこかで限界に達してしまう。
それが大きな問題で、落下傘ばかりでなく、現場から経営に上がれる体制をつくる必要があろう。

もう一つは日本の運用会社の弱点と海外の運用会社に勝てない理由。
日本株、円債から各国ソブリン債までの運用は相当なレベルで自社運用が可能だが、新興国を含むグローバル株や海外企業の発行する事業債などの運用は自社では困難なところが多い。
これはグローバル運用の体制をつくるコストが高く、競争力のあるトラックレコードをつくる費用対効果が見込めないためだ。
となると、新興国の株・債券投信をつくるときは、海外の運用会社の商品を導入しなくちゃならない。
判断能力のない販売会社と海外の運用会社の間にたって、海外投信の目利きをしてアレンジするのが日本の運用会社の仕事になってしまった。
箱貸しのわずかな収益と引き換えにグローバル運用のできない運用会社になってしまっている。
これではいつまでたっても海外の運用会社をまともに競争できるレベルに達しない。

しかし、海外にはフェアで厳しい競争のある投信市場がある。
そうした市場に多くの日本運用会社も参加しており、運用の腕を競い合っている。
そこに将来の投信ビジネスのヒントがあるかもしれない。
この海外の投信市場についてはまた別途考えてみたいと思うんじゃな。

メディアはヒマ人の集まり?

自宅で株のトレードをしながらテレビをつけっぱなしにしている時間もあるが、最近のテレビには本当に呆れる。
森友問題でメディアが一日中あーだこーだやっているからだ。
たしかに公文書の書き換えは問題だし、役人の信頼をゆるがし、情報公開という民主主義の根幹にかかわる大きな問題じゃ。
しかし、電波という公共インフラを一日中占拠していいものだろうか?
世界ではいろいろなことが起こっている・・・トランプ大統領は貿易や北朝鮮問題で言いたい放題だし、メイ首相も英国内での元スパイ暗殺未遂についてロシア政府の関与を肯定、IS崩壊後もゴタゴタが続く中東、絶対権力を得つつある習近平と開会中の全人代・・・しかし、日本では森友問題が丸一日メディアを占領している。

森友学園側が首相や奥さんの名を出して近畿財務局を圧力をかけて国有地の払い下げを有利に進めた。
それに不満のある職員が意図的に細かい決裁書を作り、財務省に送った。
財務省は国会での首相発言を受けて、マズイと思い関連する部分を決裁書から削除した。
それがどこからかリークされた。・・・ということだ。
10分程度のニュースで十分に内容を伝えることができる。
それをいろんな評論家が出てきて自分の推測であーだこーだ一日中やっているのが異常じゃ。

株式市場には全然響かない。
何故なら日本のファンダメンタルには影響しないからじゃ。
クビになるのは、せいぜい麻生財務相までだろうと市場は読んでいるわけだ。
麻生氏が辞任しても何も影響しないとみているわけじゃな。
あとは佐川氏の証人喚問など、きちんと後始末することだけじゃ。


数式を使わないリスクの話(4 リスク対リターン)

数式を使わないリスクの話(3)で書いたが、リスクは単に減らせばいいというものではなく、リスクに見合うリターンを上げているかが重要なのじゃ。
というわけで今回はリスク当たりのリターンを取り上げてみよう。

リスク当たりリターンの考え方は2つある。
一つは超過リターンをトラッキングエラーで割り算するという考え方。
3年あるいは5年程度の期間を使い、評価基準(ベンチマーク)である株価指数を上回った超過リターンをトラッキングエラーで割ったもので、この数値を情報レシオ、インフォメーションレシオを呼ぶ。
これは、ファンドマネージャーがどれだけのベンチマークリスクを取ってどれだけのリターンを上げたかを示す、ファンドマネージャーの成績表でもある。
通常、5年程度の期間というと、景気が良くなったり悪くなったり、金利が上がったり下がったり、いろいろ起こる時間の長さだ。
だから、情報レシオが1を越える成績はファンドマネージャーの合格ラインじゃな。
0.5以上1以下でも悪くはないが、0.5以下はクビ候補じゃ。

