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「新しいゴルディロックス」の話の続きだが、今回は債券ポートフォリオの側面から考えてみたい。
FEDが利上げの停止を発表し、長期債利回りが低下、一時は10年金利が2年物金利を下回る逆イールド状態にまでなった・・・これが市場の安定を支えている。
そして、この長期金利と短期金利の接近が、債券ポートフォリオ運用とその資金フローに大きな影響をもたらすだろう。
これも「新ゴルディロックス」の一つの側面にだろう。

債券のリターンは、クーポンと呼ばれる保有期間の金利収入と、ロールダウン効果と呼ばれるイールドカーブから生まれるリターンがある。
債券には額面金利が付いていて、保有しているだけで金利収入がある・・・これは簡単に理解できる。
一方、イールドカーブが通常、右肩上がりであるので、残存期間の長い現在の金利より、残存期間が短くなる1年後の金利の方が低い。
つまり、1年後にはイールドカーブの形状どおり金利が低くなる(債券価格が上がる)わけで、このリターンがロールダウン効果を呼ばれるものだ。

米国の長期金利の低下とイールドカーブのフラット化が債券のリターンが大きく低下させる・・・それはロールダウン効果がなくなるからだ。
となると、債券ポートフォリオの中では、イールドカーブがフラット化した米国債はリターンの上がらない位置づけになり、その他のイールドカーブが立っている国の債券が注目されてくるはずだ。
そういう意味では、債券の資金は、FEDの利上げの停止で、政策の自由度が高まる新興国の債券に向かう可能性がある。
昨年はFEDの継続的利上げ政策でドル高と資金の米国集中で、新興国は通貨の防衛と金利の高止まりというマイナス面で厳しい状況に置かれていたが、今年はこのFEDの姿勢変化で金融政策のフリーハンドを得て新興国は復活してくると思われる。
すでにロシアやインドなど、インフレ抑制に成功した国は利下げの動きに入ってきた。
インフレが抑制されているアジア諸国も利下げに入るかもしれない。
そして、利下げを行った国では、短期金利が下がり、イールドカーブの勾配がスティープになるのでロールダウン効果が大きくなる。
つまり、債券ポートフォリオの観点からは、今回の「新ゴルディロックス」は新興国債券への資金の流れを増やしていく可能性がある。
そうなれば、ボラティリティの低下による株式市場の安定とともに、ドル一極集中も変化し、新興国に資金シフトしていくことも考えられる。

米国の長期金利の低位安定、株式市場の安定上昇が今後どうなっていくかは、このボラティリティの低水準とイールドカーブのフラット化がどうなるのか、さらにその前提であるFEDの利上げ停止とグロ₀バル景気の適度な鈍化という条件がどう維持されるかによるだろう。
もし年後半にグローバル景気の回復が明確になれば、FEDは利上げを再開するかもしれない。
そうなると、債券が売られイールドカーブがスティープ化する・・・株式は景気の回復を織り込み上昇するかもしれないが、金利上昇で市場は全体として不安定化する。
逆にグローバル景気が年後半に失速という事態になれば、企業業績の悪化で株式市場は調整に入るだろうし、安全資産である債券や金に資金シフトする。
・・・という意味で市場は微妙なバランスの上にあるといえる・・・もちろん、この微妙なバランスが続く可能性もある。
ボラティリティは予測できないし、突然変わるものだから、誰にも分からない。




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