
12月の中国貿易収支で輸出ー4.4%、輸入-7.6%と大幅な減少を記録、さらに12月の中国製造業PMIが49.7と50割れの悪化、このところ中国の経済指標が次々と悪化し、景気減速が広範囲に進んでいることが明確になった。
その中でも最も注目されるのが、年間2300万台という中国の巨大な自動車産業、そして、その最大手の吉利汽車の問題だ。
中国の2018年の自動車(乗用車)販売は米中摩擦や内需低迷の影響を受けて、2270万台と前年比6%の減少(中国全国乗用車市場情報連合会)となった模様で、米証券は2019年もさらに7%の減少を予想している。
でも、ショッキングなのは最大手吉利汽車の12月販売が44%と大幅に減少したことだ。
この状況をどう考えたらいいのだろうか?
吉利グループは2010年にボルボを買収し、ボルボと共同開発した車を中国市場に投入、高級SUVやEV車を中国市場で販売し急成長を遂げてきた。
昨年にはダイムラーの株式を9.6%取得し、メルセデスやマイバッハの高級車分野で、吉利汽車の次の成長戦略が展開されるかと注目されていた。
しかし、一気に潮目が変わり、どうやらダイムラー株式の半分5.4%を売却したというブルームバーク・ニュースも出てきた。
中国企業の経営者は日本のようなサラリーマンではなく、強烈な個性でトップダウンの意思決定をする・・・この吉利グループ会長の李書福氏も典型的中国経営者だからこそ、これだけ積極的な投資やM&Aができたのだろう。
グループ総資産を見ると、422億人民元(2015/12)から849億人民元(2017/12)と2年で倍増している・・・ボルボの商用車部門やダイムラーへの巨額投資が影響しているのだろう。
一方、負債も22.5憶人民元(2015/12)から50.1憶人民元(2017/12)と2倍以上の急増している・・・この2年で利益も出て自己資本も増加しているが、投資の急増を負債で補った姿が見られる。
この負債の急増が吉利汽車の売上鈍化とともにマイナスに効いてくる。
また、ボルボとの共同事業は成功したが、これはあくまで中国市場でボルボ・ベース車が効果を発揮したということだ・・・中国以外の市場ではボルボ自身がグローバル展開をしているので、吉利汽車の開拓余地は小さい。
つまり、グローバル展開が困難で吉利汽車は中国市場にとどまることになる。
しかも、中国市場の成熟化と景気鈍化によって販売が低下すると、吉利グループの決算を直撃しかねない・・・そうなると、巨額の負債が重しとなり、投資株式などの資産売却に追い込まれる・・・もしかしたらダイムラー株の売却は、そうした経営困難の始まりを意味しているのかもしれない。
ただ、子会社のボルボは好調だ・・・日本でもXC60とXC40で2年連続カー・オブ・ザ・イヤーを獲得し、高級SUV市場で販売攻勢に出ている。
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