もう一つはリターン(細かく言うと無リスク資産のリターンを上回った分)をリスク(リターンのバラツキ)で割り算するという考え方。
これはシャープさんの考えたレシオで、シャープレシオと呼ばれている。
現在、無リスク資産のリターンはほぼゼロなので、リターンをリスクで割り算するだけなので計算も簡単じゃ。
簡単なので、いろんな資産の評価を横比較できるし、個人投資家には使いやすいものだろう。
たとえば、日本債券(リターン1.5%、リスク2%)でシャープレシオ0.75、日本株(5%、18%)で0.28、外国債券(2.5%、10%)で0.25、(外国株5%、20%)で0.25・・・と計算できる。
比較が簡単なことからどの資産を買おうかと考える基礎的な数字として使える。

ただし、情報レシオで1以上という好成績を続けるのは想像以上にむずかしい。
昔、情報レシオ1以上を10年以上続けたスーパーなファンドマネージャーがいた。
思えば2015年にドイツ証券のアナリストが決算前の未公表数字をもとに営業していた事実がバレて、金融庁が公表前取材を取り締まる通達を出したが、これが大きな変化の始まりだった。
それまでは予想より上か下かぐらいの感触だったらインサイダーを問われることがなかったが、これを境に一気に厳しくなった。
ほとんどの証券会社は決算前取材をやめた。


その辺からこのスーパーなファンドマネージャーもリターンが落ちてしまった。
こうした短期情報を使い、決算に向けたトレーディングで超過リターンを上げてきたからだろう。
スーパーなファンドマネージャーはたいていどこかにリターンを上げる裏技を持っているものだが、それがうまくいかなくなると・・・いかにスーパーファンドマネージャーでも苦戦するものなのじゃ。
このファンドマネージャーは環境変化に対応して再び高いリターンを上げ始めたが・・・特に外人ファンドマネージャーの中には日本企業のインサイダー情報でリターンを上げ、巨額ボーナスをもらっていた奴が多くいたが、彼らは全滅した。
この手の輩はだんだん市場から一掃されてきている。


サウジアラビア通貨庁(2)

サウジアラビア通貨庁(SAMA)は、サウジの中央銀行であり、公務員年金機構であり、国家資金を運用するソブリン・ウェルス・ファンドじゃ。
その特徴を簡単に言えば・・・
厳しいイスラム法(利子をタブー視する)を順守する国の中央銀行で金利政策のない珍しい中央銀行であり・・・
人口3000万人の国だが、70%がサウジ人、同じく、70%が公務員ということで、計算すればサウジ人のほとんど全員が公務員という、人口の割に大きい年金規模を持つ年金機構であり・・・
以前資産が80兆円ぐらいあったが、原油の急落、イエメン空爆など軍事支出の増加、新サルマン国王即位に伴うバラマキなどで60兆円ぐらいまで急減しているソブリン・ウェルス・ファンド。

石油が枯渇する将来に向けて石油収入による国富の蓄積を着実に運用し、将来にわたって王族全体の繁栄を保証するのがSAMAの大きな役割じゃ。
そのため、運用はきわめて保守的で失敗は許されない。
だから厳格に各資産に分散投資され、ベンチマークにそったリスクを抑えたものになる。
弱点は、基本的に運用資産規模が原油価格に連動することじゃ。
数年前の原油価格の下落でSAMAは一方的に資産売却を続け、世界の市場で売り手として警戒されてきた存在だった。

しかし、ムハンマド・ビン・サルマン(MBS)氏がクラウン・プリンス(皇太子)となり、矢継ぎ早の経済改革と腐敗撲滅運動を展開し、大きな流れの変化が出てきている。
その中で運用に関係するところを考えてみよう。

まずは最大級の石油会社であるサウジ・アラムコの株式上場。
その上場時に発行済株式の5%を10兆円で売り出し、その資金をもとにパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)で運用し経済改革をするという。
しかし、2018年にも予定されているこの巨大石油会社の上場は、大きな波乱要因になるだろう。
その原油と天然ガスの埋蔵量から当然巨額な時価総額が想定されているわけじゃが、その上場は巨額資金をグローバル市場から吸い上げ、成長性の低い巨大石油会社にぶち込むことになる。
しかもサウジはその調達資金をサウジの経済改革に使うので、グローバル市場にどう還流されてくるか全く不明じゃ。
結局、巨額資金が吸い上げられた時のマイナス要因をその後の資金還流のプラス要因で相殺できるかは全くわからん。

