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統計数字から考えるとういうことで、前回は財務省の法人企業統計を取り上げたが、今回は日銀短観を考えてみたい。
これは日銀の短期経済観測調査という、3か月に一度、全国の約1万社にアンケート調査をしたものだ。
主要な項目としては、まず、業況判断、これは業況が「良い」から「悪い」を引いて回答総数で割ったパーセント表示したDI(ディフュージョン・インデックス)だ。
日本経済を担う大企業、中堅企業、中小企業が業況をどう判断しているのか大雑把に取らえることができる数字だ。
次に売上げ、利益などの項目だが、伸び率で表示され、設備投資、在庫、価格判断、資金繰り、金融の貸し出し態度、雇用などの項目が「良い」-「悪い」のDIで表示されている。
日銀短観の数字は経営者の判断の集まりなので、経済のセンチメント指標としてとても参考になる。
ヒト、モノ、カネの経営要素を経営者がどう感じているかが分かる、たいへん興味深い数字だ。

それでは実際に日銀の9月調査を見てみよう。
第一の注目点は、やはり日本企業全体にある人手不足とその対応なのだろう。
雇用を見ると、大企業で6月-21から9月-23、中小企業で6月-35から9月-37と人手不足が拡大している。それにつれて省力化のためソフトウェア+研究開発投資の伸び率が高まっている(大企業6月+4.6%、9月+10.3%、中堅企業6月+9.7%、9月+13.8%)。
人手不足感が厳しく、外国人労働者のビザ発給問題も政治課題になる一方、短観ではソフトウェアや研究開発を推進し人手不足に対応しよとする企業の姿が浮き彫りになっている。

第二の注目点は、企業の価格判断がいよいよデフレ感覚から変わりつつあることだ。
国内製品・サービス需給判断だが、大企業製造業で6月-2から9月+1と1990年6月以来のプラスに転換した。
しかも販売価格は大企業製造業6月5から9月7と上昇を見込む経営者が増え、一方仕入価格も大企業製造業6月30から9月27といずれも上昇し、特に仕入れ価格の上昇を感じている経営者が多い。
つまり、国内の製品需要が強く、1990年以来の需要超過になり、景気の腰が非常に強いことを暗示する。
さらに販売価格と仕入れ価格ともに引き締まった状態だが、特に仕入れ価格の上昇が顕著だ。
為替の円安傾向や原油価格の上昇が企業に原材料価格に反映しているためだろう。
この価格判断が企業の利益率にどう影響するか、そして、販売価格をさらに引き上げることになるのか要注目だ。

短観が日銀から発表され、多くのマスコミはヘッドラインの業況判断だけを見て、貿易摩擦懸念や自然災害で業況判断が3四半期連続で悪化したというコメントを出している。
数字を細かく見ると、今回の日銀短観は以下の点で企業業績に悪影響する可能性も指摘される。
(1)幅広い景気拡大の中労働需給が引き締まり企業は人手不足に直面している。このままだと人手不足で生産が落ちたり、人件費の圧迫で企業収益が抑えられる可能性もある。
(2)国内の製品需給の引き締まり、いつ販売価格に転嫁されるか、いつ国内物価が上昇を始めるが注目点になってきたことだ。
(3)業況判断DIの停滞は、やはり仕入れ価格が上昇見込みで販売価格の転嫁が遅れているために企業の利益マージンが低下させることを見ているのかもしれない。
こうした点に企業経営者がきちんと対応できるかが分かれ目だ。



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