
1月にFEDのパウエル議長が当面の利上げを停止し、FEDのバランスシートの縮小も停止すると発言し、このFEDのスタンスの変化が、株式市場では「新しいゴルディロックス」のような相場展開に導いたのだろう。
このゴルディロックス相場は良く言われる適温相場で、ゴルディロックスという少女が熱くもなく冷たくもないスープを選んだ話からきている。
新しいゴルディロックスは利上げの停止、長期金利の低下、経済成長の減速、企業業績の鈍化という組み合わせで生じているのだが、利上げの停止といってもグローバル景気のリセッションではなく、企業企業業績の大幅な減益でもないという市場の期待が背景にある。
そして、このグローバル景気の鈍化とFEDの利上げの停止という、微妙なバランスが各市場の奇妙な安定をもたらしているといえる。
この新ゴルディロックスを、ボラティリティという側面と、債券ポートフォリオという側面からもう少し詳しく見てみたい。
まず、今回はボラティリティの異常な低下だ。
株式市場が戻り相場に入り、NY市場のVIX指数(ボラティリティ・インデックス)が一貫した低下傾向にある。
そのVIX指数が20%を下回ってくると低ボラティリティと言われるが、今は12%とかなり低い極限的な水準にまで低下している。
これが意味するのは株価が上昇し、ボラティリティがかなり極限状態といえる水準まで低下し、投資家はリスク資産の積み増しに入っている・・・これは「リスクオン」といわれる展開だ。
このメカニズムはリスクパリティ運用を考えてみればよく分かる。
リスクパリティは、ポートフォリオの組入れられる各資産(株式、債券、商品、不動産など)のリスクを一定にするようにウェートを調整し、過度なリスクを避ける分散投資の一つの手法だ。
このリスクパリティ戦略では、リスクの高い株式はボラティリティが高まると組入れを低くし、逆にボラティリティが低下すると組入れを高めることになる。
また、リスクパリティと名付けられていなくても、現在のポートフォリオ運用には普通にこうしたリスクを避けるメカニズムが働いているので、ボラティリティの水準でポジションが変わる運用も多い。
こうなると、現在のようにボラティリティが異常な水準まで低下すると、株式などのリスクの高い資産を多く組入れていく必要が出てくる。
ボラティリティが低下していくたびに、ポートフォリオマネージャーは株式などのリスク資産を増やしていかなければならない。
こうした株式買いが市場では進み、市場の安定上昇を作り上げてきたと思われる。
リスクパリティの考え方が浸透している現代のポートフォリオ運用では、こうしたボラティリティの低下は「新しいゴルディロックス」を作り上げている一つの要素だろう。
逆にボラティリティが上昇しはじめ、VIX指数が20%を越えてくると、今度は逆になる可能性が高い・・・その時は、リスクを均等にするために、リスクの高い株式などは組入れ引下げの動きが一気に出て急落するかもしれない。
それほど、ボラティリティが重要になってきているといえる。
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