もう一つはパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)がどうなっていくかじゃ。
昨年ワシャ、やはりリャドにあるPIFを訪問したことがある。
高層オフィスビルを建設途中だったが、その一室でPIFのアドバイザーと会った。
意外だったのは、てっきりサウジアラムコの売り出しが資金源と思ってたが、上場前でもすでに数兆円規模にまでファンドが拡大してきていることだった。
おそらく、すでにSAMAとか他の政府資金を徐々にPIFに移し始めていたのだろう。
そして、昨年、孫さんと会ったMBS氏はソフトバンクのビジョンファンドへの数兆円規模の出資を決めた。
すでにPIFによるリスクの高い運用は始まっているのじゃな。
と同時にSAMAの資金は徐々にPIFに移されるとも想定できる。
SAMA資金の減少はグローバル市場の不安要因になるじゃろ。

まだまだ、サウジの改革がどうグローバル市場に影響するかはわからん部分が大きい。


数式を使わないリスクの話(3 分散投資)

今回は分散投資を考えてみたいのじゃ。
よく「卵は一つのカゴに盛るな」と言われる。
複数のカゴに入れておけば、一つのカゴを落として卵を割ってしまっても、他のカゴの卵は大丈夫だというわけじゃ。
しかし、この例はリスク管理という点では正確じゃない。
カゴ自体が同じところに置いてあれば、すべてのカゴが落ち、すべての卵が割れてしまうかもしれない。
現在では市場間の連動性が高くなってきているので、別の市場に入れてもすべて同時に下落してしまう可能性がでてきているからじゃ。

株式の保有銘柄数を増やしていくと、たしかにトラッキングエラーは低下していく。
しかし、リターンも株価指数にどんどん近くなっていってしまい、アクティブ運用の効果がなくなる。
たとえば、円高に強い内需株と円安に強い外需株の両方を保有すれば、円高のときは内需株がリターンを上げ、円安のときは外需株がリターンを上げる、どちらでも儲かるポジションといえるか?
答えはNOで、「円高でも円安でもたいして儲からないポジションになる」じゃ。
むやみにリスクを減らしていくと、リターンも減ってしまい、何のために運用しているのか訳わからなくなってしまう。
株式投資は、最後的に、自分がイケると判断した銘柄に集中的投資することじゃ。
ワシの経験ではそれがもっとも良いリスク対リターンになる。

リスクを管理するとは、単にリスクを減らせばいいという問題ではないのじゃ。
もっとも重要なことは、取ったリスクに対して十分なリターンを上げられるかどうかじゃ。
ワシが一般投資家に勧めるのは、リスクの3分散投資だ。
まず、投資資金を3等分して、最初の三分の一は高配当+低ボラの銘柄から選ぶ。
主に高配当銘柄やREITなどが対象になる。
次の三分の一は株価指数に入っているような業績安定した大型株から有望銘柄を選ぶ。
最後の三分の一は株価指数に入っていないボラの高い小型株から有望銘柄を選ぶ。

こうしたリスク水準を分散したポートフォリオは、株価指数の暴落場面では高配当部分がリターンの悪化を抑えてくれるし、急上昇場面でもある程度株価指数に追随することが可能だ。
それぞれのリスク水準で、リスクに応じたリターンを上げる銘柄選択できれば、投資効果は上がる。


貿易戦争はデジャヴ

鉄鋼・アルミニウムの関税引き上げ問題、コーン氏の辞任で市場が揺れている。
しかし、ワシにはデジャヴ感が強く、1980年代の亡霊としか見えない。

1980年代の貿易摩擦は国を揺るがす大事じゃった。
当時は家電・カメラ・事務機などのエレクトロニクス中心のモノ作り経済だった。
だから貿易黒字=利益=国富の増加=善であり、貿易赤字=損失=国富の流出=悪じゃ。
貿易赤字の国が国家の威信をかけて貿易不均衡の是正を要求した、厳しい貿易戦争の時代じゃ。

