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前回、マイナス利回り債券を買えるかという話をした。
ポイントは、マイナス利回りであっても金利の先行き低下期待があればトレーディング益を狙う債券買いができるし、ポートフォリオに債券を組み入れることでポートフォリオ全体のボラティリティを下げることができることだが、実は、もう一つポイントがある。
それが債券のロールダウン効果だ。
短期債の利回り<長期債の利回りという普通の状態(イールドカーブ)では、1年債券を保有すると、残存期間が1年短くなり、その分利回りは低下、価格が上昇する・・・これをロールダウン効果というが、マイナス金利でもロールダウン効果でリターンが上がる。
しかし、現在、アメリカの2年債利回りと10年債利回りが逆転している状況では、ロールダウン効果が見込めない・・・だから、残念ながら、この点ではマイナス利回り債券を買う動機にはならない。

でも市場は抜け目ないので、マイナス利回り債券が増えることによって、各金融商品の利回りを比較して、様々な資産に資金が流れるきっかけになっている・・・たとえば、金、ゴールドだ。
金には金利が付かない・・・しかも安全に保有するには、自宅に金庫を買ったり、銀行の貸金庫を使ったりとコストがかかる・・・保有コストをかけてひたすら為替調整後の金価格(たとえば、日本人なら円建て価格)の上昇をひたすら祈るというのが金投資だ。
でも、マイナス金利の債券を比べたら、金利ゼロの金が高利回り商品となる・・・つまり、本来、金利の付かない資産である金が高利回り商品に化けてしまう。
普通の時にはありえないが、マイナス金利の時なら十分にありえるので金投資がブームになる。

不動産商品も同じ理屈だ。
マイナス金利で貸し出しが無限に増加するとしたら、不動産投資は無限に拡大していく・・・ゼロ金利で借り入れて不動産に投資するだけで利ザヤが取れるからだ。
不動産投資の基本的リターンであるNOI利回りが借入金金利を上回ればプラスのリターンを取れる・・・ゼロ金利の下ではNOI利回りの高い不動産はずっと続く。
でも、不動産が活況となり価格が上昇していくと、NOI利回りが低下してくる・・・不動産の保有には金以上にコストがかかるので、NOI利回りが下がり過ぎると投資資金の引上げが起こるかもしれない。ゼロ金利下の不動産投資とはいえ、不動産市場の過熱によって投資の限界が出てくるかもしれない。

マイナス利回りの債券投資は、こうした金や不動産の投資へと資金フローを拡大していく。
長期につづいた低金利の効果として世界全体の債務残高が大きく増加していて、特に中国での民間債務が肥大化している。
こうした債務残高の積み上げりとともに、クレジット(社債)市場も肥大化しているのが現状だ。
マイナス利回り債券が世界債券市場の4割を占める状況では、多少リスクを取ってもプラスの利回りが期待できるハイイールド債券が人気になっているのもうなづける・・・次回はこのハイイールド債券について考えてみたい。


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