
FOMCの合計8回目の利上げが行われ、パウエル議長の強気の景気見通しが出て米長期債が売られ、米10年利回りは3.2%に急上昇した。
9/25「FOMC、ダンディールだが・・・」を書き、景気の強さによるドル債売りがその他の要因によるドル債買い需要を上回り10年債利回りは上昇するとした。
しかし、米長期金利の上昇スピードが速く市場はやや混乱気味だ。
市場のドル不足が影響している可能性もある。
完全に引締め政策に入っている米国と、量的緩和を続けている欧州や日本とは、金融政策の方向が逆になっているから、市場ではドルは吸収される一方、ユーロや円はジャブジャブに余っている。
それに加えて、法人減税による米国債発行量の増加、海外子会社の余剰利益を米国内に還元させるトランプ政策もドル買い需要を生むので、市場のドル不足を増長する。
通貨のヘッジコストは金利差+ドル需給によるベーシスで表されるが、FEDの8回にわたった利上げで金利差が大きく開き、市場のドル不足によるベーシスの拡大でドルのヘッジコストが高まってしまう。
つまり、ヘッジ外債の運用ではこのヘッジコストの上昇でヘッジ後リターンが低下してしまい、米国債の魅力が減る(=米国債買い需要の減少)ことも長期金利の上昇要因になっているだろう。
そして、このドル不足はドル建ての借金が多い新興国にもっとも影響を及ぼす。
ドル高で自国通貨に換算した債務が急増し、ドル金利の上昇で金利の支払い額が増加し、さらにドル高をヘッジしようにもヘッジコストが高まる・・・と三つの条件が揃ってしまう。
というわけでこのままドル不足が続くと、ドル債務の大きい新興国は、債務の膨張、利払いの増加、通貨ヘッジコストの上昇に直面するかもしれない。
新興国でもファンダメンタルが大きく改善し経常黒字をため込んでいる国も多く新興国全体に問題があるわけではない。
でもやはり、ファンダメンタルの弱い、経常収支の赤字国には注意が必要だろう。
経常収支/GDP比率を見ると、アジアはファンダメンタルの強い国も多く、インドネシア(-1.7%)、インド(-1.9%)、スリランカ(-2.9%)、パキスタン(-4.0%)などとそんなに多くない。
中南米は特に注意が必要で、ペルー(-1.2%)、チリ(-1.4%)、コロンビア(-3.3%)アルゼンチン(-4.8%)など多くの国が経常赤字だ。
さらに東欧でも、ウクライナ(-3.6%)、セルビア(-4.6%)、トルコ(-5.5%)などには注意が必要かもしれない。
9/6の「新興国の危機をどう見るか」を参照。
にほんブログ村