しかし、時代は変わり、今やIT技術・サービスを中心としたソフト経済になった。
モノの貿易黒字が国力を示す時代はとうに過ぎ去ってしもうたんじゃ。
貿易黒字が利益を生む、貿易赤字だから国家が衰退する、なんて全くの幻想になった。
貿易赤字で国家が衰退するなら、アメリカなんてとっくに国家破産してるという話じゃな。
今では貿易赤字なんて、単に "安いから外国製品をいっぱい買っちゃった"  程度のことにすぎない。

さらに言うと、アメリカはこの20年で圧倒的なソフトパワーの国になった。
その原動力となったのが、比較優位産業への集中とグローバル化だ。
リカードの古典的な貿易論みたいじゃが、比較優位をなくした重厚長大産業や競争力のない加工組立産業を切り捨て、比較優位を持つIT技術・サービスに特化したことじゃ。
これによりインターネットを中心とした技術革新で圧倒的なポジションを作り上げた。
これがアメリカ全体の生産性を大きく引き上げ、圧倒的なソフトパワーを持つ大国に押し上げた。

もう一つがグローバル化だ。
グローバルという言葉はアメリカのビジネスルール・インフラをグローバル市場に押し付けたという意味じゃ。
つまり、アメリカ国内で成功したビジネスモデルは、そのまんま、グローバル市場で成功できる。
3億人のアメリカ経済で成功すれば、そのまんま、70億人のグローバル市場で成功することが保証されているわけじゃ。
70億人のグローバル市場に進出すれば、売上高が一気に20倍以上になる急成長できる。
アップルもアマゾンもグーグルもファイスブックも同じ成長パターンを持っている。

この2つの要因でアメリカ企業は圧倒的に優位なポジションを築き上げた。
だから、貿易赤字なんて全く関係ないし、興味もないというのが正直な印象だろう。
この市場の動揺がノイズ(雑音)にすぎないのは、アマゾン、アップル、グーグル、ファイスブックの株価を見れば一目瞭然じゃ。
ただ問題はこの貿易戦争の亡霊が現職アメリカ大統領というだけのことじゃ。

ワシャ、コーンさんが辞任した気持ちがわかるような気がする。
「フーン、バカバカしくて全くやってやれないな。」



サウジアラビア通貨庁(1)

ワシが今まで訪問したり話を聞いたりした世界の巨大投資家について書き残しておきたいと思うのじゃ。
まず最初にサウジアラビア通貨庁(SAMA)じゃ。

SAMAのあるリャドはアラビア半島の砂漠の真ん中にある。
砂漠といっても鳥取砂丘のようなサラサラの砂でなく、ゴツゴツした土の塊が乱雑に置かれているような荒れ果てた土地じゃ。
ギリシャ人の物語(塩野七生)の第三巻でアレクサンドロスの東征が描かれているが・・・トルコから始まり、シリア、レバノン、エジプト、イラン、パキスタン、インドまで地域を制圧したが、アラビア半島には入っていない。
気温が50度以上にもなる過酷な砂漠で困難な水の確保、移動の馬が倒れるリスク、いろんな理由が考えられるが、アラビア半島の砂漠地域は避けたんじゃ。
リャドはそれほどの環境の土地に建設された人工的な街じゃ。

砂漠を見ながらリャドに空港にランディングする。
飛行機を降りて入国審査に行くとよく長蛇の列ができている。
サウジ人は冷房が超効いているオフィスで働くけど、いわゆる肉体労働をしない。
労働者はたいていインド・パキスタンあたりの地域から来る。
その彼らが空港の入国審査で長蛇の列を作る。
空港を出て街中まで高速道路で40分ほど。
道路の両側は当然砂漠じゃが、人工的に樹木が植えられ、スプリンクラーが水まきをしている。
リャドの街に着く。
中東の都市にありがちな超高層ビルが林立するような印象とは違い、土色の低層の建物が並んでいる。
ショッピングセンターなどで一部高層ビルもあるが、低層建物が多いのが街全体に伝統的な印象を与えている。

SAMAはその街の中心地域にある。

数式を使わないリスクの話(2 トラッキングエラー)

