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1980年代はじめの頃、ワシは投資情報部で政府の統計数字と毎日にらめっこをしていた。
何故か? というと、四半期のGDP統計がどうしても理解できなかったからだ。
たとえば、GDPの需要項目の一つである民間設備投資。
今は財務省の法人企業統計で、全国数万社の設備投資金額を集計して企業側からの設備投資計画と実施額から民間設備投資を推計し、GDP統計を作り上げている。
当時もこの法人企業統計の数字は発表されていたが、このGDPの数字とどうしても合わない。
その他に導入される設備機械からの統計で機械受注があり、設備投資のうち建物などへの投資は建設着工統計などを利用して考えてみたが、やはり、どうしても合わなかった。
経済研究所のエコノミストやその他の人たちに尋ねても、もう一つしっくりした解決策がなく、悶々と数字とにらめっとしていたわけだ。

そのうち、GDP統計の数字について大幅な改善が行われた。
その説明を見て、GDP統計は十数年もの間、経済企画庁(現内閣府)ノンキャリアのベテラン職員が手で計算して出していたということが分かった。
鉛筆をなめなめしての手計算だったと聞いて、はっきり唖然とした覚えが今でも残っている。
国家の中枢ともいえる役所で、東大を出た頭の良い人がたくさんいる中で、キャリアたちは全く計算方法も知らず、ノンキャリのオジサンたちに丸投げしていたのだった。
役所のキャリアとは、自分では何もしない(できない)で実務をノンキャリに丸投げする人たちだったのだ。
GDP統計の不自然さは海外のエコノミストやファンドマネージャーからも指摘され、大幅な改善が行われることになった・・・そして現在の法人企業統計を見れば誰でも民間設備投資の動きを把握でいるまで分かりやすい統計になった。
40年前までの日本は今の中国と一緒で、国の統計が信用されない国だった。

今回の基本統計の不正を見て思い出したのが、この40年前の記憶だ。
厚生省でも、キャリアは面倒な事をノンキャリに丸投げし、全数調査がめんどくさいので抽出調査に勝手にしてしまった。
でも、ここから言えるのは、キャリアの責任は非常に重いということだ。
民間では様々なデータの不正が発覚し、厳しい処分が役所により行われた。
ビルの耐震データの不正、自動車の排ガス不正、燃費データの不正・・・多くの企業が不正により業績低迷を余儀なくされたし、株価も大幅に下落し株主も責任を取らされた。
中にはカルロス・ゴーンのように三菱自動車の不正を利用して資本参加し、統括会社がら給料を不正に受け取るという離れ業を演じた強欲男もいたが、多くの経営者はデータ不正で処分された。
今度は役人の番で、ノンキャリのせいにせず、キャリアに厳しい処分を行うことを期待する。




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