
ソフトバンクが通信子会社の上場計画を進めている。
親子上場は安易な資金調達方法として多くの企業グループが使ってきた「打ち出の小槌」だった。
子会社を上場させて株式の部分売却で資金を調達でき、しかも、50%以上の株式保有で連結対象となり、子会社の利益をグループ利益にフルに連結できる。
上場して資金調達ができて、しかも決算にフルに貢献できる安易な資本政策で人気だったが、コーポレート・ガバナンスの観点からは少数株主の存在が様々な論点を含んでいる。
今回は主に親子上場の問題点からソフトバンクをどう考えるかを、そして次回ソフトバンクの経営戦略の中で親子上場をどう考えるかを話してみたい。
まず、東証の上場基準や特別決議の株式保有比率のしばりがあり、品薄株となること。
東証の上場基準では、親会社や特定の大株主がその上場企業を保有する特定保有比率が85%以下と規定されている。
つまり、子会社を上場させる場合、親会社の持ち株比率を85%以下にする、要は15%以上は子会社上場時に売却しなければならない。
と同時に商法の規定で、連結子会社にするには子会社を50%以上保有する必要があり、さらに、資本政策で(会社合併や分割など)特別決議を必要とする場合66%以上の賛成が必要で、上場後の子会社を完全な支配下におくためにはおくためには、親会社はおよそ70-80%の子会社株式を保有することになる。
つまり、わずか、20-30%程度の株式を上場させるにすぎない。
そして、そのわずかな上場株式が市場で取引され株価を決定してしまうことになる。
ソフトバンクの通信子会社株は相当に品薄株となり、市場での株価変動が大きくなるだろうし、これが親会社のソフトバンク株にも影響するだろう。
もう一つは最近のコーポレート・ガバナンス・コードで少数株主の権利を尊重せざるをえないことだ。
ガバナンス・コードは「株主の権利」「株主以外の利害関係者との協働」「適切な開示」「取締役の責務」「株主との対話」など5項目を定め、上場企業の行動指針をしているものだ。
子会社の上場はこうしたガバナンスコードから大株主である親会社の勝手な振る舞いを制限する。
ソフトバンクのような戦略的な企業には少数株主の尊重は通信子会社の経営スピードに影響する問題となる。
おそらく孫さんの興味はすでに通信ビジネスにはなく、シンギュラリティ(技術的特異点)に向けたグループ戦略に神経集中しているのだろう。
そうなると、さらに子会社上場が裏目に出る可能性があろう。
業界環境は菅官房長官の「日本の通信費は高すぎる」発言以降、厳しさを増している。
確かに通信費を国際比較してみると日本の通信キャリアーの高さが明確なので、通信費引き下げの圧力は今後さらに強まることも予想される。
通信キャリアー全体の収益悪化が予想される環境の下で、通信子会社を上場させるのはいかがなものかと思う。
IPO価格は今後決定されるだろうが、今回のIPOが少数株式の売り出しであり、しかも収益環境の悪化が見込まれる中で、子会社上場に大きな期待を持つ投資家は限られるのではないだろうかという疑問を払拭できない。
やっぱり、この親子上場はカオスだと思う。
次回は、ソフトバンクのファンダメンタルを検討し、孫さんのグループ戦略の中でこの親子上場の持つ意味を考えてみたい。
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