トラッキングエラーという言葉、聞いたことあるじゃろか?
これは、ある株式ファンドのリターンが株式指数(日経平均やTOPIXのインデックス)のリターンからどのぐらいズレているかを示すものじゃ。
だから、インデックスファンドのトラッキングエラーは通常1%以下と極めて小さいし、ファンドマネジャーが運用するアクティブファンドのトラッキングエラーは2-10%と高い。
これでファンドのリスクの取り方がわかるのじゃ。

ボラが価格のバラツキ、リスクがリターンのバラツキであるのに対し、トラッキングエラーは株価指数のリターンからのバラツキを示すものじゃな。
でも、多くの投資家にとっては株価指数がどうなろうが自分のファンドが儲かればいいわけで、じゃ何故こんなモノを使うのか?
株価指数を上回るリターンを目標とするファンドマネージャーにとっては、株価指数のリターンは自分でコントロールできないモノで運用目標とはならない。
だから、ファンドのリターンから株価指数のリターンを差し引いた超過収益が目標だし、リスクに関しても株価指数からのバラツキ(トラッキングエラー)が重要なのじゃな。

ここ数年、多くのファンドでトラッキングエラーの数値が大きく低下してきている。
この数値の低下で、ファンドマネージャーはリスクを取った運用をしていないと顧客からお叱りを受けることも増えてきた。
ワシャ、これは、インデックス運用が巨額資金を集め巨大化すると同時に、個別銘柄がみんな同じように動くケースが多くなってきたからじゃと思う。
もしすべての銘柄が株価指数と同じ動きをすれば、どの銘柄を選ぼうが同じリターンとなり、トラッキングエラーはゼロになる。
これはアクティブ運用の死と呼べる状態じゃ。
では、アクティブ運用は死に向かっているのじゃろうか?

ワシャ、その反対じゃと考えておる。
世界中でインデックス運用は人気になり、日本でも浅知恵の評論家がコストの安いインデックス運用を勧めている。
そして、巨大なインデックスファンドが良い銘柄も悪い銘柄も関係なくすべて買い上げてしまった結果、個別銘柄の格差が小さくなり、トラッキングエラーが全体的に低下してきたんじゃ。
でも、ワシャ、ここに大きな問題があると睨んでおる。
インデックスファンドへの資金流入が限界にきた時、この状態は大きく変わり、個別銘柄の格差が急激に拡大し始めると読む。
その時は、良い銘柄と悪い銘柄の格差が一気に広がり、アクティブ運用が復活するはずじゃ。




投信ガラパゴス日本(販売会社編2)

運用会社の守らなければならない重要な受託者責任という言葉があるんじゃ。
これは「運用会社は投資家(顧客)の利益ために忠実に仕事をしなければならない」という責任と義務じゃ。
当然、不特定多数の投資家が買っている投信にも適用されておる。
しかし、販売会社である証券会社や銀行には受託者責任は及ばない。
投信ビジネスのテッペンに立つ証券・銀行には受託者責任がなく、好き勝手にできる、ここに多くの問題の根本にあると思うんじゃな。

いくつかの実例をあげてみよう。

第一に、販売手数料じゃ。
多くの場合、投信を買うと最初に販売手数料3%を取られる。
たとえば、100万円で投信を買うと最初に97万円の基準価格(評価額)から始まる。
販売手数料は運用会社(受託者責任がある)ではなく、販売会社(受託者責任のない)が自分で決めている。
その他に信託報酬(およそ1.8%)もあるが、およそその半分も販売会社に入る。
投信は証券・銀行にとって美味しい商品なのじゃ。

初年に合計5%近いコストがかかることが日本の特殊なビジネス慣行を作った。
まず、この高いコストをカバーするためにリスクの高い(高いリターンの見込める)商品を売らなければならないことじゃ。
日本国債のような低いリターンじゃ、5%のコストに見合わんのじゃな。
だから、もっぱら新興国債券や通貨といった高いリターンが見込める投信が乱発されたんじゃ。
もう一つは、利の乗った投信を利食いし、別の投信を買わせ、高い販売手数料を効率的に稼ぐために回転売買が横行したことじゃ。
投資家は一応利益を稼いだが、次の投信の高い販売手数料を払うことになる。
これも受託者責任がないため、好き勝手にやったことじゃ。ただし、最近では回転売買はご法度じゃ。

