
いくら在外総領事館には治外法権があるとはいえ、人を殺すのは大きな問題だし、その死体をバラバラにして分からないように処理するのはもっと問題だ。
このサウジ記者はトルコにあるサウジ領事館で殺害された事件は、公式に認めたサウジ政府に対して世界が非難している。
サウジ王室に近いトランプ大統領も国際的なサウジ非難の声にさずがに対応を迫れている。
その結果、サウジに対して何かしらの制裁を与えるのか、厳重注意ぐらいで済ませるのか、ちょっと微妙な空気となってきた。
しかし、そもそもこの中東地域は暗殺が普通に行われる伝統があり、英語のアサシネート(暗殺する)という言葉は中東の暗殺集団であるアサシンからきているという話もある(ゴルゴ13を参照)。
おそらく、トルコのエルドアンだって多くの政治的反対勢力を暗殺して大統領まで登りつめたのだろうし、シリアのアサドはそれこそ何十万人という数の市民を殺害し続けている。
秘密警察を持っているサウジ王室はそれこそ言論統制・服装から飲酒などの生活習慣まで全国民の監視を続けている。
秘密警察に捕らわれたサウジ国民は数多く行方不明になっているし、欧米流の人権という言葉が通用しない地域なのだ。
誰がサウジ記者の暗殺を命じたかは分からないが、おそらくサウジ当局の誰もこの事件で反省や謝罪をすることはない。
こうした感覚の違いが大きく、欧米諸国も日本もサウジ王室を被告人に仕立てて、厳しい制裁、特に国際市場からサウジ原油を締め出すような過激な制裁は困難だろう。
まあ、ちょっとお茶を濁すような実効性のない制裁が出てくる程度ではないかと思われる。
そもそもMBS(サウジ皇太子)の改革を欧米は支持してきた。
女性の権利拡大と女性の活用・登用、原油依存経済の構造改革、将来の国家資産を拡大するPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)の活用、などなど様々な分野におよぶ。
サウジアラムコの上場は需要が少なく延期されたが将来上場する予定は不変で、その資金を使って経済改革をさらに進めるという計画は変わっていないようだ。
ワシントンポストに寄稿するサウジ記者に対して同情の念はあるにしても、今までのサウジとの関係を一発でぶち壊すような、手のひらを返すような対応はできないだろう。
というわけで、当面、原油価格にはあまり影響しないと思っている。
逆に、次のOPEC総会でサウジがこの借りを返す形で、欧米諸国が要請すれば増産に応じる可能性もあるだろう。
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