第二は、特に外国証券の仕入れじゃ。
英国現地法人にいた時債券の連中がウハウハしてたので聞いたら、投信向けの外国証券じゃった。
外国証券投信では、運用会社が直接海外で買う場合もあるが、証券会社に大量に仕入れてもらう場合が多い。
こうした場合、証券会社の海外支店で外国証券を大量仕入れをし価格を上乗せして東京に送り、外貨を円に直し為替手数料を上乗せし、さらに諸コストを上乗せし、運用会社に売る。
債券の連中がウハウハしてたのは、3度おいしいビジネスじゃったからじゃ。

第三に、カバードコールなどの相対取引じゃ。
カバードコールの付いた投信も多く販売されている。
上場オプションは期近しか流動性がないので、期間の長いオプションは証券会社に組成してもらう必要がある。
その場合、オプション価格はボラをどのぐらいに設定するかで大きく変わってくる。
しかもボラの基準がなくたいていは証券自身が勝ってに決めるので、自分が儲かるように設定するのは普通だ。
カバードコールの付いた投信では、実勢より低い価格でコール売りをしている可能性もある。
でも、これは外部からは全く見えない。

受託者責任のある運用会社には外国証券や相対オプションの評価を専門的に見ている部署があり目を光らせているが、概ね、妥当な価格というところまでしか判断できない。
残念ながら証券会社の内部で行われいていることまではわからないのじゃ。
しかし、最近では投信を見る目が厳しくなり、好き勝手にできなくなったのも事実じゃ。

想定外の北方民族博物館

流氷を見に網走に来たんじゃ。
でも流氷は沖に引いてしまってたので流氷船おーろら号上から氷の塊が浮いてるのが見えただけじゃつた。
残念。

仕方ないのでオホーツク流氷舘に行った。
流氷の勉強にはなったが、だいたい想定の範囲内じゃな。
ついでに寄った網走監獄はあまりにも想定内。

想定外じゃったのが北方民族博物館じゃ。
モンゴロイドをルーツにしたアイヌ、シベリアのヤクート、アラスカのイヌイット、エスキモー、アリユート、アメリカインディアンなど北方民族の歴史・文化・生活などが展示されている。

北の大地で農耕ができず通常見られる経済発展せずに狩猟生活が続くこの地域。
縄文時代が永遠に続いているような感じじゃ。
グリーンランドからシベリア、アラスカ、カナダまでの広大な北方地域で共通した生活様式、服装、文化が生まれた。

夏は食料を貯めこむためテント生活をしながらの獲物を求め移動生活。寒い冬には竪穴式の家の中にこもった生活を強いられる。
こうした厳しい環境の中だからこそ共通の文化が生まれる。
華やかな色彩、派手な幾何学模様の服、工夫を凝らしたカヌーや武器などの道具などなど。
非常に興味深いところで勉強になったなぁ。

想定外といえば、爆弾低気圧の大吹雪の中の露天風呂じゃな。
ゴーゴーと風と雪に痛いほど顔を直撃されながら、じっくり露天風呂に浸かる。
出ている顔は凍りそうじゃが身体はポカポカ。
これまた一興じゃ。


追記
網走バスターミナルで空港までのチケットを買いバスに乗ったのだが、空港で降りる時にチケットをなくしてしもたんじゃ。
ワシとしたところが全く恥ずかしいことじゃ。
でも網走バスの運転手さん、気持ち良く通してくれたんじゃ。
もう一回払うのを覚悟してたんじゃが・・・
網走バスの運転手さんはとっても良い人じゃ。
ありがとう、網走バス‼️



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株式需給の達人(おもしろ相場格言)
「酒田五法」などの相場テクニックに直結する相場格言をより多く取り上げました。 当ブログでも使った「最後の抱き線は心中もの」、「遊びの放れは大相場」、「放れて十字は捨て子線」など、実戦で使える格言を多く解説しています。 ケイ線に興味のある方、テクニカル分析に興味のある方、是非一読をお勧めします。
株式需給の達人(バリュエーション)
PERやPBRなどバリュエーションを理解し割安/割高の実践的判断の基に理論的な株式投資を解説します。 割安とは将来のリータンを示すのか、単に成長性がないというだけなのか、事例をもとに解説します。 株式投資の基礎として大切なもので、是非一読をおすすめします。
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